100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~   作:羽黒楓

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第38話 乙女ロードの母

 澄見歌(すみか)と湯歌(ゆか)も、紅亜(くれあ)の持っているメモを見る。

 

「これって……誘拐されているってことだよね?」

 

 澄見歌(すみか)が言う。

 紅亜(くれあ)は頷いて、ミエスタの顔を思い浮かべた。

 きっと澄見歌(すみか)や湯歌(ゆか)も同じだろう。

 

 澄見歌(すみか)を襲って生きた剥製にしようとした犯罪者。

 そんなのがこの世の中にはウヨウヨいるのだ。

 

「つまり、乃音(のの)ちゃんは、誰かに連れ去られてるってことだよね?」

 

 紅亜(くれあ)の言葉に澄見歌(すみか)が頷く。

 

「ダンジョンに入る前からなのか、入ってからなのかはわからない。でも少なくとも今は誘拐犯と一緒に行動してる。それは間違いない」

 

「ってことは……。少なくともここに来るまでは乃音(のの)ちゃんは生きてたってこと……」

 

 紅亜(くれあ)は「ふーっ」と大きく息を吐いた。

 正直、生きている可能性はかなり少ないと思っていたのだ。

 小学生がダンジョン内でモンスターから逃げきってここまで来ることなど不可能に決まってる。

 

 モンスターにでも丸のみされて、胃袋の中のスマホが電波を発しているだけ、なんてことも考えてはいたのだ。

 それが、相手が犯罪者だろうがなんだろうが、とにかく大人と出会ってここまで守られながら来たらしいことがわかった。

 

「良かったのか悪かったのか……いえ、良かったと考えるべき。あとはこの誘拐犯をしばけばいいだけ」

 

 紅亜(くれあ)がそう言うと、澄見歌(すみか)も、

 

「そうだね。あともう一つ。乃音(のの)ちゃんと一緒にいるのが人間だとすると、多分乃音(のの)ちゃんは徒歩で連れまわされてるんだと思う。地下4階から地下5階までかかった時間を見てもそうだと思うんだ。だから、私たちが追い付くことも全然できるよ」

「私、頑張る!」

 

 湯歌(ゆか)が胸の前でぐっと拳を握って言った。

 実際、紅亜(くれあ)たちパーティの前進速度は湯歌(ゆか)の体力がボトルネックになっているのだ。

 

〈急がないとな〉

〈女子小学生を狙うとは変質者か?〉

〈でも女なら……女でもあり得るか〉

〈目的がわからんけど、殺すならもっと早く殺してるはず〉

 

「そうだよね。なにか目的があって乃音(のの)ちゃんを生かしたままにしてる……。それはまだわからない。そうだ、沙希さん」

 

 紅亜(くれあ)はカメラに向かって尋ねる。

 

「乃音(のの)ちゃんはなにかスキル持ってたりする? 例えば戦う能力とか、身を守る能力とか……できれば通信できる能力とか」

 

沙希 〈持ってないと思います。乃音(のの)はダンジョンに入ったこともないはずです〉

 

「そっか……何かそういう兆候みたいなのもない?」

 

沙希 〈ないです。あ、占い師の人に占ってもらったとき、霊が肩にいるとかは言われてました〉

 

「うーん、それだけじゃなあ……。その占い師が本物かもわからないし……どこの占い師?」

 

沙希 〈乙女ロードの母とかいう……〉

 

「なんで小学生がそんなとこ行ってるの」

 

沙希 〈私の趣味です。ついてきちゃって。ごめんなさい〉

 

「まあ謝ることではないけど……。とにかく、現時点では乃音(のの)ちゃんに能力はないはず、と。とにかく、生きてることがわかった。さっそく出発しよう!」

 

 紅亜(くれあ)たちは隊列を組んで、階段を慎重に降りていった。

 

 

     ★

 

 

 地下4階。

 このくらいの階層になると、出現するモンスターもかなり強くなってくる。

 

 紅亜(くれあ)にしてみればなんということもない害獣や害虫だが、湯歌(ゆか)を守りながらなので、すこし前進スピードを緩めた。

 湯歌(ゆか)だけを狙って急襲されるのはまずいからだ。

 

 曲がりくねった迷宮を進んで行く。

 と、通路に小部屋が並んでいる場所にたどり着いた。

 小部屋にはドア類はついてない。

 紅亜(くれあ)たちはひとつひとつ、小部屋を確認しながら進む。

 

「…………! 澄見歌(すみか)ちゃん、気をつけて! 明かりがついている部屋がある……」

 

 先の方に、通路へ光が漏れている小部屋がある。

 紅亜(くれあ)はランタンの光を最小にまで落とし、足音をさせないようにゆっくりと進んだ。

 小部屋の近くまでくると、壁に背中をつけた。

 そして手を振って澄見歌(すみか)に合図を送る。

 澄見歌(すみか)はそれを見てスマホを操作した。

 

 ブゥン、という低い音とともに、トンボほどの大きさのドローンが小部屋に飛び込んでいく。

 

 その瞬間。

 

 数十発の銃弾が部屋の中から発射された。

 壁が崩れてバラバラと破片が落ちた。

 

 

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