嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうも塗る壁です。ただ第二章が終わったら全話を少し書き直そうと思います。久し振りに見たら文が変になっている所があったりしたので。

それでは二十二話です。


ギフトゲームの審議決議だゾ

 信之助はナナリーの話に違和感を感じていた。それは本来なら見逃してしまいそうなほどの小さな違和感。そんな信之助を余所に話は進んでいく。

 

「これでナナリーの事は分かったでしょう? 後、私がペストである事を正解したご褒美に教えてあげる。参加者の一部に病原菌を潜伏させているわ。無機生物や悪魔以外には発症する、呪いそのものを」

 

「っ!!?」

 

 ゲーム再開は1ヶ月後。しかし、発症まで最短で二日。全員が今の状況がどんなに最悪か気付いた。

 

「だからこその交渉か」

 

「ええ」

 

 十六夜の問いにペストは無邪気な子どものようにニッコリと笑う。1ヶ月もすれば殆どの者が発症し、死に到るだろう。

 それからもジンと十六夜が交渉を続け、再開の日取りを二十日、二週間、十日、と減らしていくことに成功したが、交渉するものが他に見当たらなくなってしまった。ジンは意を決して言った。

 

「ゲームに期限を付けます。再開は一週間後。ゲーム終了はゲーム開始から二十四時間後。そして、ゲーム終了とともに主催者の勝利とします」

 

「本気?」

 

 緊張が走る。それはつまり、主催者の総取りを覚悟すると言うことだ。これは両者に得がある条件だ。しかし…

 

「却下」

 

「っ!?」

 

「と言いたいとこだけど…」

 

 ペストの却下の一言を聞いたのは焦ったが、ジンは内心ほっとしていた、が

 

「ある条件を付け加えるなら受けるわ」

 

 それが油断となる。

 

「その条件とは?」

 

「簡単よ。プレイヤー側は()()()()使()()()()()()これをルールに付け加えるなら一週間でいいわ」

 

「え? そんなので……!?」

 

 ジンは気付いた。ジンだけではない、十六夜も黒ウサギもその意味を理解した。

 

「そ、それは!?」

 

「そう言うことか」

 

 ペスト達と戦う際、主力となるのは十六夜、黒ウサギ、耀、レティシア、信之助、サンドラだ。その中で刀や剣を使うのは…

 

(こいつの狙いは………野原の弱体化だ!)

 

 十六夜は内心舌打ちをした。信之助の実力は十六夜と同等以上。事実上、こちら側の最高戦力だ。

 

「構わないでしょう?」

 

 ペストは冷や汗をかくジン達を見て、不敵な笑みを浮かべる。武器を封じられ、今どんな顔をしているのか。

 ペストは信之助の座っている方向を見る。

 

「スー…スー…」

 

 寝ていた。

 

「お、起きてください! 寝てる場合じゃないですよ!?」

 

「おい! 野原、起きろ!」

 

「何でこの状況で寝られるんですか!? 起きてください!」

 

「………ん? やっと終ったの?」

 

 三人に揺らされ信之助はやっと起きた。起きた信之助は黒ウサギから先程までの事を聞かされる。

 

「別にいいんじゃない?」

 

「軽っ!?」

 

「そうだった。こいつはそういうやつだった」

 

「えーと…その条件をお受けします」

 

 黒ウサギは驚愕し十六夜は呆れる。ジンも拍子抜けしたようだ。

 こうして、ルールに()()()()使()()()()()()が加えられた。審議決議が終わりを迎える…かに見えた。

 

「そう言えば気になってたんだけど、ナナちゃんって他の吸骨鬼とは会ったことはある?」

 

「…いきなり何ですか。私は母以外の吸骨鬼とは会ったことがありません。誰にも見付からないように、隠れて暮らしていましたから…」

 

「え? 他の吸骨鬼に会ったことが無いの? それじゃ、吸骨鬼が全滅したっていうのは誰から?」

 

「教えると思いますか?」

 

 ナナリーは当然とでも言うかのように溜め息をつく。そして、信之助は確信を得る。

 

「ねえ? ナナちゃん」

 

「何ですか」

 

「何で()()()()()()()()()()()()()()()()って知ってるの?」

 

「え?」

 

 ナナリーは質問の意味が分からず呆然とする。吸骨鬼が全滅したことを知っていることが何故おかしいのか。

 

「どういう意味だ? 野原」

 

「考えても見てよ。種を1つ滅ぼすことが簡単に出来ると思う? それも自然災害や環境によるものではなく、多くはない人の手で」

 

 十六夜は確かにと思う。種を完全に滅ぼすことは難しい。地球では多くの種が絶滅しているが、それはあくまで自然災害や環境によるものや大勢の人の手によるものだ。

 十六夜が思考しているとジンが疑問を口にする。

 

「しかし、信之助さん。吸骨鬼は数が少ないんでしょう? それなら10年以上時間をかければ可能なのでは?」

 

「可能かもしれねえが、難しいな」

 

 信之助が答える前に十六夜がジンの疑問に答える。

 

「聞けば、吸骨鬼は人間とほぼ同じ姿をしてるんだろ? 吸血鬼みたいに日光が苦手なわけじねぇみたいだしな。吸骨鬼はボーン・ブレイドっていう剣を除けば、炭酸ジュースと骨の折れる話が弱点みたいだが…」

 

 十六夜の話を信之助が引き継ぐ。

 

「炭酸ジュースなら近付かなければいいし、話なら聞かなければいいんだよね。炭酸ジュースが苦手な人は普通に居るし、骨が折れる話みたいなやつを聞きたくないって人も普通にいる。だから、吸骨鬼と人間を見分けて探すのは難しいんだゾ」

 

 そう。吸骨鬼と人間を見分けることが出来たのは吸骨鬼の王のみ。同族である吸骨鬼ですら見分けることができない。

 

「実際に、良ちゃんから吸骨鬼捜索が難航してることを何度か聞いたしね。なんせ何十億って人の中から探さなきゃいけない上に、世界中に散らばった何人居るのかも分からない吸骨鬼を探さなきゃいけない。吸骨鬼達も見付からないようにすると思うし。そんな吸骨鬼達を10年で全滅させることは難しいゾ」

 

 それは砂漠の中から一粒の砂を探すに等しい。出来たとしても10年では足りないだろう。

 

「なのにナナちゃんは確信を持って自分以外の吸骨鬼が全滅したと言っている。そこでオラは2つの可能性を考えた」

 

 1つは、自分の目で確かめたか。

 

「これは無理だよね。ボーンキングの娘であるナナちゃんなら見分けることは可能かもしれないけど、10歳程度のナナちゃんが世界を旅するなんて出来ない。おまけにナナちゃんはお母さんが亡くなるまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言ってる」

 

 ナナリーは思わず目を見開いてしまった。先ほどの質問は罠だったのだ。

 信之助はナナリーのその表情を見逃さない。すぐにナナリーは信之助に悟られまいと無表情を演じる。だが、はたから見れば無理しているのが丸分かりだ。

 そして、もう1つは…

 

「誰かから聞いたか」

 

 これがもう1つの可能性。自分の目で確かめたのでなければ他から聞くしかない。

 

「一番あり得るのはナナちゃんのお母さんだけど、オラは無いと思ってる。何故ならナナちゃんを育てながら他の吸骨鬼を探すなんて出来ないしね。これじゃ他の吸骨鬼が全滅したのかどうかは分からない。何より、ナナちゃん言ったよね? ()()()()()()()()()って」

 

「そ、それが何だって言うんですか!」

 

 ナナリーは声を荒げる。ナナリーは追い詰められていた。確実に。

 

「だって変でしょ? 何で()()()()()()()?」

 

「それのどこが変なのですか」

 

 どこも変なところはない。ナナリーはそう思った。そんなナナリーとは裏腹に十六夜は何かに気付いたようにニヤニヤと笑う。

 

「なるほどな」

 

「えっ、何か分かったのですか?」

 

「考えてもみろよ。教えられないってことは、こっちに教えられない人物っことだ」

 

「あ!」

 

ジンも気付いた。その意味を。

 

「ナタリー・コツバーンは教えられない人物には当てはまらない。何故なら…」

 

「信之助さんは…既にその人の事を知っているから。教えたとしても不利益が生まれないから、隠す必要がない」

 

「聞けばおかしな話だぜ。どうして、吸骨鬼が全滅したことを教えた人物を隠す必要がある。それが母親であるナタリー・コツバーンなら尚更だ」

 

「簡単に纏めるとこんな感じだね」

 

 1・ナナリーに吸骨鬼全滅を教えた人物が存在する。

 2・ナナリーは教えた人物を隠した。

 3・ナナリーに教えた人物が母親であるなら隠す必要はない。

 4・信之助は既にその人物を知っており、吸骨鬼全滅の話をしたぐらいでは不利益は生まれない。

 5・教えられないという事は違う人物である。

 

「そこまでよ」

 

 ペストが待ったを掛ける。

 

「審議決議は終わったんだからこれ以上の長居は無用よ。いくわよナナリー」

 

「あっハイ!」

 

 ペスト達はその場から去っていった。

 

「これで何とかなったんでしょうか…」

 

「終わったもんはしょうがねえだろ。後は一週間後。どうするかだ」

 

「そうですね。これから皆さんで作戦会議でも…アレ?」

 

 ジン達が戻ろうとした時、黒ウサギはあることに気付き周囲を見回した。

 

「ん? どうした黒ウサギ」

 

「いえ、あの信之助さんは?」

 

「そう言えば見ませんね」

 

 二人も信之助が居ないことに気付いた。

 

「「「まさか…」」」

 

 その時、三人は同時に嫌な予感がしたという。




消えた信之助。いったいどこに(棒読み)
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