嵐を呼ぶ問題児が異世界から来るそうですよ   作:塗る壁

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どうも塗る壁です。三十五話目です


サーカスへご招待だゾ

「え!? サーカスのチケット!?」

 

 ノーネームの大広間に驚愕の声が響く。

 

「うん。今、東の街に移動サーカスが来ていて、たまたまそのチケットを手に入れる事が出来たからお礼にと思って!」

 

 前に信之助達四人に助けられた少女 フェルナをノーネームの屋敷に招き入れ、フェルナから要件を聞いていた。

 東側はサーカス等の娯楽は少ないらしく黒ウサギ達もはしゃいでいる。

 

「本日はギフトゲームはお休みして行楽日と洒落込みましょう!」

 

「「「「おーー!」」」」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おお! 大きなテントが見えてきたゾ!」

 

 街を歩くとサーカスとおぼしき巨大なテントが見えてきた。

 

「そう言えば公演は何時からなのでしょうか?」

 

 ふと、黒ウサギがフェルナに公演開始の時間を聞いた。

 

「えーと…お昼過ぎからだって」

 

 フェルナはチケットを見ながら公演時間を言う。フェルナと黒ウサギは歩きながら楽しく話す。

 

「それでウチの問題児達ときたらもう大変でしてねっ!? いつも少し目を離した隙に…」

 

 黒ウサギは問題児達の事を愚痴りながら振り向く。

 

「…………」

 

 そこには誰も居らず、そよ風が吹いた。

 

「やっぱり突然の自由行動してたー!!」

 

 黒ウサギの絶叫が飛び、フェルナも冷や汗をかく。少しして四人を見付けるが…

 

「ねぇ黒ウサギ見て! そこの露店のおじ様が“幸福になるツボ”を格安でくれたわよ」

 

「詐欺られてるんで今すぐリリースして来てください!」

 

 世間知らずな飛鳥がツボを持って嬉しそうに話し…

 

「ポップコーン、メガ盛りにしてもらった」

 

「最早屋台荒らしじゃないですか!」

 

 大食らいな耀はポップコーンを持って満足げに言い…

 

「着ぐるみがケンカ売ってきたからボコっといたぞ」

 

「謝ってください!」

 

 やんちゃな十六夜はボコボコにした着ぐるみを掴み上げながら笑い…

 

「そこの綺麗なお姉さーん! オラとサーカスに行かなーい?」

 

「さっさと戻ってくださいこのお馬鹿様!」

 

 ナンパな信之助はお姉さんの後を追い掛けていた。そんな四人に黒ウサギはそれぞれにツッコミを入れる。

 

「「「「祭の空気に浮かれてやった今は反省している」」」」

 

「いつもと変わらないじゃないですか! うう…せっかくの休日だと言うのに胃がねじ切れそうです…」

 

「た、大変なんだね…」

 

 腹を押さえ、涙を流す黒ウサギをフェルナが慰める。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「イッツショータイム!!」

 

 花びらや小鳥、様々なものが宙を舞う幻想的な光景に歓迎され、公演が始まった。

 長い髪の女性が猛獣を相手取り、三人のピエロが玉や箱、松明でお手玉をし、三匹の動物が蝋燭に照らされる中、演奏する。

 猫耳の少女が空中から複数の剣を投げ、トンッと反動もなく剣先に立った。

 

「すごいっ」

 

 黒ウサギが感動したように手を鳴らす。

 

「ふむ。あれだけ動いてスカートの中が見えないのは確かに凄いな」

 

「どこを見てるのですかどこを!!」

 

「さっきのお姉さん。C…いやDか?」

 

「貴方もどこを見てるんですか!

 

 黒ウサギがハリセンで十六夜の頭を叩く。勿論、信之助は避けた。

 

「さあさあショーもクライマックス! ラストは大マジックで締め括りどすえ!!」

 

 テント内は暗転し、たった一つのスポットライトだけが照らしている。照らされた長い髪の女性が盛大に叫ぶ。

 

「これからそのマジックの主役は一名。お客はんの中から選ぶさかい!」

 

 幾つかのスポットライトがついた。

 

「それはこの方!!」

 

 明かりが移動し、選ばれた主役を照らす。

 

「えっ! えっ!? く、黒ウサギですか!?」

 

 選ばれたのは黒ウサギだった。

 

「おめでとうどすウサギはん。さあ舞台の方へおいでやす」

 

 黒ウサギは女性に案内され、椅子に座る。

 

「ほんでは今からこちらのウサギはんの姿を変えて見せるどす」

 

 観客が見守る中、カウントを始める。

 

「スリー! ツー!」

 

 風が黒ウサギを覆い隠し…

 

「ワン!!」

 

 ドラゴンへと姿を変えた。

 

「ワアアア! スゲェ、ドラゴンだー!」

 

 テント内を観客の拍手と声援が満たしていく。

 

「これにて本日の公演は終了どす。皆様のまたのお越しを待っとります」

 

 そう言って女性は胸に手をやり、軽くお辞儀をする。

 そして、黒ウサギは戻ってこなかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そして夕方になり…

 

「お待たせ」

 

「ああ。どうだったお嬢様」

 

 飛鳥が黒ウサギの行方をサーカスのスタッフに聞きに言ったが収穫はなかった。

 

「たくっ面倒だな。先に帰る訳にもいかねーし、春日部の五感で探せないか?」

 

 十六夜は四人の中で最も五感の鋭い耀に話を振るが、耀は残念そうに答えた。

 

「それがさっき匂いを辿ってみたりもしたんだけど、この街雑然とし過ぎてて匂いの判別がつかなかったの」

 

「そうか。…野原、お前の勘は?」

 

 次に十六夜は最も勘の優れた信之助に聞く。

 

「十六夜君…オラの勘の事、少し勘違いしてない?」

 

 信之助は困ったように答えた。

 

「オラの勘は“危機”に対して特化してて、それ以外は他人よりマシな程度しかないんだゾ。だから探したり嘘とか見抜いたりとかあんまり出来ないんだよね~。精々違和感に気付く程度。ただ、フェルナちゃんが居た時は言えなかったけど…」

 

「なんだ?」

 

 信之助が真剣な表情で言う。

 

「この()、変な感じがする」

 

 勘だけどね、と信之助は手を振る。耀と飛鳥は首を傾げ、十六夜がそんな信之助の言葉を考えようとした時…

 

「みんなー」

 

 フェルナがこちらに駆け寄って来た。

 

「取り合えず向こうの宿を取っておいたの。暗くなっちゃうし今夜はこの街に滞在したらどうかと思って…」

 

 四人は頷き合い、今夜は宿に泊まることにした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 次の日。

 

「本当に何処へ行ったのよ黒ウサギは!」

 

「まぁまぁ落ち着いて飛鳥」

 

 憤慨する飛鳥を耀が宥める。それでも飛鳥の怒りは治まらない。

 

「これだけ探して見付からないなんて! きっと何処かで道草食ってるに違いないわ!」

 

「ううん、それはないよ。道草は美味しくない」

 

「いえ、そういう意味じゃ……って食べたの貴女!?」

 

「そりゃあ、耀ちゃんの友達には草食動物もいるでしょ?」

 

「そう言う事じゃないでしょう!?」

 

 斜め方向を返事に飛鳥が突っ込む。

 黒ウサギが居ない今、自然と飛鳥へとツッコミ役が回ってきた。

 

「あすかーあすかー」

 

 すると幼い声が聞こえてきた。

 

「メルン! おかえりなさい、本拠の方はどうだった?」

 

「ダメー黒ウサギいなかったー」

 

 姿を現したのは小さな妖精。ペストとの戦いの後、飛鳥が仲間にした妖精 メルンである。

 

「おーい黒ウサギは見付かったのかー?」

 

 十六夜がフェルナを連れて帰ってきた。

 

「こっちはダメだった。十六夜達は今まで何処に?」

 

「ちょっと宿でな」

 

 十六夜はフェルナをチラリと見ながら言う。

 

「こいつが話があるっつーから聞いてたんだよ。まあ、中々に面白い話が聞けた所だ」

 

「「「話?」」」

 

「ああ、それが「いいいぃぃやっほおおおお!!」

 

 十六夜の言葉を盛大に遮る者が居た。

 

「会いたかったぞ黒ウサギィィィ!!!」

 

 声の正体は白髪の和装の幼女・白夜叉である。こちらに突進してきた白夜叉は勢いよく抱きついた。

 

「うーむ、やはり何度抱き付いてもこの感触はたまら…ん?」

 

 抱き付いた白夜叉はその違和感に気付く。

 

「えらく凹んだのう、黒ウサギよ」

 

()()の胸を鷲掴みながらそう言った。鉄の巨人が姿を表し…

 

「ぎゃあああああ!!」

 

 その鉄の拳は白夜叉の脳天へと振り落とされた。

 

「てっきり黒ウサギが居るものだと確信しておったのだが、しかし発育途上の大きさも悪くないのう」

 

「黙りなさい! もういっぺんぶつわよディーンで!!」

 

 笑う白夜叉の襟を掴みながら顔を真っ赤に染め飛鳥が怒鳴る。

 

「おい春日部が全力上空退避して降りてこねーからその辺にしとけ」

 

「おーい耀ちゃーん。大丈夫だから降りといでー」

 

 黒ウサギ(ツッコミ)が居ない今、混沌とした状況をどうにか出来る者は居ない。




黒ウサギ(ツッコミ)、早く戻ってきてくれー。

何時もより少し短いですが感想や誤字脱字の報告待ってます!
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