Versions of V 作:匿名
まるで木の根が地面の裏側にあるのではと錯覚させる、影のような焦げ跡。
地面はえぐれ、すでにマナとなり痕跡は消えていっているものの、いまだ飛沫が飛んだ跡が森の輝くような「緑」を「赤」で汚している。
Vだけが、その森の様子を栓無き事とでもいうように、赤く穢れた木を背にし、杖を脇に挟むように腕を組んでいた。
「オイオイ辛気臭ェな!B級映画のエンドロールかァ!?」
「……B級映画ならば、出るものは開放感と安堵だろう。」
「わかってねぇなァそういう意味じゃねぇよ!」と、騒ぐグリフォンの声のみが辺りに響く。
(
アンペルが、モノクルの奥から、今なお悠然と構える男を眺める。
すると、横から銀髪の少女ーーーリラが声をかける。
「アンペル。あまり長居すべきではないだろう。」
その目は、気になるのはわかるが後にしろ、と物語っていた。
アンペルはふぅ、と息を吐き見渡す。
「わかってる、リラ。ーーーお前たち。詳しい話はあとだ」
まずは森を抜けるぞ。と、続ける。
先導するようにアンペルとリラが前を歩き、続いてライザたちが歩き出す。
が、数歩進んだところで、レントが足を止める。
「……っ」
右手が無意識にわき腹に伸びる。
顔をしかめるレントに、ライザたちが「レント?」と心配そうに声をかける。
「……なんでもねぇ。ちょっと痛めただけだ。」
その様子に、歩き始めていたアンペルが振り返り、「痛むのか?」とレントの顔を見る。
「……少々腫れているようだな。」
「いや、大したことはーーー」
「隠すな。……このくらいならばなんとかなりそうだ。」
これを食べるといい。
そういいながらドライビスクを手渡す。
「あ、ああ。」
レントはいわれるがまま一口、口に入れる。
咀嚼するたびに持っていかれる口の中の水分に、なんともいえぬ表情をするが、ふとあることに気が付く。
わき腹をさわる。痛みがない。
身体をねじっても、動かしてみても、痛みが嘘のようになくなっていた。
「ーーー痛みが、引いた……?」
「……本当だ、腫れも引いてる。」
タオが不思議そうにレントのわき腹をながめる。
各々が消えた痛みや腫れに意識が向く中、ライザだけはアンペルの手元にあるドライビスクを見つめていた。
「え、いまのなに……!?」
まるで食って掛かるようにアンペルに距離を詰め、何をしたの!?と質問するライザに、アンペルが困惑しながら答える。
「あれは錬金術だ。まあ簡単なものだがな。」
錬金術。
そのワードに、ライザが目を輝かせる。
「錬金術……!」
そこで静かに見守っていたリラが口を開く。
「お前たち。いつまで悠長に構える気だ?」
(錬金術……俺の知るものとは随分と違うもののようだ。)
『なんだよVチャン!嬢チャンみたいに気になってんのかよアレ!』
Vは最後尾を歩きながら、先ほどの光景を逡巡する。
過去、錬金術絡みのモノはいくらか見てきたが、今までのろくでもない創作物と比べても相当マシなモノのようだ、と結論をつける。
『あんなゴミの掃きだめみてぇなところにあったやつとなんざ、比べるまでもねぇだろ!』
「……」
グリフォンの相槌を流しながら、杖を突く。
しばらくすると、いつのまにかライザが歩幅を合わせて、Vの隣を歩いていた。
何か口を開こうとしては、うんうんと唸る様子に、グリフォンが喝をいれる。
「ねえ、V「ヨォ嬢チャン!ナニちらちら俺たちのVチャン盗み見てんだヨ!こっからは月額有料のサブスクお値段なんとサンキュッパァ!」
「わわっ!」
「……」
ライザにとびかかる勢いで話し始めるグリフォンにVがため息をつく。
もっていた杖をグリフォンのくちばしに引っ掛け、投げ飛ばす。
回転しながら「人殺しィ~!」と、グリフォンが森の影に姿を消した。
「びっくりした……ねぇ、V。あのしゃべる鳥とは知り合いだったの?」
というか、今のいいの……?と、グリフォンが飛んで行った方向を眺めるライザにVが沈黙を保ちつつ、ライザの瞳を覗く。
「……鶏に知り合いはいないな。」
「ふふ、前もそういってたよね……いつからなの?」
「……生まれた時からだ。」
「ふーん……」
ぽつりぽつりと、一言二言返しては少しの静寂が訪れる。
(……変わった娘だ。)
どこからか、投げ飛ばしたグリフォンが『さすがVチャン!じゃじゃ馬娘も手懐けて、まるでインテリダンテチャンを見てるようだな!イヒーヒヒヒ!』と騒いでる気がし、Vの眉間には無意識に皺が寄っていた。