Jukebox Driver   作:moti-

33 / 33
 二日連続で寝落ちちゃってゼンゼロログイン忘れてた;;


Change the world

 目を覚ますと、病室だった。

 

 どこか、微睡みの中にあったような感覚だけがある。

 けれど先ほどの出来事が一瞬前のもののようにだって思えて。

 

「──はぁ」

 

「おはよう。ゆっくり寝れた?」

 

 そんな、悪びれもしない声が聞こえたので、そちらに目をやれば──レミエールが椅子に座って俺を見ていた。

 最早ため息すら出てこない。

 

 少し視線を下げれば、ダイアリンがこちらにもたれ掛かるようにして眠っている。

 

「……今何時だ?」

 

「夜の九時くらい? 耐性あるからか、思ったより早く目が覚めたね。一日くらいは止めるつもりだったんだけど」

 

「…………」

 

 ダイアリンを見る。

 その身体に、特に傷のようなものは見当たらない。

 

 何となく、自分の身体の切り口へと手を当てる。

 包帯こそ巻かれているが、傷口はもう繋がりかけているようだ。指で押しても特に違和感はない。

 長く戦えるように作られているからな。

 だから、この事実は特に違和感のあることでもない。

 

「あ、そうだ。どうせ今暇だよね。エーテリアスカード壊れちゃったんだけど、直せないかな?」

 

「よーし任せろ二度と直らなくしてやる」

 

「あちゃー、やっぱり怒ってるかぁ」

 

「そりゃそうだ」

 

 初代虚狩りだからか、理解してないようだが。

 

「『請負人』にどれだけ敵が多いか知らねぇだろ」

 

「うん。でも、それじゃあキミが生き方を改めればいいじゃん。『請負人』を辞めてオーディオショップ一本にすれば、何も問題はなくなるよ。顔を見られるようなヘマ、基本してないんでしょ?」

 

「そう簡単に辞めれねぇから話が単純にならねぇんだよ」

 

「うーん、なんで?」

 

 心底疑問といった顔だった。

 それはきっと、『請負人』というものに価値を感じていないからなのだろう。

 そうだ、きっと弟だってそんなものだ。

 俺だけが、『請負人』に価値を抱き続けている。

 

「『掃除屋』がわかりやすい例だ。畏怖と絶望を乗せて、郊外の連中はその名前を呼ぶ。知らねぇやつはバカかガキだけ」

 

「……名前を遺したいって?」

 

「悪名をな。名声を望むには生まれたときにラインを越えてしまっているし、俺の出生じゃ困難が多い。……初代虚狩りサマにゃわからねぇだろ。いや、わかんねぇのさ、誰だって」

 

 クローン二人の遺伝子から生まれた、模造品の二世代目だなんて表舞台に上がれるような存在でもない。

 だったら目の前にある道は一つだ。

 

 殺して、殺して、殺し尽くして──そうやって、俺自身が『請負人』という悪意そのものになる。

 

「真っ当に生きるのを諦めたの?」

 

 レミエールのその言葉は、その通りだ。

 けれど、それ以上に。

 

「俺の弟たちは、まともに生まれることすらできなかったやつばかりだ」

 

 人の形にならなかったり。

 生まれてすぐに死んだり。

 そういった死の度に、母親は憔悴していたような気もする。

 

 俺は、どう思ったっけ。

 覚えてはいないが、それでも。

 

「……誰かを不幸にしてやれば、そんな不幸だってほんの少しだけありふれる。だから悪人になってやろうと思ったんだ」

 

 生まれてこの方、悪人の参考例は多かったしな。

 特にあのクソ野郎。

 あいつの真似をするだけで、悪辣なんか簡単にできた。

 

「そっか」

 

 そんな俺の言葉を、レミエールは笑わなかった。

 ただ、何かを考えるように目を少し閉じて、そのまま開いた。

 

「……キ(・)ミ(・)が(・)や(・)ら(・)な(・)き(・)ゃ(・)、か。やっぱりキミは、私に似てるよ」

 

 どこがだよ。

 

 初代虚狩りと、ただの人殺し。

 それのどこが同じだって言うんだ。

 

「それでも。ねぇ、シ(・)ド(・)く(・)ん(・)」

 

 レミエールは、そう言って微笑んでいる。

 その笑みは、母と同じような柔らかさを含んでいた。

 

 いつか見た、母親と同じような。

 

「私は、キミならきっと──虚狩りになんて負けないくらいの名前を遺せるって思ってる」

 

 そうして。

 

 気づけば、レミエールの姿は消えていた。

 

「……くだらねーことに能力使うんじゃねぇ」

 

 言ってから照れやがって。

 そういうとこは、母親と違う。

 あの人は平気で歯の浮くようなセリフを言う人だったから。

 

 さて。

 

「もう寝たふりしなくていいですよ」

 

 そう言えば、ダイアリンはどこかむっとしたような顔で顔をあげた。

 じっとりとした目が、俺を刺している。

 

 これに関しては甘んじて受け入れよう。

 礼儀を欠いたのは俺のほうだしな。

 

「……あー、怒ってます?」

 

「ええ、もちろん。むしろなんで怒ってないと思ったんですか」

 

「アンタなら俺と同じ判断をするかなと」

 

 嘘だ。

 あくまでちょっと期待していただけ。

 

「……あー。そういうことですか」

 

 何か、納得したような表情でダイアリンは呟く。

 

「とりあえずシドさん。あなたが『請負人』かつ『ギリガン』ということで間違いないですか?」

 

「そうですね」

 

「で、指名手配犯であるあなたと一緒にいると、私に危害が及ぶ可能性が高く、安全を保証できないから一緒にいないほうがいい──これがあなたの主張で合ってます?」

 

「はい」

 

 なんだろう。

 淡々とした詰め方に、妙な圧がある。

 

 ──気圧されているというのか? この俺が。

 

「音動機……赤色以外……それって……」

 

 小さくぼそぼそと呟く声を拡大して拾う。

 音動機のほうはよくわからないが、しかしこれで熱に浮かされて言ったバカみたいなセリフの意図がバレてしまったわけだ。

 

 まいったな。

 思っていた以上に、照れくさい。

 

「……シドさん、一つだけ聞かせてください」

 

 ダイアリンは、表情を変えずに言う。

 

「あなたは、どうして私を助けてくれるんですか?」

 

 さて。

 どうしてだろうか。

 

 少し考えてみれば、答えは簡単だった。

 

「あの犬野郎が、アンタを殺そうとしてたとき。あのとき、キレてて何も考えられなかった」

 

 だからついつい言っちまったんだよ。

 『請負人』だなんて、しれっとな。

 

「つまり、アンタのことが大切なんだ。ただそれだけが理由だよ」

 

「……………………」

 

 ダイアリンは、少しの間黙り込んだ。

 

 結局、そうだ。

 俺が彼女と離れようとする理由だって、彼女のことが大切だからに違いない。

 俺といるほうが不幸になる。

 俺は損をさせる化身みてーなところあるしな。

 

「……そうですか」

 

 そうして。

 

 ダイアリンは。

 

「シドさんばっかり裏の顔を晒すのは不公平ですから、挨拶しておきましょう」

 

 笑顔を作って、言った。

 

「あたしはTOPSの内部監査組織『クランプスの黒枝』所属、ダイアリンです。どうぞよろしくお願いしますね、『請負人』さん?」

 

 黒枝。

 何か聞いたことがあるような気がする名前だ。

 

 少しだけ、記憶を掘り返してみる。

 

 

『だからそれは悪かったって。あれはこっちが見誤った。まさか請負人を裏切って横流しするなんかすると思ってなかったんだよ。だから今回はちゃんと相手も厳選したんだぞ。TOPSの黒(・)枝(・)だ。向こうから頭下げてきた立場だから下手な扱いもしねぇ!』

 

『黒枝だか小枝だか知らんが、誰が相手だろうと俺はもう音動機を売らねぇ。それに『気に入った相手としか取引しない』っての。請負人のルールだろ』

 

 

『仕事道具が壊れちゃったんですよ。直るまでは他の備品で代用しなきゃいけないんですけど、そっちはちょっと馴染まなくて。で、同僚の伝手でもっと良いやつにできるかもっていう話だったんですけど……』

 

『頓挫したんですか?』

 

『ええ。向こう側から拒否されちゃいました。ちょっと期待したんですけど……そのぶん余計に落とされた感じがしてですね』

 

 

『んー、仕事道具ってなんですか?』

 

『あ……えっと、音動機なんですけど』

 

『カスタマーサポートですよね?』

 

 

 ふむ。

 

「……音動機の依頼、承ります」

 

「いえ、もう直ったんで大丈夫ですよ」

 

 そう言って、ダイアリンはくすりと笑った。

 からかうような笑みだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

偽・虚狩り〜ホロウレイダー堕ちした元治安官〜(作者:初楼)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

治安官がアルゴスホロウ内で違法な人体実験の被験者を救出してTOPSの連中に喧嘩を売って雲隠れ。▼厄介な連中に目をつけられたので、ホロウレイダー堕ちを決めたお話。▼


総合評価:1618/評価:8.62/連載:26話/更新日時:2026年10月16日(金) 05:26 小説情報

外計局の訳あり男とロスカリファ(作者:Bestmeever)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

百年前に一度死んだ。▼……はずなのだが、色々あって今も普通に生きている。▼そんな俺――アステルは、現代のロスカリファでノルムーに拾われ、なんやかんやあって外務計策局、通称「外計局」で働くことになった。▼「アステル、これ買ってくるのだ!」▼「自分で行けよ」▼「拾ってもらった恩を忘れたのだ?」▼「それいつまで有効なんだよ……」▼百年前とは何もかも変わったロスカリ…


総合評価:2415/評価:8.78/連載:16話/更新日時:2026年10月17日(土) 18:30 小説情報

朝起きたら隣にヴェリナがいた(作者:ぼっちプレイヤー)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼ ヴェリナさんの新密度イベでこれ同人誌の導入では?となってから勢いで書いた。▼ オリ主×ヴェリナなのでアキカプ推しのプロキシは閲覧注意なのだ。


総合評価:1805/評価:8.48/連載:6話/更新日時:2026年09月03日(木) 20:00 小説情報

監察官のちょっと奇妙な冒険(作者:プロメイア推しの人)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

オリ主が転生して、赫灼熱拳するお話です。▼ストーリーは2.7から始めま~す。ん?まぁ、途中からにょきっと生えてくる感じで。(それでも過去キャラと絡みがあるのは許してちょ)


総合評価:1052/評価:8.24/連載:10話/更新日時:2026年06月23日(火) 16:25 小説情報

猫、拾いました(作者:ぽこちー)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

続いてのニュースです。▼現在、新エリー都では謎のウイルスが猛威を振るっています。▼このウイルスに感染すると、人間は動物へと変化し、知能構造体はその形態や性質に、未知の変化が生じてしまうとのことです。▼現在、専門家たちは治療薬の開発を急いでいますが、いまだ完成の目処は立っておらず、感染拡大の原因についても詳しいことは分かっていません。▼市民の皆様は、不要不急の…


総合評価:963/評価:8.74/連載:8話/更新日時:2026年09月17日(木) 14:48 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>