Versions of V 作:匿名
「……終わったか。」
木の根に腰かけていたVが本を閉じながら立ち上がり、青ぷに一匹にてんやわんやといった状態だった三人に目をやる。
息も絶え絶えの様子を、Vはただ茫然と眺めていた。
(……弱い、な。)
『マァー見るからに平和に生きてきたツラしてんだし、そんなもんだろ!』
そんなしかめっ面すんなよVチャン!
と、グリフォンに指摘され、自分の頬に触れながら三人に歩み寄る。
「……」
その場にへたり込むタオとライザ、
担いでいた剣に寄り掛かるレントが、Vに気づく。
「あ、V……。大丈夫だった……?」
「わかっていたけど、ほんとに魔物と遭遇するんだね……」
「なんとか勝ったぜ……」
「……ああ。」
ふぅ。と息を整えたレントが、大剣を担ぎなおしながら質問する。
「……そいやV。あんたは戦わなかったんだな。」
『ハァン!?なに言ってんだこのガキはヨォ!Vチャンほどのホネホネ野郎が戦力になるわけねェだろ!』
(……)
あっ!オコンナイデネ?
と自分の失言に焦りながら、Vに『ナー怒んなよ!』とまごまご言い訳するグリフォンを無視し、しずかに答える。
「……必要なかったからな。」
「必要なかった、ってなぁ……」
すでに問いかけなど気にも留めていない様子のVに、レントは目を丸くする。
その様子を見上げていたライザが、「ほっ」と立ち上がりながら聞く。
「でも、Vは戦えるの?」
「……どうだろうな。」
「えー?」と、教えてくれないVに唇を尖らせるライザに背を向け、タオに手を差し伸べる。
一瞬驚き、差し出された手に、タオはおずおずと手を伸ばす。
その手を掴み、Vはゆっくり引き上げた。
「……ありがとう。」
立ち上がったタオは、ズボンについた土を払う。
その背後に立つレントからは、Vの顔は見えない。
けれど、たまたまその横顔を捉えたライザにはーーー
ほんの一瞬だけ。
何を考えているのか読み取れなかったその顔が、少しだけ綻んだように見えた。
「……?」
ライザは瞬きをする。
けれどVはもう、いつもの、何を考えているかわからない顔に戻っていた。
『ヨォ引率センセーのVチャン!ずいぶんご機嫌だねェ~イヒヒッヒヒヒ!』
(……何のことだ?)
『とぼけちゃってマ~!お前が手を差し伸べるなんてナァ!』
(煩いぞ……読書仲間は歓迎しているだけだ。)
頭の中にグリフォンの声が騒ぐ。
森の中。三人の少し後ろを眺めつつ、落ち葉を踏みしめる。
ふぅ。と少しため息をつき、木漏れ日に目を細めていると、
徐々に視界が開けていった。
「森の中にこんな開けた場所があるなんて……」
初の探検に初の戦闘、初の白星。
青ぷにを撃退した後の一行は、そのまま森の奥へ奥へと進む。
今までの葉の隙間からこぼれていた日の光が嘘のように広がり、青空が見渡せる広場にたどり着く。
Vは唐突に突き刺さるような日差しを手で遮る。
「クリント王国の遺跡だよ。村にもいっぱいあるだろ?」
タオは、ライザたちにそう説明しながら建物に近づく。
天井は大きく破損し、窓辺には長く伸びた雑草が生い茂る。
「それほど大きくないね……。見張り小屋かなにかだったのかな?」
「おいおい、気をつけろよ。魔物に襲われてもしらないぞ」
目を輝かせながら不用心に近づくタオに、
レントが呆れながら注意を諭す。
「キャアーーーー!!」
「うわっライザ!?いわんこっちゃない……!」
探求心の塊のようなライザが、またやらかしたのかとレントがあたりを見渡すとーーー
「あたしはここだよ」
と、ライザが手のひらをひらひらと振っていた。
「おわっ!?じゃあ今のは一体……!?」
『オォっと、なんだかヤな感じィ?』
緊迫した雰囲気にグリフォンが嘯く。
どこからともなく響いた叫び声に、ゆっくりとVが先導する。
「……こっちだ。」
杖をつきながら歩き出すVの後を、ライザ達も緊張した面持ちで追った。
広場を抜け、日差しを背に徐々に暗くなる森を進むとーーー
少女が魔物に追われていた。