これで十一話ですが、やっぱり信之助の性格に違和感がある時があるなぁと思います。でも幼稚園児じゃなくて高校生ですから勘弁してください。
「まとめて吹き飛ばしなさい!」
正面の階段前広間で、飛鳥は水樹を使い騎士達を相手取っていた。
騎士達も宮殿ごと破壊するように暴れる飛鳥を無視できずほとんどの騎士達がこの場に残っている。大勢の騎士達を引き付けている飛鳥はそんな中で思う。
(ギフトを支配するためのギフト…。だけど、今はこの水樹を操るので精一杯というのはいただけないわ)
飛鳥は不満に思う。
ガルドとの戦いで自分のギフトの使い方を悟った。友人である皆の心を捻じ曲げてしまわないように、このギフトを
しかし、今の飛鳥の力では、操ることのできるギフトは水樹だけだった。飛鳥が水樹を持ってきたのは単純に水樹以外のギフトは操ることができなかったからだ。結果的には水樹で良かったが。
(けど今はいいでしょう。これぐらい反発してくれないと張り合いがないわ)
いつかは様々な奇跡を支配してみせる。決意を新たにし騎士達を相手に暴れ続ける。
◇◇◇
信之助達は不可視のギフトを持つ騎士を相手に戦っていた。
「ぐわ!?」
「一つ目ゲット」
五感が鋭い耀が奇襲を仕掛け、不可視のギフトである兜を奪う。
「オラも一つゲットー!」
耀が不可視の騎士を相手している間に信之助も一つ手に入れていた。
「ホレ、御チビ。お前の分だ」
「わっ」
十六夜が耀と信之助から受け取った兜を被りジンにも被せる。すると二人の姿が瞬く間に見えなくなる。
「それじゃあ俺らはルイオスの所に行くぞ。御チビ」
「は、はい」
そう言って十六夜はジンを連れて奥へと進んで行った。
「信之助。これからどうする?」
「ん~。役目は殆ど終わったようなもんだしね。飛鳥ちゃんの様子でも見に行きますか。ただ…」
「ただ?」
「お姉さんがまったくいない…」
「……」
殴りたくなった耀は悪くない。
殴ろうとしても信之助には避けられるだろうが、そこがさらに腹がたつ。
信之助達の役目は敵の迎撃と攻略に必要な兜を奪うこと。必要な兜を奪った今、殆どすることは無い。敵の迎撃もジンには十六夜がついてるし、曇天丸による加護もあるのであまり戦う必要はない。
「あっ。耀ちゃん危ない!」
「えっ!?」
その時、信之助が耀の前に鞘に納めた曇天丸で何かを受け止めガツンと音が響く。
耀にはまったくその騎士を感じ取ることが出来なかった。
「チャーシュー
「がっ!?」
信之助は何もない虚空に鞘に納めた曇天丸を振り落とすと、床に叩き付けられた騎士が姿を現す。
その騎士は驚愕する。自分が被っていたのは不可視のギフトの兜、そのオリジナル。劣化品であるレプリカの兜とは違う、神仏の暗殺をも可能とする代物だ。にも拘らずこの少年はそれを見破ったのだ。
その騎士は知らない。この少年が魔王クラスを相手に幾度も戦い、勝利していることを。幾度も世界を、星を、人々を救った本物の英雄であることを。そして、並の神仏を凌駕する力を持つことを。
「み、見事だ」
オリジナルの兜の力を見破った少年を称賛して、その騎士は気絶した。
「信之助、ありがとう。でもどうして分かったの? 私は分からなかったのに…」
耀の五感の鋭さはノーネームでもトップクラスだろう。しかし耀には先ほどの騎士が分からなかった。
だが、信之助はそれを容易に見破った。純粋にその理由が知りたかった。
「なんとなくだけど? ぶっちゃけただの勘」
「……そう」
信之助を常識に当てはめたのが間違いだった。十六夜が規格外なら信之助は非常識だ。
耀は一つ学んだ。
「それと、話してたら結構来たね」
「うん」
信之助と耀が話している間にペルセウスの騎士達が三十人ほど集まっていた。
飛鳥がやられたというのは考えにくい。
飛鳥にも曇天丸の加護がある、ペルセウスの装備ではこの短時間で加護を破るのは無理だ。恐らくあの騎士達は不可視のギフトで透明になっていた者と飛鳥の所を抜けてきた者だろう。
「ちゃっちゃと片付けますか」
「そうだね」
二人は騎士達に向かっていった。
◇◇◇
「ふう。何とか終わったゾ」
「……」
ペルセウスの騎士達を片付けた二人は一息ついていた。
(強いとは思ってたけどここまでとは思ってなかった)
騎士達との戦闘での信之助の動きを見た耀は驚いていた。
耀が数人倒している間に信之助は十数人もの数を倒していた。恐らく本気を出していないだろう。曇天丸を鞘から抜かずに、しかも耀を何度か手助けをしながら戦っていたからだ。
耀は信之助と自分の圧倒的な差があることを感じ、悔しかった。
「耀ちゃんどうしたの? 難しい顔をして…! 耀ちゃん下がって!」
「わ!?」
信之助の手に掴まれ、後ろへと引かれる。すると周囲が褐色の光に包まれる。
信之助は曇天丸を鞘から抜くと刀身に金色の光が宿り視認できないほどの高速の斬撃が褐色の光を遮る。無数の高速の斬撃により生まれた壁は信之助と耀を守りきった。
「耀ちゃん。大丈夫?」
「う、うん。でもこれって…」
信之助に掴まれたことを思いだし耀は少し赤くなったが、周りを見て恐怖した。自分達がいた白亜の宮殿は灰色の石の世界へと変わっていた。信之助が守ってくれなかったら自分も石になっていただろう。
「耀ちゃん。耀ちゃんは飛鳥ちゃんの様子を見に行って」
「信之助はどうするの?」
「オラは十六夜君達の所に行くから」
「……わかった。でも気を付けてね」
耀は信之助と別れると飛鳥がいる場所を目指す。
耀が素直に言うことを聞いたのは飛鳥が心配だからなのと自分が実力不足なのをわかっているからだ。
(でも必ず)
必ず追い付く。今はまだ圧倒的な差がある。だがどんなに時間が掛かっても十六夜や信之助に追い付いてみせると決心した。
◇◇◇
「おいおい。元・魔王様こんなもんか?」
「GYAAAAaaaaaa!?」
十六夜は魔王・アルゴールを終始圧倒していた。
「くそ!」
それを見たルイオスは悪態をつく。
人間が、本来の力を出せないとはいえ星霊を素手で圧倒していたのだ。ノーネームには桁違いの力を持つ者が二人いるとは聞いていたが正直、半信半疑だった。
あの少女は得体が知れない。疑うのは当然だ。それに黒い飴もアルゴールに食べさせていない。あの少女はこの飴にどんな力があるのか言わなかったからだ。
その結果がこれだ。
「くそ! どうすればいい!」
負けるわけにはいかない。たとえ信用できなくともこの飴をアルゴールに食べさせるべきか迷っていた。
「ほうほう。もう終わりそうですな」
その時、呑気な声が聞こえた。
「野原。お前無事だったのか」
「信之助さん!? どうしてここに!?」
「大丈夫だったのですか!?」
「バカな!? どうして石化していない!?」
声の正体は信之助である。
三人は石化していると思っていたため驚いていた。ルイオスもまた驚愕する。そして思い出す、奴も少女が言っていた桁違いの力を持つ者の一人であることを。
「GYAAAaaaaa!!」
「お?」
アルゴールは隙だらけの信之助に襲いかかるが、それでやられる信之助ではない。
「北海
「GYa!?」
二連撃。
剣道でいう胴と面をアルゴールに食らわせルイオスの方へとぶっ飛ばした。
「な!?」
「ウソでしょ!?」
「星霊をこうも簡単に!?」
「へえ」
星霊であるアルゴールを簡単に倒した信之助にルイオス、ジン、黒ウサギは驚愕し、十六夜は笑みを浮かべる。
信之助が何故星霊をぶっ飛ばせたのか、答えは一つ。信之助は常識では測れないからだ。
解析不能、測定不能、予測不能。それが全知にすら理解不能とされた野原 信之助である。
「そろそろ終わらせますか」
「ああ。そうだな」
「もう後がない」
ルイオスは黒い飴を取り出した。
「なんだアレ? 黒糖か?」
「コーヒー飴じゃない?」
「どちらでもいいです!」
信之助達は困惑していた。あんなのはペルセウスの伝説にないからだ。
「これを食え! アルゴール!」
ルイオスは少女から貰った黒い飴をアルゴールに食べさせる。
「GYAaaギャキャハハハハハハハハハ!!」
飴を食べたアルゴールは笑い出す。そして…
「ヘンジル…」
世界が、変わった。
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