三十二話目です。
町にGOだゾ
ペストとの戦いから約二週間がたった頃。
「黒ウサギのお姉ちゃん、ナナちゃん! お腹が空く頃だと思っておにぎり持ってきたよ!」
ノーネームの農園で畑仕事をしている黒ウサギとナナリーへリリがおにぎりを持ってきた。
「ありがとうございます、リリ! ナナリーさん、少し休憩にしましょう」
「あ、はい!」
ナナリーはノーネームに引き取られてから積極的に働いてくれた。それこそ、黒ウサギが
今回の休憩も黒ウサギはまだそこまで疲れていないのだが、ナナリーの為に取ることにした。
黒ウサギ、ナナリー、リリがおにぎりを食べながら休憩していた時だった。
「た、大変でーす!」
黒ウサギの元へジンが慌てて駆け寄ってきた。
「ジン坊っちゃん!? どうされました!?」
「そ、それが……」
ジンは手に持っている紙を黒ウサギへと手渡した。その紙には……
『そうだ、町に行こう。四人より』
「「「「…………」」」」
四人は一瞬、時間が停止してしまったように感じたという。そして、黒ウサギはワナワナと体を震わせ髪を緋色に染める。
「あ、あの問題児様達はーー!!!」
◇◇◇
見慣れない町並み、様々な種族が入り乱れる箱庭の街。
「相変わらず無駄に広いな。この箱庭ってヤツは」
金髪の少年が呆れたように言った。
「本当ね。私達がこの箱庭に呼び出されて、もう2~3ヶ月は経ったかしら?」
高貴そうな少女が思い出しながら言った。
「見た事のない物だらけでなかなか慣れないね」
大人しそうな少女が周りを見渡しながら言った。
「まあ、いいじゃん。面白そうな所で」
短髪の少年があっらかんと言う。四人は見慣れない町並みを眺めながら町を歩いていた。
「ねーねーそこ行くかわいいお二人! ウチのコミュニティに入らない?」
見知らぬ軟派な男がいきなり二人の少女へと話し掛けてきた。
「俺達のとこに来なよー! 君達みたいな女の子歓迎だからさ、損はさせないよー?」
男にイラついた二人の少女の片割れである高貴そうな少女は口を開いた。
「
少女の怒声と共に男の口が強制的に閉じられる。
その少女の名は
「にゃー。にゃーにゃーにゃにゃー、にゃーにゃー!」
「うん凄いよね、でも助かっちゃったよ」
三毛猫と会話する大人しそうな少女の名は
飛鳥と耀が楽しそうに会話をしていた時。
「どいてどいてー!」
一人の少女が二人の間を通り過ぎていった。
「待てやクソガキがー!」
エプロンを来た大柄の男が声を張り上げ、少女を捕まえようとする。その手が少女に迫った瞬間。
「なぁ!??」
少女が姿を消し、男が突然の事に驚愕の表情を浮かべた。同時にくしゃりと何かを丸めた金髪の少年がその男へとそれを投げた。
「ぐはぁ!?」
それは凄まじい速度で飛び、男へとぶち当たり吹き飛ばした。あまりの衝撃にその男は仰向けに倒れ、そのまま気を失った。
「すまん、ゴミ箱と間違えた」
平然と言った金髪の少年の名は
「お嬢ちゃん、怪我はない?」
「は、はい! 大丈夫です!」
短髪の少年に少女は礼を言う。
「お礼ならオラじゃなくて十六夜君ね。て言うか十六夜君、ゴミは投げて捨てちゃダメでしょ。外したらどうすんの?」
少しズレた忠告をする短髪の少年の名は
彼等こそ、ノーネーム問題児四人衆である。
「そもそもゴミにゴミをぶつけてどうするのよ? ちゃんとゴミ箱に入れなさい」
「そうだよ箱庭でもマナーを守らなきゃゴミがかわいそう」
「いやきっとゴミはゴミ同士仲良くやって行けるさ」
「おお、皆さん言いますな」
そんな四人は気絶した男を無視しながら先に進もうとする。
「そんなことより後ろ後ろ」
「ん?」
信之助に言われて後ろを振り返った時だった。
「見ーつーけーまーしーたー」
ゆらゆらと揺れる
◇◇◇
「どうして皆さんはじっとしていられないんですか!? 毎度肝を冷やす黒ウサギの身にもなってくださいよ!!」
涙目になった黒ウサギは正座させている四人に向けて説教をしていた。
「実は俺、じっとしてると髪が逆立ってしまう病なんだ」
「じゃあ私は、じっとしてるとリボンが本体になってしまう病」
「じゃあ私は、じっとしてるとスライムになってしまう病」
「じゃあオラは……」
「反省の色無しということは把握しました!! いいですか、皆さんは……」
黒ウサギの長い説教が始まり、箱庭のルールからノーネームの事まで聞かされるのだった。
「……という訳でいつどこでどんなギフトゲームが始まるか分かりません! なので避けて通れる様なら揉め事はなるべく……」
「あのさぁ黒ウサギ」
十六夜は笑みを浮かべながら黒ウサギに言った。
「実はもう揉めちゃったりして」
「なぁ!!?」
憤怒の表情を浮かべた大柄の男が殺気を放ちながら立ち上がった。
「だ、誰ですかこの厳ついハンバーガー屋さんみたいな人は!?」
黒ウサギは大柄の男に驚き、十六夜の背に隠れる。
「先日リストラされてイラついてる元ハンバーガー屋さんだ。あとロリコンだ」
「勝手に設定を作るな!」
適当な事を言う十六夜に男のツッコミが入る。
「オラ、チーズバーガーとバニラシェイクと…」
「ハンバーガー屋じゃねぇって言ってんだろうが!」
信之助にもツッコミを入れる男。それを見て十六夜は呆れたように言った。
「そうだぜ野原。こいつはハンバーガー屋じゃなくて“元”ハンバーガー屋さんだ」
「元でもねぇよ!」
完全に遊ばれている男であった。
「そいつは肉屋のカラッチ・トーロって言うの。最近この町で好き放題やってる悪党だよ!」
先程助けた少女はまだ居たらしく男について教えてくれた。
「え? 肉屋なの? なら…豚肉と牛肉を……」
「今、売れる訳ねぇだろうがぁ! いい加減にしろよ、てめぇ!!」
再び注文しようとする信之助にカラッチは怒号を上げる。
「こら! なんだねお客様にその態度は? 次、そんな態度を取るならやめてもらうよ」
何時の間にかエプロンを着て、腕を組み声を変えて演技をする信之助にカラッチはヘコヘコと頭を下げる。
「す、すみません店長。次からちゃんとやりますんでそれだけは……って、何やらすんだクソガキ! 後、店長は俺だ!」
「「「「「え!?」」」」」
「意外そうな顔をしてんじゃねぇよ!!」
少女以外の全員が驚いた表情を浮かべる。
「奥様、聞きました? あの方、店長ですって。それなのにあんな事を……。世も末ね」
「聞きました聞きました。もうあの店は信用ならないわ。いつか潰れるんじゃないかしら?」
少女を除いた全員が集まりコソコソと話す。ギリギリカラッチに聞こえる声で。
「いい加減にしろよ! てめぇ等よぉ!!」
そのツッコミを最後にカラッチは四つん這いになり、息切れを起こす。そんなカラッチを黒ウサギは同情にも似た憐れみの目で見ていたのは秘密である。
「な、なんなんだよこいつら。……ん? あれは……ハハハハ! ついてるぜ、まさかこんな所で箱庭の貴族“月の兎”に出くわすなんてなぁ!」
黒ウサギの姿を確認したカラッチは立ち上がり、四人に向けて言った。
「おい、そこの四人。俺とギフトゲームしろ!」
未だ話している四人に向けてカラッチが勝負を仕掛けてきた。
「勿論
「突然何を言い出すかと思えば…」
カラッチの勝手な言い分に黒ウサギは怒りをあらわにする。
「そんなのダメに決まってるよ!」
「そうですよ! こちら側が不利なルールを設定されると分かっていて合意する訳がないでしょう!!」
少女と黒ウサギが異を唱えるが、カラッチは嫌な笑みを浮かべながら言う。
「いいじゃねぇか。どうせ相手してくれる奴もいねぇんだろ? お前らみたいな弱小コミュニティなんて大概話にならねぇからな」
カラッチの挑発に全員がピクリと眉を動かす。それに気付いた黒ウサギが慌てて止めに入る。
「挑発に乗っちゃダメです皆さん!」
「言われなくても分かってるぜ」
「こんなの挑発にもならないゾ」
「そうよ。それとも私達がこんな安い挑発に乗るとでも?」
「もう少し信用して?」
十六夜、信之助、飛鳥、耀が順番に言う。黒ウサギは安堵の表情を浮かべた。が…
「「「「だから」」」」
四人は満面の笑みで……
「「「「そのゲーム、受けて立つ!!!」」」」
勝負に乗るのであった。
「……え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
黒ウサギの絶叫が町の中に響いた。
久しぶりの投稿です。
取りあえず書くことが思い付かないので現時点でのノーネームの強さ順。
信之助>>十六夜>>>>黒ウサギ>ナナリー≧レティシア>飛鳥≧耀
普通に戦った場合の順番です。但しこれは絶対ではなく相性や状況で変化します。この先、成長すれば変化します。
※持っている武器や道具等を使っている場合も含まれます。※ジンは戦闘描写がないため除外。
早く信之助以外の三人が成長する所を書きたいな。特に十六夜。