嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうもとある人の「ルビはパソコンでしかできないからスマホじゃ無理だよ」という言葉を信じてた塗る壁です。やってみたら出来た…orz

そんでもって二十九話目です。


英雄の実力だゾ

「「「「おいでよ」」」」

 

「えっ?」

 

「っ!!?」

 

 その声は聞こえた。地の底から這い上がってくるような、全ての負の感情を込めたそんな声。

 

「ス・ノーマン! ナナちゃんを!」

 

「わかってる!」

 

 信之助はナナリーを抱きかかえているス・ノーマン・パーを直ぐに下がらせる。

 信之助がその声の方向を睨み付けると同時に、あらゆる色をぐちゃぐちゃに混ぜたような泥が地面から滲み出て、溢れる。そして…

 

「「「「おォいィでェよォ、おォォいィィでェェよォォ、おォォォいィィィでェェェよォォォ、おォォォォいィィィィでェェェェよォォォォ!!!」」」」

 

 そいつは現れた。

 

「い、いやぁぁぁぁぁ!!」

 

 ナナリーの悲鳴が飛ぶ。

 現れたのは泥の巨人。だが、その姿はあまりに醜く、おぞましく、邪な姿であった。それは全身、果ては指先、目、口内に至るまで満遍なく、老若男女様々な泥の顔に埋め尽くされた姿。

 

「「「「あああァァァァァそそそォォォォォぼぼぼォォォォォよよよォォォォォ!!!!」」」」

 

 全ての顔が同時に咆哮し、一つの化物が産声を上げる。その声は生きとし生けるもの全てを呪わんと、引きずり込まんとする何かに満ちている。その声に全ての者が恐怖した。

 

「あぁ…あぁぁぁぁ…」

 

 ナナリーは恐怖に体を奮わせる。闇の中に居た時の恐怖が蘇り、ナナリーの心を染め上げ、目の前が真っ暗になる。

 

「ナナちゃん…」

 

 声が聞こえる。あの化物とは違う優しい声が。ナナリーは時間がゆっくりと流れるような錯覚に陥る。

 

「大丈夫…」

 

 何かが頭に触れた。それはとても暖かくて、安らぎをくれた。ナナリーの心を埋め尽くす恐怖が消えていく。

 

「野原…さん?」

 

 気付けば、信之助が自分に向けて笑いかけていた。

 

「ナナちゃんは…オラが守る」

 

 その時になってやっと、信之助が頭を撫でている事に気付く。

 

「待ってて、すぐ終わるから」

 

 信之助は撫でるのを止めると、その化物へ向き直る。

 

「あ…」

 

 化物へ挑もうとする信之助の背にナナリーの腕が伸びる。

 

「だめ…行かないで…」

 

 ナナリーは悟っていた。あれは人がどうこう出来る存在ではない。

 

「逃げて! 野原さん!」

 

「お、おい!?」

 

 ナナリーはス・ノーマン・パーの腕を振り払おうとする。だが、ス・ノーマン・パーの力が強く振り払えない。信之助は止まらない。そして、化物も信之助に襲い掛かる。

 

「逃げてーーー!」

 

 化物が大口を開け、信之助を飲み込もうとする。その瞬間。信之助がフラフープを持った腕を横に振った。

 

「………え?」

 

 ナナリーは茫然とする。

 ナナリーから見える世界が信之助を除き、絵画を切り裂くが如く横一文字に別れた。化物も、建物も、例外なく。

 

「「「「オ、オオオオオオオオオ!!!」」」」

 

 真っ二つになった化物が絶叫する。信之助は斬ったのだ。化物も、離れた建物も全て。たった一振りで。それもフラフープで。

 

「「「「アアアアアアアアアアア!!!」」」」

 

 信之助に化物の巨木のような泥の腕が迫る。同時に腕から無数の触手のようなものが生え、あらゆる方向から信之助に襲い掛かる。

 

「ちょっと邪魔」

 

 その一言で化物の腕も、触手も、全て細切れにされる。化物は、信之助に圧倒されていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あの野郎。あれが全力じゃなかったのかよ」

 

 ナナリーはス・ノーマン・パーの言葉に驚く。あれとはどういう意味なのか。

 

「お前、気付いてねぇのか?」

 

「え?」

 

 ス・ノーマン・パーは呆れたように言う。

 

「お前、殆ど傷を負ってねぇだろうが」

 

「……そう、言えば」

 

 ナナリーも気付いた。あれほど戦いを繰り広げたにも拘わらず、ナナリーは殆ど傷を負っていない。だが、それは信之助の強さから見てあり得ない。それはつまり。

 

「あいつはお前を傷付けないように手加減してたって事だ」

 

 今度こそ、ナナリーは戦慄した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「「「「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでぇぇぇぇぇ!!!」」」」

 

 化物は喚き散らし、破損した体を凄まじい速度で再生する。

 

「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」

 

 化物は信之助に再び襲い掛かる。

 

奥義(おうぎ)…」

 

 信之助は構える。

 左腕を後ろに、フラフープを持つ右手を前に伸ばす。フラフープに金色の光が宿り

 

(てん)()(きざ)み!」

 

 信之助の体が回転する。そして、無数の金色の粒子が発生し、風と共に信之助を中心に渦を巻く。渦は化物をも巻き込み、天へと昇る。粒子同士がぶつかり合う度に弾け、無数の新たな粒子が発生する。それは星々の如く煌めき舞う。

 奥義・天渦刻みは奥義・八雲斬りと並ぶ信之助が編み出した独自の奥義の一つ。八雲斬りが全ての力を一刀に集中し、天地を切り裂くならば、天渦刻みは全ての力を分散することで、幾億もの刃が万物を切り刻む事に等しい。

 また、この奥義は威力こそ八雲斬りに劣るが前方の広範囲に放つ八雲斬りと違い、信之助を中心に発生するため、ナナリー達を巻き込まないように()()()()()()()。もし、信之助が全力でこの奥義を使えば、この町そのものを一瞬で消滅させてしまうだろう。

 

「「「「アアアァァァァァ………………」」」」

 

 化物は上空で耐え切ろうと再生するが切り刻む速度の方が圧倒的に上回り、悲鳴もろとも切り刻まれ消滅する。残ったのはドーナツ状に抉れた地面の中心に立つ信之助の姿だけだった。

 化物と信之助の戦いは、呆気なく信之助の勝利に終わった。

 

「すごい…」

 

 ナナリーはあの化物に容易く勝利した信之助の姿を見て感動と尊敬の念を抱く。

 これが、英雄(ヒーロー) 野原 信之助なのだと。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あ~あ。結局、しんちゃんの勝ちか。まあ、しんちゃんが勝つのは分かってたんだけどね♪」

 

 少女は信之助達を見据え、クスクスと笑う。

 

()()()()()()じゃ、こんなものかな。大分一年のブランクを取り戻してきたんじゃない? かなりなまってたしね~♪」

 

 少女は久しぶりに見た時は驚いたよ~、と言って困ったようヤレヤレと首を振る。そう、一年前の信之助は“あの力”を無しにしても、動き、技術、技のキレ、それら全てが一線を越えていた。

 

「それにしても、しんちゃんのあの力。物理法則とか完全に無視してるけど一体何なんだろう? “ワタシ”から流れてきた記憶だけじゃあ少なすぎるな~。この際、“ワタシ”も呼んじゃおうかな♪」

 

 少女はかつて別れてしまった彼女の事を思い出す。そして、何時の間にか手に持っていた白い袋をプラプラと揺らす。

 

「さてと、目的の物も手に入ったし身を隠すとしますか♪ このゲームも結果は見えたしね♪ あっ! でもナナちゃんどうしよ? ()()も解けちゃったしなぁ。う~ん…」

 

 ナナリーは少女にとっても大切な“登場人物”だ。放っておく訳にもいかない。少女はう~んう~ん、と首を何度も傾げながら頭を悩ませる。

 

「よし! 暫くはしんちゃんに預けよう! そうしよう! その前に記憶もある程度()()()()()()()()()♪」

 

 少女は名案だ、と手を叩きクスクスと笑う。

 

「そろそろ私も遊びたくなってきちゃったな♪」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

(ヴェーザー、ラッテン、そしてナナリーはおそらく戦意喪失ね)

 

 ペストは黒ウサギの話から三人とも敗れたことを知る。戦況は絶望的。逆転は難しいだろう。だが、ペストは黒ウサギとサンドラを相手取りながら、それとは別の事を考えていた。ナナリーの事だ。初めから分かっていた。ナナリーには無理だと。何故なら、

 

(仕方ないか。あの子は、優しすぎる)

 

 ナナリーは恐らく全力で戦ってくれただろう。昇った炎の柱、何か得体のしれないものの咆哮。だが、ナナリーは魔王の仲間としてはあまりにも優しすぎた。その優しさ故に苦痛と孤独の中を生きていた少女。ペストはナナリーに昔の自分を少しだけ重ねた。

 

(まあ、野原信之助が居るなら酷いことはされないでしょ)

 

 そこまで考えてペストは苦笑する。らしくないと。そして決意する。

 

「止めた」

 

「え?」

 

 ペストの目の前に居る黒ウサギが、素っ頓狂な声を上げる。ペストは決意した。自分の為に死力を尽くしてくれた初めての仲間達の為。見せてやろう。ヴェーザーにラッテンにナナリーにお前達にあの少女に、そして野原信之助に。

 

「白夜叉だけを手に入れて、皆殺しよ」

 

 魔王としての覚悟と意地、そして底力を。全ての者に死を与える黒い風が、ペストから解き放たれる。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 全ての者に死を与える黒い風が、上空から吹き荒れる。神霊が持つ、与える側の御技。ペストは全ての者に死を与えようする。黒ウサギとサンドラは為すすべもなくただ逃げるしかない。

 

「まずい! このままじゃ他の参加者が!」

 

 サンドラが悲痛の声を上げる。死の風は無差別攻撃。勿論二人だけじゃなく、他の参加者も狙われる。そして、ついにサラマンドラのメンバーが他の参加者を庇い、死の風に飲み込まれる。はずだった。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 飲み込まれる瞬間、金色に光るフラフープを振り回す少年が死の風を振り払い、サラマンドラのメンバーを救出する。

 

「ふぅ、間一髪だったゾ」

 

「「信之助さん!!」」

 

「来たわね。野原 信之助…」

 

 その者の正体は信之助。

 黒ウサギとサンドラは心強い援軍に歓喜の声を上げた。しかし、死の風はまだ残っている。死の風が、再び他の参加者に襲い掛かる。だが、

 

「オラアアアアアア!!」

 

「ディーン!受け止めなさい!」

 

 信之助に続き、素手で死の風を打ち砕く少年と死の風を受け止めた紅き鉄の巨人を従えた少女が黒ウサギ達の前に現れる。

 

「十六夜さん!飛鳥さん!」

 

 ノーネーム、ついに集合。

 

「それじゃあ、皆揃った所でアレやりますか」

 

「本当にやるつもり?」

 

「たまにはいいだろこう言うのも」

 

「アレ? アレとは前に言ってたアレの事ですか?」

 

 信之助は周囲を見渡す。周りには黒ウサギ、サンドラ、十六夜、飛鳥が立っている。

 信之助は右手を強く握り締め、拳を空へと掲げて言った。

 

「ノーネーム、ファイヤー!!」

 

 決着は、近い。




二十九話目どうだったでしょうか?

実は信之助のギフト。理解不能ついてお聞きしたいことがあります。十六夜の正体不明はコード・アンノウンと呼ばれていますが信之助の理解不能はどう呼べばいいんでしょう。幾つか候補はあったんですけど決まりません。

理解不能を意味するものでどんなのがいいでしょうか?

アイデアがありましたら感想ではなく活動報告に御返事ください。
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