100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
「引け? 引けだと? なぜそんなことをしなきゃならないんだよ」
「あの子が死にかけているのはあなたのミスよ。あなたが守り切れなかった」
「チッ」
こいつら、何を話しているの?
黄色い帽子をかぶっている制服の小学生はチラッと
「あなたもよ。落ち着きなさい」
「落ち着くもなにも! こいつが
「違うわ。あれを見て」
小学生が暗闇を指さす。
ドローンのライトがそちらを向いて闇を照らした。
数メートル先のその場所に転がっているのは武器と甲冑だった。
日本の戦国時代に武将が身に着けていたような兜と面頬、それに鎧と刀。
「…………あれは?」
「モンスターよ。
「モンスター? 中身がないじゃない」
〈いや、あれはホロウサムライだ〉
〈甲冑に霊魂が宿って襲ってくる〉
〈ののちゃんはあれにやられたってこと?〉
〈そういえばののちゃんのケガは刀で斬られたような感じだった〉
でも、
アンティアが怒りをあらわにして歯をむき出した。
いや、歯ではない。
それは鋭く尖った牙だった。
「おいガキ、話が違うぞ。お前がこいつを私にくれると言ったんだろう?」
「言ったわ。私は言った。でもその子は承諾してない」
「なにを! 契約は絶対だ。そいつは私の娘になったんだ」
アンティアが小学生との会話に気をとられている、その隙を
引っ張られているホウキを逆に思い切り突き出した。
「ぐっ!?」
ホウキの穂先がアンティアの胸のあたりに突き刺さる。
無数の小さな穴が開いて、血が噴き出す。
思わず手を離したアンティアからホウキを取り戻し、両手でしっかり握ると、
「てぇい!」
アンティアの脳天に向けて渾身の力で振り下ろした。
「チッ!」
アンティアが腕を交差させてそれをガードする。
バキッ、とまた骨が砕かれる音。
「くそがっ! あとで娘は取り戻しに来るぞ!」
アンティアはそう叫ぶと、口から赤い霧のようなものを吐いた。
その霧が辺り一帯を包み込む。
なにも見えない。
手探りでバケツに手をつっこむと、ルセッシュを取り出して噴霧する。
ルセッシュが赤い霧をだんだんと晴らしていくが、しかしすでにアンティアの姿はそこから消えていた。
「…………あいつ、また来るわね」
女子小学生がポツリと言った。
自分のほっぺたを触ると、そこには見事に穴が開いていて、外から自分の歯が触れるほどだった。
アドレナリンがおさまってきたのか、灼けるような痛みが襲ってくる。
「
まだ警戒しながらもその言葉に従う。
「ヒーリング!」
治癒魔法でなんとか傷口がふさがったが、まだ多少の痛みと違和感は残っている。
「
「なおったからいいよ、
「でも女の子なのに傷が……」
触ってみるとたしかにまだ傷あとが残っているようだった。
「大丈夫だよ。ありがとね、
泣き出しそうな顔の
推しにこんな顔をさせちゃうなんて。
私の顔なんてどうでもいいのに。
私みたいなブサイクに多少傷がついたからってどうということはない。
そして
「いったい、どういうことなの?」
小学生は黄色い帽子のツバを少し下げながらうつむいた。
「私が、あのモルモーを呼んだのよ」