ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
妖精の正体を掴みに森の中へと入ったヴェルサスとプッチ。二人は森の中を警戒しながら進んでいく。入って数分経った所だろうか、ヴェルサスが異変に気付く。
「……あれ?」
「どうした?」
「スマホがねえ」
プッチも自分の鞄を確認すると、
「……私の財布もない」
「そっちもか!?」
そして二人が探していると、少し離れた木の上からクスクスという笑い声が聞こえる。
「まさか……」
アンダー・ワールドを上に向かわせると、鳥の巣の中に二人の所持品がある。
「なんで鳥の巣に入ってんだよォォォーッ!?」
そんなヴェルサスを観察するかのように、木の枝の間から、ほんの一瞬だけ小さな妖精が顔を出す。
「……今、何かいたぞ」
「どこだ?」
「もう消えた」
「なにぃ!」
さらに森の奥に進むと、
「神父様さあ」
「なんだ」
「なんか同じような所をぐるぐると回ってないか?」
「根拠は?」
「なんか定期的に頭上から枯れ枝が降ってくるしよお」
ヴェルサスの頭上に落下する枯れ枝はアンダー・ワールドによって破壊させる。
「さっきから明らかに何か変だ。強いて言えば“妖精”の仕業なのか?」
「そうだな……、さっきから気配のようなものは感じる。偶に姿を現すものも居るがどうもそいつらにスタンドを見られている気がするぞ」
「じゃあ何か?妖精はスタンド使いなのか?」
「ヴェルサス、その考えは短絡的過ぎるな。だが似たようなものなのかもしれない」
「もしかしたら妖精が目撃されない原因はスタンド使いではないと彼らを視認することは困難になるからじゃあないか?」
「なんだって!?」
プッチ神父は頭上に落ちてくる枯れ枝をホワイトスネイクで破壊する。
「あくまで仮説だがな。しかしもしこの森の住人が我々がスタンド使いと理解したら……」
「ここでのトラブルは今の比ではなくなるかもしれないぞ」
森の奥から小さな笑い声が複数聞こえる。
「…………」
「…………」
「神父様」
「何だ?」
「今の……一匹じゃなかったよな?」
「ああ」
そして二人が周囲を見る。
木の上。
茂み。
地面。
何もいない。
ところが、
二人の頭上だけに小さな足跡がいくつも付いていた……。
◇
二人は引き続き森の中を進む。
(まったく、なんか薄気味悪くなってきやがったぜ……)
(木の幹の模様が人の顔に見えてきやがる……!)
ヴェルサスがそう思いながら進むと、少しだけ開けた場所に出た。
そこには沼があったり、キノコが円形に群生していた。
「神父様あれは……」
「『妖精の輪』というやつだな。別名菌輪」
「放射状に生えていったキノコの中心部分が枯れてああなるらしいが、古くからの言い伝えでは妖精が踊った跡だとも言われている」
「自然現象……、だよな?」
「通常はな。だが不用意に近づくな。この森は異常だ」
そんな時、ヴェルサスは何かの気配を感じた。
「……そこだッ!」
アンダー・ワールドが木の枝を掴む。
そこにいたのは――
小さな妖精。
小さな人型、透明な翅、木の実や葉っぱ等で作った服、大きな瞳、小さな手。
まるで絵本からそのまま飛び出してきたような可愛らしい姿だった。
「…………」
その妖精はヴェルサスを見て、『ニヤッ』と笑う。
そして、
「キャッ!」
と鳴いて逃げていった。
「……」
「……可愛いな」
「そうだな」
「でも財布盗んだのこいつらだぞ」
「そうだったな」
二人は気を取り直す。
「どうする神父様?」
「いきなり開けたような場所に出たって事は」
「俺達もしかして囲まれているんじゃないか?」
「その可能性は高い」
「……」
「ヴェルサス」
「何だ?」
「動くな」
「は?」
「今、君の後ろに何かいた」
ヴェルサスが振り返る。
何もいない。
そして、
クスクス……
と笑い声。
一つ。
二つ。
三つ。
木々の間から次々と小さな顔が覗く。
「……おいおい」
「何匹いるんだよ」
さらに上を見ると、枝の上にもいる。
沼の向こうにもいる。
キノコの輪の中にもいる。
二人は完全に包囲されている。
ただし妖精たちは敵意を出してというより、みんな楽しそうに二人を眺めている。
「……何だよ」
「俺達、珍獣か何かになってねえか?」
クスクス……クスクス……
「君達、私達の言葉は分かるか?」
「神父様!?」
ヴェルサスはいきなり妖精に話しかけるプッチに驚く。
「何言ってるんです!?」
「こいつらの知性、人間並みかどうかは分からないが低くはなさそうだ」
「言葉が通じたら色々手間が省けるかもしれないと思ってな」
「説得する気かよ!?」
「君達、私達はある使命を帯びてここまで来た。大事な使命だ……!」
「住処までずかずかと踏み込んだのは悪かったが、君達に対して敵意はない……」
プッチは妖精達にそう呼びかける。しかし、
ガサッ……、ガサッ……
ゴボ……、ゴボォ……
「……何だ、あれ?」
木の葉や沼の泥が集まり始める。そして人のような形を作った。
「おいおい……、神父様よぉ~……!」
「こりゃどう見ても話が通じるどころか歓迎さえされてないんじゃないのか?」
近づいてくる木の葉や泥で形成された人形を見ながらヴェルサスはそうこぼす。
そうこうしているうちに人形の一体が突進してくる。
「来やがった!アンダー・ワールド!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドで迎撃する。
ドゴォッ!
泥人形の胸が吹き飛ぶ。
「やったか!?」
しかし、
ズズズズ……
散らばった泥と葉っぱが再び集まる。
「……マジかよ」
そしてゆっくりだが二体目、三体目と近づいてくる。
「ホワイトスネイク!」
プッチもホワイトスネイクを出して迎撃態勢に入る。
「これらはおそらく操り人形……、ホワイトスネイクの能力は使えないか」
『ウオシャアアアアアッ!』
近づいてくる人形達を直接攻撃で破壊するホワイトスネイク。
二人のスタンドは人形達を破壊していくが、破壊された人形はすぐさま再生して数を増やしていく。
そんな様子を眺める妖精達は、
「キャッキャッ!」
「クスクス!」
と楽しそうに笑っている。
「お前らなぁ……!」
「こっちは遊びじゃねえんだぞ!」
ヴェルサスは怒鳴った。しかし、
「キャハハハハ……!」
妖精達は更に喜んでいるようだ。
「ヴェルサス、無駄口をたたくな。ここから離脱する方法を探るぞ」
「んなこと言ったって、数は多いし逃げようにもまた迷ったらどうするんだ!?」
「いっそのことお前の能力で火事の記録を掘り起こして森ごと焼き払うというのはどうだ?」
「そんな事したら俺達の命まで危ないだろうがッ!」
そんな中、一体の木の葉人形がヴェルサスを殴りつける。
「ぐおっ!?……あまり痛くねえな。見た目以上の強度は無いのか?」
戦いが続く中、アンダー・ワールドとホワイトスネイクは戦いながら会話を始める。
『これで何体壊した?』
『数えていないな』
『どっちもスタンドづかいが荒いよねえ』
『まったくだな』
『こっちは「掘れ」って簡単に言うんだよ』
『こちらはDISCを抜けと言う。人間の頭からだぞ』
『それは大変だねえ』
『お前の方もな』
『でも、ヴェルサスは褒めてくれる時もあるよ』
『……』
『そっちは?』
『プッチは「よくやった」とは言う』
『じゃあいいじゃん』
『その直後に「次はもっと上手くやれ」と言う』
『あー……』
『……』
『どっちも大変だねえ』
『まったくだ』
ヴェルサスとプッチは自分のスタンド達が詳細は聞き取れなかったが話していたのを察した。
「おいアンダー・ワールド!こんな状況でお喋りしてるんじゃねえッ!」
「ホワイトスネイク。余計な会話をするな」
『ほら、こういうところ』
『同感だ』
その時だ、
ズズズズズ……
沼が大きく揺れる。
妖精たちの笑い声が一斉に止まる。
「……何だ?」
ヴェルサスが振り向く。
沼の泥が、今までとは比べ物にならない量で持ち上がる。
木の葉が大量に巻き上がり、泥と絡み合っていく。
「おいおい……」
「今までの奴とは規模が違うぞ」
そして、
ドォォォォン……!
巨大な人型が完成する。身長は3m程であろうか、大型の人形はのっしのっしとヴェルサスに近づく。
「うおおおおッ!アンダー・ワールドッ!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドで大型人形を攻撃させるが、そのボディは攻撃で崩れるもすぐに再生していく。
そして、
「うぐっ!?」
大型人形はヴェルサスの首を掴んだ。
そのまま沼へ――
ズブシャアアアッ!
「うわあああああッ!?」
ヴェルサスの身体が泥の中に沈む。
そしてしばらくして、
にゅっ
と頭だけが地面から出る。
「…………」
「…………」
「…………」
「なんだこれ」
「キャハハハハハ!」
妖精たちは大爆笑する。
「お前らァァァァァ!!」
「俺を何だと思ってやがるッ!!」
ヴェルサスは本気で怒って叫ぶが、その様子を見た妖精たちは更に笑う。
「くそっ!プッチ神父!助けてくれ!」
「分かった」
プッチは懐からDISCを取り出す。ホワイトスネイクのDISCには何の記憶も入っていないDISCがあり、それにプッチが指令を書き込むと挿入した対象を操ることができるのだ。
プッチはDISCに指令を書き込んでヴェルサスに投擲、ヴェルサスの頭にDISCが入る。
すると、
「!?」
「ホワイトスネイクのDISCには、対象の行動をある程度指定することもできる」
「今回書き込んだのは、『風船のように膨らんだ後、萎め』だ」
ヴェルサスの胴体がパンパンに膨らんで沼から浮き上がってくる。
そして、
「ぶううううっ!?」
ヴェルサスの口から大量の息が吐きだされてヴェルサスは沼から脱出すると共に戻った。
それを見ていた妖精たちは歓声を上げて大喜びしている。
「てめえー!もっとマシな助け方は無かったのか!?」
怒るヴェルサスにプッチは、
「それよりも……、連中の性質が分かりかけて来たぞ」
と冷静に言う。
「なにぃ!?」
「どうやら彼らは“遊んでいる”ようだ」
「最初から我々を殺す気は無かった」
「なんだとぉ~?」
「彼らにとってはこれが人とのコミュニケーションみたいなものなのだろう」
「もっとも、我々はスタンド使いだからその遊びが更に過激になったのかもな……」
ヴェルサスは妖精たちの方を見る。彼らは目を輝かせているように見えた。
「遊びだろうが何だろうが、こっちはたまったもんじゃねえ!」
「待て、ヴェルサス。彼らの遊びに付き合って、彼らと友好関係を築けたなら後々ディオの利になるかもしれない」
「そうなればお前も無関係ではないぞ」
「……ったく」
「分かったよ。遊べばいいんだろ、遊べば!」
ヴェルサスはまだ怒っているが、しょうがないと付き合うことにする。
「お前らちょっと待ってろ!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドでサーカス等何か楽しいものの記憶を掘り起こして妖精たちを喜ばせようとしたその時、
「ん?この記憶は……」
アンダー・ワールドによって過去の記憶が掘り起こされる。出て来たのは二人の少女だった。
「ほら、こっちよ!」
「待ってよ、フランシス!」
「キャッキャッ!」
妖精が二人の髪を引っ張って逃げる。
「もう! この子ったら!」
それを見た妖精たちは、
「ふらんしす!」
「えるしー!」
「ふらんしす!」
「えるしー!」
と口々に騒ぎ始める。それを見たプッチは、
「フランシスに、エルシーだと?まさか……」
その少女達の正体を察する。
「そうだ。フランシス・グリフィスとエルシー・ライト」
「コティングリー妖精事件の当事者だ」
地面から掘り起こされたフランシスとエルシーは絵本のページをハサミで切っている所だった。
「ねえ、いくらあの子たちが写真に上手く写らないからって、これでいいの?」
「絶対あの子たちが夢じゃないって証明するのよ!だからちょっとトリックを使うだけよ」
「切りだしているのは……、妖精の押絵か?」
プッチが呟く。
「そうみたいだな」
ヴェルサスが記憶を見つめる。
「これを置いて……」
「うん」
「これならみんな信じてくれるわ!」
「本物の妖精と一緒に撮った写真だもの!」
そして実際に撮影が行われる。少女達と、フェイクの妖精達と、本物の妖精達。
カシャッ!
そこまでで記憶の再生が終わった。消えていく少女達。
ヴェルサスは思う。
(……なんだ)
(こいつら、最初から妖精を利用しようとしてたわけじゃなかったのか)
(ただ、一緒に遊んで……)
(それをみんなにも知ってほしかっただけなのか)
それを見ていた現在の妖精達は、
「ふらんしす……」
「えるしー……」
と、少し寂しそうに呟く。
「……知り合いだったんだな」
「100年以上前の人間を、今でも覚えているのか……」
「……なるほどな」
「どうした?」
「写真が偽物だった理由が分かった」
「あの二人、妖精を撮ろうとしてたんだ」
「しかし上手く撮れなかった」
「……」
「だから絵本の挿絵を切り取って、写真に入れた」
プッチが黙る。
「つまり……」
「妖精は本物だった」
「だが、証拠として提出された写真は偽物だったというわけか」
「皮肉な話だぜ」
「本当のことを証明したくて、嘘を混ぜたせいで全部嘘だと思われちまったんだからな」
「……神父様」
「なんだ?」
「スマフォは無事か?」
「ああ」
「俺とこいつらを写真に撮ってみてくれないか?」
「……分かった」
プッチはスマフォを取り出し、ヴェルサスと妖精達を撮影する。
「どうだ?」
「ダメだ。写っているのはお前だけだヴェルサス」
「……そうか」
(ジョルノ兄貴が居たら『無駄』だったななんて言うのかね……)
ヴェルサスはしゃがみ込み妖精達に話しかける。
「おい、お前達」
「日が暮れるまでは付き合ってやる」
「センチになったからじゃねえ」
「気まぐれって奴だ」
「……私もか?」
「最初に仲良くなろうって言いだしたのはあんただろ」
ヴェルサスの言葉を理解しているのかしていないのか、妖精達は大歓声を上げる。
ヴェルサスはアンダー・ワールドで、サーカスの曲芸、ボール遊び、かくれんぼ、鬼ごっこ、昔の人間の祭り等々の記憶を掘り起こす。
今回は妖精のサイズに合わせて記憶を小さく調整してある。スタンドというものはやろうと思えばミクロサイズに縮めることができるし、アンダー・ワールドだってそれくらいはできる。
「ほら、これが人間の遊びだ」
妖精達はそれらを真似したりして遊ぶ。
「神父様、あんたもなんかやりなよ」
「私には手を使わずに二連のサクランボのタネを茎から分離させないようにサクランボを食べる特技があるが……」
「それは引かれそうだからやめとけ」
そのうち妖精側も遊びを返してくる。
ヴェルサスの髪を変な感じに結んだり…
二人の周りを飛び回ったり……
花冠をアンダー・ワールドやホワイトスネイクに被せたり……
日が暮れる頃には妖精の数はいつの間にか減っていき、最後の妖精は手を振ると森の奥へ消えていった……
「……」
「さて、帰るか」
「ああ、我々のスタンドは遠隔操作タイプ。スタンドを上空に飛ばして位置を確認すれば森から脱出できるだろう」
「……」
「……」
「パパにはどう報告する?」
「先ず妖精は実在した。……そして少なくともこの森が無くなるまではディオの害にはならないだろう」
「この森を保護するように仕向ければ、何か将来的に利があるかもしれない……。そんな所だな」
「そうか」
「あー、疲れた……。日も暮れてるし今夜はブラッドフォードで泊まりだな……」
To Be Continued...
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等をいただけたら幸いです。