100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
その後方にドローンが宙を飛んでついてきている。
「あの子、なんだったんだろう」
沙希 〈乃音ではなかったです。全然知らない子でした〉
うーん、と
「本当の小学生……ってことはなさそうだよね。なんかのモンスター?」
「そうかもしれない。こっちについてこい、みたいなジェスチャーしてた」
「罠かな? なんか怖い雰囲気があったよ。
謎だらけだった。
「わからないよ」
ダンジョンは言うまでもなく、迷宮となっている。
マップアプリがあるとはいえ、分かれ道が無数にあり、目的地まで迷うことなくたどり着くのは困難なことだった。
その上、今回はその『目的地』、つまり
これでは
〈一応その小学生は地下6階にいるんだよな〉
〈今地下5階〉
〈でもダンジョンって一辺が数キロある四角形だろ〉
〈まあその辺はダンジョンによるけど、高尾山ダンジョンはそうだな〉
〈それで地下6階の北エリアにいるってだけで見つけられるかよ〉
「多分……大丈夫だと思う」
「だって、
「でもさ、お姉ちゃん。下層階への階段だって、何か所もあったりもするよ」
「まあ、それはそうなんだけど――」
「お姉ちゃん、ドローンを使って偵察するのはどうかな」
「その手もあるんだよね。ただ、ドローンのバッテリーも有限だからここぞってときに使いたいな」
その時、
通路の曲がり角、その手前でじっとこちらを見つめていた。
ただ、その表情は険しい。
「ちょっとあなた!」
追いかければまた消えてしまうかもしれない。
立ち止まって、なるべく優しい声を出すことにする。
「ね、私は田中
――なにかの手掛かりになる!
そう確信した
「私たちは
じいっと
黒くて長い眉が印象的だ。
そして。
ついに、その子が口を開いた。
「あの子は死にかけているわ」
子供っぽい舌っ足らずな話し方だった。
「じきに死ぬわ」
「どういうこと? あなた、
急いでその角まで行くと、そこには少女の姿はない。
だけど、ずっと向こうから声だけが聞こえてきた。
「あなたたちは、強い?」
その声は石でできた通路に反射して不気味にエコーがかかっている。
「強いよ!」
「人類最強レベルに強い!」
「なら、こっちよ」
声が響いてくるが、
「でも、そっちだと南エリアだよ。
「それは罠よ」
「罠?」
「モンスターにスマホをくくりつけて移動させているのよ。そのスマホの場所には
「……私たちを罠にはめようとしているのがあなたかもしれないじゃない」
「……信用してもらうしかないわ」
声を追いかけるようにして通路を行く。
すると分かれ道が見えてきた。
二股の通路の真ん中に、その少女は立っていた。
「
「言い方がまわりくどいね。……
「なに、答えてくれないの?」
「……まあ、ドラゴンみたいな、強いモンスターよ」
視線を斜め下に向け、セーラー服のリボンをいじりながらぼそっとそう言う少女。
「なんで嘘を言うの? 本当はなにがいるの?」
自分の嘘がバレたのが意外だったのか、少女は目をキョロキョロさせる。
「言ったらきっとあなたたちは来てくれないわ」
相手がなんだってかまわなかった。
「なんだって相手にするよ! 私は
「でもこっちが罠かも……」
その通りだった。
この女の子がなんらかの理由で逆に
どちらを信じるべきか。
と、その時。
少女が静かに言った。
「離れすぎたわ……もう力が使えない……一度消えるわ……そうそう。マーチが青汁を飲みたがってるから、すぐに来なさい……」
そして、少女の姿が暗闇に溶けるようにすうっと消えていった。