100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~   作:羽黒楓

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第54話 作戦会議

 澄見歌(すみか)は目を伏せて、紅亜(くれあ)に握られた自分の手をしばらく見つめていた。

 

「ね、お願い、澄見歌(すみか)ちゃん!」

 

 紅亜(くれあ)が重ねて言うが、澄見歌(すみか)はまだ黙ったままだ。

 澄見歌(すみか)の手をキュッと握るが、なんの反応もない。

 その手からはくたりと力が抜けていて、なんだか冷たく感じた。

 

「…………」

 

 澄見歌(すみか)は唇をへの字にして、ただ手を見つめている。

 そんな澄見歌(すみか)に湯歌(ゆか)がおずおずと話しかける。

 

「……お姉ちゃん? ……実はね、私も……できることなら、乃音(のの)ちゃんや沙希ちゃんのお母さんも助けたいって、そう思ってはいるんだ……私には戦闘能力がないから、みんなの意見に従うけどさ……」

 

 そこに、夏子も静かに言った。

 

「…………すでに、乃音(のの)を助けてもらったわ。お礼を言う。ありがとう。その上でお願いよ。もし、春子――乃音(のの)の母親――を助けられるなら、……ぜひお願いしたいわ……。乃音(のの)が生まれるまでは、私は春子の守護霊をしていたのよ。私にとっては、乃音(のの)と同じくらい、春子のことも大切なの」

 

 澄見歌(すみか)は口を開く。

 いつもより少し低い声で言った。

 

「危ないよ……。アンティアはすごく強かったよ。次に戦ったら紅亜(くれあ)ちゃん、やられちゃうかもしれないよ。ラクシャーサっていうモンスターがサンジーヴァニを守っているんでしょ? きっとすごく強い。紅亜(くれあ)ちゃんでも苦戦するかも。私は、紅亜(くれあ)ちゃんが心配。紅亜(くれあ)ちゃん、私は紅亜(くれあ)ちゃんのことが心配なの。みんなを助けるって……その『みんな』に、紅亜(くれあ)ちゃんは入っているの?」

 

 その質問に虚を突かれて、紅亜(くれあ)は何も言い返せない。

 

「それに、このまま進んで、私や湯歌(ゆか)や乃音(のの)ちゃんに何かあったら、紅亜(くれあ)ちゃんが無事でも、絶対に紅亜(くれあ)ちゃんは苦しむことになる。それも私は絶対嫌。だから、紅亜(くれあ)ちゃん。約束して。危険だと思ったら絶対に引き返すこと。アンティアのことも信用できない。少しでも裏切るそぶりがあったらすぐに撤退。これ、約束できる?」

 

「うん、約束する!」

 

 紅亜(くれあ)は即答する。

 すると、澄見歌(すみか)はギュウッと痛いほどに強く紅亜(くれあ)の手を握り返してきた。

 

「絶対だよ? 絶対の絶対ね?」

 

 澄見歌(すみか)は顔を上げて、瞳を潤ませて紅亜(くれあ)の目をじっと見つめてくる。

 

「うん!」

 

 紅亜(くれあ)がうなずくと、澄見歌(すみか)は紅亜(くれあ)の手を握ったままブンブンと強く振った。

 

「よし! 絶対に、少しでも危険を感じたら帰還するからね! ……じゃあ、作戦を立てよう」

「その前に、カップラーメン食べちゃってよ。麺が伸びて増えてるよ……」

 

 

     ★

 

 

 食事を終えたあと、作戦会議が始まった。

 

「まず、目的はサンジーヴァニを手に入れて地上に帰還すること」

 

 紅亜(くれあ)がそう言って、みんなの顔を眺める。

 澄見歌(すみか)も湯歌(ゆか)も乃音(のの)や夏子までもが真剣な顔で紅亜(くれあ)に視線を向けている。

 

「で、考えられる案は三つ。まず一つ、乃音(のの)ちゃんだけを地上に送り届けてから私たちだけでもう一度ダンジョンに潜る。二つ目、私だけが地下8階を目指して、澄見歌(すみか)ちゃんと湯歌(ゆか)ちゃんが乃音(のの)ちゃんを守りながら地上に戻る。三つ目がこのまま進む」

 

 湯歌(ゆか)が手を挙げながら言う。

 

「二つ目は一番危険だと思う。まず、紅亜(くれあ)さんは治癒魔法が使えないし、妖命酒ももうない。それなのに紅亜(くれあ)さん一人だけで地下8階を目指すのはリスクが高いよ。それに、私たちだって、お姉ちゃんしか戦える人がいないのに、お姉ちゃんは紅亜(くれあ)さんほど強いわけじゃない。ちょっと強いモンスターに出会っちゃったらまずいもん」

 

「それはそうだよね……。じゃあ、一つ目は? これが一番筋が通っていると思う。乃音(のの)ちゃんさえ納得してくれれば、私はそうしたい」

 

 紅亜(くれあ)が言う。

 それには澄見歌(すみか)と湯歌(ゆか)もうなずいた。

 夏子も、

 

「それがいいと思うわ。まず、みんなで乃音(のの)を地上まで送り届けてほしい。そのあと、できればサンジーヴァニを採りに行く。三つ目の乃音(のの)を連れて地下8階に行くのは大反対よ。ただ乃音(のの)を危険に曝すだけだわ」

 

 話はそれでまとまった、はずだった。

 

 この作戦会議を、紅亜(くれあ)も気づかないほど遠くから、狼がその驚くべき聴覚を発揮して、盗み聞きしていたのだ。

 

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