ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー   作:クォーターシェル

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今月はハロウィンなのでそれに因んだ話にしました。


第24話 ジャック・オー・ランタンが降りてくる

ノリッジのカフェ。ソフィアはヴェルサスに勧められたある音楽を聴いていた。

 

「どうだった?」

「今イタリアで働いてる兄貴が勧めて来たイタリアの女性歌手の歌」

「俺は悪く無いと思ったんだが……」

 

ヴェルサスは音楽を聴き終わったソフィアにそう言う。

 

「そうね、いい歌だったわ!」

「トリッシュ・ウナって歌手だっけ?ひと味違うって感じがするわ」

 

そう答えたソフィアに、

 

「そうかそりゃ良かったぜ」

「なんでもそのトリッシュって歌手は兄貴の知り合いで俺達と同年代らしい」

「後でその感想を兄貴にも伝えるよ」

 

ヴェルサスもそう返した。そうした二人の雑談がしばらく続いた頃だ、ソフィアがこんな話を切り出した。

 

「ねえヴェルサス、実は……」

「貴方に相談したいことがあるの」

 

「相談?」

「一体どうしたんだ?」

 

「実は……、私の従弟がジャック・オー・ランタンに取り憑かれたっていうのよ」

 

「……、ジャック・オー・ランタンってハロウィンのあれか?」

 

「そうね。元々はイギリスの伝説に登場する鬼火で」

「天国にも地獄にも行けなくなった男が灯しているって言われているけど」

「私の従弟……、オーリンはそのジャック・オー・ランタンに付きまとわれているんですって」

 

「……」

「まあ、わざわざその話を俺に振って来たってことは」

「ソフィアもその話を信じてるんだろ?」

 

「……そうね」

「私も前にバンシーの事があったんだもの」

「そんなオカルトが存在しないなんてとても言えないわ」

 

「じゃあソフィアは実際に従弟に取り憑いている何かを見たのか?」

 

「いえ、確かにオーリンは何かが見えている風だったけど」

「私には何も見えなかった……」

「そこでヴェルサスにもオーリンの様子を見てもらいたいのよ」

「貴方、前にもバンシーが現れた時バンシーが見えたじゃない」

 

「まあ確かにそうだけどよ」

 

「お願い!人助けだと思って……!」

 

(正直俺はゴーストバスターでも何でもないんだがな……)

(しかし、ソフィアの頼みだ。もしもこのトラブルを解決できたらまたソフィアからの好感が上がるぜ!)

「分かった」

「何処まで助けになるかは分からないが、やってみるよ」

 

それを聞いたソフィアは両手でヴェルサスの手を掴む。

 

「ありがとうヴェルサス!」

 

「ああ、それでオーリンって言ったか」

「お前の従弟は何処に居るんだ」

 

「ノリッジの近くのキングズ・リンって町に居るわ」

 

「分かった」

「準備が出来次第そこに向かおう」

 

     ◇

 

数日後、ヴェルサスとソフィアはキングズ・リンのオーリンの家に来ていた。

 

「あら、ソフィアじゃない!」

 

「こんにちは叔母さん!」

 

二人を出迎えるオーリンの母。

 

「後ろの方はボーイフレンドかしら?」

 

「……まあ、友達ですよ」

 

「ソフィアの友達のヴェルサスだ」

 

「あらあら、お茶を用意しないとね」

 

「あの、叔母さん」

「オーリンの様子はどうでしょうか?」

 

その事を聞かれたオーリンの母は、

 

「ああ、あの子ったらまだジャック・オー・ランタンが見えるって言っているのよ」

「それだけならいいんだけど、すっかりふさぎ込んじゃって……」

 

と答える。

 

「そうなんですか……」

 

「まあ折角だから上がって!オーリンにもあなた達が来たことを言うから」

 

そして、ヴェルサスとソフィアはオーリンの家にお邪魔するのだった。そして、

 

「あの、叔母さん」

「オーリンに会ってもいいでしょうか?」

 

「ええ、いいわよ」

「あの子なら部屋に居るわ」

 

そうしてヴェルサスとソフィアはオーリンの部屋に向かう。ソフィアはオーリンの部屋のドアをノックした。

 

「オーリン?今大丈夫?」

 

「その声はソフィア姉さんかい?」

 

「そうよ」

「オーリン。今日は貴方の助けになれるかも知れない人を連れて来たの」

 

「霊媒師でも呼んだの?」

「無駄だと思うよ。俺はこいつに一生付きまとわれるんだ」

 

「まあ話だけは聞いとけよ」

 

「誰?」

 

「俺はヴェルサス」

「ソフィアの友達だ」

 

「ソフィアの……」

「分かった。取り敢えず入っていいよ」

 

「そう……、じゃあ失礼するわ」

 

二人はオーリンの部屋に入る。部屋に入ったヴェルサスが見たのは、

 

「……!」

 

15歳くらいの栗毛の少年の背におぶさるカボチャ頭の怪人の姿だった。

 

「どうヴェルサス?何か見える?」

 

「何も見える筈が無いよ友達も父ちゃんも母ちゃんも誰も見えなかったし」

 

「いや……、ばっちり見えるぜ」

「お前の後ろに居るカボチャ頭だろ?」

 

「……適当言ってないよね?」

 

『ああ?お前、俺が見えるのか?』

 

「そいつ俺が見えるのかとか言ってるぜ?」

 

「声も聞こえるの!?今まで俺以外に誰もこいつの知覚できなかったのに……」

 

オーリンは驚いた。

 

「凄い!ヴェルサス、私には何も見えないけどオーリンに取り憑いている何かが見えるのね!」

 

「ああ、ちょっと試してみるぜ」

 

ヴェルサスはアンダー・ワールドを出す。

 

「おい、オーリン」

「こいつが見えるか?」

 

「?」

「いきなり何を言うの?」

 

(オーリンにアンダー・ワールドが見えていない……)

(じゃあ少なくともこのカボチャ頭はスタンドでは無いってことか)

(バンシーみたいにスタンド使いに見える存在のようだが)

 

次にヴェルサスはアンダー・ワールドでオーリンに取り付くカボチャ頭の怪人を引きはがそうとする。

 

『おい!何しやがる!』

 

「うるせえ!とっとと離れろ」

 

ヴェルサスはアンダー・ワールドでカボチャ頭を小突く。

 

『イテッ!』

 

「痛っ!?」

 

するとオーリンも頭を押さえた。

 

「……何?」

 

「どうしたの?」

 

『おいやめろ!今俺はオーリンと一心同体だ!』

『俺にダメージが入ればオーリンにもダメージが入るぞ!』

 

「何っ!?」

 

「どうしたのヴェルサス?」

 

「いや、ジャック・オー・ランタンが言ったんだけどよ」

「カボチャ頭にダメージが入ればオーリンにもダメージが行くんだってよ……」

 

「まあそうなの!?」

 

「本当みたいだよソフィア姉さん!今こいつが痛がったら俺も痛かったんだ」

 

「力ずくでジャック・オー・ランタンを引きはがそうとするのは悪手みたいだな……」

「おい、オーリン。そのカボチャ頭に憑かれた時の事を詳しく話してくれないか?」

 

「う、うん……」

 

     ◇

 

事の発端はオーリンのクラスメイトの1人が交霊会をやってみないか?と言い出した事だった。そのクラスメイトはクラスでもそこそこ発言権が大きい人物で、他のクラスメイトも面白そう!と乗った。

 

オーリンも参加することになり、クラスメイトの1人の家で交霊会が行われることになった。交霊会では床にテープで魔法陣を書いたり、誰かが持ってきた占い用の道具であるウィジャボードをセットしてそれらしい雰囲気にしていた。

 

「よし、じゃあやろうぜ」

 

蠟燭が灯った暗い部屋で交霊会は行われた。それぞれが持ち寄った方法で霊を呼び出そうとする少年少女たち。そんな中である、

 

「誰でもいいので誰か来てください」

 

オーリンの番になって彼が霊を呼び出そうとした時だ。

 

「……?」

 

オーリンは突然自分の背中が重くなるのを感じた。そして、

 

「うわあっ!?」

 

自分の背後にカボチャ頭の怪人が出現した事に気づいたのだった。

 

『おい、俺を呼んだのはお前だろ?』

 

「な、なんだよ!お前ッ!?」

 

「オーリン?どうしたんだ?」

 

慌てふためくオーリンだったが、オーリンの背後にいるジャック・オー・ランタンはその場にいたクラスメイトの誰にも見えなかったのだ。

 

     ◇

 

「と、いうわけで」

「それからずっとこのジャック・オー・ランタンが俺のゆく先々に付いてくるんだ」

 

「成程な」

「おい、カボチャ頭。なんでオーリンに付きまとっているんだ?」

「後、お前は本当にジャック・オー・ランタンなのか?」

 

ヴェルサスの質問にジャック・オー・ランタンは、

 

『オーリンの奴とは“波長”が合ったんだよ』

『俺が本物のジャック・オー・ランタンなのかは分からねえ。物心ついた時からこんな姿だったからジャック・オー・ランタンって名乗ってるんだ』

 

と答える。

 

「波長?」

 

『ああ、オーリンが呼んだってのもあるけど』

『こいつの側は居心地が良いんだ』

 

オーリンはジャック・オー・ランタンに、

 

「そんなの知らないよ!早くどっかに行ってくれよ!」

 

と言うが、

 

『いやだね』

 

と返された。

 

ヴェルサスはそんな様子を見ながら、

 

「さて、どうしたもんか……」

 

そう呟いた。

 

「ヴェルサス、どうにかできないの?」

 

「まあ、色々試してみるぜソフィア」

(少なくともバンシーの件に比べたらそこまでって程じゃなさそうだしな)

 

ヴェルサス達は先ず外に出た。ヴェルサスはアンダー・ワールドの能力でこの近辺の教会で使われた聖水の入ったカップを掘り出した。

 

「先ずはこれだ」

 

ヴェルサスは聖水をオーリンにぶっかける。

 

「冷たッ!?」

 

しかし、ジャック・オー・ランタンは変わらずにオーリンの背後に居る。

 

『一体なんだ?』

 

「聖水はダメか……」

 

「えっ?今の聖水だったの?」

 

「ああ、悪魔祓いにも使われる聖水ならって思ったが」

「『エクソシスト』みたいにはいかねーな」

 

「濡れ損だよ……」

 

「じゃあ次だ」

 

ヴェルサスは今度は街の店からカモミールやローズマリー等のハーブ各種を買ってきた。

 

「これは?」

 

「除霊の際にはハーブを焚くって話だ」

「じゃあ火をつけるぜ」

 

ヴェルサスはハーブに火をつけていく。すると、煙が立つ。

 

「ゴホッ、ゴホッ!?煙い……!」

 

「ゴホッ!ちょっと、大丈夫なのヴェルサス!?」

 

「煙でいぶす作戦だがどうだ!?」

 

ヴェルサスはジャック・オー・ランタンを見る。すると、

 

『ゴホゴホッ!』

 

ジャック・オー・ランタンも咽こんでいる。

 

「よし!これなら……!」

 

ヴェルサスはいけると思ったが、

 

「ゴホッ!?だ、ダメだ!」

 

オーリンは煙の中から出て来た。

 

「おい!もう少しでジャック・オー・ランタンを追い出せそうだったぞ?」

 

「その前にこっちが煙でダウンしちゃうよ!」

 

「しょうがないな……」

「ソフィア、少し席を外すぞ他に何か有効そうな方法がないか調べてくる」

 

「ええ、分かったわヴェルサス」

 

ヴェルサスはその場を離れた。

 

「はあ……」

 

オーリンはその場に座り込む。

 

「大丈夫オーリン?」

 

「ソフィア姉さん、あのヴェルサスって人ジャック・オー・ランタンは見えるけど、無茶苦茶するよ……」

 

「ははは……、確かに彼って変わってる所があるわね」

 

すると、ジャック・オー・ランタンが、

 

『おいオーリン』

『俺を追い出そうとするなんてやめておけよ』

『あの男にやらせていたら、ろくなことにならないぜ』

 

と言う。

 

「何言ってんだよ!」

「そもそもお前が俺に付きまとってくるのが悪いんだ!」

 

『なに!?俺がいれば試験のカンニングだって出来るのに?』

 

「そんなの犯罪じゃないか!」

 

『後、俺口から火を吹けるから火種が無い時に重宝するぜ』

 

ジャック・オー・ランタンはその通り口から火を吐き出す。

 

『そんなのいいよ!』

 

一方ヴェルサスはスマホで調べものをしていた。

 

「さて、どうにかあの幽霊を何とかする方法はっと……」

「ん?これは……」

 

どうやらヴェルサスは気になるものを発見したようだ。

 

「なになに、『ワイルドハント』……」

 

ヴェルサスは電子化された文献を読み込む。

 

その頃オーリンは、

 

『なあ、オーリン。仲良くやっていこうぜ?』

『別にお前を害そうとしてるわけじゃないからよ』

 

「付きまとわれてる時点で迷惑なんだよ!」

 

相変わらずジャック・オー・ランタンと口喧嘩していた。

 

「落ち着いてオーリン」

「取り敢えずこれでも飲んで……」

 

ソフィアがオーリンに自販機から買ってきたドリンクを差し出す。

 

オーリンはそれを受け取るとそれを飲む。

 

ゴクゴク……

 

『美味えなこりゃ』

 

ジャック・オー・ランタンがそう呟いた。

 

「味……、分かるのかよ?」

 

『今の俺とお前は一心同体だからな』

 

「……」

 

そんな中、

 

「おーい!」

 

ヴェルサスが戻って来た。

 

「ヴェルサス!どう?何か良い方法は見つかった?」

 

そう聞くソフィア。

 

「ああ、試しても良さそうな方法があったぜ」

「取り敢えずもっと広い場所に移ろう」

 

ヴェルサス達は広い野原に場所を移した。

 

「ここまで来たけど……」

 

「まあ、これくらいの広さなら良いだろう」

「二人はワイルドハントってのを知っているか?」

 

「聞いたことがあるような、無いような……?」

 

「俺は知らないな」

 

「そうか。これはイギリス固有の伝承じゃあなく、ヨーロッパ各地に伝わっている話なんだが」

「共通しているのは人間じゃない猟師の集団がガチガチに武装して、馬や猟犬と共に空や大地を大挙して移動していくってものだ」

「ワイルドハントのリーダーは地域によって異なっているらしく、北欧神話のオーディンやアーサー王等様々だ」

 

「そのワイルドハントをどうするの?」

 

「ああ、ここイギリスはかなりオカルトが信奉されている国だ」

「なんでもワイルドハントを人為的に呼び出そうとした例があるらしい」

「その儀式の結果までは分かっていないが、オーリンとその友達がやった交霊会の大型版みたいなものだな」

 

「ワイルドハントを呼び出すだって?」

 

「ああ、怪異には怪異だぜ」

「まあ、実際に呼び出したら何が起こるか分からないから、俺達にまで被害が行くようだったらすぐさま止めるけどな」

「でだ、どうするオーリン?」

「これから行う方法は危険を伴うかもしれないが」

「そのカボチャ頭に付きまとわれるのが嫌なら、多少のリスクは考える必要があると思うぜ」

 

「……」

 

オーリンはしばらく考える。そして、

 

「分かった。やってみてくれよヴェルサス」

 

と言った。それを聞いたヴェルサスは、

 

「OK。アンダー・ワールド!」

 

アンダー・ワールドを発動させる。

 

ザクッ、ザクッ!

 

アンダー・ワールドが地面を掘り、

 

「これは……!?」

 

ローブを着た怪しげな集団がそこに姿を現した。

 

「えっ?この人たちは何処から現れたんだ?」

 

「俺には超能力が有ってな、過去の出来事を再現する事が出来るのさ」

「今回はワイルドハントを呼び出す儀式をやっていた連中を掘り起こした」

 

アンダー・ワールドによって再現されたローブの集団は、木で組まれた祭壇を前にブツブツと呪文を唱えている。

 

「さて、何が起きるか……」

「ソフィア、オーリン、あまり俺の近くから離れるなよ」

 

「ええ……」

 

「うん……」

 

儀式の参加者たちが呪文を唱える内に、天気は曇り風が強くなっていく。

 

「これは本当に来るのか?」

 

『おい、お前ら一体何しようとしてる!?』

 

ジャック・オー・ランタンは辺りを見回す。

 

『何か凄い嫌な予感がするぞ!』

 

「お前が大人しくオーリンから離れないから強硬的な手段を使う事になったんだろうが」

 

『ちょ、ちょっと待てよ!?穏便に行こうぜ!?』

 

そうこうしているうちに風は更に強くなっていく。

 

「ん……?何か聞こえて来たな」

 

「これは……、馬の足音に犬の吠える声?」

 

そう、風音に多数の馬の駆けるような音と犬の声が混じってきていた。

 

そして、

 

「!!」

 

上空に馬に乗り、猟犬を連れた一団が現れた。

 

「あれは!鳥でも飛行機でもねえ……!」

 

その一団は、時代はバラバラだが大体が猟師の格好をしていた。しかし、それを着こなしているのは頭が骸骨だったり、角が生えていたりと明らかに人間では無かった。

 

「こ、これがワイルドハント……!」

 

ジャック・オー・ランタンはブルブルと震えていた。

 

『こ、この野郎!とんでもねえのを呼び出しやがったッ!?』

 

「な、なあヴェルサス……」

「確かにワイルドハントが現れたけど、本当に俺達大丈夫だよな……?」

 

その問いに対しヴェルサスは、

 

「ワイルドハントは善良な者なら無害っていう話もあるから大丈夫じゃないか?」

 

と言うがそこまで言って、

 

(あれ?ソフィアとオーリンは兎も角、俺って善良か?)

 

という考えに至る。そして、ワイルドハントの一人が角笛を吹いた。辺りに角笛の音が響き渡る。

 

すると、上空を駆けていた異形の猟師の何人かが降りてくる。そして、

 

ビュンッ!

 

ワイルドハントの猟師の一人がヴェルサスに向かって弓を引き、矢を放った。

 

「うおっ!?」

 

ヴェルサスは危うく矢を躱す。

 

「ヴェルサス!?」

 

ビュン!ビュン!

 

ワイルドハントの猟師達は次々と矢を放ってくる。

 

「ちっ!アンダー・ワールド!」

 

ヴェルサスはアンダー・ワールドでレンガ塀を掘り起こして矢をガードする。

 

「こりゃダメみたいだな!アンダー・ワールド、能力解除だ!」

 

ヴェルサスはアンダー・ワールドの能力を解除する。それにより、儀式を行っていた怪しげな一団は消える。しかし、

 

「ヴェルサス!?ワイルドハントがまだいるわ!」

 

ヴェルサス達の上空に居るワイルドハントは消えていなかった。

 

(またこのパターンか!?儀式の方は地面に記録されたものを再現していたが、呼び出されたワイルドハント自体は違うって事か!?)

 

『ヒィ~ッ!?』

 

ジャック・オー・ランタンはオーリンの背中でがくがくと震えている。その様子を見たオーリンは、

 

(こいつ……、こんなに怖がっている……)

(付きまとってきてムカつく奴だったけど)

(でも、このままワイルドハントに引き渡すのは違うんじゃないか?)

 

と考える。そして、

 

「なあヴェルサス!」

 

「なんだ!?」

 

「さっきの言葉をひっくり返す様で悪いけど!」

「このジャック・オー・ランタンを助けてくれないか!?」

 

『オ、オーリン……!』

 

ヴェルサスはワイルドハントの攻撃を躱しながら、

 

「俺は別にいいが、いいのか?」

 

とオーリンに尋ねる。

 

「ちょっとこいつが可哀想に思えて来たんだ!」

 

その言葉を聞いたヴェルサスは、

 

「分かった!どの道この場を何とかしなきゃいけないみたいだしな!」

「アンダー・ワールド!」

 

アンダー・ワールドを発動させる。すると、

 

「うう……!」

 

「ああ……!」

 

辺りに多数の人間が現れる。

 

「マフィアにチンピラ、ごろつき……」

「この近辺で活動していた犯罪者達を掘り起こした!」

「ワイルドハントが善良な者に手を出さないならよ……!」

「悪党共は格好の餌ってことじゃないか!?」

 

ワイルドハントは地上に降りてくるとアンダー・ワールドによって再現された犯罪者達を攻撃し始める。

 

「ギャッ……!」

 

「ぐえっ……!?」

 

「ソフィア、オーリン!今の内に逃げろ!」

「俺はギリギリまでこいつらを引き付ける!」

 

「大丈夫なのヴェルサス!?」

 

「なに!悪党共を盾にすれば何とかなるさ!」

「早く行け!」

 

「わ、分かったわ!」

「行きましょうオーリン!」

 

「う、うん……!」

 

ソフィアとオーリンは急いでその場を離れる。

 

「さて、尻拭いはしなきゃな……!」

 

ソフィアとオーリンが去り、阿鼻叫喚の野原でヴェルサスはアンダー・ワールドを行使し続ける……!

 

     ◇

 

「はあはあ……!」

 

「ここまで来れば大丈夫かしら……」

 

ソフィアとオーリンは街まで逃げおおせていた。もう空は晴れていたし、強風も無かった。

 

『はあ……、生きた心地がしなかったぜ……!』

 

ジャック・オー・ランタンはそう呟く。それに対しオーリンは、

 

「お前、ヴェルサスに感謝しろよ?助けてもらったんだからな?」

 

と言うが、

 

『あいつがそもそも怪しげな儀式をしてワイルドハントを呼び出さなけりゃこうはならなかったぜ!』

 

と返された。そしてしばらくすると、

 

「おーい!」

 

ヴェルサスが走って来た。

 

「ヴェルサス!無事で良かった……!」

 

ソフィアは胸をなでおろす。

 

「そういえば、ワイルドハントはどうなったの?」

 

「ああ、暫く攻撃を躱していたら」

「満足したのか空の彼方に去っていったぜ」

 

ヴェルサスは先程の事を振り返る。去っていくワイルドハントを見送るヴェルサス。その耳にこんな声が聞こえてきた。

 

『今回は許そう』

『しかし、次があれば我らの一団に加わってもらうぞ』

 

(あの声はワイルドハントのリーダーの声だったのかね……?)

(ワイルドハントに狩られた者はワイルドハントの一員になるという伝説もある……)

(今回は流石に反省するべきかもな)

(少なくとも人外にトラブル解決を頼むのは危険な事だと思い知ったぜ)

 

「どうしたのヴェルサス?」

 

「ああ、いや。少し他の事を考えてたのさ」

「例えば結局ジャック・オー・ランタンはどうするのかとかな」

 

ヴェルサスとソフィアはオーリンの方を見る。そういえば事の発端になったジャック・オー・ランタンの事はまだ解決していない。

 

『あー、それなんだけどよ……』

 

「どうした?」

 

『俺、オーリンから離れるよ』

 

「何?いきなりだな……」

 

「俺は別にいいけど急にどうしたんだよ?」

 

オーリンはジャック・オー・ランタンに問う。

 

『さっきオーリンは俺を助けようとしてくれたからな……』

『恩を仇で返す程腐っちゃあいねえよ』

 

「そうか!やった!」

 

『なんだ……、悲しんでくれないんだな』

 

「いや、付きまとわれるのは本当に迷惑だからな」

 

「そうだぜジャック。お前がストーカーみたいにオーリンに付きまとうからいけないんだ」

 

『なんだよ!』

『くそっオーリン!今からお前に憑りつくのを止めるけどよ』

『俺が恋しくなったらいつでも呼んでくれよ!』

 

「まあ、恋しくなったらな……」

 

こうしてジャック・オー・ランタンはオーリンから離れることになった。

 

『あばよオーリン!』

 

「あばよジャック!」

 

オーリンから離れたジャック・オー・ランタンはそのまま宙に消えていった。

 

     ◇

 

数日後、ノリッジのカフェ。

 

「オーリンは今まで通り学校に通っているわ」

 

「そりゃ良かったが、本当にジャック・オー・ランタンは居なくなったのか?」

 

「ええ、そうらしいわ」

「ありがとうヴェルサス」

 

「今回は俺はあまり活躍できなかったと思うが」

 

「ヴェルサスが動いてくれなかったらオーリンにジャック・オー・ランタンが憑いたままだったかもしれないのよ」

「だから今回もありがとうね。ヴェルサス」

 

「それなら良かったよ」

(よし!なんだかんだでソフィアの好感度アップだぜこれは!)

 

(……それにしてもオーリンの交霊会といい、俺のワイルドハントの件といい)

(軽はずみな事ってトラブルの元になるのかね?)

To Be Continued...

 




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