ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
「えっ?ネス湖へ観光に行く?」
「ああ、お前はアウトドア派だし偶には一緒にどうかって思ってな」
ヴェルサスは早速リキエルを誘っていた。
「旅費とかは勿論こっちで持つ(まあ結局は家の金だがな)」
「……怪しいな。ヴェルサス兄貴何か企んでないか?」
「えっ」
「普段はレジャーに自分から誘うってことあまり無いじゃんか。少なくても半々って感じだったぜ」
「だから、わざわざ誘ってくるって何かあるんじゃないか?」
「……」
「いやさ、実はよお」
「ネッシーを捕まえに行きたいんだ」
「えっ?ネッシーってあのUMAの?」
「そのネッシーだ」
「……兄貴はネッシーを信じているのか?」
「お前が操るロッズだって似たようなもんだろ」
「まあ確かにロッズは一般的には未確認生物だけどよ……」
「でさ、ネッシーを捕まえるのにお前に協力してもらいたいんだ」
リキエルは少し考える。
「なんでいきなりネッシーを捕まえるなんて事になるんだ?」
「俺の中の男の子が目覚めたのさ。未確認生物の実在を証明してやろうってな」
「意味が分からねえよ……」
「大丈夫だって。ネッシー目当てにネス湖に観光に行く人は多いぜ?別に俺達がおかしいわけじゃない」
「でもな……」
「リキエル。もしネッシーを捕まえられたら、アポロ11号の時の様に人類にとって精神の成長ってならないか?」
「えっ」
「そう、ネッシーなんて存在しないっていう諦観のような定説を打ち破って人間の精神は更なる成長を遂げるんだよ!」
「おお……!」
「行こうぜリキエル。もしもネッシーを発見できたなら俺達はアポロ11号でアームストロングだ」
「分かったぜ兄貴!つまり精神の成長の為の挑戦って訳だな!」
(よし。何とかリキエルを説得できたぜ)
「じゃあ、旅行の準備をしといてくれ。一週間後にネス湖に向かうぞ」
「よし……!ネッシー探索なら防寒具に非常食、それから双眼鏡も必要だな!」
「お、お前、妙にやる気だな」
「当然だろ!人類の精神的成長が掛かってるんだぞ!」
「……そうだったな」
(ソフィアの為とはもう言えなくなってきたな……)
◇
――一週間後。
「じゃあ、行って来るぜ」
「ヴェルサス坊ちゃま、リキエル坊ちゃま。どうか無事で帰ってきてくだされ」
「エンヤ婆、そんなに心配しなくてもいいぜ。俺達はただ観光に行くだけだからよ」
「なあ兄ちゃん」
「どうしたウンガロ」
「ネッシーを捕まえに行くって言ってたけどもし捕まえたらその後はどうするつもりなんだ?」
ヴェルサスは少し黙り込む。
「……先ずは発見からだ。その後の事は後で考える(流石に女の子にプレゼントするとは言えないぜ)」
「大丈夫かよ~」
「さて、パパには先に挨拶したし(今は昼だからパパは表に出れねえし)、本当に行ってくるぜ」
こうしてヴェルサスとリキエルを乗せた車はスコットランド地方へ向かった。
そして、ヴェルサスとリキエルはネス湖に行く前にネス湖の最寄りの街であるインヴァネスに立ち寄ったのだった。
「ここに来るまでに時間がかかったからな。今日はここのホテルに泊まるぞ」
「ああ、ネッシー探しには体力を使うだろうからな。賛成だぜ」
すると、ホテルの従業員が話しかけてくる。
「お客様、お客様方もネッシー目当てでございますか?」
「ああ、そうだぜ。やっぱネス湖のネッシー目当てで来る人が多いのか?」
「はい。昔に比べると大分減ったそうですがやはりそういう方は年に何十組もいらっしゃいますね」
「そうか。なんか最近のネッシーに関する話は知っていないか?」
「いえ、偶に見かけたという話を聞く事はありますが、何処までが本当なのやら……」
「何か他に気になることとかないか?」
「そうですね……、ネッシーとは関係ないかもしれませんがこの街には奇妙な噂がありますよ」
「奇妙な噂?」
「はい。この街の公園に岩がいくつかあるのですが、その中に何かうずくまった人間に見えなくも無い岩があって、その岩の位置が偶に変わっているという話です」
「それは……、確かに奇妙だがネッシーとは関係なさそうだな」
「ああ、俺達はネッシー目当てだしそんな岩の話なんて聞いてもな……」
「そうでございますか……」
「それはそうと、当ホテルにはネッシーに関するお土産を販売しているのですがどうでしょうか?」
ヴェルサスとリキエルはホテル内に置かれたネッシーのぬいぐるみを見る。
「いや、俺達は本物を捕まえる気だから」
◇
翌日、インヴァネスを発ってネス湖湖畔に到着した二人はレンタルボートを求めてボート小屋を訪れた。
「ここがネス湖か……、地図で見るとかなり細長い形なんだよな」
「しかし、深いからネッシーの存在が信じられている」
ボート小屋に貼ってあるネス湖の地図を見る二人。そんな中ボート小屋の管理人がやってくる。
「……いらっしゃい」
(いかにも無愛想で偏屈そうなおっさんだな……)
管理人の服に付いた名札には『フレッド・ソーヤ』と記されている。それが彼の名前だろう。
「ボートを借りたいんだが」
「目的は?」
「観光だぜ」
「ネッシー探しもな!」
フレッドはピクリと反応を見せた気がしたが直ぐに戻り、
「それなら、ツアーでやってるもっと大型のボートでのクルーズに行けばいいだろう……。今うちで貸せるボートは2~4人乗りの奴だけだ……」
「俺達は本気でネッシーを探しに来たんだぜ!まあ先ずは様子見ってこった(余った金はソフィアとの遊びに使うがな)」
「……本気?」
「ああ!精神の成長の為にな!」
「お前ら馬鹿か……?」
そんな事を言うフレッド。
「いいから貸してくれよ!」
「……ちなみにネッシーを見つけたらどうする気だ?」
「ああ?そりゃ捕獲するのさ!」
「どうやら……、本物の馬鹿みたいだな……」
「……いいだろう。ボートは貸す。しかし誓約書を書いてもらうぞ、『自分達がどうなってもこのボート小屋に責任は追及しません』とな」
「誓約書だって?」
「普通の客ならまだしもお前達のような者にボートを貸してとばっちりがあったらかなわん……」
「それくらい書くよ。だからここで一番いいボートを貸してくれ」
こうして二人はボート小屋でボートを借りた。
ネッシー探索が始まった。ヴェルサスとリキエルを乗せたボートは湖面を進む。
「おっ、アーカート城だ。あそこで結婚式を挙げる物好きも居るらしい(いや待てよ、ネッシー好きのソフィアなら喜ぶかも……)」
「結婚かー、城で結婚ってのもロマンチックかも知れないけどめっちゃ金がかかりそうだな」
そして2人は二時間ほど探索したが……
「全然それらしい影すら見つからねえなあ……」
「リキエル、お前のスカイ・ハイで空から捜索とか出来ないのか?」
「兄貴、俺のスカイ・ハイはロッズを操るがロッズと感覚を共有しているわけじゃないんだ。標的を狙うには俺自身が目視する必要があるしな。そもそもロッズ達は目が無いし」
「……仕方ねえ」
「アンダー・ワールドに探させるか」
ヴェルサスはアンダー・ワールドを出す。
「遠隔操作タイプのスタンドだし、水中でも行けるだろ」
『…………』
「どうした?」
『えっ?』
『潜るの?』
「潜る」
『俺、スタンドなんだけど』
「エンヤ婆が言ってただろ」
「スタンドは出来て当然だと思えば出来るって」
『エンヤ婆の理屈、だいたい雑じゃない?』
「パパの部下のスタンドにはダークブルームーン(暗青の月)って奴がいてめっちゃ泳ぎが得意らしい」
『そっちはほぼ水中専用って聞いたけど……』
「行け」
『はいはい……』
アンダー・ワールドは水中に潜った。
『ん? 何か半透明なものが水中を漂っているよ』
アンダー・ワールドは早速何かを発見する。
「魚か?」
『いや……クラゲかな?』
「ここは湖だぞ。クラゲなんているわけねえだろ」
そしてアンダー・ワールドはそれを調べる。
『これは……』
『コ、コンドームだね……』
「うげえっ!?」
「誰だよネス湖にそんなもん捨てた奴はァーッ!?」
『人間って変なものを水の中に捨てるんだねえ……』
「感心してんじゃねえ!」
「もっと深い所を調べろ! 浅い所はゴミしかねえ!」
『了解……』
アンダー・ワールドは更に深部へ潜っていく。
◇
ボート小屋の窓から、フレッドは湖を進む小さなボートを見ていた。
「……余計なことをするな」
そう呟くと、彼は静かに湖へ視線を向けた。
◇
一方その頃、アンダー・ワールドによる水中探索は続いていた。
『ヴェルサス』
「今度は何だ?」
『船が沈んでる』
「船?」
『小型の船だね。かなり古い』
ヴェルサスは少し考える。
「ネス湖で遭難事故でもあったのか?」
『分からない。でも……』
アンダー・ワールドは湖底へ沈んだ船を観察する。
『変だな』
「何が?」
『壊れ方が変なんだよ』
「壊れ方?」
『普通に沈んだだけなら、こんなふうにはならないと思う』
ヴェルサスが眉をひそめる。
『船体の横が……潰れてる』
『何か巨大なものに、横から押し潰されたみたいだ』
「……」
「岩にでもぶつかったんじゃねえのか?」
『岩なら、こんな跡にはならないよ』
「まあ、昔の船だ。事故でも起きたんだろ」
……探索は更に続く。
『また何かある』
「今度は何だよ」
『……車』
「車?」
『湖の底に沈んでる』
「不法投棄か?」
『多分……最初はそう思ったんだけど』
アンダー・ワールドが車に近づく。
『これも潰れてる』
「……」
『上から押されたんじゃない』
『横から』
『しかも、何回も』
ヴェルサスの表情が少し変わる。
「何かデカい奴がぶつかった……?」
『それも……』
『かなり硬いものが』
ヴェルサスの側のリキエルが、
「兄貴……これ、ネッシー探しとか言ってる場合か?」
と少し警戒し始める。
しかしヴェルサスは、
「いや、逆だろ」
「何か巨大な奴がいるってことじゃあないか」
テンションが上がってきている。
「アンダー・ワールド、もっと調べるぞ」
アンダー・ワールドは暗いネス湖の水中をさらに進む。
『……また何かいる』
ヴェルサスが尋ねる。
「また沈没船か?」
『違う』
『これは沈んでない』
『ヴェルサス』
「何だ?」
『動いてる』
「……え?」
『湖の底を動いてるよ』
ヴェルサスとリキエルの表情が変わる。
『何か……人工物みたいだ』
「人工物?」
『潜水艇……かな?』
「潜水艇だって?」
『そう見える』
ヴェルサスは少し考える。
「ネス湖で潜水艇?」
「観光用か? 研究者か?」
リキエルも首を傾げる。
「こんな深い所で何してるんだ?」
「軍の秘密兵器とかじゃねえの?」
その時。
『……あれ?』
「どうした?」
『形が変わった』
「は?」
『潜水艇の形じゃなくなった』
『……動いた』
潜水艇だったその物体の形は、ヒレや尾を備えた生物的な形に変わった。そして、
『ヴェルサス』
『逃げた方がいい』
「何?」
『こっちに来る』
「なんだと!?」
その巨大な物体は水面に向かっていく。
「アンダー・ワールド!すぐに戻って……」
ザバアアアアアッ!!
巨大な影が水面から姿を現す。
それを見たヴェルサスは、
「ネッシーだァァァァーッ!」
完全にテンションが高まっている。
「本当にいたのか!?」
「見ろリキエル!」
「俺の読みが当たった!」
(コイツを連れて帰ればソフィアは俺のものだぜーっ!)
しかし、その物体(仮にネッシーと呼ぶことにする)は湖面を進み。波をたてる。
そして二人のボートを押し流す。
「うおおおおおぉっ!?」
「おいおい!ソフィアが俺のものになる前に俺達が死ぬぞ!?」
「何の話だ!?」
To Be Continued...
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等いただければ幸いです。