嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうもあるマンガで妖怪では鵺、塗壁、吸血鬼が好きなった塗る壁です。
てゆうか吸血鬼って妖怪?

十三話です。


ギフトゲームの決着だゾ

「ジン君」

 

「は、はい」

 

 信之助はジンに向かって言う。

 

「ルイオスのお兄さんはまだ生きてるゾ」

 

「え!?」

 

 信之助の結論にジンは驚く。

 何故ならジンには蛇に食われて生きているとは思えなかったからだ。しかし、信之助にはジンの考えてることが分かっていた。

 

「このギフトゲームのルールを覚えてるよね?」

 

「え? …あ!」

 

 ジンは思い出す。

 今回のギフトゲームではルイオスを倒すか負けを宣言させれば勝利出来るのだ。しかし、ルイオスが蛇に飲み込まれたにも関わらずゲームは続いている。それはつまり、ルイオスはまだ生きているということだ。

 

「多分、アルゴールをどうにかすればルイオスのお兄さんを助けられると思うゾ」

 

 そう。おそらく先程の蛇もア法によって作られたもの。つまりアルゴールを倒せばア法は解ける。そうすればルイオスも解放されるはずだ。

 

「だからジン君はここで待ってて。アルゴールはオラがどうにかするから」

 

「え!? でも…」

 

 ジンは十六夜と戦っているアルゴールを見る。現在、両者の力は拮抗していた。

 

「いくら信之助さんでもあの戦いには…」

 

 戦いの中には入れない。ジンはそう思った。十六夜とアルゴールはジンの目で見ても桁違いの戦いを繰り広げていた。とてもじゃないが信之助が参加できるような戦いには見えなかった。それでも…

 

「大丈夫」

 

「え?」

 

「オラは結構強いから」

 

「信之助さん…」

 

 信之助は言う。大丈夫と。しかしジンにはそれが信じられた。何故かは分からない。理由も理屈もない。しかし、ジンは信じることができた。この人なら大丈夫だと。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ちっ。ビックリ箱か? てめぇは」

 

「キャハハハ!」

 

 十六夜はアルゴールと激しい戦いを繰り広げていた。 アルゴールはあの飴を食べてからパワーもスピードも格段に上がっていた。それでもまだ十六夜の方がパワーもスピードも上である。だが、十六夜は押されていた。

 パワーもスピードも十六夜が上。だが、アルゴールの魔法のようなもののせいでその動きを読むことが出来なかった。

 

「いちいち笑ってんじゃねぇ!!」

 

 これだけの戦闘を繰り広げてもアルゴールは余裕そうに笑っている。それが十六夜のプライドを刺激した。

 

「キャハハ! ギャッ!?」

 

「野原!?」

 

 突如、信之助が加わりアルゴールを刀でぶっ飛ばした。突然現れた信之助に驚いたが十六夜はすぐに冷静になり信之助に聞く。

 

「野原。お前、なにいきなり人の喧嘩に手を出してんだ?」

 

 十六夜の声には微かに怒りを含んでいた。十六夜にとって人の喧嘩に手を出さない自分の喧嘩に手を出させないのは当然のことなのだ。

 

「ごめんごめん。でも十六夜君。今回だけはオラに譲ってほしいゾ」

 

「…………」

 

 十六夜は信之助の目を見る。信之助の目は真剣だった。絶対に負けられないという強い想いが籠った目。

 

「ちっ、分かったよ。御チビの面倒は俺が見る。だだし…」

 

 十六夜は一旦言葉を切り、面白そうなものを見る目で

 

「絶対に負けんなよ?」

 

「おう!」

 

 それだけ言うと十六夜はジン達の所に向かっていった。

 

「それじゃあ()りますか」

 

 信之助は戻ってきたアルゴールを見る。相変わらずアルゴールは笑っている。そして…

 

「キャハハハハハハハハハ!!」

 

 信之助に襲いかかる。魔王と英雄がぶつかり合う。

 

「ハアァァァァァ!」

 

 信之助はアルゴールに向けて刀を振るう。

 アルゴールは信之助の刀を避け、防ぐ。続けて数歩下がると右手を前に出す。瞬間、右手の五本の指が五匹の蛇へと変わり信之助に襲いかかるが、すかさず五匹の蛇を刀で打ち落とす。

 アルゴールが瞬時に距離を詰め信之助に拳を振るう。対し、信之助は技をもってアルゴールの攻撃を捌ききる。

 パワーやスピードはアルゴールが上。しかし、信之助には突出した技術と未来予知にも似た直感がある。信之助とアルゴールの実力は拮抗している。否、拮抗していた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「す、凄い。信之助さんがここまで強いなんて!」

 

「こんなことって……」

 

 ジンは信之助の実力に驚愕し、黒ウサギは言葉を失っていた。信之助は強いとは思っていたがここまでとは思っていなかったからだ。そして十六夜も…

 

「おいおい。これは期待以上じゃねーか?」

 

 十六夜が信之助に譲ったのには勿論理由がある。

 それは信之助の実力を見るためだ。ペルセウスの騎士達ではろくに相手に成らなかった。だが、今のアルゴールなら信之助の実力を確かめるのにちょうどいい。そう思ったのだ。

 

「オマケに…黒ウサギ、気付いてるか?」

 

「は、はい」

 

「え? 何がですか?」

 

 十六夜はおそらく自分と同じく気付いているであろう黒ウサギに聞く。ジンにはそれが分からなかった。

 

「信之助さんの動きが段々と良くなっています!」

 

「え!?」

 

 そう、高い実力を持つ十六夜と黒ウサギだからこそ気付いた。信之助の動きが良くなっていることに。

 信之助はこの短時間で成長している。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「やっと少し分かってきたゾ」

 

 アルゴールとの戦いの中で気付いたこと、それは

 

「お前は感情も思考も何もない」

 

 信之助が気付いたこと。それは今のアルゴールには感情と言うものが宿っていなかった。

 ルイオスが食べさせた飴はアルゴールが持つ自我も感情も全てを封じ込めてしまったのだ。アルゴールの目的、それは…

 

「オラか…」

 

 そう、アルゴールの目的。それは信之助と戦うこと。それだけの為に動いてる。ジンを狙ったのもルイオスを飲み込んだのも全て、信之助を戦わせる為。

 

「例え手のひらで踊らされようと関係ない! オラはオラだ! オラはオラが信じたことを貫くだけだ!」

 

 そう。例えそれが敵の作戦でも目的でも関係ない。

 信之助は単純だ。友達を傷付けたから。大切なものを守りたいから。信之助が戦うのに大した理由なんてない。

 

「いくゾ!」

 

 その瞬間、刀身に金色の光が宿る。

 これはおバカパワーを武器に宿らせたのだ。光の剣を100とするならば未来で装置を使って放出したのは30ぐらい、そして武器に宿らせたエネルギーは5程度。それ以上は武器が持たないのだ。

 信之助は刀を勢いよく回転させる。

 

(だい)(かざ)(ぐるま)!!」

 

「ギャアァァァァ!!?」

 

 とてつもない暴風がアルゴールを襲う。

 アルゴールは飛ばされまいと力の限りしがみつく。これはかつて信之助が剣道を学んでいた頃、戦った少年が使っていた技、その技を更に高めたもの。

 

「メエェェェェン!!!」

 

「ギャアァァァァァァァ!!!!」

 

 回転により生まれた遠心力を利用し、振り降ろす。次の瞬間、桁違い衝撃が生まれアルゴールを吹き飛ばした。

 

「アルゴール。お前じゃオラに勝てないゾ!」

 

 そして、信之助はアルゴールの懐に飛び込み…

 

「ギャアア!?」

 

 一閃。

 たとえ、どんなに強力な力を持っていようともアルゴールの一撃は信之助には届かない。

 

奥義(おうぎ)!!」

 

 信之助は両手でしっかりと柄を掴むと上段の構えを取る。その瞬間、刀身が強い金色の光を放つ。

 

()(くも)()り!!!」

 

 

 信之助が勢いよく金色に輝く刀身を振り落とす。

 そして、振り落とされた刀身が描いた軌跡をなぞるように巨大な三日月のような金色の光がアルゴールに向けて飛んでいく。

 それはまさしく幾重にも重なった雲、八雲を切り裂くが如く。

 

「ギャアアァァァァァァァ…………」

 

 その光がアルゴールを呑み込み吹き飛ばす。

 アルゴールは悲鳴と共に消え、その場にはアクセサリーだけが残された。アルゴールが消えると世界は白亜の宮殿に戻る。

 

「あ! お兄さん!」

 

 元の世界に戻ると少し離れた場所にルイオスを発見する。信之助はルイオスの元へ駆け寄った。

 

「お兄さん、大丈夫?」

 

「うっ…僕はいったい…?」

 

 信之助の声で目覚めたルイオスは辺りを見回す。そして世界が元に戻っていることで何が起きたのか悟る。

 

「そうか。アルゴールは負けたのか…」

 

 ルイオスは目を閉じる。その様子は悔しそうにも嬉しそうにも見えた。

 

「おい。審判」

 

「は、はい!」

 

 ルイオスは近くに来ていた黒ウサギに言う。

 

「僕の負けだ」

 

「え?」

 

「いいの?」

 

 自ら負けを認めたルイオスに信之助は聞く。

 

「ああ。アルゴールが敗れた今、僕にお前達と戦う力はない。これが悔しいという気持ちなんだな。初めての経験だ」

 

「そっか」

 

「審判。早く宣言を頼む」

 

「は、はい!」

 

 ルイオスに急かされた黒ウサギは高らかに宣言する。

 

「“ペルセウス”ゲームマスター、ルイオス様の降参により…勝者、“ノーネーム”!」

 

 ギフトゲームはノーネームの勝利に終わった。

 

「そういえばルイオス、あの飴は何だったんだ?」

 

「それ、オラも気になってたんだよね」

 

 十六夜と信之助は飴のことをルイオスに聞く。

 

「ああ。あの飴は人から貰ったんだ」

 

「人って誰から?」

 

「それは……あれ?誰から貰ったんだ?」

 

「「は?」」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 遠く離れた暗い森で

 

「書き()()()記憶はこれぐらいでいいかな」

 

 闇色のその少女はクスクスと笑う。

 

「でも予想外だったな~。かませ犬程度にはちょうどいいと思ったんだけど」

 

 少女には分かっていた。飴を使ったとしてもルイオスには勝ち目がないことを。だが、まさかルイオスと和解するとは思ってもみなかった。

 

「それにしてもやっぱり…」

 

 少女は一度言葉を切る。

 あらかじめ分かっていたことであった。それでも確かめたかった。

 

「弱くなってたな~。しんちゃん」

 

 事実を告げる。

 信之助は弱くなっていた。そう、一年前よりも…

 

「やっぱり、しんちゃんに一年前の力を取り戻させるには“アイツ”からしんちゃんに取り返さないとね」

 

 一年前。信之助は今より強大な力を持っていた。だが、今はその力を失っている。

 

「問題はどうやって“アイツ”を箱庭に呼び出すか。可能性があるとすれば…」

 

 少女は考える。どうやって“アイツ”をこの箱庭の世界に呼び出すか。

 

「しんちゃんの危機…」

 

 難しい。少女はそう結論する。信之助は強い。確かに一年前よりは弱いが並大抵のことでは危機に陥ることはない。

 

「取り敢えずいろいろと考えとかないとね」

 

 少女から笑みが消える。すると周囲の植物が少女を中心に枯れていく。

 

「覚悟してね。()()()

 

 お前の力は本来は信之助のものなのだから。




再び出てきた謎の少女。そして、新たなキーワード、英雄譚。

これからもよろしくお願いします。
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