ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
「ア・テイスト・オブ・ハニー……?」
「スタンドなのかこいつは!?」
「一体どこの誰が操って……」
そう言っている内にカブトムシ、ア・テイスト・オブ・ハニーはヴェルサスに向かって突進する。
「ちっ!」
ヴェルサスはその突進を躱す。
「くそっ!一旦出直さなきゃヤバい!」
ヴェルサスは一旦ライブハウスから出ることにする。
「おっ、ヴェルサスの奴が逃げたぞ!」
「これで隠し財産は私達の物ね!」
しかし、ア・テイスト・オブ・ハニーは今度はキーツ兄妹に向かって突進を仕掛ける。
「うわっ!」
「きゃっ!」
危うく突進を躱すキーツ兄妹。
「何をする!」
ウィンはア・テイスト・オブ・ハニーに向かって光線を放つ。だが、
ビシュン……
チェインズ・ナンバー1の光線はア・テイスト・オブ・ハニーの装甲に弾かれた。
「何!?」
キーツ兄妹も慌ててライブハウスを出ることするが、ア・テイスト・オブ・ハニーはその後を追ってくる。
外に出たア・テイスト・オブ・ハニーは翅を広げて飛翔するのだった。
一方先に外に出たヴェルサスは、
「チキショーめ……、まさかスタンド使いと遭遇するとはな」
「これからどうするか……」
とぼやいていたが。ブブブ……、という大きな羽音を聴く。
「ん……?」
上空をみるとア・テイスト・オブ・ハニーが空から襲い掛かってくる所だった。
「うおおおおおおおおおッ!?」
ヴェルサスはア・テイスト・オブ・ハニーの空襲を躱す。その勢いのままア・テイスト・オブ・ハニーは着地した。
「このカブトムシ!追ってきやがったのか!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドを出す。
「さっきのライブハウスから十分離れたし、ここなら多少派手にやっても問題ねえ!」
そしてアンダー・ワールドは地面を掘り、過去を掘り起こす。すると第二次世界大戦時のイギリスの軍隊が現れた。
「撃ち方はじめ!」
ガガガガガガッ!
イギリスの軍隊がア・テイスト・オブ・ハニーに向かって発砲する。だが、
キンキンキンッ!
ア・テイスト・オブ・ハニーの装甲の前に銃弾は弾かれた。
「ちっ!固えな!」
一方その頃、ヴェルサスとは別方向に逃げたキーツ兄妹も今の事を話し合っていた。
「何なのあのカブトムシ!?」
「まさかとは思うが……、さっきのカブトムシがヴェルサスとは関係ないとしたら……!」
「ビートルズが財産を隠す際に所謂守衛をあそこに設置していたら……」
「あのデカいカブトムシがその守衛だって言うの!?」
「分からない……が、もしも俺の考えが当たっているならあのライブハウスの隠し部屋に侵入するのは難しくなったかもな……」
兄妹がそんな事を話しているとブブブ……、という羽音と共にア・テイスト・オブ・ハニーが接近する。
「追ってきたの!?」
「いやちょっと待て!」
ウィンがあることに気づく。
「あいつ、“角が無い”ぞッ!」
そう、こちらのア・テイスト・オブ・ハニーには先ほど対峙したものとは違い、角が存在しない所謂メスのカブトムシのような姿だった。
そしてそのア・テイスト・オブ・ハニー♀は飛行したまま腹部をキーツ兄妹に向ける。するとア・テイスト・オブ・ハニー♀の腹部が開き、中から多数の通常サイズのカブトムシが飛び出してきた。
「こ、このカブトムシッ!一匹じゃない!?」
ウィンは指から光線を放って、カブトムシ達を撃墜しようとする。しかし、十数匹は落とされたが、カブトムシの群れはそのままキーツ兄妹に向かってくる。
「に、逃げましょう!多勢に無勢だわ!」
「ちっ!そうだな!」
キーツ兄妹は一時撤退することにするが、ア・テイスト・オブ・ハニー♀はその後を追っていく。
一方そのころ、ヴェルサスはア・テイスト・オブ・ハニー♂と対峙していた。
ア・テイスト・オブ・ハニー♂はその角を伸ばして攻撃する。
「さっきの双子のビームに比べりゃ遅い!」
ヴェルサスは角による攻撃を躱すと、
「アンダー・ワールド!」
アンダー・ワールドで地面を掘り起こし、そこから大型トラックを出現させる。
「いけ!」
大型トラックはそのままア・テイスト・オブ・ハニー♂に突っ込んでいく。ア・テイスト・オブ・ハニー♂は大型トラックに押されて後退していくが、
ガッ!
角で大型トラックの車体を捉えて、大型トラックを投げ飛ばした。
「ちっ!パワーは見掛け倒しじゃないってことか?」
「それにしてもこいつの本体は何処にいる!?」
「まさかアヌビス神みたいに本体が既に死んでるパターンじゃねえだろうな!?」
その時である。
「クソッ!何処まで追ってくるんだこいつらは!」
「私疲れて来たよ……」
ア・テイスト・オブ・ハニー♀に追われるキーツ兄妹がその場にやってきた。
「あっ!?」
「なっ!てめえらは!」
「ヴェルサス!お前もカブトムシに追われているのか!?」
2体のア・テイスト・オブ・ハニーはヴェルサス達を挟み撃ちにするかのように距離を調整する。
「なあ、ヴェルサス……」
「なんだ!?今忙しいんだがな!」
「おそらくあのカブトムシはビートルズの隠し財産の番人だ……!」
「それも強い。だから」
「俺達協力しないか?」
「何?」
「このままじゃ共倒れだ」
「中国の故事で言う“呉越同舟”で行かないか?」
ウィンの呼びかけにヴェルサスは、
(どうする?こいつらと一緒に戦うか?)
(正直会ったばっかで信用も何もないがだからと言ってこの状況でわざわざ敵に回すのもな……)
と考える。そして、
「分かった!一時休戦だ!」
「いいか!この時だけお前達に背中を預けるからな!」
と言うのだった。
ア・テイスト・オブ・ハニー♀は腹部をヴェルサス達に向け、カブトムシの大群を放つ。
ブブブブブブブブブ!
「アンダー・ワールド!」
それに対しヴェルサスは地面を掘り、カラスの群れを出現させた。カラス達はカブトムシの群れに襲いかかる。
カア!カアーッ!
「鳥って甲虫の場合は腹だけ食べて後は残すんだよな」
一方ア・テイスト・オブ・ハニー♂は突進攻撃を行おうとしたが、
「上の方の装甲は固いみたいだが、腹の方はどうかな?」
いつの間にかア・テイスト・オブ・ハニー♂の脚の間の方にウィンが潜り込んでおり、
ビシュン!
光線をア・テイスト・オブ・ハニー♂の腹部や脚の付け根に当てる。
「……!!」
苦し紛れにア・テイスト・オブ・ハニー♂はウィンを押しつぶそうとするが、
「チェインズ・ナンバー2!」
ウィニーのスタンドによってウィンは潰される前にウィニーの側に瞬間移動した。
ア・テイスト・オブ・ハニー♀は腹部を開き更にカブトムシの群れを出そうとするが、
ドッゴーンッ!
「!?」
大砲の砲撃を受けて地面に落ちる。
「BL 5.5インチ砲だぜ」
「どうやら雌雄揃って下からの攻撃にはあまり耐性が無いみたいだなぁ~!」
ヴェルサスは第二次世界大戦時にイギリスが使っていたカノン砲を掘り出していた。
一方ア・テイスト・オブ・ハニー♂はキーツ兄妹に向かって角を伸ばそうとするが、
ビシュンッ!
なんと先ほどウィンが地面に残したスタンドの指紋から光線が発射されア・テイスト・オブ・ハニー♂の腹部に命中した。
「俺のチェインズ・ナンバー1にはこういうのもあるんだよ……!」
「やっりー!」
度重なる腹部への攻撃でダメージを受けた二体のア・テイスト・オブ・ハニー。戦況はヴェルサス達に傾いたと思われた。しかし、
ブブブ……!
「んっ!?」
「あれは!?」
二体のア・テイスト・オブ・ハニーはお互いの腹部を隠すかのようにしがみつき合う。
「おいおい……!交尾にしては向きが違うぞ……!?」
「不味い!腹部をカバーされた!」
「これって……」
そのまま合体した二体のア・テイスト・オブ・ハニーは回転しながらヴェルサス達に向かって突っ込んでくる。
ギュルルルルルルルッ!!
「うおっ!?」
ヴェルサス達は二体の合体回転体当たりを躱す。
「ちっ!あんなのまともに喰らったら流石にヤバいぜッ!」
「まったく!隠し財産を得る筈が命が危なくなるなんてな!」
「どうするの!?」
(あいつらを何とかする方法か……!)
ヴェルサスは考える。そして、
「閃いたぜッ!アンダー・ワールド!」
アンダー・ワールドに地面を掘らせる。
一方、ヴェルサス達がア・テイスト・オブ・ハニーと戦っている場所から少し離れた地点。
「?」
「誰かが音楽を流してるな?」
「これは……、ビートルズの曲か?」
「まあ、リヴァプールだしな。無許可でビートルズフリークが路上演奏でもやってるのか?」
一方、ヴェルサス達がア・テイスト・オブ・ハニーと戦っている現場。
ヴェルサスが掘り出したのは、
「Happiness is a warm gunだったかこの曲は?」
「おいヴェルサスこれは……」
「さっきみてーに掘り出したのよ、演奏中の現役時代のビートルズをな!」
二体のア・テイスト・オブ・ハニーは合体を解き、演奏中のビートルズの記録の方へ、まるで誘蛾灯に群がる虫の様に向かっていく。
「思ったんだよ、こいつらがビートルズと関係があるならビートルズ本人の演奏を前にしたらどうなるかってな」
「どうやら狙いは当たったようだぜ!」
ア・テイスト・オブ・ハニー達は演奏中のビートルズの近くに着地すると、まるで聞き入っているかのように動きを止める。
「絶好のチャンスだな!」
「やるの?」
「馬鹿か?奴らを倒さないと俺達の命が危ないんだぜ」
ヴェルサスは投下爆弾を取り出す。
「それも掘ったものか?」
ウィンの問いにヴェルサスは、
「この辺りも第二次世界大戦時にドイツの空襲を受けたからな」
「問題なく掘り出せるぜ」
「アンダー・ワールド!爆弾をあの化け物カブトムシ達の所に投擲しろ!」
『OK』
アンダー・ワールドは爆弾をア・テイスト・オブ・ハニー達の所へと投げる。
「あの距離ならこちらへの被害は無さそうだな!」
ウィンは投擲された爆弾に向けて、チェインズ・ナンバー1の光線を発射する。
ビシュッ!
ヴェルサス達は更に距離を取って伏せる。
ドッグォオオオオンッ!
ア・テイスト・オブ・ハニーが居た所を中心に爆発が起こった。
「終わったか……」
「ね」
ア・テイスト・オブ・ハニーが爆弾でやられたのを確認するキーツ兄妹。
「……ヴェルサスが居ないな」
「もしかして……、さっきのライブハウスに戻った?」
「……!」
「俺達も向かうぞッ!」
「はーい!」
キーツ兄妹は急いで先ほどのライブハウスに向かうのだった。
◇
「これは……」
ヴェルサスはア・テイスト・オブ・ハニーが現れたライブハウス地下の隠し部屋に保管されてあったものを見る。
「これがビートルズの隠し財産なのか?」
その時だ、
「おいッ!抜け駆けは許さないぞ!」
キーツ兄妹が追い付いて来た。
ヴェルサスは振り向く。
ウィンは何時でもヴェルサスを撃ちぬけるようにスタンドの人差し指をヴェルサスに向けている。
「さあ、この部屋に隠されていたものを渡してもらうぞ!」
「言っておくけどウィンの手に掛かればそっちの心臓なんて何時でも撃ちぬけるんだからね!」
「……」
ヴェルサスはゆっくり手を上げる。そして、
「分かったよもうお前達と戦う気はない」
と言った。
「何!?」
「おれはてっきり金塊とか貴金属の類だと思ってたんだよ」
「だが違った」
「えっ、金目の物じゃないの?」
「だからこれ以上お前達とやりあうのは面倒だからやらねえ」
そう言ったヴェルサスは、
「アンダー・ワールド!」
アンダー・ワールドで砂塵を掘り出してキーツ兄妹の視界を封じる。
「!?」
そして砂塵が晴れた時にはヴェルサスの姿はその場から消え失せていた。
「なんなんだあいつ……」
キーツ兄妹は隠し部屋に降り立つ。
「これは……」
「レコード?」
「ビートルズの隠し財産の正体と思わしきレコードか……」
「どうするの?見た目は単なるレコードみたいだけど」
「ヴェルサスの奴は価値が無さそうだと踏んだみたいだが」
「先ずはレコードの中身の確認だ」
キーツ兄妹はレコードを持ち去るのだった。
そして数日後、キーツ兄妹は嘗てビートルズが設立した会社であるアップル・コアを訪れていた。
応接室で対応するアップル・コアの役員は、向かいに座るキーツ兄妹に確認する。
「これが、行方不明になっていたビートルズの未発表曲が入っているレコードかね?」
「はい、そうです。何処で入手したかは深く聞かないで貰えるとありがたいですが」
「私達も確認しましたが、ざっと十曲分世に未発表になっている曲は入ってました」
「分かった。こちらでも後で確認するが……」
「君達はわが社に何を望むのかね?」
「まあ、平たく言えば謝礼金ですね」
「発見はそちらがしたという事にして俺達が発見した事実を伏せてもらって」
「その分多く貰えればいいですが」
「いいのかね?」
「君達が発見したことを公表すればそれなりの名誉も出来るが」
「いえ、俺達は実益だけで結構ですよ」
「だから取引として多めに貰えれば」
「ビートルズの未発表曲です」
「ひとたび発表されれば、相当な話題になりますよ」
「まあ、そうだろうね」
「分かったその取引を飲もう」
「小切手を持ってこさせるよ」
ウィンと役員は握手を交わす。
更に一週間後、ノリッジのカフェ。
ソフィアがヴェルサスに話す。
「ねえヴェルサスも聞いたわよね?」
「未発表だったビートルズの曲が新たに発見されたって!」
「ああ、聞いてるぜ」
「ビートルズの会社が新たに発表したんだろ?」
「そうそう!」
「凄いわよね!もうビートルズの全盛期から半世紀以上経つのにそんな事があるなんて!」
「そうだな……」
ヴェルサスは内心思う。
(あのレコードやっぱり回収しとくべきだったか……?)
一方その頃キーツ家。キーツ兄妹はベッドの上で金額が莫大に増えた通帳を眺めていた。
「夢じゃないよね……?」
「ああ、夢じゃない」
「じゃあ、私達はお金持ちだ!」
「どうしよう?リゾートの一等地に行ったり豪華客船のクルージングに行ったりして!」
「俺は貯金するか投資に回した方がいいと思うけどな」
「あはは!夢が無い!」
「……それにしても、ウィンが事故で指を失って」
「スタンドに目覚めてから随分経つね……」
「ああ、俺達にもようやく運が向いてきたってことかな?」
「うん!ウィン!ずっと一緒に居ようね!」
「そうだな、ウィニー」
キーツ兄妹の影はぴったりとくっついていた。
To Be Continued...
……スタンド紹介……
ア・テイスト・オブ・ハニー(蜜の味)
パワー:A
スピード:C
射程距離:A
持続力:A
精密動作性:E
成長性:D
姿: 人間大のアトラスオオカブトの様な姿。オスとメスが存在する。
能力: 本体の存在しない一人歩きしているタイプのスタンドである。リヴァプールに存在するビートルズへの信仰をエネルギーとして動いている。オスは強固な装甲と伸縮自在の角を武器でメスは腹部からカブトムシの大群を放つ能力を持つ。ビートルズの隠し財産に近づいた人物を敵と認識して襲い掛かり追跡する。元々の本体は不明だが、当時のビートルズの関係者の誰かが本体だったのでは?とは推測される。名前の由来はビートルズ楽曲の一つである「蜜の味」。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等をいただけたら幸いです。