100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
「話す。話すが……。ちょっとその前にこの手を治療していいか? 痛くて頭がまわんねえよ……」
「治癒魔法使えるの? それともポーションとか持ってる?」
「ああ……。ポーションならある……。ほら、そこのバッグの中だ……」
「一本10万円はするやつだよこれ……。これもらっちゃってもいいよね」
「はあ? いいわけねえだろ、治療しないなら話さないぞ!」
「そうだよ、いくらヤクザさんだからって、そんな……」
「治療ならお姉ちゃんがするよ。完全には治せないけど、痛みをとるくらいはできる。お願い、お姉ちゃん」
「まあ、いいけど……ヒーリング!」
ポウッと青い光が男の拳を包み込む。
元通りとはいかなかったが、痛みは消えたようだった。
「くそ! そのポーションなら完全に治ったのに……!」
いまいましそうな表情でそう言う男。
「
「うん、よく考えたら今回私たち、ポーション持ってきてないんですよ。でも治癒魔法を使えるお姉ちゃんと
なるほど、そういうことか。
治癒魔法に頼るだけでは、この先どんな不測の事態が起こるかわからない。
妖命酒は
ポーションと言ってもどんな傷でも治せるわけではない。
前もって治療用のポーションも持って来るべきではあった。
〈結局羅生門してるじゃねえかw〉
〈まあ襲ってきたヤクザだしな……〉
「で、女って? 話して」
「ちっ、くそ。お前はあいつの仲間じゃないのか?」
男は素直に話しそうにもない。
と、そこに
「しゃべらないなら殺します。私も同じくらいに強いので。私はこの人みたいに優しくないですよ?」
そして手のひらを静かに男に向けた。
もちろん、
しかし、そのブラフは十分に効いたようだった。
「わ、わかった。俺たちは取引のためにここにきたんだ。ここはアジトの一つでな。あ、ブツも現ナマもここにはないぜ。だからいくら脅しても無駄だ」
「取引ってことはほかの組織の人がいるんですか?」
「お前ら、本当にそれが目的じゃないのか……? ああ、やつらは昨日帰ったよ。別の組織に迷惑がかかるからそれは話せない。俺たちは全員指名手配されてるから、ついでにしばらくここで身を潜めようと思ってたんだ。で、俺たちはここからちょっと離れたところを歩いている女を見つけたんだ……」
「どんな女ですか?」
「派手な恰好をしていたよ。なんかこう、肩が出てるドレスみたいなやつだ。真っ赤なドレスだった。そばには小学生くらいの女の子もいた」
それこそが聞きたかったことだ。
「どんな女の子!?」
「ああ、ほらこのあたりの、大学付属の名門小学校の制服を着た女の子だった……。俺の娘と同じくらいの身長だったし、小学一年生か二年生くらいだと思う」
「身長何センチくらい?」
「知らねえよ、だがまあ俺の娘と同じくらいだから120センチくらいじゃねえか? なんでそんな子がこんなダンジョンに、と思ったんだ。だけど、ほら……な。ダンジョン内ではなにやっても罪にならないだろう? 変態に高く売れると思って、俺たちはそいつを襲ったんだ」
〈クソすぎる〉
〈殺せ、こんなやつ〉
〈人間としておかしいだろ〉
〈任侠って言葉は消えてるな〉
〈こんなやつがのさばってる世の中は間違ってるわ〉
〈まじで殺してやれ〉
〈ポーション3本じゃ足りねえよ。裸にひん剥け〉
ほんとゴミ野郎じゃん、と
同じくらいの娘がいるのに、女の子を襲って変態に売る?
どういう倫理観をしていたらそんなことができるんだろう?
もう一発くらい殴ってやりたい衝動をなんとか抑えながら
「で? どうなったの?」
「あっという間だったよ。俺たちの仲間はなんかの能力で殺された。あまりに一瞬のことで、どうやって殺されたのかもわかんねえ。ひでえ死にざまだったよ。吹っ飛ばされて全身を砕かれた。あいつはレーティングで言えば1800くらいで俺たちの中で一番強かった。だが、瞬殺されてんだからな。全然勝てそうにないことはすぐに分かった。それで俺たちはこのアジトに逃げ込んで、ビクビクしてたってわけさ。そこにお前らが来たんだ」
「その女が来たのはいつ頃の話?」
「数時間前のことだ。これで全部さ。あんたら、あの女のなんだ?」
「さあね、私たちが知りたいくらいだよ」
そのとき、コメント欄の読み上げ音声がイヤホンを通じて聞こえてきた。
沙希 〈それは