100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~   作:羽黒楓

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第43話 私の決断ひとつ

 あの子が言ったことは本当なの?

 女の子を信じるか、それとも位置情報を信じるか。

 紅亜(くれあ)はすぐには判断がつかなかった。

 

「あの子の言う通りにした方がいいのかな?」

 

 澄見歌(すみか)と湯歌(ゆか)が不安そうな顔で紅亜(くれあ)を見た。

 

「でも……」

 

 紅亜(くれあ)は考え込みながらゆっくりと言う。

 

「ヤクザさんが言ってた。女と、制服を着た小学生がいたって。あの子がその小学生だと思う」

「ってことは、女の人とあの子がグルってことでしょ?」

「それはわからない。女の人ってのが人間なのか、モンスターなのかも。でもさ。あの子は人間じゃないのは確かだよ。問題は乃音(のの)ちゃんの敵なのか、味方なのか……味方だとしてなぜ乃音(のの)ちゃんの味方をするのか……」

 

沙希 〈あの!〉

 

 コメント欄が読み上げられる。

 

沙希 〈あの子、合言葉を言ってた……〉

 

「合言葉?」

 

 紅亜(くれあ)が聞き返す。

 

沙希 〈はい。お母さんが呼んでるよとか言って子どもを誘拐する事件があるじゃないですか。だから、家族で合言葉を決めてたんです。ほんとにお母さんか私が呼んでいるときは必ずこの言葉を言うって……〉

 

「あ、それがさっきの青汁がなんとかってやつ?」

 

沙希 〈マーチって昔うちで飼ってた犬です。『マーチが青汁を飲みたがってる』って……〉

 

「その合言葉って、家族以外は絶対だれも知らない?」

 

沙希 〈知らないはずです。乃音(のの)には絶対に他人に言うなって言ってたのに……なんであの子知ってたんだろ……〉

 

 紅亜(くれあ)たちは顔を見合わせる。

 澄見歌(すみか)が眉を寄せて言う。

 

「もしかしたら、乃音(のの)ちゃんが助けを呼ぶためにあの子に教えた……?」

「でもお姉ちゃん、そしたら乃音(のの)ちゃんはあの子のことをそんなに信頼してたってこと? どうして?」

「そんなのわかんないけど……」

 

 そして二人の姉妹は紅亜(くれあ)の顔を見た。

 今、この救助隊の隊長は紅亜(くれあ)なのだ。

 

「どうする?」

 

 聞かれて、紅亜(くれあ)は意を決して言った。

 

「あの子を信じよう。もし罠だったらすぐに引き返して位置情報を追いかけよう」

 

 それを聞いて、澄見歌(すみか)はぐっとこぶしを握った。

 

「わかった! 紅亜(くれあ)ちゃんの決断に従うよ!」

 

 湯歌(ゆか)もまっすぐ紅亜(くれあ)を見る。

 

「私もです。紅亜(くれあ)さんについていきます!」

 

 まっすぐ自分を見つめてくる二人を見て、紅亜(くれあ)は、そうか、私がリーダーなんだな、という実感と責任に身が震えた。

 私の決断ひとつで乃音(のの)ちゃんの命が救えるかどうか決まる——。

 

 ギュッとホウキを握りしめ、紅亜(くれあ)は言った。

 

「よし、じゃああの子が案内した方に行くよ! 隊列は今までの通り!」 

 

 

     ★

 

 

 紅亜(くれあ)たちは進む。

 その後も制服の女の子はふいっと現れ、分かれ道の先でちょいちょいと手招きをしてはまたふっと消えた。

 

 途中、何度かモンスターに襲われたが、そのたびに紅亜(くれあ)が倒していく。

 

「え、こんなところに道が……!?」

 

 普通なら見落としてしまうような細い道。

 案内なしではとても発見できなかっただろう。

 

 さらには。

 

 女の子がなにもないはずの壁をちょいちょいと指さしている。

 

 紅亜(くれあ)は最初意味が分からなかったが、湯歌(ゆか)がその壁を押すと、壁自体がゆっくりと回転した。

 その向こうに広がるのは新しいエリア。

 

「隠し扉……こんなの、絶対私たちじゃわかんなかったよ……」

 

 こうして、紅亜(くれあ)たちは迷宮のさらに奥へと進んで行く。

 そして、ついに地下6階へ降りる階段へたどり着いた。

 

「この先にいるわ。急いで。ケガをしている。治療の準備を。あとそこのホウキ女も備えて。強敵がいるわ」

 

「どんな強敵? 教えてくれないと備えようがないよ!」

 

 紅亜(くれあ)の言葉に、女の子は頷いた。

 

「そうね。ここまで来てくれたのだものね。この先にいるのは……夜を統べる闇の女帝よ」

 

 

 

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