嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうも塗る壁です。

信之助を16歳にしたのは十六夜17歳、飛鳥15歳、耀14歳。あれ?16が抜けてる。なら信之助は16歳にしようというどうでもいい理由があったりします。

それでは十八話です。


嫌いにはなれないゾ

「信之助さん。戻ってきませんね…」

 

 ジンは戻ってこない信之助を心配してそわそわしている。

 

「野原なら余程のことが無い限り大丈夫だろ。あの野郎、戻ってきたらぶん殴ってやる」

 

「そんな適当な…。それにまだ根に持ってるんですか」

 

「彼なら大丈夫でしょう。かなりの実力者のようですし、心配せずとも帰ってきますよ」

 

 ジンは心配しているが十六夜は全く心配せず、それどころかぶん殴るとまで言っている。それに信之助と闘ったことのある十六夜としては心配するだけ無駄だと思っているのだ。

 因みに信之助と十六夜が闘ったことは秘密にしている。一度、信之助のせいでバレそうになったが。

 ただ女性店員は意外にも信之助の事を信用しているようだ。

 

「へえ? あんたは野原の事を嫌ってると思ってたんだがな」

 

「別に嫌ってなんかいませんよ。確かに困った方ですが悪い方ではありませんし」

 

「あら? そんなところで何を話しているのかしら?」

 

 ジン達が話していると、飛鳥達が風呂から上がってきた。

 飛鳥達は浴衣を着ており、首筋から上気した桃色の肌を見せている。

 

「おお? コレはなかなかいい眺めだ。そうは思わないか? 御チビ?」

 

「はい?」

 

 十六夜の言葉を理解できないジン。

 

「黒ウサギやお嬢様の薄い布の上からでもわかる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だが相対的にスレンダーながらも健康的な素肌の春日部やレティシアの髪から滴る水が鎖骨のラインをスゥッと流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するのは確定的に…」

 

 だが、十六夜の言葉は最後まで続くことはなく、スパーン!と紅潮した飛鳥と黒ウサギからツッコミが入る。

 

「変態しかいないの! このコミュニティは!?」

 

「お馬鹿様ばっかりです!!」

 

「まあ二人とも落ち着いて」

 

「ほほう? これはなかなか将来性が高いですな~」

 

 耳まで紅潮させ、叫ぶ飛鳥と黒ウサギ。慌てて宥めるレティシア。感心してるのか惚けているのか一人で納得している信之助。

 問題児ぞろいのノーネームらしい風景がそこにあった。

 

「「ん?」」

 

 その時、レティシアと黒ウサギが気付く。今、信之助の声が聞こえたような…

 

「よっ! 皆さんお揃いで」

 

「し、信之助さん!?」

 

 いつの間にか、側に信之助がいた。驚愕する黒ウサギ。しかし、黒ウサギが驚愕すると同時に動き出したもの達が居た。

 それは勿論。

 

「「「ここで会ったが百年目!!!」」」

 

 十六夜、飛鳥、耀の三人である。十六夜だけではない飛鳥や耀も決めていたのだ。信之助を、ぶん殴ると。

 耀は信之助の右側から後ろ回し蹴り。飛鳥は信之助の正面から左アッパー。十六夜は左側から右ストレート。

 三方向からの攻撃。

 

「おお!?」

 

 信之助は驚愕しながらも、まず最も速い十六夜の攻撃を左手で横からずらすように逸らす。同時に、次に速い耀の攻撃を右手で叩き落とす。そして、三人の中で最も遅い飛鳥の攻撃は上半身を後ろに傾けて避ける。だが…

 

(((もらった!!!)))

 

 三人はこれを待っていた。

 現在、信之助の両手は使用不可。おまけに上半身を後ろに傾けているため、急な動きをする事が出来ない。

 三人は攻撃を変える。

 十六夜は右ストレートからラリアット。至近距離なため、勢いはつかないが十六夜の怪力なら十分だろう。耀は体勢を立て直し、足払いする。普段は無理でも体勢が傾いている今ならば信之助を倒す事が可能。飛鳥は左腕を引き、右腕を突き出す。これこそが本命、右正拳突きだ。

 信之助は後ろに跳ぼうとしてハッとする。背の50センチ先に壁がある。つまり、後ろへの回避は不可能。跳べば潰れる距離だ。絶対絶命。そして信之助は…

 

(((っ!!!?)))

 

 後ろへと跳んだ。だが…

 

「なっ!?」

 

 誰が言ったかはわからない。

 確かに信之助は後ろに跳んだ。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()。信之助が着地した場所。それは、()()()()。信之助は後ろの壁を足場に上、それも斜め前へと跳ぶ。

 

(飛び越える気か!?)

 

 十六夜はさせるかと飛び越えようとする信之助を死角から掴もうとするが…

 

「っ!?」

 

 掴もうとした腕が、払われた。勿論払ったのは信之助の腕。跳んだ事で両手が使用可能になったのだ。

 しかし、周囲の状況を判断する時間などないはずだ。にも関わらず信之助は死角からの攻撃に対処して見せた。忘れてはならない。信之助はノーネーム随一の技量。そして、直感を持ち合わせていることを。

 十六夜達を飛び越えた信之助は空中をクルクルと回転しながら、シュタッと着地する。

 

「び、びびった~」

 

「「「ちっ!」」」

 

「何をしてるんですか!?」

 

 三人が舌打ちをすると黒ウサギのハリセンのツッコミが入った。

 

「まったく、御三人ともは…」

 

「おいおい。これは野原が悪いんだぜ?」

 

「そうよ。信之助君が私達を置いて先に逃げるから」

 

「私も連れていって欲しかった」

 

 三人は黒ウサギに異議を申し立てる。

 

「だまらっしゃい! もとはといえばあなた方が…」

 

「黒ウサギも大変ですな~」

 

「信之助さん…貴方にも責任があることを分かってますか?」

 

 黒ウサギは疲れたように項垂れる。

 

「あ…そうだった!」

 

 すると、信之助は何かを思い出したように手を叩く。

 

「ほい。これ、黒ウサギに」

 

「え?」

 

 信之助は派手な紙に包まれた箱を黒ウサギに差し出す。

 

「信之助さん? これは…」

 

「お土産。買ってくるって約束でしょ?」

 

 信之助は黒ウサギに微笑む。

 

「皆にも有るゾ」

 

 信之助はギフトカードから大きな袋を取り出す。中にはいくつもの箱があり、信之助は袋から箱を取り出す。箱にはそれぞれ名前が書いてあった。十六夜君、飛鳥ちゃん、耀ちゃん、ジン君、レティシアとそれはノーネームのコミュニティの仲間達の名前。

 

「サンキュー。野原」

 

「こ、これに免じて今回の事は許してあげるわよ」

 

「信之助。ありがとう…」

 

「あ、ありがとうございます。信之助さん」

 

「む? すまないな」

 

「え! 私達にもですか?」

 

「カッカッカッ。すまないのぅ」

 

 信之助はこの場にいる全員に配り終える。そして、雑談が始まる。他愛もない会話だ。

 

(皆さん…信之助さんの事、なんだかんだ言っても嫌いでは無いんですよね)

 

 黒ウサギは皆を見る。皆、笑顔だった。いつもそうだ…信之助を中心に皆が笑顔になっていく。だから、困っても疲れても、楽しくて嬉しくて。信之助を嫌いにはなれない。黒ウサギはクスリと笑い…

 

「黒ウサギも混ぜてください♪」

 

 皆の和に加わるのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そして、同時刻。

 

「タブラ・ラサか~」

 

「何ですか」

 

 どこか不満そうなタブラ・ラサと呼ばれた少女を見て、ナナリーは顔をしかめる。

 

「なんか可愛くなーい!」

 

「………」

 

「タブラ・ラサなんて可愛くないんだけど? もっと可愛い名前がいいなー」

 

 それはとてつもなくどうでもいい事だった。少女はナナリーに子供のように駄々をこねる。

 

「可愛いもなにも貴女が私にそう名乗ったんじゃありませんか…。それを今さら」

 

 ナナリーが少女と出会ったのは一年前。

 初めて出会った時にこの少女はナナリーにタブラ・ラサと名乗ったのだ。それを今さら可愛くないなどと言う。

 

「ナナちゃんって本当に母親と性格違うよねー。あ~あ、名前、変えちゃおっかな~。クリア・ホワイトってどう? なかなか良い感じしない?」

 

 挙げ句に、にこやかに笑いながら聞いてくる始末だ。ナナリーはそんな彼女を見て、溜め息を吐く。

 

「知りませんよそんなの。ホワイトとか見た目と合っていませんし、というかそんな簡単に名前を変えて良いんですか?」

 

「ナナリーは呆れながら言い返す。ナナリーに言い返された少女はクスクスと笑う。

 

「良いんだよー? だって…私に()()()()()()()()()()()…」

 

「っ!?」

 

 瞬間、少女の何かが変わる。

 先程までは異質な雰囲気をただ振り撒いてたのに対し、それは浸食。全てを染め上げようとする何かだった。

 ナナリーは声を出すことが出来ず、冷や汗が頬を伝う。

 

「ま、いいや♪」

 

少女はあっけらかんと、冷や汗を流しているナナリーを見てクスクスと笑う。

 ナナリーは思う。相変わらず質が悪いと。

 

「ハァ…それであの件はどうなりましたか? 私をここに呼んだのもそれが理由でしょう?」

 

「ん? ああ。それなら大丈夫!「彼女達はしっかりと説得しといたよ~。これでゲームに参加できるね、ナナちゃん♪」

 

 ナナリーはそれを聞いて安心する。

 母の願いを叶えるためのチャンス。無駄には出来ないと覚悟も決める。彼が相手ではチャンスなど当分訪れないだろうことは分かっているからだ。

 

「彼は、()()()()()は強いよ?ナナちゃん」

 

 少女はナナリーに手を向ける。瞬間、

 

「っ!? これは!?」

 

 ナナリーの頭に痛みが走る。同時に映像が流れた。

 

「それはしんちゃんが箱庭に来てからの戦いの記録。もう一度聞くよ? 強いよ…しんちゃんは」

 

「そんなことは分かっています。これは覚悟の上です」

 

 分かりきっていることだ。彼は強い。映像でも、彼は星霊を相手取って全く引かなかったのだ。箱庭の最強種の一角である星霊をだ。

 ナナリーは少女に背を向け、その場を後にする。

 

「全く分かっていないよ。ナナちゃん…」

 

 少女は呟く。ナナリーは知らない。そして気付いていない。

 

「しんちゃんは何時だって()()だよ…でも」

 

 闇色の道を少女は歩き出す。

 

「“あの力”を手放したとはいえ、しんちゃんの()()()()()()()()()()()()()()()




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