嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうも塗る壁です。第二章が終わったらもうひとつの方も更新を再開しようと思います。

ではでは二十四話です。


ギフトゲームの前日だゾ

 ギフトゲームを翌日に控えた四人の元に、彼女がやって来た。闇色の服と異質な雰囲気を纏う少女。

 

「ヤッホー! 謎の美幼女タブラ・ラサだよ~。ラサちゃんって呼んでね♪ 見てたけど、しんちゃんにコテンパンにされちゃったね♪ アハハハハ!」

 

「てめぇ…」

 

「「ヴェーザー!」」

 

 自分達をバカにするように笑う少女に、ヴェーザーは怒りを覚え殺気を放つ。そんなヴェーザーをラッテン達は止めようとする。

 

「ん~? 私に向けて殺気を放つなんていい度胸だね~。うんうん。男の子はそうでなくちゃね♪ でも…」

 

 少女は一人で納得するように頷く。そして…

 

「喧嘩を売る相手はちゃんと考えなよ…ね?」

 

 駄々をこねる子どもに言い聞かせるように少女は言う。それと同時に異質な何かが空間を侵食し、四人にゾッと寒気が走る。

 ペスト達三人は知っている。否、()()()()()()()()()。この少女には…

 

「そんなことよりお菓子食べよ、お菓子♪」

 

 絶対に勝てないという事を。

 

「これね~チョコビって言うんだけど、とっても美味しいよ♪」

 

 恐怖するペスト達を余所に少女はチョコビというピンクの恐竜のイラストが描かれている箱の中のお菓子を勝手に食べ始める。

 ナナリーは意を決して少女に聞くことにする。

 

「あっ! これよく見たら金歯だ。ラッキー「タブラ・ラサ…」ん? ナナちゃん達の分もあるよ?」

 

「いえ、そうではなくて…」

 

 ナナリーにお菓子の事を聞かれたと思っていたのか少女はキョトンとした様子で首を傾げる。何も知らなければ、ナナリーよりも背が低く10歳もいかないだろうその少女の仕草を見て、とても可愛らしいと思っただろう。

 

「野原さ…野原信之助のあの力は一体なんなんですか?」

 

 実際に信之助と戦った時に感じた。人間の枠には収まらないあの強さ。あの力の正体は一体なんなのかと。

 

「う~ん、しんちゃんの力ね~。私もそこまで分かっている訳じゃないけど、このままじゃフェアじゃないしな~。ちょっとだけ教えてあげるね」

 

 少女はチョコビを食べるのを止めるとナナリー達に向き直る。

 

「あれはあらゆる物質、法則、概念から独立し、複雑にして不確定な存在にして、今もなお変化し続け、全てに影響を及ぼす奇跡。それがしんちゃんの力」

 

「なんだそりゃ? 全然分からねえんだが」

 

 少女の説明を聞いてヴェーザーは不満を漏らす。

 

「しょうがないじゃん。しんちゃんの力は私にだってよく分からないし、そういうものだって事しか知らないよ。それにしんちゃん自身もよく分かってないからテキトーにしか使ってないしね」

 

「えっ!? 野原さん自身も分かっていないのですか?」

 

 ナナリーは少なからず驚いた。あれほどの強さを見せ付けた信之助が自身の力を分かっていないことに。

 

「うん。しんちゃんが引き出せるのは十六夜君より少しマシな程度。というより元々やる気がないんだろうね」

 

「やる気がない?」

 

「そ♪ しんちゃんは自分が持ってるその力に関心も興味も無いんだ~。にも関わらず少しだけでも引き出す事が出来たのは流石だけどね。これで私が話せるのは終わりかな。(もっとも“ワタシ”なら何か知ってたかもしれないけどね)これを聞いてどうするかは君達次第だよ」

 

 少女はそう締めくくると、ナナリー達にチョコビを配る。

 

「それじゃあ、お菓子食べよっか♪」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 信之助がペスト達の本拠地に乗り込んでから六日が経った。黒死病の発症者が出始め、その中には。

 

「あれ? 私…」

 

「あっ、耀ちゃん起きた」

 

 耀が目を覚ますと目の前に信之助がいた。耀も黒死病を発症させてしまったのだ。

 

「いきなり倒れるから心配したゾ」

 

「ゴメン…」

 

 信之助に注意され、耀はうつむきながら謝る。

 耀は心配をかけてしまった事を申し訳なく思った。

 

「お、春日部起きたのか」

 

「十六夜…」

 

 その時、十六夜が本を持って入ってきた。

 平然と部屋に入ってきている二人を見て、自分が黒死病に掛かっていることを分かっているのだろうか、少し心配になった耀であった。

 

「おー、十六夜君いい所に」

 

「ん? 何だ野原」

 

 入ってきた十六夜を見て信之助は喜ぶ。

 

「ちょっと冷たい飲み物持ってきて」

 

「…テメェ、俺をパシらせようとはいい度胸だな。自分で行けばいいだろうが」

 

「だって面倒だし」

 

「よし表出ろ、一ヶ月前の決着付けてやる」

 

「何言ってんの。オラと十六夜君が戦ったらこの辺り一帯が吹き飛んじゃうゾ。弁償とかどうすんの」

 

「それなら大丈夫だ。全部ペスト達魔王がやったって事にすればいい」

 

 二人は物騒な冗談を言い合いながら笑うが、十六夜は半ば本気である。そう、二人の一ヶ月前の戦いの決着は今だ付いていないのだ。十六夜はあれから何度か再戦をしようとしたが信之助に逃げられていた。

 

「二人とも大袈裟……じゃないね」

 

この辺り一帯が吹き飛ぶと聞いて大袈裟とは思えなかった。

 この規格外と非常識が戦えば間違いなく吹き飛ぶという確信がある。そんなことが実際に出来る二人とそんなことに確信を持ってしまった自分に呆れた。

 

「しょうがないな~。オラが持ってきてあげるゾ」

 

「なんで上から目線なんだよ…」

 

 信之助はそう言って部屋を出ていった。

 信之助と一緒に居ると問題児である十六夜がまともに見えるので不思議である。

 

「まったくアイツは…。それと春日部、後で野原に礼を言っとけよ」

 

「え?」

 

「倒れたお前をここに運んだのも看病してたのも野原だからな」

 

 耀は驚く。

 信之助はそんなことを一言も言っていなかったのだ。

 耀は信之助の事を考える。箱庭に来てから自分は信之助に助けられてばかりだ。ペルセウスの時も守られ、ジャックに負けた時も励ましてくれた。レティシアに自分達を助けに向かうように言ったのも信之助らしい。ふと思ってしまうのだ。自分は信之助の優しさに甘えているのではないのかと。信之助は本来箱庭に来るはずがなかった。本当なら元の世界に帰りたい筈なのに、家族や友達に会いたい筈なのに。

 

「………」

 

 そう、信之助は自分の意思で来たわけではない。もし元の世界に帰る方法が、ギフトが見付かれば信之助は元の世界に帰ってしまう。箱庭から、ノーネームから、彼は去ってしまう。

 その事実が分かってしまった耀は…

 

「飲み物持ってきたよ~」

 

 そこまで考えた時、信之助が飲み物を持って部屋に入ってきた。

 

「カルピスしかなかったけど、って十六夜君なに読んでるの?」

 

「ん? ハーメルンの伝承についてだ。ゲームクリアに必要だからな」

 

「ほうほう。オラも手伝おうか?」

 

「あっ、私も」

 

 耀は先程まで考えていた事を一先ず置いておき、十六夜や信之助と共にハーメルンの謎を解くことにした。

 耀の中で信之助の存在が大きくなっていることに気付くのは少し先の話。そして、その想いに気付くのはさらに先の話。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「主殿を見てて少し思ったんだが」

 

「何?」

 

 ハーメルンの謎を解き、部屋を後にした信之助はたまたまレティシアと会い、誰もいない廊下で歩きながら話していた。

 

「いや、耀の事をよく気にかけてるなと思ってな」

 

 信之助の事を見てて思ったことだ。無意識なのか、信之助は耀のことを他の者よりも気にかけてるように見えた。勿論、それはほんの些細な事でただの勘違いの可能性の方が高い。

 

「うーん」

 

 信之助はそれを聞いて頭をポリポリと掻く。

 

「どっかで少し似てると思ってるのかな…」

 

「え? 似てるとは誰に…」

 

 意外な答えが返ってきて、レティシアは困惑する。

 

<しんちゃん…>

 

「昔にちょっと…ね」

 

 信之助が思い浮かべたのは初めて恋した一人の少女。

 

「…そうか」

 

 レティシアはそれ以上聞くことはなかった。その時の信之助の顔が、とても悲しそうに見えたから。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そして…

 

「今回のゲームの行動方針が決まりました。動ける参加者にはそれぞれ重要な役割を果たしていただきます。マンドラ兄様。お願いします」

 

 マンドラは参加者に向けて書状を読み上げる。

 その一・敵は“サラマンドラ”とジン=ラッセル率いる“ノーネーム”が戦う。

 その二・他の者は、各所に配置された130枚のステンドグラスの捜索。

 その三・発見した者は指揮者に指示を仰ぎ、ルールに従って破壊、もしくは保護すること。

 

「ありがとうございます。以上が参加者の方針です。魔王とのラストゲーム、気を引き締めて戦いに臨んでください」

 

 そして、ゲームが再開された。




最近、オリジナル小説を書いてみたいな、と思うんですよね~。でも構想は出来てるけど自信がない。

次回はギフトゲームです。誤字脱字がありましたらご報告を。
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