Jukebox Driver   作:moti-

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 前回あんな話書いたせいか知らんけどアンプ逝きました

 とりあえず代用でPMA-600NEポチー


RACER'S HIGH

 最近は暑さも落ち着いてきて、ようやくバイクに乗ろうという気にもなってきた。

 外出する予定もあったしちょうどいい。

 折角だから軽く走るのも良いだろう。

 

 と、いうことで。

 バイクに乗っている。

 

 郊外の流儀はノーヘルである。

 諸説はあるが、少なくとも俺はそういうふうに教わったのでノーヘルだ。

 

 まぁ仮に何か飛んできたとして、ガードは可能だからな。

 こちとら普段からわりと高速戦闘してんだし。

 

 問題は市街地の渋滞に引っかかったとき。

 なんとこのバイク、たった五分程度のアイドリングでエンジンが発火するおそれがある。

 

 ただまぁそこはなるべく引っかからないような時間とルートを選べばあまり問題にはならないので、引っかかってから危惧すればいいだろう。

 郊外に出れば特に渋滞には引っかかりようがないしな。

 

「──♪」

 

 多少涼しくなってきたからか、走っている感覚は爽快そのものだ。

 一般的に、バイクは風を感じるのが心地よいとよく言われる。

 ただ俺は個人的に、走っているときの路面とのフィーリングが一番好きだ。

 乗り味、というのか。

 タイヤが路面の上を駆けるその感覚のほうに、意識が向きがちである。

 

 そうして速度制限をぶっ千切って走ること一時間ほど。

 辺鄙な場所にある一軒家へと、たどり着いた。

 

 合鍵で扉を開いて、中に入っていく。

 

 ……寝ている。

 起きる時間を見計らってきたのだが。

 

 仕方ない、少し待つか。

 道中で買っておいたドーナツとコーヒーを取り出す。

 二人で食べるためにかなり多めに買ってあるからな。

 食ってりゃ起きるだろ。

 

「……起きます」

 

「おう、起きたか」

 

「あれー? お兄ちゃんだ」

 

 随分と気の抜けた姿だが、このセーフティハウスであれば演技をする必要もない。

 だから俺はそれを咎めることもなく、「おう」とだけ返事をした。

 

 ぴこぴこ、と頭の上の狐耳が動いている。

 眠気が残っているのか、上半身がしきりにゆらゆらと揺れている。

 

「とりあえず顔洗って歯磨いてこい。オマエのぶんも用意してっから」

 

「はぁい」

 

 のそのそと起き上がり、洗面所へと消えていく。

 尻尾だけが派手に揺れていて、道中机の上に雑に置かれていたガジェットやら錠剤、ペットボトルをなぎ倒していった。

 

「……ニコラス。洗面台で溺れないかどうか見張っといてくれ」

 

『オーダーを受け付けました』

 

 あいつ昔から朝は弱いからな。

 実際に洗面台に突っ伏して溺れかけたことがある。

 仕事ではミスしねぇけど、素の部分はかなりポンコツだ。

 

「おはよぉ、お兄ちゃん」

 

「おう、おはよう。夜ふかしでもしたのか? 俺の予測より起きるのが遅かったが」

 

「んとね、昨日は……ねぇニコラス、昨日僕何してたっけ」

 

『昨晩の行動記録を表示します』

 

「あー、思い出した。インターノットの『請負人』関係のスレッドを荒らしてたよ」

 

「何してんの?」

 

「信者降臨とか言われちゃったから、『パエトーン』信者のコピペ改変貼ってたら本人きちゃって面白かったねぇ」

 

「マジで何してんだオマエ」

 

 ドーナツを両手で掴みながらのそのそと食べる姿は、まるでリスかなにかの小動物のようだ。

 外面は普通にクール系なんだが、素だと緩すぎてな。

 便宜上兄としては心配になる。

 

「お兄ちゃんは昨日の夜あれでしょ、どーせダイアリンって人とお喋りしてたんでしょ」

 

「あ? なんで知ってんの?」

 

「だって車にニコラス搭載してるもん。位置情報でわかった」

 

『送信しておきました』

 

「このAI最近ちょっと生意気じゃないか?」

 

「安心して、ニコラスは作ったときからずっと生意気だよ」

 

『多大な不満を感じております』

 

「感情機能オミットしようぜ」

 

「やーだよ。おかげで玩具にして遊べるのに」

 

『お兄様。あなたの弟はあまりに邪悪です』

 

 出歯亀してるほうが邪悪だろ。

 

「で。どこまで行ったの?」

 

「あ? 何の話だよ」

 

「え? だって好きなんでしょ、あの人のこと」

 

「はぁ?」

 

「違うの? だってお兄ちゃん、あれだけ尊重してる人他にいないじゃん」

 

「オマエはほんとにナード野郎だなぁ」

 

「僕罵倒されるようなこと言った?」

 

 尊重=恋愛的に好きではないだろう。

 確かに彼女のことを尊重しているし、俺が一番気を遣いたい相手であることは確かだ。

 

 だからと言ってなんでもかんでも恋愛的な行為に結びつけられては困る。

 

「親近感があってな。だからつい気にかけちまう」

 

「それって恋だよ?」

 

「違うが?」

 

「え、でも昨日パエトーン信者のお友達が『パエトーン様と好きなものが同じだと大きな愛が溢れておさえられないのです……』とか言ってたもん。恋だよ」

 

「変なやつと関わるのやめとけ?」

 

 弟は社会経験が浅く、変なやつにころっと騙されてしまいやすいのだ。

 SNS監視しといたほうがいいか?

 あとでニコラスにアカウント精査してもらおう。

 

「そうだ。ねぇ、お兄ちゃん。来たら聞こうと思ってたんだ」

 

「なんだ?」

 

「『請負人』、すぐに忘れられてたけど……僕たちのやり方って間違ってたのかな?」

 

 ああ。

 それは。

 

「どうなんだろうな」

 

 即答は、できなかった。

 少しだけ、目を瞑る。

 

「間違ってたような気はするが……それでも、もう賽は投げたんだ。今更ってのもな」

 

「……うん。僕よりずっと先に、お兄ちゃんなら気づいてるよね。なら、任せるよ」

 

「ああ、任せろ」

 

 いつからそれに気づいてしまったのだろうか。

 

 悪名は時間の流れにすり潰されてしまう。

 機材というものも、経年劣化で死んでいく。

 

 だから俺は、物語に惹かれているのだろう。

 才能がないことはわかっているけれど。

 

 それでも物語は、どん底にまでも届くから。

 

 

◇

 

 

 

 

 案内人は思い出す。

 彼らが『請負人』になった日のことを。

 

『ねぇ、お兄ちゃん。これからどうすればいいのかな』

 

 幼い自分が、そう問いかけてしまったからだろうか。

 最初から決めていたということはないだろう。

 自分の兄は冷静で、冷徹だ。

 リスクとリターンを天秤に掛けて、確実に利益が出るタイミングを嗅ぎ分ける嗅覚がある人だった。

 だから、請負人なんてとびきりの大馬鹿者になど、たった一人じゃならなかっただろう。

 

『……俺は兄貴だからな』

 

 いつも、思う。

 自分はあのとき、どんな顔をしていたのだろう。

 悲しい顔か。

 それとも、何もない顔か。

 嬉しい顔なんて、作れなかったし。

 怒りすら感じることもなかった。

 

 どんな顔をしていたのだとしても。

 その瞬間の自分と出会えば、きっと殺してしまうだろう。

 

『俺がオマエらを連れてってやる。な(・)り(・)損(・)な(・)っ(・)た(・)俺たちが、ここにいるって伝えてやる』

 

 そうして、兄は空を僅かに眺めた。

 今と違い、サングラスなど何もない目で見ていた。

 

『……そうだな……悪くない目標だ』

 

 強きを挫き。

 弱きも挫く。

 同じジャンクヤードのガラクタだけを慈しみ、世界に対して喧嘩を吹っ掛け。

 熱狂ですべてを飲み込んで、更地にしてしまうような。

 そんな滅茶苦茶なヤツがいれば、きっと世界は無視できない。

 

『虚狩りよりもデカい悪名を、ホロウの果てまで轟かせよう』

 

 きっと、その瞬間に──『請負人』は始まったのだ。






・『請負人』
 キャラを作っているわけではないが、仕事スイッチのような部分はある。
 請負人業に対するストレスは特にないが、近頃はやる気が萎えている。

・『案内人』
 めっちゃキャラを作っている。演技で気を張るタイプだから外に出ることが嫌い。(一応他にも理由はある)
 自分と程遠いキャラを演じているので、仕事に対するストレスは結構ある。でも外面は完璧。
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