100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
ここは裏高尾、日影バス停から少し歩いた林道の近く。
草木が生い茂る中に地下へと続く階段の出入り口がぽっかりと開いている。
そこのすぐそばに、女子中学生が一人で座り込んでいたのだ。
バケツを持っている
JCに話しかけるのは怖いけど、今は
意を決して話しかける。
「あの……村原沙希さん?」
女子中学生――沙希がパッと顔を上げる。
その目元は真っ赤に腫れている。
黒髪のショートカットはぼさぼさで、髪を整えるヒマもなく急いでここに来たのが見てとれた。
「はい……。あの、蜘蛛の糸の方ですか?」
「うん、そうです。私が隊長の田中
「奏天寺
「その妹の奏天寺
沙希がハンカチで口元を押さえながらペコリと頭を下げる。
「この出入り口から妹さんがダンジョンに入っちゃったの? 妹さん、おいくつ?」
「小学四年生です」
「それって、いつの話? 正確な時間わかる?」
「
今はもう夕方近い時刻である。
小学生が一人でダンジョンに入って10時間……。
生存なんてできるもんだろうか?
考え込んでいる
「バス……運転手さん、おかしいと思わなかったのかな」
「
そこに、
「妹さん、キッズスマホ持ってるって言ってたよね? 通話はできない?」
「『現在お客様は電話に出ることができません』って……」
「電源は入ってるのかな? どこのキャリア?」
「ダコモです」
「よし! ダコモならいけるかも! 格安だったらダメなとこだった!」
グッとガッツポーズを取る
沙希は不思議そうな顔をしている。
「ちょっと私のスマホで見られるようにしたい。探索済みのダンジョンってある程度の階層まで通信中継器があって、三大キャリアで位置測定オンにしてあれば、かなりおおざっぱだけど位置情報を拾えるんだ。GPSがオンになっているなら位置測定の電波も拾えるはず。私の探索者用アプリなら追跡できるかもしれない」
「そんなことが……?」
「有料だし、探索者でもなければそんなこと知らないよね。見守りサービスのパスワードとかわかる?」
「一応……」
「じゃ、私のスマホで認証して」
二段階認証のSMSが届いて、パスコード入力。
「よし! よしっ! 拾えた!! ……二時間前に、地下3階から4階に降りてる! 北側の地域……それ以上はしぼりこめないけど」
「生きてるんですか!?
まるで悲鳴のような声をあげる沙希。
「その可能性はあるよ。わかるのは二時間前に端末が移動しているってことだけだけど、生きて活動しているってことも十分あると思う」
「お願いします! 助けてください! 助けてください! お母さんも
「うん、任せて。みんな、急ごう。時間との勝負だよ。絶対に助け出そう!」
それを聞いた沙希はハンカチをギュッと握りしめて言う。
「でも……お金、あんまりないです。日本探索者協会が前金3500万円だって……」
「大丈夫、前金1000円ある? なければ貸しでいいよ、あとでちょうだい」
「1000円あります!」
震える手で財布から1000円札を取り出して
その領収書を大事そうに胸に抱いて、でも沙希はまだ不安そうな表情をしている。
「こんな値段で……」
「大丈夫」
沙希はまだ不安そうに、
「でも、1000円なんて……」
「その代わり、配信しながら救助に向かうよ。配信の収益が私たちの生活費になるから。それだけが条件」
「はい……」
「じゃあほんとに時間が勝負だから。もう行こう! 村原さん、まだスマホの充電ある? 詳しい話は通話しながら聞くよ!」
そう言って
「もう夜になっちゃいます。村原さんはバスで街の方に戻っててください!」
「ほんとにそんなホウキで……?」
沙希の言葉を聞いた
「
「うん! 私が先頭を行く!
ブゥン……と低い音を出して、カメラ付きのドローンが浮かび上がった。
沙希が手を合わせて祈っているのを背にして、
そして私設救助隊『蜘蛛の糸』の、初めての探索が始まった。