100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
「どうしよう……」
「やだ! 帰らない!」
身体はほぼ完全に治癒されてはいるが、服は破れ、斬られた時の出血で真っ赤に染まっている。
「いや、そういうわけにはいかないよ。また怖い目に遭うよ!」
「お母さんを助けるんだもん! 絶対、絶対サンジーヴァニを持って帰るの!」
「サンジーヴァニは地下8階にあるんでしょ? それも絶対あるかどうかわからないのに……」
沙希 〈何言ってるの馬鹿! 早く帰ってきてよ!〉
「やだ! お姉ちゃんのバカ! ブス! お姉ちゃんはお母さんを助けたくないの!?」
沙希 〈そんな困ったこと言わないで〉
「ねえ夏子ちゃん! 夏子ちゃんも、お母さんを助けたいんだよね!?」
「もちろんそうよ。でも……あまりに危険。それに、アンティアもまだあなたを狙っているわ」
「あのお姉さんはサンジーヴァニのところに案内してくれるって言ってた! じゃああのお姉さんについていく!」
「冗談じゃないわ。あれは吸血鬼よ。この世に吸血鬼ほど恐ろしいモンスターはいないわ」
〈実際にはモルモーとか言ってたな〉
〈ギリシャ神話に出てくるモンスターだ。吸血鬼の一種ではある〉
〈あいつがほんとにその神話に出てくるモンスターなのか?〉
〈それはわからない〉
〈他人の子どもを眷属にする習性があるみたいだな〉
「ねえ
「やだ! やだ! やだもん! お母さん死んじゃ嫌だもん!」
「
「だって、だって、だって……。お母さんが死んだら私だって死んじゃう……死んでやるんだから!」
あの時の私と同じだ。
その気持ちはわかりすぎるほどわかる。
しかも、
あの時の
そう思うと、床から力づくで立ち上がらせる気には到底なれなかった。
まだ
「
「でも……」
そこに、
「お姉ちゃん、無理やりはよくないよ」
「だって……!
「どっちにしろ、この子を縛りあげて持ち運ぶとかできるわけでもないし……
聞かれて、
できなくはないけど、そんなことはしたくない。
「だよね……って、うわ、モンスター!」
そちらを見ると、真っ黒な狼がゆっくりとこちらに歩いてくる。
「
と言って一歩前に出る。
ドラゴンを一撃で倒し、吸血鬼とも互角にやりあった
動物型のモンスターごときに遅れをとるはずはない。
そうは言っても油断はせず、集中して狼の動きを見極める。
だけど、狼はこちらを襲ってくる様子がまったくない。
むしろ、尻尾をゆったりと振っているほどだ。
「………………?」
それでも
と、その時だった。
なんと、狼が人間の言葉を喋り始めた。
「なあ、私が油断してサムライ野郎にその子を斬らせちゃったのは悪かったよ。レイスの奴が襲ってきてさあ……。そいつをやっつけてる間にサムライ野郎がその子に斬り付けたんだ」
「その声……」
「私さ。アンティアだ。この狼は私の使い魔みたいなもんでね。こいつの口を借りて今話しているのさ。あんたは強いよ。まともに戦うには私にとってもリスクが高すぎる。だから、交渉しにきた」