モノクロシンドローム   作:AK74

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SOSって何の略?

 

俺の名前は…いいや、名前なんか意味が無いし。

キョンとでも呼んでくれ。妹に付けられたあだ名だ。

 

学力が圧倒的に足りないというこで急遽、親にぶち込まれた塾で勉強した中学時代。

その親の思いやりとも言えるお節介が項を為したのか、俺は北高に入学することができた。

 

入学式の校長のわけのわからん長ったらしい挨拶は退屈で退屈でしょうがなかった。

 

「凄く眠そうな顔してるよ、キョン」

 

あぁ、こいつの名前は国木田。

北高にいる同級生の中で唯一中学時代からの知り合いだ。

俺なんかに話かけて何が面白いのかさっぱり理解できないが、相変わらずの調子で慕ってくれてる。

 

「実際眠いんだよ。未だに集会ごとに校長の話を聞く理由がわからん」

「あー、その気持ちよくわかるぜ。実際生徒全員で眠りこけてみれば校長も話する気が失せるんじゃないのか?」

 

でもってこいつは谷口。

中学校は違うのだが、席の近い国木田と仲良くなったようで、そのままズルズルと俺も仲良くなった感じだ。

軽そうな言動から馬鹿っぽく見られがちだが普通にいいやつだ。

 

「しっかしこのクラスはいいよなぁ。Aランクの美少女が2人もいるんだぜ?」

 

…何だよそのAランクって。

 

「ランクってのはだなぁ…」

 

谷口が言うには、本人独自のリサーチにより各学年の女子を余すことなく分析し、総合的に見てランク付けしているらしい。

…高校生活初日からご苦労なことだ。

 

「おーい、ホームルーム始めるから席に着け。それぞれ自己紹介でもしてもらうから、何喋るか考えとけよ」

「くそっ、良いところで切りやがって。まぁキョンも暇なときランク付けしてみ?癖になるぜ」

「谷口だけでしょ、そんなことやる人は。ほら、席に着こう」

 

ランク付け、か。

そういうことに楽しみを見いだせる奴は日常が色褪せることも無いんだろうなぁ。

正直、谷口が羨ましい。

蔑むような気持ちでは全然無くて、純粋に。

 

「…まぁ、この一年間よろしくお願いします」

 

こんな感じの無難な自己紹介を終えて席に着く。

 

…自己紹介、か。

実際問題こんな事しても印象に残るのは1人か2人だろう。

相当インパクトのないやつじゃないと記憶になんか残らん。

 

俺に続いて後ろの奴が起立して自己紹介を始めだす。

 

「東中学出身、涼宮ハルヒ」

 

 

東中、か。

確か谷口と同じところの出身か。

 

「楽しく高校生活が過ごせたらいいな、と思います。よろしくお願いします」

 

まぁ自己紹介なんてそんなもんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうだった?」

「…何がだよ」

 

 

一通りの日程が終わった帰り道。

谷口がいてもたってもいられないと言う様子で話しかけてきた。

 

「だぁかぁら、ランクだよランク!」

「まだそんなこと考えてたの?」

 

無駄だ国木田。

きっと今のこいつの青春はこれだけなんだ。

 

「おや、何か失礼なモノローグが」

「…気のせいだろ。ちなみにランクなんか考えて無いからな。変に期待すんな」

「ちぇー、お前らAランクだぞAランク。しかも2人もいるんだぞ?」

 

知らん。

というか誰だ、お前的Aランクのクラスメイトは。

 

「よくぞ聞いてくれた!」

「…結局話したいだけじゃないの?」

「…うるさいぞ国木田…コホン、まず1人目は、朝倉涼子だ」

「朝倉さんて、今日クラス委員長になった人?」

 

…あのちょっと眉毛が太い子か。

 

「おまっ!馬鹿!朝倉涼子親衛隊にボコられるぞ!?」

「…なんだそりゃ」

「んー、ファンクラブみたいなもんだな。中学あがる前からあったらしいぞ。それくらい人気があるんだ」

「性格も良さそうだったね」

 

…駄目だ、眉毛のインパクトが強すぎて他のイメージが何も浮かばない。

 

「まぁ明日登校したら見てみ。…で、もう1人のAランクは涼宮ハルヒ」

 

…あぁ、俺の後ろの席の?

 

「そうそう。性格が強めなんだがすげぇ可愛いんだよ。勉強もできるし運動もできる」

「あぁ、中学が一緒だったから良く知ってるのか」

「中学の時の女子もリサーチし尽くしたんだぜ!涼宮なら顔見ただろ?すぐ後ろなんだし」

 

…見てねぇ。

 

「お前自己紹介の時何してたんだよ…」

「ほっとけ、朝倉と涼宮だろ?明日見ておく。それでいいだろ?」

 

…正直どうでも良いが。

 

「じゃあ俺、こっちの道だから」

「うんじゃあね、キョン」

「また明日なー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんでもって次の日。

 

教室に入ると涼宮はすでに席に着いて誰かと話してた。

…あれは朝倉かな?

 

つーか朝倉、俺の席に座られると俺はどうしようも無いんだが…

 

「あ、ごめんなさい。じゃあ涼宮さん、私は席に戻るわね」

「うん、またね」

 

 

…何か話の腰を折ってしまったようで申し訳ないな。

 

「おはよ」

 

…おはよう。

 

「昨日もそうだったけど、いかにもダルそーな顔してるわね」

 

はい、これが涼宮ハルヒとのファーストコンタクト。

初対面でこれかい。

 

「どんな顔してようが俺の勝手だろ」

「それもそうね」

 

性格は多少キツそうだがいやしかし、谷口がAランクと言うのも頷ける。

美人、他に当てはまるような言葉が見当たらないような顔立ち、活発さにアクセントを付けるような黄色いカチューシャ。

 

「…ポニーテールだと尚良かったんだが…」

「え?何か言った?」

 

ショートカットを少し揺らして涼宮が言う。

 

「何でも無い。気にしないでくれ」

 

しかしこれくらいの短さでもポニテはいけるか?

流石にやってみてとは言えないが…

 

「ねぇ、あんたさ」

 

不味い、眺めすぎたか?

 

「…どっかで会ったことあるかしら?」

「…へ?俺と?」

 

人違いじゃないのか?

 

「かなぁ…まぁいいわ。そういえばさ、何でキョンっていうあだ名なの?」

「知らん。気がついたら妹にそう呼ばれてたんだ」

 

まぁ気にして無いが。

 

「あんたねぇ…もう少し楽しそうにしたらどうなの?少し力抜けすぎじゃない?」

「ほっとけ、これが俺だ」

 

…楽しそうに、ねぇ。

 

「…なんというかさ、毎日同じことの繰り返しで面白くも何ともないんだよ」

「高校入って大分変化してないかしら?」

「それもそうだが…結局しばらくしたら同じループになるじゃないか、そう考えると気が滅入ってな」「…変なの」

 

自覚してるさ。

 

「おーい、キョン!」

「谷口が呼んでるから行くとするよ。不快にさせたんならすまなかったな」

「………」

 

涼宮の奴、何か考えてるみたいだったな…まぁ関係ないが。

 

「何だ、谷口?」

「いや、大した用でも無いんだが…お前、涼宮と話してたか?」

 

…そうだが。

何かまずいのか?

 

「いや、まずいとかじゃないんだが…もしあいつに気があるなら悪いことは言わん。やめとけ」

「気があるとかそういうのでは無いが…なんでまた?」

「今まで数々の勇者が涼宮に告白したんだが、全員玉砕してんだ。何か理由があるみたいなんだがよくはわからん。まぁ玉砕する前に伝えとく」

 

玉砕も何も…告白なんかしねぇよ。

俺と釣り合うわけが無い。

 

…というかお前もその勇者の1人じゃないだろうな?

 

「………」

「…スマン、泣くな」

「…昔の話だ、女々しいなぁ…あ、そういや聞いた話なんだが…」

「谷口!キョン借りていくわよ!!」

「のわっ!!」

 

突然後ろからハルヒに引っ張られた。

みるみる内に谷口と距離が離れていく。

というか襟首を引っ張るな!首が締まる!

 

谷口もまだ喋ってるようだが何も聞こえん。

 

「…何でも子供の時の遊び友達が好きだったみたいな話も…ダメだ。絶対聞こえてないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、一体何なんだ。」

 

いきなり屋上まで俺を引きずり回した理由でも教えてもらおうか。

 

「決めたの!あたし、あんたを助けるわ!」

「…は?」

「絶対に損してると思うのよ、一回しかない高校生活までそんな考えかたしてるなんて」

 

…それで?

 

「とりあえず何でもいいから探しましょ!一緒に、楽しいこと、今まで違うことを沢山!」

「…俺のためにそんな時間の使い方してた方が損な気がするぞ」

「普通はそうなんだけど…なんかあんたはほっとけないのよね。で、それをするにあたって団名を考えたんだけど…」

 

ダメだ、何言ってもこいつはこの訳の分からんプロジェクトを実行しようとしてる。

 

「えっと…キョンの助けを聞いたから、SOS団ってどうかしら?」

「俺がいつ助けを求めたんだ」

「…勘かしら?何となくそう感じたの」

 

…あぁ、そうかい。

 

「SOS…SOS…『世界と言わないまでも日常を大いに楽しむための涼宮ハルヒとキョンの団』なんてどうかしら!?」

「…素晴らしいネーミングセンスだと思うぞ」

「あたしが団長だから!キョンは団員ね!とりあえず何か決まったら連絡するわ」

 

お、おい涼宮!

 

「ハルヒで良いわ、あんたに涼宮って呼ばれると何か違和感があるから。で、何?」

「…もう朝のホームルームが始まってるんだが…」

 

………。

 

「あー…まぁいいわ。ホームルーム終わったら戻りましょ」

 

そう言ってハルヒは階段を降りて行った。

 

…楽しいこと、か。

 

やれやれ。

まぁ少しは暇つぶしになるのかね?

 

「世界と言わないまでも日常を大いに楽しむための涼宮ハルヒとキョンの団」

 

けったいな名前だが、少しだけわくわくした自分がいたのは秘密だ。

 

「キョン!ホームルーム終わったみたいよ!」

「あぁ、今いく」

 

窓の外に舞う桜の花びらに、ほんの少しだけ色がついた。

 

 

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