異世界を救ったTS姫様と勇者は、現代に帰還しても男女カップルチャンネルの配信でてぇてぇ営業して生きていく。ダンジョン配信もやるよ 作:vhuphje
「なんで『まだ』なの!?」
僕が大声を上げながら見たのは、隣のリョウだった。
「なんでって?」
「結婚してない、でいいでしょ。なんで『まだ』をつけたの?」
「……そこまで考えてない」
『考えてないのが一番やばいんよ』
『無意識まだ』
『勇者もう一回よく考えて』
『考えた結果さらに悪化しそう』
――ですが、こちらにおられた頃もいつもご一緒で、地球へお戻りになってからも、今もご一緒にお暮らしなのでしょう?
「セシリアはちょっと待って! 今はリョウに聞いてるから!」
『草』
『地球側の意見統一はあとにしてもろていいですか』
『セシリアさん待機させられてるw』
『異世界通信中になにやってだこいつ』
『終わりだよこの姫様』
リョウは自分が何を言ったのか、まだよく分かっていない顔をしていた。
「……俺の言い方はともかく」
「ともかくにしないで」
「セシリア」
――はい、リョウ様。
「兵士連中に、そういうことでからかわれたことはある。『奥方を待たせるな』とか」
「……それ僕、初めて聞いたんだけど」
「わざわざ言うことじゃないだろ。それに、俺はあいつらの軽口だと思ってたんだよ。城の中でも、本当にそう思われてたのか?」
――はい。兵の方々だけではございません。少なくとも、城の中では、そのうちお二人はそうなられるのだろうと思っていた者は多かったかと。
「……そこまでだったのか」
「それは僕も知ってたよ」
リョウがこっちを向いた。
「イオリも、ただの冗談じゃないく城でそう言われてるって分かってたのか?」
「だって、僕は直接言われてたから。兵士の人に、『リョウの奥方』って。一回だけじゃない」
「……イオリにも言ってたのか?」
「うん」
「それは聞いてないぞ?」
「僕だって今初めて、リョウも言われてたって聞いたよ」
「……まあ、そうか」
「わざわざ報告することじゃないでしょ」
『両方言われてたのかよwww』
『お互い報告してなくて草』
『これ配信で一度も言ってないだろこれ』
『奥方って今日初出情報じゃない??』
『異世界公認夫婦じゃねえか』
「僕、そのあとセシリアにも確認したし」
「何を?」
「お城が僕をリョウと結婚させるために、姫君の仕事をさせてるわけじゃないよね、って」
――はい。以前にも、そのようにお尋ねになりましたね。
「だから、僕たちの知らないところで話を決められてたわけじゃないことは、確認してたんだよ」
リョウは静かになった。
『確認までしてたwww』
『姫様の異世界時代また隠しイベント出てきた』
『どこまで話してないことあるんだ』
『これが普通の親友かよ』
『異世界と通信中と聞いてきたらアイドルの結婚会見だった』
ミナトさんが、僕とリョウを見比べた。
「じゃあ整理すると、向こうの世界の王宮が、ふたりを結婚させようとしてたわけじゃない。でも周りから見たふたりは、そのうちそうなるように見えてた。イオリちゃんは、それ自体は昔から知ってた、ということ?」
「はい。というか……僕も当時、自分で一回そういうこと考えたし」
言ってから、黙っておけばよかったと思った。
「何を?」
案の定、リョウが聞いてくる。
「……僕、メインヒロインというか、正妻枠みたいだなって」
『??????????』
『正妻枠?wwwww』
『メインヒロインを自認する男子高校生』
『ちょっと待て姫様』
『神回すぎるだろ・・・・・』
『毎分爆弾発言してて草』
『自認正妻VSまだ結婚はしてない』
『点と点が線でつながったな』
『サブヒロインもいたってこと?』
『これでなんで普通の親友なの??w』
「正妻枠って何だ?」
リョウには伝わらなかった。
……やっぱりこいつ、無自覚主人公にちかいよ。
「物語の中の話だよ、ゲームとかの。英雄の周りに強い女騎士とか、きれいな治療術師とか、いろんな女の人がいても、でも、最後にその男の人が帰ってくる場所にいる、自分では戦わない女の子。メインヒロイン」
「それを自分だと思ってたのか?」
「……そういうふうに見えるかもって思っただけ」
『やっぱ異世界は勇者ハーレムだった』
『女騎士と治療術師って具体的すぎて草www』
『実質名指ししてない?』
『前名前出てたミレイとエルナはサブヒロイン確定か』
『姫様が自分はメインだと思ってるのが面白い』
『多角関係まで一気に確定させるな』
『力がなかったってこと?』
『それだけ聞くと不人気ヒロインっぽいがw』
――なるほど。
セシリアが、妙に納得した声を出した。
――昔の勇者様方についても、よく似たお話が残っております。
「……セシリア?」
――勇者様は姫君をお連れになって現れたものの、その旅や戦いの中では、騎士や術師など、勇者様と親しくなられた女性も少なくなかったと。
『は????』
『www』
『公式ハーレム伝説きた』
『サブヒロイン概念が異世界に実在してて草』
『男子高校生のゲーム脳がリアルだった』
「……そういえば、そんな伝説、教えてもらったね」
――はい。そういう伝説はございますが、もちろん、勇者様がお戻りになる先は、姫君でございます。
「…………」
『草』
『やっぱり正妻枠じゃねーか!!!!』
『合ってたwwwww』
『メインヒロインは自認じゃなくて公認だった』
『普通の親友とは』
『セシリアさん話が分かる』
「だから納得したの!?」
――イオリ様のおっしゃる言葉そのものは存じませんが、そのようなお立場を指しておられるのでしたら、よく分かります。
「分からなくていいよ!」
「……そんな話、俺に言ってないぞ」
「だから誰が親友本人に『僕、お前の正妻枠っぽい』って報告するんだよ!」
『勇者ごもっとも』
『一気に15万人が知った』
『これ何の配信?』
『勇者の方に納得すると思わなかったぞ』
「でも、俺たちがそういう話をしたことはなかっただろ」
リョウはまだそこが引っかかっているらしかった。
――はい、お話になってはいませんでした。
「じゃあ、何を見てそう思ってたんだ?」
僕は聞かなかった。その理由は、だいたい分かっているから。
――お二人は、いつもお互いのお姿を気にしておられましたから。
――リョウ様がお城へお戻りになると、まずイオリ様がどちらにおられるかをお尋ねになっておりました。
「ああ」
リョウが普通に頷いた。
「帰ったら、よく探してたな」
――イオリ様も、リョウ様がお戻りになる頃には、お帰りを気にしておられました。
「待ってたな」
「待ってたよ」
こういうことをしていたから、そう見られた。
そこまでは、僕もむこうにいた頃に分かっていた。
『w』
『そりゃね』
『うーんこの』
『普通に認めたw』
『勇者も帰ったら探してた』
『相思相愛じゃん』
『やっぱ異世界側の証人つええな』
『本人たちがろくに真実を言ってなかったのがわかる』
『ただのラブコメ配信じゃねえか』
『これ探索庁も首相官邸も注視してるってマジ?』
『←ホワイトハウスも注視してるぞ』
「でも、セシリア」
――はい。
「俺たちが互いに気にしてたってだけで、城中でそう思われるほどだったのか?」
「リョウ、これ以上聞かなくてもよくない?」
――それだけではございません。
「ほらな」
「何が『ほらな』なの!」
「ちゃんと聞かないとな」
「えぇ……」
――イオリ様は、お役目がお済みになったあとにも、リョウ様のお帰りをお待ちになっておられることが、よくございました。
「それは……まあ、あったけど」
「よくあったのか?」
「だって、帰ってくる時間が分かってたら待つでしょ」
――はい。お帰りになる時刻をお尋ねになって、そのままお待ちになることも珍しくございませんでした。
――最初の大きな遠征からお戻りになった夜などは、お召し物もお選び直してお待ちになっておられましたね。
隣でリョウが反応した。
「あれか」
「覚えてるの?」
「俺が帰った日に、白いの着てただろ」
「うん」
『勇者待ちの常習だったか』
『そりゃ城の人も覚えるわ』
『白?』
『ウェディングドレスかなにか?』
『画像ください』
『白って異世界でもお嫁さんの色なの?』
『画像っていうか肖像画とか?w』
コメントがまた変な方向へ行き始めた。
「いや、白だから結婚って意味じゃないからね?」
セシリアとの会話中なのに、思わずコメントへ反応してしまった。
――はい。白のお召し物は、婚姻なさる方のみがお召しになるものではございません。
「そうだよね!」
――祝いの席や、無事のお帰りをお迎えする際にも、よく用いられる色でございます。
『〈なるほど〉』
『白でお嫁さん確定ではない』
『メインヒロインらしいチョイス』
『絶対かわいいてか美しい』
リョウが僕を見る。
「あれ、自分で選んだのか?」
「うん。もうその日のお仕事は終わってたし。白がいいって言ったのも僕だけど……」
――はい。その通りでございます。お好きな銀の髪留めもまた選ばれて。
「そう。でも、別に特別な意味で白を選んだわけじゃないよ」
「そうなのか?」
「青いやつとか前の日に着てたし、何着か出してもらった中で、それがいいと思っただけ」
『そっちの方が強くない?』
『髪留めガチで好きなんだな』
『異世界めしより異世界ファッションショー期待』
『メインヒロインの風格』
あの日のことなら、覚えていた。
誰かに待てと言われたわけじゃないし、姫君の仕事として残っていたわけでもない。
仕事が終わったあと、僕が勝手に残った。
その日の服も、自分で選んだ。
リョウが帰ってくるまで、いつものように待つために。
38話をお読みいただきありがとうございました!
爆弾発言連続の再接続耐久編です!
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