明日こそ更新きびし〜かもです 主に労働の進捗によります
今回はレミエール視点 ちょっと個人的な解釈あり
レミエールにとって、結婚とは自分から程遠いものだった。
そもそも相手がいない。
それに、この世界をどん詰まりから救うという使命で戦ってきた彼女にとって、恋愛など意識の端にも引っかからないものであって。
そんなものは、自分の使命をやり遂げたあとに見るべき夢だと思っていたのだから。
だから当然、自分の子どもというものを、レミエールは想像などしなかった。
虚狩りとして使命を負った以上、真っ当な人並みの幸せは後回しにするのだ、と彼女はかつて自分で定めており。
──そんな彼女の前に現れたのが、なり損ないの青年だった。
初めて見たときは、まるで犬のような、猫のような──どちらにも似ている青年だと思った。
どこか野良の気配を漂わせている青年だった。
彼もまた、世界と戦っているのだと、すぐにわかった。
掛けているサングラスの奥の瞳は、擦れてしまった色をしているけれど。
レミエールを見て目を丸くする様は、どこか愛嬌を滲ませている。
見た目とは裏腹に──あるいは見た目通りに、存外かわいいところのありそうな青年だと思う。
次の印象は、冗談のように強い青年だった。
軽く受け流すつもりが、結果としてただ逃げ回るだけになってしまったのはちょっとした恥だ。
武器の性能がおかしいのもそうだが、本人だってまったく隙がない。どんな一手だって、突破するだけの力がなければ起こりで潰されてしまう。
そんなだから、殺さずに制圧するのが難しい。わかりやすく比較対象を挙げるならば、レミエールの知る現代人ではシグリッドに近い──そういうレベルの実力者。
たまたま見にきた程度の場所に、この時代の猛者がいるとは思わなかったし。
まさか「時序」の力に強引に抗ってくるというのも予想外だった。
今思えば、それこそ彼の正体を解き明かす最大のヒントだったのだろう。
ほんの僅かでも青年に、母体となったクローンを通じてタウミエルの因子が入っているのなら、抗体を持つことも特におかしな話ではない。
であれば、あの結果自体も理解できるのだ。
今の印象は──虚狩りという功績の、被害者で。
同時に想像もしていなかった、レミエールの子どもという
聞くに、クローンであった女性はレミエールとは似ていないようではあるのだが。
でもクローンなんて、知らないうちに生まれていた姉妹のようなものだとも思う。
そうやって本人が受け入れなければ、じゃあ一体何のために彼らは生まれたというのだ。
だからレミエールは、青年のことを血の繋がらないだけの自分の子ども──そうでなければ甥っ子かのように思っている。
別に、同情なんかではない。
一度そういうふうに見てしまうと、青年の刺々しい言動のすべてが反抗期特有の強がりのように見えてしまうのが悪い。
会ったばかりでお互いをちゃんと知りもしないけれど、時間が許すならば──レミエールの時間が残るうちに、できるだけ青年のことを知りたいと思う。
「罰金と注意で済んで良かったね?」
「うるせぇな……」
酒で焼けた上に、無理やり音を引き出して涸れてしまった声が、力無げにレミエールに反感を示す。
そんな姿も、バカなことをやった結果苦しむ子どものような幼さのように思えて、彼女はなんだか面白く見えて。
「てかテメー、どこまでついてくんだ」
「え? 普通にお家まで連れて行くよ。だいぶ酔ってるでしょ。引率しなきゃ」
「いらねぇよ、んなガキでもねぇ」
返答にキレがない。
随分と弱っているようだ。
あれだけ叫んでいれば、そりゃあ疲れ果てもするだろう。
「気分はどう?」
青年の衝動の発露は、これまで押し殺してきた感情の反動だ。
これまで飲み下すことのできなかった苦い思いも、思いっきり動いてみれば案外腹には据わるもの。
弱りに弱ってこそいるが、憑き物が落ちたような表情の青年は「ああ」と気の抜けた声をこぼした。
「最高だよ、クソったれ」
世界に対しての憤りを抱え続けていた青年は、そう言って自分の耳飾りに触れる。
「ロックスターにゃなれねぇと思っていたが。んな俺なんかの歌が、あんだけの拍手で受け入れられるのなら、案外向いてんのかもな」
「……そうだね。だってあのときのキミは、世界の主役だったもん」
嘘ではない。
確かにあの瞬間、青年は世界の中心に立っていた。
あの瞬間の青年は、この世界の主人公であったから。
「主役ねぇ」
そんな言葉を、青年は笑い飛ばして。
「俺のようなやつがそんなもんになれるなんざ、傑作だぜ」
冗談じゃないのになぁ、とレミエールは嘆息したのだった。
部屋に戻るなり、ソファに突っ伏して眠りはじめてしまった青年に意表を突かれ、レミエールはまじまじとその姿を見つめてしまった。
カラーグラスも外さずに眠ってしまっている。
それだけ眠かったのだろうか。直ぐ様寝息を立てるその姿に、彼女はちょっと呆れてしまった。
「もう」
レミエールは、青年が目覚めないようにゆっくりと、彼の顔からカラーグラスを外していく。
近くの机へと一旦置いて、少し離れた場所にある椅子へと座った。
「──なり損ない、ねぇ」
きっとその蔑称を、日常的に言われてきたのだろう。
けれどレミエールが今日一日で見てきた青年は、そんな言葉とは程遠い。
「大丈夫、キミなら飛べるよ」
ただ、そのやり方を知らないだけなのだ。
青年はきっと、何にだってなれるしどこへだっていける。
今からだって、どんな道でも選べるはずだ。
「今日は帰ろっかな。息抜きしたくなったらまた来るね」
言いながら、冷蔵庫に置いてあるお茶のペットボトルをグラスと一緒に出しておく。
ソファ前の机に置いて、そのままレミエールは眠る青年へと手を振った。
そうして、窓から飛び立っていく。
(──起きてるときも、そのくらい気を抜いていいのにね)
なんてことを、思いながら。
レミエールさんのターン終了 AI5回行動をやらかしたあたりやはり初代虚狩りは格が違った