第2章にして十五話です。
祭典の招待状だゾ
ペルセウスとのギフトゲームから約一ヶ月。
「…ふぁ…寝みぃ…」
十六夜は昨日から本拠の地下三階にある書庫の本を読み漁っていた。
ジンと共に読んでいたが先に限界がきたジンは十六夜の側で寝息をたてている。十六夜もまた限界がきているようで欠伸をしていると。
「十六夜君! 起きなさい!」
階段を慌ただしく降りてきた飛鳥は寝ようとする十六夜に向けて飛び膝蹴りをする。しかし…
「させるか!」
「グハァ!?」
「ジ、ジンくーん!?」
「南無…」
十六夜は側で寝ていたジンを盾に飛鳥の飛び膝蹴りを防いだ。飛び膝蹴りを側頭部に食らったジンはぶっ飛ばされ、飛鳥を追って来ていた二本の尻尾と狐耳の少女
リリはその光景を見て悲鳴を上げ、同じく飛鳥を追って来ていた耀はぶっ飛ばされたジンに合掌している。
「十六夜君、ジン君! 寝ている場合じゃないわ!」
「とりあえず飛び膝蹴りは止めとけ。俺は頑丈だから平気だが御チビの場合は命に関わる」
「って僕を盾に使ったのは十六夜さんでしょう!?」
ジンは起き上がり、自分を盾にしたにも構わず話をしている十六夜にツッコミを入れる。
「大丈夫よ。だってほら、生きてるじゃない」
「生きていても致命的です! 飛鳥さんはもう少しオブラートに「五月蝿い」ゴハ!?」
十六夜はジンに本を投げつける。本の角が頭に見事に命中したジンは気絶した。
「コレを読みなさい。絶対に喜ぶから!」
「うん?」
飛鳥は気絶したジンを無視し、十六夜に手紙のようなものを手渡す。
「白夜叉からか? 何々? 北と東の階層支配者による共同祭典“火龍誕生祭”の招待状? オイ、ふざけんなよお嬢様。こんなくだらないことで俺は襲われたのか? しかもなんだよこの祭典のラインナップは!? 『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会および批評会に加え、様々な主催者がギフトゲームを開催。メインは階層支配者が主催する大祭を予定しております』だと!? クソ、面白そうじゃねえかオイ♪」
「ほうほう。これは面白そうですな~」
「ああ。白夜叉もたまには気が利くじゃねえか…って、ん?」
気絶しているジンを除いた全員がその声の方向を見る。そこには…
「野原!? お前、いつのまに…」
「貴方、いつもこの時間は寝てるじゃない。それなのにこんな時に限って」
「都合よすぎ…」
声の正体は寝てるはずの信之助だった。
信之助はいつも昼近くまで寝ている。おまけに信之助を起こすことは困難だ。前に耀や十六夜が無理矢理起こそうとしたが一時間以上かかった。信之助を起こす。その難しさは並のギフトゲームを越えるだろう。
「いや~。それほどでも」
「「「褒めてない褒めてない」」」
三人は呆れ、完全にシンクロしていた。
「さて、野原も起きたことだし。祭りにでも行ってみるか?」
十六夜は起き上がり、制服を着込む。
「ま、待ってください! ジン君も起きて! 皆さんが北側に行っちゃうよ!?」
リリは今にも行ってしまいそうな四人の雰囲気に慌ててジンを起こす。
「………き、北側!?」
ジンは北側という言葉に反応して飛び起きる。
「おー。ジン君意外とタフだね」
「そんなことはどうでもいいんです! 皆さん! 北側に行くって、本気ですか!? リリも大祭のことは秘密にと」
「「「秘密?」」」
耀、飛鳥、十六夜の声が重なる。
ジンが振り返ると四人中三人が邪悪な笑みを浮かべ、怒りのオーラを放っていた。
「そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされていたんだ、私達。ぐすん」
「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張っているのに、とっても残念だわ。ぐすん」
「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」
「お祭り楽しみだな~。美味しい食べ物に綺麗なお姉さん」
バレバレの泣き真似をしている三人。信之助は話を聞いておらず完全に行くことが決定している。
ジンは冷や汗を流す。忘れてしまっていた、忘れてはいけなかった。この四人は人類最高のギフト保持者にして最強の問題児だということを。
◇◇◇
「黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁん!」
「リリ!? どうしたのですか!?」
泣きそうな顔で走ってきたリリに驚く黒ウサギ。
「こ、これ、手紙!」
リリから手渡された手紙には
『黒ウサギへ
私達は祭典に参加してきます。貴女も後から必ず来ること。あとレティシアもね。
私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合は四人ともコミュニティを脱退します。 飛鳥より
PS
ジン君は道案内に連れていきます。
PS
お土産買ってくるね 信之助より』
「何を言っちゃってんですかあの問題児様方ぁ!!!」
黒ウサギの絶叫が響き渡る。
◇◇◇
リリに手紙を預けた後、五人はカフェに居た。
「それで北側にはどうやって行けばいいのかしら?」
北側への行き方を知らない飛鳥達はジンに問う。
「予想はしてましたけど、北側の境界壁までの距離を知らないのですか?」
「「「「知らない」」」」
「ハァ…」
息の合った答えにジンは溜め息をつく。
「ジン君。溜め息をつくと幸せが逃げちゃうゾ?」
「誰のせいだとおもってるんですか…」
「十六夜君」
「おい。何、俺に擦り付けてんだ」
軽口を言い合う二人を見て、更に溜め息をつきたくなった。
「北側の境界壁までの距離は約980000㎞ぐらいです」
瞬間、えっ?と時間が止まる。
「い、いくらなんでも遠すぎるでしょう!?」
「ええ、遠いですよ! 悪いことは言いません。今なら笑い話で済みますからもう戻りませんか?」
ジンは微かな希望を持って言うが…
「断固拒否」
「右に同じ」
「以下同文」
「はい終了」
問題児の息の合いようにジンはガクリと肩を落とす。だが希望は残っている。何故なら北側に行くには境界門を使うしかない。だが、資金などろくに持っていないため境界門を使うことは不可能だ。そう思っていたら…
「ねえ、白夜叉に言えば? 招待状は白夜叉から貰ったんだし」
信之助の提案に三人は目を輝かせる。
「「「それだ!」」」
「信之助さん…」
ジンの希望は砕かれた。
◇◇◇
五人はサウザンドアイズの支店の前までやって来たが、女性店員によって止められる。
「お帰りくだ「お姉さーん! 今日こそお名前教えてー」また貴方ですか!?」
またもや信之助によって台無しとなった。
この光景は恒例だ。信之助は女性店員に会うたびにナンパしている。女性店員も信之助の事は唯一苦手のようで助けて欲しそうにジン達を見ている。
「じゃあお邪魔します」
助けを求めている女性店員を無視し飛鳥達は店に上がり込もうとする。
「だ、だからうちの店はノーネームお断りです! 後、この方をどうにかしてください!」
女性店員が飛鳥達に向けて叫んでいるその時
「やっふぉおおおおお! ようやく来おったか小僧どもおおおおお!」
和装で白髪の少女、白夜叉が空から降ってきた。
「ぶっ飛んだ登場をしなきゃ気がすまねえのか? ここのオーナーは」
十六夜は呆れたように言う。女性店員も痛そうに頭を抱えてしまう。
「えーと大変ですね…」
ジンは女性店員に向けて励ましの言葉をかける。女性店員はジンの胸ぐらを掴んだ。
「え!?」
「わかっているなら少しでも私の負担を減らしてくださいよ!」
「ちょ、ちょっと待っ」
「うちの店はノーネームはお断りなんですよ! 規則でそう決まっているんですよ! それなのに何度も何度も! 貴方もコミュニティのリーダーなら彼らをどうにかしてくださいよ!」
「や、やめ」
「私はオーナーでいっぱいいっぱいなんです! こっちはこれ以上の厄介事は勘弁なんですよ!」
十六夜達はジンに叫んでいる女性店員を見て
「なあ白夜叉。あいつにしばらく休暇をやった方がいいんじゃねえか…」
「う、うむ」
「あの人、苦労人ね」
「大人の世界は大変ですな」
「信之助にも原因があると思うけど…」
ジンを助けようとするものは居なかった。
活動報告の方で今投稿している小説について報告があります。大したことではありませんが他の小説についても書いてあるので…。
ではまた次回。