いやー第2章を書こうと思ったんですけど一話ぐらい外伝をやりたかったというかなんというか。ごめんなさい。
ペルセウスとのギフトゲームから2日。世界の果てにある、とある山の山頂に少年が二人いた。
「ねー、本当にやるの~」
その一人の少年は面倒臭そうに言う。
その声にはまるっきりやる気が感じられない。その人物は茶色い長ズボンに赤いTシャツ、髪は黒い短髪で太い眉毛が印象的な少年。名を野原 信之助。
「ハハハ、そう言うなよ野原。こんな機会は滅多にねえからな、よろしく頼むぜ
もう一人の少年は軽薄な笑みを浮かべるが、どこか獰猛さを感じ取れる。学ランを着て、信之助の髪よりも少し長い金髪の少年。名を逆廻 十六夜。
何故ノーネームの最高戦力と言えるこの二人がこうして向き合うことになったのか。それは今から数十分前に遡る。
◇◇◇
「よお、野原。今頃起きてきたのか?」
「ん~」
十六夜は朝と言うには少し遅めに起きてきた信之助に声をかける。
「それはそうと野原。少し確かめたいことがあるんだが、いいか?」
「何?」
信之助はダルそうに応える。信之助は朝に弱いため、起きたばかりの時はダルそうにしている。
十六夜はそんなことを気にも止めず…
「ちょっくら俺と喧嘩しないか?」
「………………え?」
その瞬間、信之助は完全に目が覚めた。
◇◇◇
そして現在。
「ねえ? やっぱりやめにしない? オラ、十六夜君と戦う理由が無いし。それよりも帰ってゴロゴロしたいんだけど」
あの後、もちろん信之助は断ったが半ば強引に連れてこられた。それだけでなく…
「お前には無くても俺には有るんだよ。それに勝ったら何でも奢ってやるからよ」
そう。十六夜は信之助が自分に勝てたら信之助に何でも奢ると約束した。なので信之助も渋々ついてきた部分もあるのだ。
「それでどうするの?ギフトゲーム?」
「いや。これはあくまでただの喧嘩だからな。そこまでやる必要ないだろ」
十六夜は息をフウと吐くと構える。
(幾度も世界を救った英雄。戦わねえと損だろ)
最初の時から信之助の実力は気になってはいた。
ヤクモという男に勝ったと言っていた時、信之助からハイグレ魔王の話を聞いた時、そして信之助の戦いを見た時にそれは確信に変わる。
信之助は自分と同格の存在だと。
出来ればすぐにでも戦いたかったが、昨日はペルセウスとのギフトゲームの後始末でやる暇がなかった。
「いくぜ、野原!」
十六夜は第三宇宙速度に近い速度で飛び出し、拳を信之助に向けて振るう。
「なっ! 居ねぇ!?」
突き出した拳には全く手応えがなかった。
十六夜が信之助を探して周りを見渡そうとすると、微かに気配を感じた。
「ほい」
「ちっ!?」
素早くその場から横に跳ぶ。そして、先程までいた場所に鞘に納まったままの刀が振り落とされる。
「おー! 今の避けるなんて流石は十六夜君。やる~」
「はっ、あんま舐めんじゃねえよ!」
「でも十六夜君はまだ本気じゃないでしょ?」
「へえ? やっぱ気付いてたか」
「当然」
信之助はエッヘンと胸を張る。
十六夜はもしあのまま信之助に拳が当たるようなら寸前で止めるつもりだった。だが、信之助はそれをいとも簡単に避けたのだ。
十六夜は嬉しそうに笑う。
「それはお前もだろ? まだ鞘から刀を抜いてねえじゃねえか」
まだ互いに本気じゃない。にも関わらず十六夜は手応えを感じていた。
対等に戦える手応えを。
「それじゃあ続けるか! 野原!」
「やれやれ。しょうがないな~」
十六夜の拳と信之助の刀がぶつかり合う。
「オラァ!」
信之助に向けて目にも止まらぬ拳の連打が襲う。
「よっと!」
それで終わる信之助ではない。刀を使い、捌き避け防ぎきる。
「おー危なかった~」
「無傷かよ」
十六夜は驚愕する。
身体能力のパワーやスピードは十六夜が上である。だが、信之助は全く無傷。先程の連打で倒せるとは思っていなかったが無傷で防ぎきるとは驚愕せざる得ない。
確かにパワーやスピードは十六夜が上だが信之助にはそれを補って余りある技量と反応速度。そして、桁外れの勘の鋭さをもつ。
「そうじゃねえと面白くねえよなぁ。野原」
十六夜は獰猛な笑みを浮かべ信之助を睨む。
「そんなに見つめられると恥ずかしいゾ」
「照れてんじゃねえよ! 後、見つめてねえ!」
信之助は後ろを向きながら笑い、頭を掻く。そんな信之助の態度を見て十六夜は溜め息を吐く。
「相変わらず調子が狂う」
「いや~。それほどでも」
「褒めてねえよ! 続けるぞ!」
十六夜は下の地面をおもいっきり蹴り上げる。
「おーーー!?」
今度は信之助が驚愕した。
十六夜に蹴られた地面は砕け、幾つもの岩が信之助に向けて散弾の如く飛んでくる。
信之助は刀を抜く。
「は?」
十六夜は呆然とすることとなる。
突如、無数の銀の軌跡が走り幾つもの岩が石ころ程度にまで切り刻まれたのだ。
「プラス風車!」
「な!?」
突風が起こり、石ころにされた元岩が十六夜に跳ね返された。
「甘ぇ!!」
十六夜は前に向けて拳を振るう。十六夜の拳は突風と跳ね返された石を打ち砕く。
「隙あり!」
「くっ!?」
十六夜に刀身が迫る。
信之助は突風を起こすと同時に駆け出していたのだ。十六夜は拳を振り上げ刀身の側面に当てることで防ぐ。
二人は一旦離れ、信之助は刀身に金色の光を宿らせ、十六夜は強く拳を握り締める。
(ついに出しやがったか…)
アルゴールとの戦いで見た金色の光。
それは十六夜が箱庭に来たときに見た巨大な金色の光の柱と同じ光だったからだ。
確かめたかった事は信之助の実力だけではない。来た時に見た金色の光の柱、それが信之助の力と同じかどうかだ。
信之助の刀と十六夜の拳。
神仏をも切り裂く剣撃と山河をも打ち砕く拳撃は幾度もぶつかり合う。
二人の戦いの余波は周囲の木々や岩を吹き飛ばした。その余波によって起こった暴風が空へと昇り雲を払う。それは地は砕け天は狂う神話の戦い。二人の戦いはますます激化していく。
「ちっ、流石だな」
しかし、戦いは信之助が有利だった。
信之助は十六夜の力を技術を持って抑え込み、十六夜の速さをその未来予知にも似た勘の鋭さで抑え込む。十六夜のセンスは群を抜いている。
十六夜は、たとえ技術で抑え込まれてもその者のクセを見抜き対応するだろう。だが、信之助のセンスもまた群を抜いているのだ。
ある一点さえ除けば十六夜と信之助の実力は互角と言える。力と技、速度と直感、万物と奇跡を打ち砕く正体不明と世界の法則さえも越える理解不能がお互いにぶつかり合う。
信之助に有って十六夜に無いもの。それは戦いの経験だった。
自分に敵うものが居なかった十六夜と自分以上の力を持つものと戦ってきた信之助とでは戦いの経験が違いすぎた。その経験が終始信之助に有利をもたらたのだ。
「オラァ!!!」
十六夜は抉れた地面を全力で殴り付ける。巨大な岩が宙を舞い、とてつもない暴風の余波が周囲を吹き飛ばす。
(どこから来る?)
十六夜は感覚を研ぎ澄ませる。だが、信之助の気配を感じ取れない。
(頭を働かせろ。野原ならどこから来る?)
信之助の技量は自分を遥か上にいく。その信之助ならば気配を殺すことぐらい平然とやって見せるだろう。ならば信之助の思考や行動を読むしかない。そして…
「オラ、お腹すいたから帰るね。んじゃ」
「………は???」
そう言って信之助は帰っていく。信之助は起きてすぐにここに来たため朝食を食べていなかったのだ。
「…………………………」
一人残された十六夜は…
「待てや!! ゴラァァァァァァ!!!!!」
怒号と共に信之助を追い掛けた。
「うお!? 十六夜君がオラの体を狙ってる~~!!?」
「誤解を招く言い方すんじゃねえぇぇぇ!!!」
信之助と十六夜の戦いは決着が付かず、不完全燃焼に終わった。
規模がでかすぎたかな(汗)
実はオリキャラは謎の女性、謎の少女、ヤクモと後一人の四人を考えていたんですけど第2章で最後のオリキャラを出すか迷っているんですよね~。先に出すか後に出すかの違いですけど、どうしましょう。