転生ショタ、リゼロ世界でお姉さんハーレムを築く 作:Guiltylowe
ロズワール邸で迎える三度目の朝。ショウタはすっかりこの屋敷を自分の家のように扱っていた。起きれば横にラムがいる。食堂へ行けば勝手に朝食が出てくる。暇になればエミリアのところへ遊びに行き、疲れれば長椅子へ寝転がる。好みのお姉さんを口説くためなら自分から動くし、欲しい女を手に入れるための仕込みも惜しまないが、何の面白みもない仕事や移動は嫌いだった。何よりこの屋敷は広い。エミリアもラムもフレデリカもペトラも一か所にはいない。せっかく可愛い女が何人もいるのに、触りたくなるたび探して歩かなければならないのは、ショウタにとって明確な欠陥だった。
昼前の談話室では、フレデリカとペトラが掃除をしていた。長椅子を丸ごと占領するショウタの下だけ床が掃けず、ペトラに退くよう言われても足を上げただけで済ませる。ペトラが呆れながらその下を掃き、机、棚、窓際へと離れていくほど、ショウタの不満は増した。ペトラは普段好んで追いかける完成済みのお姉さんではない。同年代に近い女は好意を向けさせるだけなら簡単でも、自分好みに育てるとなれば手間がかかるから基本的には面倒だった。だがペトラは別だ。素直で、負けん気があって、好きな相手への感情が顔に出る。今でも十分可愛い上に、これから経験を積めばかなりショウタ好みになる見込みがある。なら今のうちから仕込んでおく価値はある――ただし、そのために毎回自分から窓際まで歩いていくのはやっぱり面倒だった。
身体ごと行かなくてもいい。ここで寝たまま、手だけが向こうまで届けばいい。ペトラだけではない。エミリアにもラムにもフレデリカにも、屋敷のどこからでも好きなときに手を伸ばせる。ついでにペトラへ毎日触れ、自分の手がある状態そのものへ少しずつ馴らしていける。
そう思った瞬間、その怠惰で身勝手な欲望に応えるように、胸の奥で新しい何かが形を持った。
――『怠惰』。
意識を向ければ、名前と使い方が最初から知っていたことのように浮かび上がる。
――――――
『怠惰の権能:
能力:完全不可視にして変幻自在の手を複数発生させ、自在に操る。手指を備えた腕だけでなく、触肢、刃状、槌状など用途に応じて形状・太さ・硬さ・長さ・可動性を変化させることが可能。遠隔操作に加え、単純な動作であれば一定範囲の自動操作も可能。
――――――
「いいね。僕にぴったり」
「今度は何?」
窓際から振り返ったペトラの頭へ、試しに一本だけ伸ばした。何も見えない掌がぽんと乗った瞬間、「ひゃっ!?」と身体が跳ねる。フレデリカへ振り返ってから、長椅子から一歩も動いていないショウタへ視線を戻し、頭上の空気を自分の手で探る。その反応が面白くて、今度は驚かせないよう髪へ指を入れ、ゆっくり梳いてやった。さらさらした髪が指の間を抜け、頭の丸みと体温まで自分の手と同じように返ってくる。二度、三度と撫でるうち、ペトラも警戒を解き、最後には自分からほんの少し頭を掌へ傾けた。
「……ほんとにショウタなんだ。すごいけど、急にやるのは禁止だからね。誰だってびっくりするんだから」
「じゃあ次から言う」
「頭なら、それでいいよ」
そこからは早かった。フレデリカに掃除へ使うよう言われ、断ればラムへ報告すると脅されたので、箒、布巾、籠、椅子へ次々と手を回す。何本かには単純な作業を覚えさせ、本人は寝転がったまま。通りかかったスバルは、何もない空中を箒だけが飛ぶ光景と、自分の『インビジブル・プロヴィデンス』に似た気配を感じ取って盛大に顔を引きつらせた。
「待て待て待て! 俺は一本出すだけで頭痛くなんのに、なんでお前は何本も出して寝ながら家事してんだよ! その力で掃除って無駄遣いにもほどがあるだろ!」
「僕は疲れないし、掃除も終わってるから無駄じゃないよ」
「理屈が強すぎて腹立つ!」
その騒ぎを横目に、ショウタはペトラへ別の一本を伸ばした。今度は肩。首の付け根から張っている場所を探り、親指で押し込んでやる。驚いて固くなった肩が、押して、緩め、また押すたび少しずつ掌へ沈む。髪を撫でたときとは違って、今度は触れる側にも身体が解けていく感覚がはっきり返ってきた。
「……ちょ、ショウタ。今みんな見てるからやめてよ。そこ……思ってたより気持ちいいし、変な声出そうになるでしょ。そういうのは二人のときにして」
「二人ならいいんだ!?」
「スバル様は黙ってて!」
顔を赤くして怒るくせに、肩の手は退けさせない。ショウタが指の力を抜けば、離れかけた掌を追うように肩がわずかに寄ってくる。そこへラムまで現れ、ペトラの緩んだ顔を見ただけで事情を察した。
「随分と気持ちよさそうね。仕事中にそこまで顔を緩められる神経だけは感心するわ」
「ち、違いますラム姉様! ショウタが勝手に――」
「なら離れなさい」
「……それはやめておきます」
「でしょうね」
短く切り捨てて去っていくラムを、ペトラが赤い顔で睨む。その横でショウタは肩とは別の手を腰へ添えた。今度は「ひゃんっ!」と本気で飛び上がり、すぐに振り返って「ショウタのえっち!」と睨まれる。
「嫌?」
「嫌っていうか、急すぎるの! 腰は肩と違うでしょ。……やるなら、もっとゆっくり」
拒絶ではなく注文だった。
なら、言われた通りにする。指先で探らず、掌全体を腰へ当て、仕事の動きを邪魔しないよう支えるだけにした。屈めば腰の丸みに沿って掌も傾き、立ち上がれば押し返される。最初は触れられるたびに身体を捩っていたペトラも、何度か繰り返すうちに振り返らなくなった。やがてフレデリカと普通に話しながら、腰にはずっとショウタの手があるまま仕事を続けている。
そこから午後までは、一つ一つの接触を細かく数える必要もなかった。『
そこがショウタには一番面白かった。
いきなり何でも受け入れるより、最初は怒り、恥ずかしがり、それでもショウタの手だとわかるたび少しずつ許す範囲が広がる。許したところでは次から反応が薄くなり、その代わり「そこはもう少し」「今はこっち」と注文が増える。そうして触れられることが当たり前になれば、今度は手がなくなったときの方が気になる。
夕方、仕事の区切りでショウタが全部の手を引くと、それはすぐに出た。ペトラは何も言わず数歩歩いたあと、振り返る。ショウタと目が合う。それでも自分から「触って」と言うのは恥ずかしいのか、しばらく唇を尖らせていたが、ショウタが知らん顔をすると結局こちらへ戻ってきた。長椅子の横で少し身を屈め、上目遣いのまま袖を摘まむ。
「ねえ、ショウタ。……さっきの、もう終わり?」
「終わり」
「もうちょっとしてくれてもいいじゃん。今日はいっぱい働いたんだし……肩とか、髪とか。ショウタが勝手に始めたくせに、急になくなるのずるいよ」
「欲しいの?」
「そういう言い方しないでよ! ……でも、ちょっとだけ。お願い」
頭へ一本。肩へ二本。腰へ一つ。頼まれて戻した瞬間、ペトラの顔から強張りが消えた。肩が落ち、頭が撫でる指へ傾き、腰も今度は驚かず掌へ収まる。
もう、「触られても平気」ではない。
なくなると物足りない。
戻ってくると安心する。
そこまで来ていた。
その日の仕事が終わる頃、ペトラは自分から談話室へ戻ってきた。今度はフレデリカもスバルもラムもいない。二人きりになると、長椅子の隣へ腰を下ろし、少し恥ずかしそうに視線を落とす。
「……今日の、もう一回やって。さっきみたいにいっぱい。わたしがいいってしたところなら……だから、いちいち言わせないでよ」
ショウタはまず髪へ手を入れた。そこへ肩、背中、腰、脚と、昼間に一つずつ覚えさせた感触を重ねていく。一つならもう慣れている。だが全部が同時に来れば、最初だけペトラの身体が強張った。髪を撫でられながら肩の力を抜かれ、背中を撫でられ、腰を支えられ、脚まで別々の手に包まれる。どこへ意識を向ければいいのかわからなくなったように息が揺れたが、逃げることはなかった。
全部、ショウタの手だからだ。
触れられるたび一つずつ確認する段階を越え、次第に「ショウタに触れられている」という一つの状態へ身体を預け始める。肩が掌へ沈み、腰が楽な位置へ動き、髪を梳く手へ頭を寄せる。少し恥ずかしい場所へ近づけば頬を赤くして「……えっち」と睨むのに、「やめる?」と聞けば視線を逸らすだけで拒まない。
しばらくすると、どこか一つの手が弱くなっただけで、その場所だけ身体がわずかに追うようになった。
もっと。
触れているショウタには、それがはっきりわかった。
そこで全部止める。
数秒後、閉じかけていた目が開いた。
「……なんで止めたの?」
「もう終わりかなって」
「まだいいなんて言ってないじゃん。……せっかく気持ちよかったのに。もうちょっとしてよ」
今度はペトラから頼んだ。
手を戻せば、ほっとしたように身体から力が抜ける。
それだけで十分だった。
触れられても平気なのではない。
触れられたい。
ショウタの手が身体のどこかにあることを、ペトラ自身が欲しがり始めていた。
そして――その夜。
昼間までよりもう一歩先へ進むかと聞けば、ペトラは少し迷い、それでも最後には自分からショウタの袖を掴んで頷いた。
夜が深くなってからも、『
ショウタが試しに一本引けば、そこだけ妙に空いたように感じるのか、ペトラの身体が無意識にその手を追う。すぐには何も言わない。それでも戻らなければ視線が来る。さらに待てば、今度は自分から袖を摘まんだ。
「……もうちょっと。急になくなるの、やだ」
昼間までは、ショウタが触れて、ペトラが許していた。
夜が更ける頃には、もう逆だった。手が来れば受け入れるのではない。来てほしいと待ち、離れれば物足りなくなり、戻ればほっとして身体を預ける。見えない手だけでは足りなくなったのか、やがてペトラはショウタ本人まで傍へ引き寄せ、触れられるだけだった距離を自分から縮めていった。
その先は、一度きりで終わるような夜ではなかった。少し離れてはまた求め、落ち着いたと思えばどちらからともなく距離がなくなる。長い時間をかけて何度も抱き合い、何度も相手の温もりを確かめるうち、昼間まで残っていた遠慮もすっかり薄れていった。二人が明確に一線を越え、そのまま夜更けまで親密な時間を重ねたことは、翌朝の距離を見れば説明するまでもない。
眠りにつく頃にも、『
もう、触れられることに慣れたのではない。
触れられている方が、自然になっていた。
翌朝、厨房でフレデリカと朝食の準備をするペトラへ、談話室にいるショウタから『
「ペトラ? 先ほどから妙に機嫌がよろしいですけれど」
「な、なんでもありませんフレデリカ姉様。ショウタがまたやってるだけです。……でも、もう大丈夫です。昨日ずっとだったから慣れちゃいました。それに……急になくなる方が変な感じするくらいで」
言い終えてから自分で気づき、ペトラの顔が赤くなる。その横を通りかかったラムは一目だけ見て、鼻で笑った。
「もう手遅れでしょう。本人より身体の方が先に覚えたようだもの」
「ラム姉様!」
それでもペトラは仕事を止めない。『
これでいい。
まだ完成したお姉さんではない。
今は触れられると恥ずかしがるし、自分から欲しいと言うにも少し時間がかかる。だからこそ、これから変わっていくのが面白い。毎日触れて、毎日覚えさせ、ショウタの手がある状態を当たり前にしていけばいい。
わざわざ追いかける必要もない。
遠くにいるなら、手だけ伸ばせばいい。
そのうちペトラの方から、もっと欲しがるようになる。
異世界生活は、ますます怠惰に。
そして、ますますショウタ好みになっていった。