Versions of V 作:匿名
『ア〜ララ、あいつらにゃまだ荷が重かったかァ?』
ライザ、タオ、レントが走っていった方向を、Vはゆっくりと追いかけていた。
そして、その惨状を一瞥する。
「……」
レントは木の根元で片膝をつき、ライザはへたり込み、タオの元にも一匹の魔物が牙を向けようとしていた。
おそらくライザたちが助けたであろう少女は、恐怖に立ち竦んでいた。
レントが、なんとか立ち上がる。
「ハァ……V、か?頼む。こいつらを連れて逃げてくれ。その間は俺が……」
「ぐっ……」と、呻き声をあげ、脇のあたりを抑えながら片膝をつく。
レントを見下ろし、何を考えているかわからない眼を、魔物に向ける。
『ヨォ、Vチャン!事態は最悪ッだなァ!イヒーヒヒッ!わけーやつらは突っ走り!無事なのはチビとヒロインの嬢チャンだけ!!』
「……」
『わかってんだろうなァ!Vチャン!』
ふっ、と。
Vの顔が綻ぶ。
「……勝負は速攻。それが最高、だろう?……今回はお前の流儀に合わせてやる。」
体から黒い霧が溢れ、ソレはVの周辺に影を落とすほどの大きな翼になる。
「クールにいこうぜェ!!イーヒヒヒッヒヒ!!!」
翼に紫電を纏わせ、大気が雷を纏う。
ゴロゴロと木を震わせーーー
魔物の体を、一瞬にして削ぎ焼く。
「寝とけやザーコッ!!」
黒い翼をはためかせ、さらにもう一匹の魔物に肉薄する。
「ーーーー!!」
声にならない雄叫びと、鋭い牙を剥く。
が、その牙はグリフォンに届くことなく空を切る。
「ーー!!」
「牙を避けられて怒り狂う、か。……お前は悪い子だな。」
いつのまにか、魔物の背後に立つVに瞬時に飛びかかる、がーーー
「……なんだ、お前からきてくれるのか。……撤回しよう。お前はいい子だ。」
足元の影からは黒い巨体の影が姿を現し、それはまるで歪な鋸のような形をとる。
そして、飛びかかる魔物の体にノコギリの歯が食い込むとーーー
ゾリッ、と鈍い音があたりに響く。
足元から現れた巨大な影は、まるで無造作に、レントの剣すら弾いた硬い体を削り取っていく。
「……とどめを刺しづらいな。やはり貴様は悪い子だ。」
飛び散る血肉の中、Vの持つ鈍色に輝く杖の先が、頭であったであろう肉片を深く突き刺した。
「……な、なんなの、V。君は……」
顔色も変えずに、グリフォンの焼いた魔物に杖を突き立てるVに、青ざめながらタオが問う。
「……」
「なんだよ!!助けてもらったんだからちったァ感謝しろよオチビチャン!」
その言葉を遮るように、グリフォンが周りを見渡すVの頭に止まる。
その足元には、今なお黒い巨体が横たわる。
「……俺が怖いのか?タオ」
ノコギリで飛散した魔物の血を拭いながら、タオを見る。
その目はいつも通り、何を考えているかはわからないが、それでもただ周りの安否を見渡していたのだけは事実だった。
「ーーー助かったよ、ありがとう。V」
「……そうか。」
「素直でヨロシイ!可愛げあっていいことじゃねーの!イヒーヒヒッ!」
呟くように背を向け、ライザとレントの元に歩み寄る。
レントは少し脇を負傷しているようだが、特に別状はないようだ、と眼を細める。
「立てるか?」
「……すまねえ。」
差し出された手を握りながら、レントが立ち上がる。
そのまま、「あの娘を見てやれ」とクラウディアのほうへと顔を向ける。
一瞬、ビクッとクラウディアが体を震わせるが、気にせずにライザに歩み寄る。
「……立てるか?」
「……うん、大丈夫。迷惑かけちゃったね。」
差し出された手を掴み、ライザもまたゆっくりと立ち上がる。
「……V」
「……」
背中越しに、ライザに視線を向ける。
Vの目に映るライザは、少し恐るように縮こまり、指を震わせていた。
「……さっきの、すごかったね」
「……そうか?」
すでに血肉はマナとなり大気中に霧散している、が。
足元に今なお寝転ぶ黒い巨体がつくった戦闘傷や、Vのそばを飛ぶ猛禽類のような怪鳥の電撃で作られた痕を少し眺め、息を吐く。
「うん。怖かったけど……」
ライザの目に、Vの深い緑色の瞳が映る。
「……なんか、すごかった。」
「……」
すっと、目を閉じながら後ろを向く。
『照れてんのか?Vチャン!』とグリフォンが軽口を叩くが、無言で杖の柄を口に突っ込まれ、「ムゴッ!」と苦しむ。
「ふむ……。どうやら出遅れたか?」
「いや、そうでもなさそうだぞ。魔物がまだいるようだ」
がさっ。と森の奥から人影が二つ、現れた。
その瞬間、1人が勢いよく飛び出しーーー
グリフォンに切り掛かる。
「アァ!?なんだァ!?」
「……」
ガキィン!と鋭い音が辺りに響く。
Vの足元の黒い巨体が、長い針に形を変え攻撃を阻んでいた。
「……どういう了見だ?」
「……魔物に襲われているわけではないのか?」
銀髪の女性が、Vと対峙する。
すでに、一触即発といった雰囲気が場を満たしていた。
黒い巨体が、低い唸り声を鳴らしながら立ち上がる。
と、そこでライザが手を広げながら間に飛び出してきた。
「ま、まって!この人や魔物?みたいな子たちは悪い子じゃない!」
「……」
「……ふむ。」
「まぁまて、リラ。どうやら相手さんにも敵意があるわけではなさそうだ。」と、後ろの男性が、リラと呼ばれた銀髪の女性に声をかける。
「失礼した。私はアンペル。こっちはリラ。……そこの少女の捜索を頼まれてな。」
「てっきり魔物がまだいると勘違いをしてしまったようだ。申し訳ない。」と、続けた。