100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
そして、スライムと戦っていた。
いや、戦っていたとは到底言えない。
ダンジョン最弱のモンスター、スライムから一方的に襲われていた。
一応、
そのまま1時間も経てば消化されるだろう。
「てい!」
もちろん、そんなことはさせない。
「はあ、はあ、……
スライムはど素人でも倒せるくらいの最弱モンスターである。
「………………まあいいよ…………」
シーコの命が危ないのだ、あまりどうこう言っている時間はない。
ただ、
この
徒歩で地下五階まで、どのくらいかかるだろう?
それでも、
だけど戦闘力皆無、おそらく体力も低い
二倍か三倍はかかるかもしれない。
シーコは瀕死だ。
間に合うだろうか?
しかし、他に手段がない。
「地下五階、南西エリア! 全速力で行こう! 私が先頭を行くよ!
その時。
研ぎ澄まされた
カッ、カッ、カッ、カッ。
聞いたことのある蹄鉄の音。
カッ、カッ、カッ、カッ、カッ、カッ。
どこか弱々しさを感じる蹄の音だった。
でも、
「ユニーーーーッ! こっち!!」
カカッ、カカッ、カカッ。
蹄の音が早くなり、こちらへ近づいてくる。
その手があったか、と
おそらく、
現れた真っ白な馬体のミニユニコーン。
だけど。
その姿はあまりに痛々しかった。
身体のあちこちに糸で攻撃されたのだろう、深い傷口ができている。
特に胴体のところの傷などは数センチの深さがあり、真っ赤な血が流れ出ている。
片耳も半分以上ちぎれていて、かろうじて皮でつながっている状態だ。
よほど無理をしてクモのモンスターの糸の中を駆けてきたのだろう。
ユニーは
全身からドクドクと血が流れ出て、地面を赤く濡らした。
「ひどい……」
でも、この召喚獣は自分のマスターを救うために、ここまでやってきたのだ。
しかし、この状態ではどうしようもない。
「よく来てくれたね、ユニー。でも、もう私たちに任せて。今から行くから! ここで休んでいて」
と、そこに
「この子に私たちを運んでもらおう」
それを聞いて、
「へ?
「でも、
「シーコさんを助けるためなら、もうひと頑張り、できる?」
ユニーは力なく頷く。
そして、すぅーっと大きく息を吸いこみ、そのまま数秒間止まる。
「
「
そして、
「
瞬間、辺りの空気が青く変化したように感じた。
その空気は
清浄なオーラが
「なにこれ……」
「これが
「サウザンドアーム!」
するといっそう大きなオーラが
そして、
まるで千手観音のように。
もちろん、実際の腕が増えたわけではない。
オーラでできた腕である。
その手の一つ一つには、さまざまな手術道具――メス、鉗子、針、糸、さらには輸血用のバッグ、それに各種薬剤が握られている。
「ユニーちゃん、――今、治してあげる!」
そして、残像が残るほどのスピードで
ユニーの身体に刻まれた深い裂傷はあっというまに縫われていく。
さらには縫った瞬間に皮膚はくっつき、筋肉は再生し、ものの数秒で傷口がふさがっていく。
ちぎれかけていた耳もとんでもないスピードで縫合される。
ユニーの全身を治療するのに、ものの一分もかからなかった。
治療を終えた後、
「…………ふう…………」
力尽きたのか、
「ふぅぅぅ……疲れた~~」
その代わり、ユニーの身体にあった裂傷はすべて治っていた。
ユニーは、
「ヒヒン」
と短く鳴いてすぐに
「すごい……あの手の動き……小梅ちゃんが草刈りするのと同じくらいの速さじゃん……」
「でしょ? でも
「ヒヒーン!」
ユニーは嬉しそうな声をあげて、その場で元気に飛び跳ね始める。
躍動的なその動きは、ユニーの完全回復を示していた。
すごい、
「……ユニー、私たちをシーコさんのところまで運んでくれる!?」
その背に跨る
「ほら、
「うう~……ありがと、でもまだつらい……でも頑張る……」
ユニーはミニユニコーンである。
小柄な女性二人ならともかく、三人は乗れそうにない。
「どうしよう?」
「大丈夫! 私なら走れる! ダンジョンの中なら不思議と力が出るんだ!」
★
その頃。
シーコはだんだんと自分の気が遠くなっていくのを感じていた。
切り落とされた左足と右手首からの出血がひどい。
残った左手で、なんとかムチを振るってアカリを近づけないようにしているが、こんな状態であとどのくらいもつか……。
十分か、十五分か?
それだけ持てばいい方だろう。
――ユニー、頼むぞ……。ホウキ女を連れてきてくれ!
シーコは最後の力を振り絞って、ムチを振るった。