100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
このままでは
モンスターが襲ってきたらひとたまりもないだろう。
ほかに探索者はいないだろうか?
夏子が
せいぜい、十分間が限度だ。
しかし、夏子は一縷の望みをかけて、他の探索者を探す。
人間に出会えさえすれば、
だが、夏子が探索できる範囲には生きている人間を発見できなかった。
見かけるのは死体ばかりだ。
「それなら……知性のあるモンスターを『騙す』しかないわね……」
最初に接触を試みたのは、ハルピュイアだった。
英語ではハーピーとも呼ばれる、顔が人間、身体が鳥という異形のモンスターである。
宙を飛び回り、ある程度の知能がある。
そいつがダンジョン内を飛び回っているのを発見し、夏子は話しかけてみる。
「こんにちは」
「クキャキャ! ニンゲン? ニンゲン? ニンゲンじゃない。死人。死人。死人はクソ垂れない。興味ない」
「……もし人間がいたらどうするの?」
「クソ。クソ。キャキャ! ニンゲン、クソする。ワレ、それを食う。キャキャキャ! ニンゲン、いないか?」
「うんちを食べたあと、あなたはどうするの?」
「キャキャキャ! ナイゾウ。ナイゾウにもクソある。それをほじくる。ニンゲン。ニンゲンいないか?」
「……いないわ……」
あの程度の知能では騙す以前の問題だ。
夏子はあきらめてその場を立ち去る。
次に発見したのは、甲冑を身に着けた鎧武者だった。
いや、違う。
甲冑の中身は空っぽで、昔死んだ武士の霊がその甲冑を動かしている。
ホロウサムライと呼ばれるモンスターであった。
そいつは獲物を探すかのように通路を歩き回っていた。
「……こんにちは」
「…………霊か。主も、霊か。我はご主君を探している。ご主君はどこか?」
「わからないわ。でも、条件次第ではあなたの主君を探す手伝いをするわ」
「条件とは? 言ってみよ」
いける、と夏子は思った。
この武者を騙して
「私はある女の子の守護霊よ。彼女がこのダンジョンに迷い込んだの。彼女を無事に外へ送り届けてくれたら、私は全霊をかけてあなたの主君を探すわ」
「それでは条件にならぬ。外に送り届けたら主はその子供と一緒に地上に出るであろう? 我がその子供を預かる。主がご主君を探し出したら子供を外に出そう。探し出せなければ子供を殺す」
「そうね……」
夏子は考え込む。
悪くない条件だ。
少なくとも、時間は稼げる。
出入り口付近までこの鎧武者に
現状このままだと
それと比べるならば、確率としてはかなり高めの選択だ。
しかし、確実ではまったくない。
失敗する可能性の方がわずかに高い。
「少し、考えてみるわ。また、あとでね」
「わがご主君を見つけたら知らせるがよい。さすれば、我がその子供を地上まで送り届けるであろう」
それこそ条件にならないわ、と夏子は思った。
仮に主君とやらを見つけたところで、このホロウサムライが
次に見つけたのはアラクネと呼ばれるモンスターだった。
上半身が人間の女、下半身が蜘蛛というこれも異形のモンスターである。
美しい長い髪、そして整った白人女性の顔。しかし、下半身では八本の脚をクニクニと気味悪く動かしている。
「あら? 幽霊さんね。どうしたの」
「…………こんにちは」
「こんにちは。ふふ、かわいらしいわね。迷子?」
「……私の友達が迷子になってるのよ」
「それは大変ね。手伝おうかしら?」
夏子はアラクネの目をじっと見つめる。
青い瞳からは感情が読み取れない。
人の好い受け答えをしているが、それが本心であるかどうか。
「……どう手伝ってくれるの」
「私はこの迷宮、詳しいのよ。ちゃんと道案内してあげるわ」
「お礼はたくさん用意できないわよ」
「人助けにお礼なんていらないわ。ちょっと私と一緒におしゃべりしてもらえればそれでいいわ。お礼だなんて、子供のくせに変なこと言うのね、ふふ」
いけるか?
いや、あくまでモンスターだ。
「あなたの友達なら、その子も子供の幽霊かしら? ふふ。幽霊なら、寿命がないからいいわよね」
何かひっかかる言い方をする。
夏子は慎重に尋ねる。
「どういうこと? 例えば、人間の子供だったら?」
「私ね、寂しいの……。ずっと一人だったから。お礼はいらないわ。でも、ほんの30年ほど、私と一緒に暮らしてほしい。幽霊さんなら、お礼というほどのことじゃないでしょう? 人間の子供だと長く感じるかも……でもそれも素敵! きっと大人になるわね。大人になったあと、行きたい場所まで私が案内するわ。エサは私が運ぶし、たった30年間、私と一緒に暮らしてくれたらいいだけ。簡単でしょう?」
さきほどのホロウサムライとどちらが確率が高いだろう、と夏子は頭の中で計算する。
どちらにせよ、人間の探索者を待つか呼び込むかして討伐の必要があるが……。
ホロウサムライは出入り口の近くまで行くという。
アラクネはダンジョンの奥で飼うつもりだろう。
しかし、ホロウサムライは長時間待たせることができないかもしれない。
アラクネであれば時間は30年ある……。
「……もう少し、自分でなんとかできないか頑張ってみるわ。あとで声をかけるかもね」
夏子はその場を離れ、いったん
そして、夏子が見たのは。