三十七話目になります!
信之助は刀の炎を高く大きく燃え盛らせ、ピエロへと向ける。全ての者達が驚きの表情でいる中、最も驚愕しているのは…
(バカな、ありえんぞ!?)
意外にも白夜叉であった。
(信之助は
そう。白夜叉は驚愕しているのは刀に火を付けた事ではない。それだけならばここまで驚きはしなかっただろう。
白夜叉は驚いているのはその規模。明らかに火を付けただけではない。あれほどの炎は
だが信之助が持つギフトの中で増幅系は【絆の共鳴】のみ。アレは意志があるものならば生者、死者問わず発動するらしいが炎に意志はない。
その時、白夜叉の頭に過るのは信之助自身が持つもう一つのギフト【
思えばアレは最初から異常であった。本来ギフト一つに付き能力は一つであり複数の能力を持つことはあり得ない。
耀の能力も知らない者から見れば複数発動しているように見えるが他の生物の能力を自分の能力として使用しているという点から見れば共通している。
しかし、信之助と十六夜だけはソレに当てはまらない。十六夜のギフト【
人間離れした身体能力に風や竜巻を起こし、通常の剣技とはかけ離れた剣技を使え、光の粒子を発生させ、炎を増幅させる。
(信之助、お前の力とは一体…)
ピエロへと突っ込む信之助を見て、そう思わずには居られなかった。
◇◇◇
「行くゾ!」
「さすガにそレはマズい!?」
液体化したピエロは跳ねるように信之助がいる方向とは逆の方向へと逃げようとする、だが…
「逃がさない」
「グわ!?」
突如、少女の声が聞こえ突風がピエロを押し戻す。
「耀ちゃん!?」
そこに居たのは気絶している筈の耀だった。
「信之助、今!」
「っ!」
耀の合図と共に信之助は刀に纏う炎をピエロに向けて放ち、耀もまた合わせるようにグリフォンの風を放つ。炎と風は交わるように敵を包み、竜巻のように燃え盛る。
「ギャアアアアアアアっ!!!」
断末魔の絶叫が上がる。その炎に呑まれたが最後、全て逃がさず巻き上げ焼き尽くす。
合技・
「信之助、やったね」
「耀ちゃんのお陰でね」
二人は笑い合いながらハイタッチをする。特に耀はとても嬉しそうだった。
「春日部さん! 貴女、気絶してたんじゃなかったの!?」
駆け寄ってきた飛鳥は少し驚いたようで耀に問い掛ける。
耀は少し茫然とした後。
「ううん死んだフリだよ。動物が外敵から身を守る為にやる擬死ってやつ。ニホンアナグマさんから教わったの」
耀は何でもないように言うが飛鳥と信之助は逆に冷や汗をかく。
「い、いろんなお友達がいるのねぇ」
「耀ちゃんって、むしろコミュ力高いよね…」
その時飛鳥があっ、と何かに気付いたように声をあげた。
「どうしたの飛鳥?」
「いえ、まだ招待状を貰ってないのに倒しちゃったからどうすればいいのかしら?」
「「あっ」」
信之助と耀は同時に思わずと言わんばかりに声を出す。
「あっ、て貴方達…」
「ついうっかり」
「私もつい…」
三人の間に気まずい沈黙が流れる。
「それなら心配ねぇぜ」
十六夜の声に全員の視線が集まる。十六夜は焼け跡を見下ろしながら言う。
「春日部も気付いてたろ? あいつの独特な臭い。あいつの体が
「うん」
耀が肯定するように頷いた。すると十六夜はニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「どうやら絵の具としての役目を果たしてたみてぇだぜ」
十六夜が指差す焼け跡の方を見ると…
「「「おお!」」」
三人は同時に歓喜の声をあげた。そこには様々な図形と文字で描かれた魔法陣のような絵がある。
「うむ。これこそが本当の招待状だ!」
白夜叉は閉じた扇子で魔法陣を指しながらドヤ顔で言う。
「ドヤ顔だけど、白夜叉は何もしてないじゃん?」
「えっ」
少々ショックを受けた白夜叉であった。
◇◇◇
「ほらね♪全然苦戦なんてしないでしょ?」
タブラ・ラサは自分の中に居るソイツに話し掛ける。
「ああ、君の言う通りだった」
ソイツはタブラ・ラサの口を借り、話す。
「ちょっと、勝手に私の口を使わないでって何度も言ってるじゃん! いい加減にしないと
〔ああ、すまないな。
ソイツはタブラ・ラサを挑発するように言う。だがタブラ・ラサはクスリと笑った。
「別に構わないよ♪それでも私は私の目的をやり遂げるだけだからね♪なんなら今ここで消してあげるよ?」
〔それは困る。やれやれボクが
ソイツは疲れたように言う。タブラ・ラサは笑い声をあげた。
「アハハハハ! でも他の魔王からは魔王とは認められずに命まで狙われたって言ってたじゃん♪特に…何だっけ?
〔まあね。全員もれなくチートクラスだったよ。なんせ人類を滅ぼしかねない要因をそのまま具現化したような奴らだからね。ボクは昔と違って力も霊格も殆ど失ったし二度と出会いたくないね〕
「アッハハハ! こっわ~い♪そんなのに出会ったら死んじゃうよ~♪」
怖いと言いながらもその声には微塵も恐怖は感じられない。笑うタブラ・ラサにソイツは呆れたように言う。
〔ボクから見たら君も十分
「ひどいな~。こんなに可愛くてか弱くてプリティーでキュートな美幼女なのに~♪」
〔か弱い? その気になれば
「アッハッハ! 消すよ?」
それからも昔からの友人のように互いに軽口を叩き合う。
〔それにしても意外だったな〕
「ん?」
〔野原 信之助だよ。君からは甘い人間だと聞いていたんだがあの
そう、タブラ・ラサからは信之助は甘い人間だと聞いていた。だから殺す事にある程度躊躇すると思っていた。
「そう言えば起きたばかりだっけ? なら仕方ないか。甘いから誰も彼も見逃したり、躊躇する訳じゃないんだよ♪しんちゃんは間違いなく甘い人間だ♪でもね
〔ほう?〕
ソイツは感心したように呟く。
〔ならば一つ質問だ。もし野原 信之助と逆廻 十六夜がこれから戦い続けたとして最終的に勝つのはどっちだ?〕
ソイツは一つの疑問を言う。
信之助も十六夜も桁違いの原石だ。だが今でこそ強いのは信之助の方だが潜在能力的に言えば全くの互角と言わざる得ない。タブラ・ラサはうーん、と少し悩んだ後答えを出した。
「十六夜君の方かな」
〔……なぜ?〕
少し意外だった。タブラ・ラサは信之助に執着している。だからこそ信之助に肩入れをすると思っていた。
「確かに私はしんちゃんが大好きで心酔してるよ? でもね、だからこそ分かってるんだ♪はっきり言ってしんちゃんの能力について一番分かってるのはもう一人の“ワタシ”だと思う。けどしんちゃんの人格について一番分かってるのは私なんだよね♪」
タブラ・ラサはクスクスと笑いながら続ける。
「しんちゃんは、
〔……なに?〕
タブラ・ラサは困ったように言う。
「しんちゃんは敵じゃない相手には力をセーブしちゃうんだよね~。勿論、しんちゃんが全力を出す条件は他にもあるけど、十六夜君と戦った場合しんちゃんに全力を出させる条件はただ一つ。しんちゃんに敵と認識される事。でもしんちゃんにとって十六夜君は敵じゃなくて友達だから本気になることはあっても全力までは出さないんだ。それに比べて十六夜君は戦う度に成長して自分の意志で全力が出せる。ほら結果が見えるでしょ?」
〔成程、全力が出せない野原 信之助と全力が出せる逆廻 十六夜か。確かに勝負は見えてるね〕
「そういう事♪まっ、十六夜君は全力じゃないしんちゃんに勝っても納得しなさそうだけどね♪」
〔確かに〕
ソイツはタブラ・ラサに悟られないように秘かに思う。
(やはり野原 信之助は“彼”とは大分違うようだな。それにしても野原 信之助のあの力…)
先ほど見た信之助のあの力。
(あれが“彼”が最期に遺したあらゆる魔王と災厄を攻略しえる可能性を秘めた力か…)
◇◇◇
「うおー! やっと来たぞ!」
「今夜の参加者だー!」
魔法陣に乗り、テントの中に飛ばされた5人を待っていたのは歓声だった。
「おやおや皆さん。お揃いでどうなされたのですか!?」
突如、聞き覚えのある女性の声に5人の視線が集まった。
「あ! もしかして、黒ウサギの玉乗り芸を見に来てくださったのですか!?」
そこにはサーカスで使うような大きな玉に乗り、何も知らない無邪気な笑顔を浮かべ、手を振りながら一人ホンワカとした雰囲気を放つ黒ウサギが居た。
「「「「「…………」」」」」
この時ばかりは信之助も少し腹が立った。
「まあ、取り合えず…」
白夜叉は真面目な表情で呟くと…
「揉みたかったぞ黒ウサギイィィィ!!」
「ひゃああああ!?」
黒ウサギの豊満な胸に飛び付いた。
「貴女は引っ込んでなさい!!」
飛鳥が怒号でツッコミを入れ、白夜叉を引き剥がすのであった。
「やっぱ黒ウサギとジン君以外でツッコミ役にぴったりなのって飛鳥ちゃんだよね?」
「うん」
そんな光景を見て、信之助と耀がこそこそと話す。
「そこ! 何をコソコソと話しているの!」
こっちにも飛鳥の怒号が飛び、中断するのであった。
「まったく…それで貴女は一体何をしていたのかしら!! 順を追って説明してくださる!?」
本気で怒っている飛鳥に対して黒ウサギは震えながら身を縮ませる。
「すみません…アルバイトをしておりました…」
「アルバイト?」
黒ウサギは今まで何をしていたのか話し始める。
「はい。あの公演の後、団長さんにスカウトされたのですよ。少し興味もありましたしどうしてもと言うので引き受けてみたのです。皆さんには団長さんから伝えておくとの事でしたが…」
「聞いてないわよ! むしろシラを切られたのだけど!?」
「あれ? おかしいですねぇ…」
聞いていないと言われ黒ウサギは首を傾げる。
「まあ無事だったんだし良しとするわ」
「早く帰ろ」
「お騒がせして申し訳ありませんでした…」
飛鳥と耀が帰るように促し、黒ウサギも謝罪する。その時だった。
「ッ!! 二人とも下がれ!」
「「へ!?」」
二人が気付いたときには遅かった。
幾つもの剣が既に避けられない所にまで迫ってきていたから。だが剣が二人に当たることはなかった。信之助が納刀した刀で全ての剣を弾き飛ばしたからだ。
「いきなり何すんの?」
怒りが籠った声を攻撃した者達へと向ける。
「それはこちらのセリフどす。あんたらこそまだゲームの途中やのに何してはるん?」
髪の長い女性が信之助達の前に表れた。
「団長さん!?」
「このゲームはここからが本番。円形闘技場で5回試合での3勝以上。クリア条件にもそうあったはず。他のお客様もそろそろ退屈してはるやろし、はよそちらのトップバッターを決めてくれますか? ちなみにこちらの、トリックスターのトップバッターは……」
団長は自分達側のトップバッターに手を向ける。
「この黒ウサギさんどす!」
「………………え?」
どうも塗る壁です。前回短編を投稿してから投稿しようと言いましたが投稿したい短編がいくつかあり迷っている内に結局投稿出来ず遅くなってしまいました。なので活動報告でアンケートを取って一番多いものを投稿しようと思っています。興味がある方は是非アンケートの方へよろしくお願いします。