灰被りの蜘蛛   作:BNDに脳を焼かれたやつ

29 / 40
29

 

「それは君のおもちゃじゃないぞスパイダーマン。さっさとキャプテンに返してもらおうか」

 

「嫌です!」

 

「やぁスパイダーマン、ローディだ。トニーから君のことはよく聞いてる。ところで手を貸そうか? 今なら空の旅に案内できるぞ」

 

「お願いします、ローディさん!」

 

空から迫ってくるファルコンから、ウォーマシンに掴まって逃げ。

 

「スパイダーマン、あなたのことは傷つけたくないの。どうか盾を返してちょうだい」

 

「嫌です!」

 

「スパイダーマン、ウルトロンのことで、一度あなたには謝りたかった。ですがそれは後にしましょう、今は彼女のことは私に任せて」

 

「ありがとう、ヴィジョンさん! 心当たりがないけどとりあえず謝罪は受け取っておくよ!」

 

変なもやもやを飛ばしてくるスカーレット・ウィッチをヴィジョンに任せて逃げ。

 

「どうもスパイダーマン。俺はアントマン。よろしくな」

 

「やぁどうも、小さかったり小さくなかったりする人。アントマンってことは、あなたは蟻に噛まれたの?」

 

「いや別に噛まれてない。まぁたまに噛まれることもあるけど……なぁ、娘が君のファンなんで、よかったらサイン貰えたりしないか?」

 

「ボクのサイン? 後でなら全然良いけど」

 

「マジか、よし。キャシーに良い土産ができたな。ああ、それと盾もくれたりは……」

 

「それは嫌でーす!」

 

小人になって死角から出てくるアントマンから逃げ。

 

「……なぁ、俺の矢をいちいち蜘蛛糸に引っ掛けるのやめてくれねぇか。回収するの死ぬほどめんどくせぇんだが」

 

「じゃあボクに向かって弓撃つのやめてくれる?」

 

「その盾の模様がやけに目立つんでね。つい撃っちまうんだよ。ほら、さっさと返せ」

 

「嫌ですぅ!」

 

百発百中の精度で私の蜘蛛糸を引き裂いてくるホークアイから逃げ。

 

「うわ、なにそれメタルアーム? めっちゃ仕組みが気になるけど……ところで黒い人がまた君のこと追ってきてるけど、ボクのこと気にしてて大丈夫そう?」

 

「クソッ、またか……おい、スティーブは昔から頑固で諦めが悪い。あいつから逃げられると思うなよ、スパイなんとか」

 

「スパイダーマンだよ。じゃあねテロリストさん! どうかさっさと逮捕されてね!」

 

黒いスーツの人から逃げるウィンター・ソルジャーから逃げ。

 

「良い加減僕の盾を返してくれないか」

 

「いーやーでーすー!」

 

キャプテン・アメリカから逃げ。

 

「聞いてくれ。この事件には黒幕がいるんだ」

 

逃げ……てる途中で、私は足を止めた。

 

「それは、えっと、どういう……?」

 

「バッキー……ウィンター・ソルジャーを暴走させたやつがいる。協定の調印式を爆破したのもそいつだ。今すぐ追いかけて、やつの企みを止めないといけない。そのためには盾が必要なんだ」

 

「……それが本当なら、ちゃんと国連にも話を通すべきじゃ?」

 

「そうしたいが、時間がない。それに国連と話そうにも僕は信用を失っているだろうし、加えて国連の中にもヒドラのように邪な企みを持つ存在がいないとも限らない。僕らがやるしかないんだ、頼むスパイダーマン。どうか僕を信じてくれ」

 

伸ばされたキャプテンの手を見て、それから私は盾を見た。星条旗を模した星のマーク。自由と正義、アメリカの理念を象徴する盾を果たして今のキャプテンに預けても良いものか。

 

いやいや、私はスタークさんを助けにきたんだ。ここで盾を渡してしまっては彼が困るだろう。

 

でも、渡さなかったら世界の危機なのか?

 

『ペトラ、たった今外部からの通信が入りました。繋げますか?』

 

「通信? 誰?」

 

私が困り果てていると、何者かがコンタクトを取ってきた。

 

『こんにちはスパイダーさん。私はナターシャ。ブラック・ウィドウと言ったほうが伝わるかしら?』

 

「はぁ、どうもナターシャさん。今ちょっと困ってるから後にして欲しいんですけど」

 

『困ってるなら、その盾を後ろにパスしてくれないかしら。大丈夫、私もトニーの味方よ』

 

後ろを振り返れば、そこには物陰から手を振るブラック・ウィドウの姿がある。彼女はスタークさんの味方としてキャップと戦っていた人だ。信用できるかも。

 

そう思って、私は言われた通りに彼女に盾を投げた。

 

「ほらキャプテン、行って」

 

「ありがとうナターシャ。それから君にも、僕の話を聞いてくれて感謝する」

 

「え? え?」

 

なのに彼女は、その盾をキャプテンに渡してしまった。

 

「なんで渡しちゃったの!?」

 

「ごめんなさい、けどこうするのが正しいと思ったの。それからあなた、人に騙されやすいから気をつけた方が良いわよ」

 

そう言うと、ブラック・ウィドウはその美しくウェーブを描く髪を靡かせて私の前から颯爽と去って行った。

 

「……泣きたい」

 

さてと、スタークさんにどうやって謝ろうかな。

 

 

 

 

 

「すみませんでした、スタークさん……」

 

「そう凹むな。キャプテンに逃げられたのは君のせいじゃない。そこのナターシャおばさんのせいだ。なぁ、おばさん?」

 

翌日、私はアベンジャーズ基地本部にてスタークさんに慰められていた。

 

ロス長官、すっごく怖い人だった。私が勝手にドイツに入国したことを責めてくるし、キャプテンが逃げたことでスタークさんを詰るし。

 

「私をおばさんって呼んで良いのは子供だけよ、偏屈おじいさん」

 

「おい、誰がおじいさんだって? 僕はまだ40代だぞ。だいたい偏屈じいさんはロス長官みたいな人間のことを言うんだ。スパイダーマンはキャプテンを止めるべく頑張ってくれたのに、文句ばっかり言って。自分だって勝手に南米に部隊を送ってドンパチやって街を壊して挙句にハルクを逃がしたくせに。まったく、どの面下げて国務長官なんてやってるんだ」

 

「……うぅ、あの人嫌いです」

 

「僕も嫌いだ」

 

「私もよ」

 

ロス長官は嫌いだが、しかし彼が嫌われてるおかげでなんだか少しだけ私以外の二人の間にあった険悪さが緩和されたような気がした。ヘイトを買うことで組織をまとめるタイプの人間なのかもしれない。

 

あれから、空港で戦った人たちについてだけど、キャプテン側についた人たちはみんな刑務所に収監されたそうだ。かわいそうだけど、仕方ない。それと飛び立ったキャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーの行方については、まだ分かっていなかった。

 

ただ少し進展したこともある。あのときキャプテンの言っていたことが真実だと分かったことだ。どうやらソコヴィアの件でアベンジャーズに恨みを持った人物が、ウィンター・ソルジャーに扮して爆破テロを行ったらしい。ウィンター・ソルジャーは無実……とはいかないが、少なくとも爆破テロの犯人ではなかったわけだ。

 

「私に任せて良かったでしょ?」

 

そう言って、ナターシャさんが私に向かってウィンクした。

 

「いいや、良くない。まだキャプテンが何かやらかす可能性がある。ラゴスのときみたいにな。彼は我が道を行こうとする暴走したオフロードバイクみたいなものだ。誰かが補助輪になってやらないと」

 

「待ちなさいトニー、どこに行くつもりなの?」

 

「キャプテンのところだよ。スパイダーマンが追いかけっこしてる間、僕がただスーツの中で寝っ転がってただけだと思うか?」

 

スタークさんがひらひらと見せつけるように振るデバイスの画面には、シベリアから位置情報を送ってくる発信機の情報が映っていた。隠れてキャプテンが乗って行ったクインジェットに細工していたらしい。

 

「ボクもついて行きます」

 

「だめだ、君は家に帰れスパイダーマン」

 

「でも……」

 

「隠密任務だ。長官にはバレたくない。僕一人で飛んで行く。あぁもちろん、そこのおばさんも留守番だからな? シベリアの冷たい大地に突き刺さる覚悟があるなら、首根っこ掴んで運んでやっても良いが」

 

「あら、残念。私はこれからあなたの愛しのスパイダーさんとおいしいおいしいボルシチを食べに行くの。ごめんなさいね」

 

「ボク、ボルシチ食べたことないです」

 

「きっと気に入るわ」

 

「よしスパイディ、その次はシャワルマの店に行こう。そっちの方が気に入るだろうからな」

 

私の頭越しに二人が言い合う。私を置いて、勝手に次どこにご飯を食べに行くかの予定がどんどん埋まっていった。

 

「スタークさん」

 

「なんだ、イタリアンが良かったか? それともフレンチ? 中華でも構わないが」

 

「そうじゃなくて。もう喧嘩しないですよね、キャプテンと」

 

「事件を解決したあと、キャプテンが素直に戻ってきてくれるならな」

 

私は一抹の不安を抱えながら、手を振るスタークさんを見送った。

 

「それで、勝手に決めちゃったけど、本当に行く?」

 

「行きます。世界最高の女スパイがお勧めするお店の味って、普通に気になりますもん」

 

そして、それから数時間後。

 

『ペトラ、スパイダーシグナルに反応がありました。場所はロシア領域内シベリア。発信源はトニー様と思われます』

 

ボルシチを飲み干した私のもとに、スタークさんからのSOSが届いたのだった。

 

 

 

 

 

ナターシャさんが運転するクインジェットから降り立ち、シベリアにあるヒドラの基地で私が見つけたのは、無造作に置かれたキャプテン・アメリカのシールドの横で、ボロボロのスーツをまとったまま放心状態で息をするスタークさんの姿だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

ジェットの中に移動し、私は顔のマスクを取った。それから震えるスタークさんの手を握る。私には分からないが、今の彼の手は酷く冷たいのだろう。この北国では春だろうと関係なく雪が降っているから。

 

「両親が、死ぬところを見せられたよ」

 

やがてスタークさんは、少しずつ何があったかを私に話してくれた。

 

「父は懇願していた。母を助けてくれとな。そんな父に向けて、あの義手の男が向けたのは拳だった。何度も何度も父の顔を打ち付け、そして父の名を呼ぶ母親の首を締め付けて折った」

 

「ご両親が……」

 

「ウィンター・ソルジャーが、僕の両親の仇だったんだ。そして、キャプテンはその事実を知りながら僕にすべてを黙っていた。彼は僕よりも、あいつを優先したんだ。両親を殺した、あいつを……ッ」

 

スタークさんの拳が震える。それは寒さからではなく、怒りからの震えだった。

 

「頭がどうにかなりそうだったよ。覚えているのは、とにかく父と母が受けた苦しみと同じものを、あいつに味合わせてやることだけだった。そして案の定、キャプテンは邪魔した。……あぁ、僕が愚かだったよ。一対二で挑むなんてな。もっと隙を見て、攻撃するべきだった。二人の超人兵士に一人で挑むなんて慢心していた。そして思った。もし君がいてくれたら、あいつを──」

 

「スタークさん!」

 

スタークさんの闇に染まった目が私を見る。

 

「幻滅したか、僕がこんなやつで」

 

「……いいえ。幻滅したりなんてしませんよ」

 

「……所詮、僕も僕を恨むやつらと同じだったよ。ヒドラに洗脳されてた、なんて理屈なんてどうでも良い。そんなことはどうでも良いから、とにかくその恨みを晴らしたかった」

 

そう言うと、スタークさんはクインジェットの中にあったハンドガンを手に取り、私に持ち手を向けた。

 

「何のつもりですか」

 

「僕は君の父親を奪った。そしてそのことをずっと黙っていた。だから、君が望むなら僕の命を奪ってくれて良い」

 

「ふざけないでください!」

 

スタークさんの手を弾くと、ハンドガンが床に転がった。今度は私が拳を震わせる番だった。

 

「そんなことして、私が満足すると思ってるんですか? そんなわけないでしょう。あなたを殺したって、私は嬉しくともなんとも思いませんよ。一体私が何のために、あなたにシグナルを渡したと思ってるんですか!」

 

「……すまない」

 

「守りたいから、失いたくないと思ったから、渡したんです。もう二度と、二度と」

 

「だけど僕は、君の父親には相応しくないと思う」

 

「……そんなこと、言わないで」

 

私は膝から崩れ落ち、まるでスタークさんの足に縋り付くかのように倒れ込んだ。そんな私の体をスタークさんが支えてくれる。

 

「スタークさん、私ね、父のこと、ほんとはうっすら嫌いなんです」

 

「……どうして?」

 

「だって、彼は全てを燃やして死んじゃったでしょ。志は、立派だと思います。けど、子供にとってはそんなことどうでも良いんです。ただ、側にいてくれれば良かったんです。だけど父は私と共に生きるよりも、頭の中の研究成果ごと燃えることを選んだ。だから、嫌いなんです。父は、私の父親であることを選ばなかったってことですから」

 

私が座席に座ると、スタークさんもすぐ隣に腰を下ろした。

 

「僕の父も父親業より他のことばっかり優先してたよ。僕を寄宿学校に放り込んで放ったらかしにしたし、会ったとしても口を開けば科学の話か、昔の仲間の自慢話だった。ハウリング・コマンドーズっていってな。バーンズ軍曹だとか、エージェント・カーターだとか、キャプテン・アメリカだとか、そういう仲間たちと一緒にヒドラと戦ったって。正直言うと、死ぬほどどうでも良かったよ。何十年前の戦いよりも、何十年先の未来よりも。父には今を見てほしかった」

 

どこか遠くを見るような目。今のスタークさんには、過去の情景が見えているのだろう。儚くとも確かに存在した、父親との思い出が。

 

「それでも、父は父だった。できることなら今も生きていてほしかった。君と話しているように、隣で僕の話を聞いていてほしかったよ」

 

「……じゃあ、スタークさんは長生きしなきゃですね」

 

「そうだな。まぁ少なくとも、父よりは長く生きるが。なにせ僕は父よりも強い。実際超人兵士二人を相手に結構やれたし。襲われたところで返り討ちにできる。だろ?」

 

「ふふ、ですね」

 

「それに、ボタン一つで親愛なる隣人が助けに来てくれることだし」

 

そう言うと、スタークさんは胸ポケットから私のスパイダーシグナルを取り出した。

 

「あのですね、今回は特別なんですよ? 普通、ニューヨークの外まで行ったりしないんですから。ましてやこんな、雪深いシベリアの奥地にまでなんて」

 

「なんだって? おいおい、それじゃあ僕がまた洞窟に閉じ込められたらどうすれば良いんだ?」

 

「また自分でスーツ作って抜け出したら良いんじゃないんですか?」

 

「これは秘密なんだが、スーツを作ったのは僕だけの功績じゃないんだ。もう一人、優秀な助手がいてくれたんだよ。……だが残念ながら、その助手は今はもういない。だから絶賛助手を募集中だ。僕を洞窟から出してくれる助手をね」

 

「へぇ、ちなみに労働条件と給料は?」

 

「応相談だな。もちろんボーナスだって出るぞ。帰ったら秘蔵のシャンパンを開けよう」

 

「残念でした、未成年でーす」

 

「おっと、そうだった。君はお子様だからリンゴジュースか。……どうだ、あれから賢くなったか?」

 

「はい。どこかの誰かさんがたくさん知恵の実の皮を剥いてくれたので」

 

「なら、帰ったらまた剥いてみるか。丁度僕も食べたかったところだしな。だって今日の僕はほら、あんまり知性が足りてなかった」

 

それからクインジェットがアメリカに戻るまで、私たちはくだらない会話に花を咲かせるのだった。

 

「ついたわよ、お二人さん」

 

「おい、ここ郊外だぞ。基地に戻るんじゃなかったのか?」

 

「生憎だけど、運転中に空港でのことがバレてお尋ね者になっちゃったの。基地までは自分で運転して。できるでしょ?」

 

「はぁ、酷い運転手もいたもんだ」

 

スタークさんはため息をつくと、運転席に座っていたナターシャさんと交代する。だがその前に、彼はクインジェットから降りようとするナターシャさんを呼び止め一枚のカードを差し出した。

 

「待った。ナターシャ、これ持っていけ」

 

「何のつもり?」

 

「口止め料だよ。黙ってたら気付かれないと思ってたのか? 運転席から耳を澄ませて僕らの会話を聞いてたろ。引き落とし先は僕の口座になってる。スパイの口を縫い付けるのに十分な額だろ? 言っとくが、使って良いのは君だけだからな。キャプテンやメタルアームの殺し屋に会っても使わせるな。絶対だぞ」

 

「使わせたらどうなるの?」

 

「さあね、自分でも分からない。僕もバナー博士を見習ってハルクにでもなろうかな」

 

「……まぁ、一応貰っておくわ。足がつくから使わないでしょうけど」

 

「あぁ、そうしてくれ。僕も自分の口座から銃やら弾薬やらの名目で頻繁にお金が引かれるところは見たくない」

 

そう言うと、スタークさんは運転席に座って離陸の準備を始めた。

 

「それじゃあスパイダーさん。短い間だけど、あなたと一緒に仕事ができて良かった」

 

「はい、こちらこそ。おいしいボルシチをありがとうございました」

 

「私はしばらく逃亡生活だから、その間にトニーをよろしく。それとマスクも可愛いけど、マスクの下の素顔の方がずっと素敵だと思うわ」

 

「あっ……」

 

顔を触る。どうやらマスクを外したままだったらしい。

 

そうしてナターシャさんは、やっぱり髪を靡かせて私の前から颯爽と去って行ったのだった。

 

「どうせならタワーの方に帰るか」

 

「良いんですか?」

 

「もともとタワーはクインジェットが着陸できる構造だから問題はない。あるとすれば、ノーアポで着陸したらペッパーに怒られることくらいか」

 

「今からアポ取ります?」

 

「いや、驚かせたいからそのままで行こう」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべるスタークさんに呆れながら、私はポッツさんに電話をかけようとして持ち出したスマホを再びカバンにしまった。

 

 

 

 

 

「お帰りなさい、二人とも」

 

タワーに帰ったとき、連絡していないにも拘わらずそこにはポッツさんがいた。仕事で忙しいだろうに、私たちの帰りをずっと待っていてくれたのだろう。

 

「……あぁ、ただいま」

 

スタークさんとポッツさんの二人は向き合ってハグを交わす。私はその様子をすぐ側で眺めていた。

 

「それじゃあ、シャワー浴びてきてくれる?」

 

「おい、なんだよ君もか? はいはい、僕は臭い臭いトニー・スカンクですよ。まったく、戦場から帰ってきたんだからもっと優しくしてくれても良いのに」

 

ぶつくさ文句を言いながら、スタークさんは身を清めるべくシャワーを浴びに行った。

 

「私も自室でシャワーを浴びてきますね」

 

「待ってペトラさん」

 

私の名を呼ぶ声に立ち止まる。すると、ポッツさんは私の体を抱きしめてこう言った。「トニーを助けてくれて、ありがとう」と。

 

温もりも、柔らかさも、私の体は何も感じなかったけれど、それでも心が温かくなる。

 

「……良いんです、だって私は」

 

そして私は、微笑みとともにこう返すのだった。

 

「親愛なる隣人、スパイダーマンですから」

 

 

 

 

 

「ちょっとスタークさん! 何この設計図、スパイダーバスターって何なのさ!?」

 

「あ、いや、それはその……ほら、みんな僕のことを殺しに来るから、君ともバトルすることになるかと思ってたんだよ」

 

「だからって、普通自分が後見する子供に対抗するためのスーツなんて作らないでしょ!? 信じらんない!」

 

「設計しただけで作っては……」

 

「もう良いです。もう一回家出してやりますから! ふんだ!」

 

「待て。僕が悪かったから戻ってきてくれ、おーい!」

 

なお後日、私がカレンに頼んでスターク社のデータを収集した時に見つけたスーツの設計図の件で、スタークさんと喧嘩したのは内緒の話。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。