嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうも塗る壁です。

この小説もとうとう二十話目です。まあ、外伝も入れたら二十一話目なんですけどね。

それでは二十話です。


魔王襲来だゾ

「耀ちゃんは負けちゃったか…」

 

「惜しかったわね…」

 

 耀と“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャとの試合はアーシャの勝利。

 最初こそ耀が有利に進めていたのだが、そこに大悪魔にして不死の怪物ジャック・オー・ランタンの登場。足止めを食らい敗北した。

 

「ま、そういう事もあるさ。春日部のゲームメイクに不死の怪物。中々面白いものを見たな。野原、お前は不死の怪物や悪魔とかと戦ったりした事はあるのか?」

 

 軽快に笑う十六夜は信之助に聞いた。四人の中で最も実戦経験があるのは信之助だ。しかも相手は平行世界の侵略者や異世界の魔王といった怪物達。中には不死の怪物や悪魔もいるのかも知れないと思ったのだ。

 

「うーん…不死の怪物に悪魔か~。不死の怪物は無いけど悪魔くらいなら何度か戦ったゾ」

 

 信之助も全ての戦いを話した訳ではない。まだ話していない事もあれば省略して話したものもある。

 

「特にアレは凄かったな~。ぶっちゃけ死にかけたし」

 

「へえ? そんな奴がいたのか。どんな奴なんだソイツは?」

 

 十六夜は少なからず驚いていた。信之助の実力は自分と同等以上。そんな信之助が死にかけるほどの奴がいたのだ。

 

「なんか、頭が沢山ある動物みたいな奴で自分の事を黙示録の獣だとかなんとか」

 

「…………はい?」

 

 聞いて出てきたのはとんでもない奴だった。

 

「ちょっと待て野原。マジでソイツと戦ったのか!?」

 

「マジだけど?」

 

「一応聞くが、勝ったのか?」

 

 十六夜は顔をひきつらせながら聞く。それほどまでに信之助が戦ったのはとんでもない奴なのだ。

 

「んーん」

 

信之助は首を横に振る。

 

「決着がつく前にどっか行っちゃったんだよね~。そういえばソイツがどっか行く前に言ってたことがあったっけ?」

 

「なんて言ったんだ」

 

 十六夜は真剣な表情で聞いていた。

 黙示録の獣が残した言葉。一字一句聞き逃さないように耳を澄ます。

 

「こんな世界、二度と来るか!って」

 

「………………」

 

 最早、呆れてものも言えない。

 

「それじゃオラは耀ちゃん励ましに行ってくるね」

 

 そう言って信之助は耀の元に向かっていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「耀ちゃーん!」

 

「信之助?」

 

 信之助はジャックやアーシャと話していた耀を見つけ駆け寄る。

 

「おやおや。どうやらお迎えが来たようですね」

 

「耀の仲間か?」

 

 ジャックとアーシャが駆け寄る信之助に気付いた。

 

「ヤホホホ。では私達は行くとしましょう」

 

「耀! 次は絶対に負けないからな!」

 

 ジャックとアーシャはそう言って去っていった。

 

「耀ちゃんお疲れ様。惜しかったね」

 

 信之助は少し落ち込んでいる耀に労いの言葉をかける。

 

「信之助…ごめん。私負けちゃった…」

 

 やはり、負けた事を気にしているようだ。信之助は落ち込んでいる耀の頭を撫でる。

 

「信之助?」

 

「耀ちゃんの気持ちはよく分かるよ。オラも負けた時は悔しかったからね」

 

「え? 信之助も負けた事があったの!?」

 

 耀は驚いた。

 信之助の強さを知っている耀としては信之助の負ける姿が思い浮かばなかった。

 

「オラだって最初から強かった訳じゃないゾ。昔、剣道を習い始めた時だったかな。オラは代々木君て言う人と勝負して負けたんだ。オラはとっても悔しかったのを覚えてる」

 

 それは信之助は五歳の時だった。昔から運動神経が良かった信之助は剣道の先生にその才能を見出だされ剣道を始めた。

 

「それでどうなったの?」

 

「うん。悔しかったオラは剣道を一生懸命練習した。師匠に教えられ、家族に見守られてね。そして大会に参加して、勝ち抜いていった。そして、遂に代々木君と勝負する時が来たんだゾ」

 

 信之助は懐かしむように話す。

 ライバル代々木との勝負は死闘だった。代々木は強かった。信之助の持ち前のセンスと運動神経をもってしても苦戦を強いられた。そして…

 

「オラは勝った。代々木君に、そして負けた時の自分に」

 

「負けた時の自分…」

 

「それだけじゃない、勝てたのは皆が居てくれたから。師匠が、家族が、友達が、皆が居てくれたからオラは強くなれたんだ」

 

 信之助は続ける。過去の戦いを思い出しながら。

 

「今までの戦いだってそう。オラ1人で勝てたことなんてない。皆が支えてくれたから勝てたんだ」

 

信之助は優しい笑みを耀に向けていった。

 

「耀ちゃんもこれからだよ」

 

「私もこれから?」

 

「うん。耀ちゃんの周りには居るでしょ? 支えてくれる人達が。十六夜君に飛鳥ちゃんにジン君に黒ウサギにレティシア。勿論、オラも。耀ちゃんはこれから強くなれるよ。オラが保証する」

 

「うん…」

 

 この世界で出来た仲間。耀にはノーネームの皆がいるのだ。

 

「帰ろうか。飛鳥ちゃんが心配してたしね。あ! そうそう。ほい」

 

「焼そば?」

 

 信之助が手渡したのはゴムで閉じてあるプラスチックの容器に入った焼そばだった。

 

「耀ちゃんの分。お腹空いてると思って買ってきたんだ」

 

 見れば信之助は片方の手にはもう1つ焼そばと箸がある。

 

「信之助…ありがとう」

 

「耀ちゃんは頑張ったしね。そのご褒美…って耀ちゃん?」

 

 もう一度、信之助が耀の方を見ると耀は空の容器を手に持っていた。

 

「ご馳走さま」

 

「早っ!?」

 

 信之助が耀の食べる早さに驚愕している時だった。

 

「ん? なんだアレ」

 

「黒い…紙?」

 

 黒い封書が雨のようにばらまかれる。

 

「魔王が現れたぞぉぉぉおおお!!!」

 

 観客の1人が叫び声を上げた。

 

「信之助…魔王が」

 

「ヤレヤレ、やっぱり面倒な事になったゾ」

 

 信之助は遥か上空に居る四つの影を見つめる。あの中で最もヤバい相手は……

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「貴女、ホントに純血のヴァンパイア?」

 

「手厳しいな! これでも精一杯戦っているつもりたが!」

 

 レティシアは上空から先に降りてきた斑模様のワンピースの少女と陶器の巨兵を相手に苦戦していた。

 

「もういいよシュトロム。その子いらないから殺そ」

 

 それを合図にシュトロムと呼ばれた陶器の巨兵は瓦礫の山を吸い込み圧縮し、砲弾のように射出した。

 無数の瓦礫がレティシアに襲い掛かる、その時だった。

 

「とう!」

 

「なっ!?」

 

 何者かがレティシアを抱きかかえ、その場を離脱する。

 

「貴方、誰?」

 

 斑模様の少女は突如現れたその者に向けて興味深そうに問う。

 その者は少女に向き直り堂々と言い放つ。

 

「オラは野原信之助16歳! ちょっぴりお茶目な高校生!」

 

「し、信之助!?」

 

 信之助、ここに参上。

 

「信之助? へえ、貴方が」

 

 聞き覚えのある名である信之助の名を聞いて少女は目を細める。

 

「よっと。レティシア大丈夫?」

 

 信之助はレティシアを労るようにゆっくりと降ろす。

 

「あ、ああ。私は大丈夫だ。しかし信之助、どうしてここに?」

 

「ん? それはあの中で()()()()()()なのがあの子っぽかったから」

 

 信之助はレティシアの疑問に少女を見据えて言う。少女は信之助の言葉に少し驚いたようだった。

 

「へえ? 私が一番ヤバそうなんて。中々の観察眼ね」

 

 少女は信之助の観察眼を称賛する。

 

「観察眼というより勘だけどね。それとレティシアは耀ちゃん達の所に行ってくれない?」

 

「な! し、しかしお前を残して」

 

 レティシアには信之助を1人残して行くことが出来なかった。そんな二人に向けて少女は言う。

 

「そもそも私がそう簡単に行かせると思ってるの?」

 

「それをさせないためにオラが残るんでしょ? レティシア! ここはオラに任せて行って!」

 

 信之助は()()を握り締め少女へと向ける。信之助の目には決意が宿っていた。しかし、そんな信之助とは対照的に少女は冷めた目をしていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……箸なんかで何しようって言うのよ」

 

「あっ」

 

 信之助が手にしていたのはいつもの刀ではなく箸だった。レティシアは頭が痛そうに押さえ、少女もまた呆れている。

 

「あちゃー…焼そばを食べながら来たから間違えちゃった」

 

「潰していいわよ。シュトロム」

 

 手に持っていた箸を見ながら信之助は頭をかく。そんな信之助を見て、少女は無慈悲な命令をする。

 陶器の巨兵シュトロムが信之助に襲い掛かる。

 

「信之助!」

 

 レティシアの悲痛な叫び。しかし、信之助は慌てていない。

 

「まあでも…」

 

 信之助は箸を手にシュトロムの攻撃を避ける。風圧で信之助の髪が揺れ、そして…

 

「な!?」

 

「うそ…」

 

 レティシアと少女は驚愕に目を見開く。信之助が避けた瞬間、シュトロムが鋭利な刃物で切り裂かれたようにバラバラにされたのだ。

 

「これくらいなら、箸でも斬れる!」

 

 信之助は、あり得ないものを見る目をした少女に向けて、不敵に笑う。




だんだんと チートと化する 信之助
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