100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
数日後。
新宿ダンジョンの地下一階。
南東エリアの一番端っこ。
そこに、
もちろん、
そこは和室で例えれば十畳ほどの広さの部屋。
「はあ……はあ……」
目の前に立つ
今日の
ステージ衣装ほどキラキラ感はないけれど、どこか特別感のある衣装だ。
それでいて探索も十分に行えるほど動きやすい格好。
サイドテールを留めるのは白と黒の大きなリボンだ。
「かわいい……」
キュロットの下には黒い強化タイツを穿いていて、片足にガーターリングをつけている。
それがまたかわいいだけじゃなくて色気まで演出していて、
「はあーーーー! ふうーーーー!」
いままでスマホの小さな画面で観ていた推し。
それが、いままさにリアルで目前数メートルのところにいて、しかも自分に笑いかけてくれているのである。
「はい、こっちはOKだよ。
イモスミ 〈うん、こっちも準備できてるよ〉
イモスミ、つまり
なぜ
「
ということらしかった。
「じゃあ、配信始めるよ! 5、4、3、2、1……。はいみんなこんスミー!
配信が始まった。
現在の同時接続者数は35000人。
いや、1秒ごとにどんどん増えている。
あの救助劇で話題になり、登録者も同時接続者も以前より伸びているのだ。
「ふふふ、あ、今4万人になった! こんなにいっぱいの人に聞いてもらえるなんて嬉しい! じゃあ、今日はどんどん歌っていくからね! みんな、こないだはいっぱい心配かけてごめん。私はこんなに元気だよ! それも、シーコさんと……あの人のおかげです! だから、今日は4万人と、……一人のために歌います!」
そう。
これが、『何でも』の正体だった。
ライブを、生で見たい。
そんな
すぐ目の前にいる
いや、キラキラどころではない。
「さっそく一曲目行くよ! 最初はこれ! 『赤ずきんちゃんと時計の宝石』!」
やった、最高のカバー曲キタコレ!
声なんて出せない。
自分みたいな女の声で
でもその代わり、ペンライトをブンブン振って応援する。
「キミの大きな口に食べられたい、食べられたい、食べられたい♪」
じっと
ほっぺたがジンジンと熱い。
私のために!
私のために
歌っている!
そう思うと、涙まで滲んできた。
さあ次はサビだ、サビ!
一番盛り上がるところ!
『私はオオカミさんに食べられたい♪』
ってとこ!
「私は
「ヒィィィーーーッ」
いやなんなら半分気絶した。
涙と鼻水とよだれがダラダラ出てきて、夢中になってペンライトを振り回す。
ああ、生きていて良かったぁ!!
ずっと引きこもっていてニートで劣等感にさいなまれて何度も死のうと思ったけど。
生きててマジでよかったぁぁぁ!
★
とても嬉しい。
私の歌で、
私はアイドルをやって輝きたいんじゃない。
私を見る人の心を輝かせたいんだ!
それが達成されていることに、とても深い満足感を覚えた。
もっと、もっと!
もっと
私はみんなの――いや、
★
「はあーはあー」
あっという間の30分だった。
人生で最高の30分と言ってもいい。
もう、脳みそのドーパミンとエンドルフィンが充満しまくって、これ以上ないほどの多幸感。
「みんな、アンコールありがとー! また会いましょうーー!」
「えへへへへー」
よだれを垂らしながら
配信が終わった。
それと同時に、
突然推しが接近してきて、
「ふひぃ!?」
そのまま
バラの香りだ、と
「
「さ、さ、さいこーだった……」
「よかった! これで少しは恩返しできたかな?」
「も、も、もちろん」
「私も
そして
「ひへ、ひへ、おほ、おほー」
もはや
柔らかな
「
イモスミ 〈そのシーコさんだけど、シーコさんも新宿ダンジョンに今潜っているよ〉
「そうなの?」
イモスミ 〈うん。他の配信者を今日も助けに行ってるみたい。その人の配信で見られるよ〉
「ちょっと見てみよう!」
肩越しに
そして、
そこに映し出されたのは、シーコが膝の上から足を切断される、その瞬間だった。