二十五話目になります。
ギフトゲームが開始され、ノーネームの一同は集まっていた。
「光栄な事に敵の相手は俺達がする事になった訳だが…。恐らく、アイツ等の狙いはタイムオーバー狙いの時間稼ぎだ。それに自分が倒されないようにしつつ、ステンドグラスも守らなきゃならない。数が少ないアイツ等はバラけて消極的に動くはずだ。そこを狙う」
「各個撃破という事ですか?」
十六夜はそうだと頷く。十六夜は集まっているノーネームの一同を見渡し、作戦の続きを伝える。
「まず、サンドラと黒ウサギでペストを抑える。その間に俺とレティシアでヴェーザーとラッテンを倒す。野原、お前はナナリーの相手をする訳だが…ちゃんと武器は用意してんだろうな?」
「もっちろん」
十六夜の問いに信之助は胸を張って答える。十六夜はその返答に満足するが…
「えーと、フラフープに金ダライに…」
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
十六夜が信之助に待ったをかけた。
「お前は人の話をちゃんと聞いてたか!?」
「信之助さん、こんな時までふざけないでください!」
「主殿、遊びに行くわけではないんだぞ!」
「真面目に考えてください!」
十六夜、黒ウサギ、レティシア、ジンの順番に信之助に向けて罵声が飛ぶ。
「早く取り替えてこい!」
「えー、面倒くさいゾ「いいから行け!」…ほーい」
十六夜に急かされ、渋々持ち物を取り換えようと立ち上がったが…
「ん?」
その瞬間、光に呑み込まれる。 気付くと見た事のない木造の街並みが広がっていた。突如変わった、別の街並みに騒ぎを起こすコミュニティも居た。
「またー? 箱庭って世界を変えるの好きなの? まったく、何度目に…!?」
信之助は視線の気配を感じて振り返った。しかし、振り返ると同時にその気配は消失し、感じられなくなる。
「気のせい?」
消えた気配に信之助は首を傾げる。その気配は前にも感じた事があるような気がした。
◇◇◇
「危ない危ない」
信之助達から少し離れた場所にその少女は居た。
「やっぱりこの距離だと勘づかれるなー。それに、一応カモフラージュをしてるけどウサギちゃんにも気付かれないとも限らないしね」
その少女はクスクスと笑う。
「それじゃあ、頑張ってね♪」
◇◇◇
信之助はナナリーを見付けるべく、街を一人で走っていた。そして…
「見つけました、野原さん」
「ナナちゃん…」
暗めの銀髪を揺らし、悠々と立つ少女。その少女こそが信之助が探していた吸骨姫ナナリー・コツバーンであった。
「ペストさん達には貴方の相手はするなと言われました。ですが…」
ナナリーは左手を胸の位置まで上げると、左の掌から白い棒のようなものが、皮膚を内側から貫くように出てきた。ナナリーはそれを掴むと鞘から剣を抜くように引き抜く。それは純白の剣。その剣を信之助へと向ける。
「母の願いの為にも、ここで倒させてもらいます!」
ナナリーは言い終わると同時に地を蹴った。
(速い!?)
ナナリーは前回の時よりも
「ハアァァァァ!」
瞬く間に信之助との距離を詰めたナナリーはその剣を幾度も振るう。
(これも速い。それに巧い!)
攻撃速度もまた速い。それだけではなくその中に確かな技術があった。
(これが…ナナちゃんの本気)
これこそがナナリーの本気である。
(でも…)
信之助には見えていた…ナナリーの動きが。信之助はナナリーの攻撃を避け、捌き、受け流す。
(十六夜君程じゃない)
そう、確かにナナリーは速い。その速度は耀を軽く凌駕するだろう。しかし、それでも十六夜には及ばない。 ナナリーよりも圧倒的に速い十六夜の攻撃を勘と技量で捌ききった信之助にとって、ナナリーの攻撃はまだ遅い。
「よっ」
「なっ!?」
信之助はナナリーの手首と襟を掴み、背負い投げの応用で投げ飛ばす。
「くっ!」
地面に叩き付けられる前にバランスを取り、着地する。前回は平衡感覚を狂わされたが今回は正常だ。
「ナナちゃん…前から聞きたかったんだけど、お母さんの願いの叶える事は本当にナナちゃんの願いなの?」
「何を…」
ナナリーは突然の事に困惑する。何を言っているんだと。
「…当然です。母の願いの叶える事は私の…」
「願いを叶える事はナナちゃんの願いじゃない…」
「っ!?」
前回、ナナリーと向き合った時に様々な感情が感じられた。怒り、悲しみ、苦しみ、そして憎しみ。しかし、それらは信之助に向けられていなかった。むしろ…
「ナナちゃんがやっている事は…」
「うる…さい…」
「ナナちゃん!」
「うるさい! うるさい!」
ナナリーは怒号と共に飛び掛かる。
「くぅ!」
ナナリーは信之助に掴まれ、再び投げられそうになる。
(実力に差がありすぎる。このままじゃ…)
勝ち目が見えないほどに信之助とナナリーの間には差があった。このままでは負ける。そう、思った時だった。
<ナナリー…>
「っ!?」
<あの御方と私の自慢の娘。貴女は…>
(母様…!)
負けるわけにはいかない。その想いがナナリーの中で再燃する。
「アァァァァァ!!!」
「っ!?」
投げられる寸前。ナナリーは自身を掴むと信之助の腕を掴み、見よう見まねの背負い投げ。
「フン!」
信之助はナナリーの技を力ずくで外す。すぐに二人は距離を取る。
「絶対に…負けるわけにはいかないんですよ!」
ナナリーの宣言と共に、地鳴りが始まる。
「
地面から次々と骨の兵が這い出してきた。まさに百は居るであろう骨達は信之助を取り囲む。
「骨を操る能力!? まさかこれがナナちゃんの…」
「純血か、純血に近い吸骨鬼だけが出来る骨を操る能力。それを更に昇華させたものです」
骨の兵達は一斉に信之助に襲い掛かった。
◇◇◇
「へえ。ついにアレを使ったんだ~」
その少女は信之助とナナリーの戦いを観戦しながら呟く。
「ナナちゃんは本当に努力家だよねー。あの能力をあそこまで昇華させるなんて。能力こそ混血であるナナちゃんは純血に劣るけど」
でも、と少女は続ける。
「秘める才能は純血をも凌ぐ。本当にナナちゃんが純血じゃないのが悔やまれるよ」
少女はまたクスクスと笑う。
◇◇◇
「よっ、ほっ、おっと」
信之助は百の骨の兵を相手取る。 一体一体はそこまで強くはない。厄介なのはその数と連携だ。まるで優秀な指揮官に率いられた兵のように連携を取るのだ。流石の信之助も武器なしでは少々時間がかかる。
「あれを使うとしますか」
信之助はギフトカードからそれを取り出そうとする。
「隙だらけです!」
骨の兵が信之助に襲い掛かる。その瞬間…
「な、何!?」
骨の兵達が吹き飛ばされた。
「フゥ…」
そこに大きな輪っかのような物を持つ、無傷の信之助が居た。信之助が持っていた物とは…
「フ、フラフープ!?」
信之助が持っていた物はトレーニングやダイエットに使う道具、フラフープ。とてもじゃないが武器とは呼べないそれを見て、ナナリーは怒りが込み上げてきた。
「そんなオモチャで…勝てると思ってるんですか!」
骨の兵が再び信之助に襲い掛かる。
「チッチッチッ。これを嘗めたら痛い目に見るゾ」
信之助はフラフープを勢いよく回す。すると本来のフラフープでは有り得ない速度で回転し、チェーンソーのような高音が響く。 それは一振りするだけで数体の骨の兵を、粉砕した。
「何ですか…それは…」
ナナリーは目の前の光景に呆然とする。 信之助が持つこのフラフープには強度と速度、そして遠心力を強化するギフトが掛けられている。本来は人間よりも強靭な肉体を持つ種族の為に作られたものだが、このフラフープは
「イヤッホー!」
遠心力を利用し、時に巧みに、時に乱暴に振り回す。骨の兵達は抵抗する間もなく、次々と粉砕されていく。
「快…感、なんちゃって」
そして、信之助は骨の兵達を2分も経たずに全滅させた。
「それで勝ったつもりですか?」
ナナリーはクスリと笑う。すると骨の欠片が音をたてて集まり始めた。
「え? もしかしてこれって復活する系?」
「正解です。私を気絶させても無駄ですよ? 彼等を完全に倒したいなら、塵も残さず消滅させるか私を殺すことです」
勿論、信之助にナナリーを殺す事など出来ない。ナナリーにはそれが分かっているのだ。 こうしている間にも骨の兵達は復活している。
「ナナちゃんって意外と性格悪い?」
「貴方が相手ですから」
苦笑する信之助にナナリーは苦笑で返す。
「仕方ないなあ、アレを使いますか」
信之助は自身のギフトカードを掲げ、それを
「あーヤダネヤダネ。なんでこのオレ様がみすぼらしい骨と小娘を相手にしなきゃならないのかねー」
「雪…だるま」
それは大きさは違えど、信之助と共に買い物をした時に信之助が買った人形と瓜二つだった。名は確か…
「仕方ねえーな。コミュニティ“ヘンダーランド”製、雪人形ス・ノーマン・パー様の力を見せてやろう!」
突如、極寒の風が吹き荒れ、辺り一面を凍土の世界へと変えた。
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