100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~   作:羽黒楓

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第56話 俺たちもこの救出劇に参加できる

 どうする?

 紅亜(くれあ)は迷った。

 このまま地上に戻れば、乃音(のの)の母親を助けられないかもしれない。

 そうしたら、沙希と乃音(のの)は母を失い、施設に送られて現在の生活ができなくなるかもしれない。

 

 蜘蛛の糸とかなんとか言ったって、結局真の意味では沙希と乃音(のの)を助けたことにはならない。

 

 救えたかもしれない人間の命を、そしてその子供たちの人生を、見捨てたことになる……?

 

 その重荷に、自分の心は耐えられるだろうか?

 

 ――絶対に無理!

 

「行こう」

 

 紅亜(くれあ)は言った。

 

「ここ地下6階。地下8階まではすぐだよ。パッと行ってパッとラクシャーサってやつを倒して、パッとサンジーヴァニをとってパッと帰ってこよう」

 

 全員救う。

 紅亜(くれあ)はそう決めたのだ。

 

「小梅ちゃんが言ってた。私でも苦労するダンジョンがあるって。首塚ダンジョンと恐山ダンジョンと、あとなんだっけ」

「白峯ダンジョンと黄泉比良坂ダンジョンだね」

 

 澄見歌(すみか)が答えてくれる。

 

「うん。でも、ここはそうじゃない。小梅ちゃんを信じるなら、私の力で攻略可能なダンジョンなんだ。私は行く。どうしても行く。大丈夫。モンスターなんて全部私がやっつけるから、みんなを危険な目には遭わせないよ」

 

 それを聞いて、澄見歌(すみか)が大きなため息をついた。

 

「しょうがないね。紅亜(くれあ)ちゃんがそう言うなら、私も協力する。でも、危険があったら絶対に引き返すからね。それは約束して」

「うん、わかった、ありがとう。で、夏子……さん」

 

 紅亜(くれあ)は乃音(のの)の守護霊に話しかける。

 夏子は黄色い帽子のツバをくいっとあげて、

 

「なにかしら」

「あなたは、乃音(のの)ちゃんから数百メートルは離れられるって聞いたよ」

「その通りよ。ただし、十分間だけね。十分経ったら一度乃音(のの)のところに戻らなきゃいけない。一度戻ればまた離れられるけど」

「じゃあ、夏子さんはアンティアの居場所を探して。きっと近くにいると思う。で、アンティアを見張っていて。なにか怪しい動きをしたら、すぐに知らせて」

「……偵察ってわけね。わかったわ。春子と乃音(のの)のためならなんでもするわ。……本当はこのまま進むのは反対だけれど。でも、春子が助かる可能性があるなら、それに賭けてみるのも悪くないわ」

 

 今度は澄見歌(すみか)と湯歌(ゆか)に向かって言う。

 

「ドローンは3台あるんだよね?」

「はい、予備に持ってきています」

 

 湯歌(ゆか)が答えた。

 

「じゃあ、一台はあの狼の前方へ。一台は私たちの後方を警戒させて。で、もう一台は乃音(のの)ちゃんの周囲を警戒させて。それぞれの画面を配信にのせられる?」

「できます。お姉ちゃんのライブのときにいろいろ演出を考えて設定を試してるから……。画面を三分割にして配信できます」

 

 今度はドローンのカメラに向かって話す。

 

「じゃあ、視聴者の皆さん! 聞いて! これからいろんな画角で配信をするよ。なにか怪しい者、怪しいモンスター、とにかくなんでもいいから気づいたらコメントで教えて! 私たちはイヤホンをしてるからコメントがそれで聞こえる」

 

 湯歌(ゆか)も補足で、

 

「AIで重要度をフィルタリングして読み上げするからわかると思います」

 

 と言った。

 

〈まかせとけ〉

〈なんだかおもしろくなってきた〉

〈俺たちもこの救出劇に参加できるってわけか〉

〈今同接3万人はいるからな。なにかあったら誰かは気づくだろう〉

 

「ありがとう、とにかくすぐに教えてね! みんなの命が懸かっているから!」

 

 そして、紅亜(くれあ)はホウキを握りなおし、

 

「よし、じゃああの狼についていくよ! 私が先頭、少し離れて乃音(のの)ちゃん、湯歌(ゆか)ちゃん、しんがりが澄見歌(すみか)ちゃんね! 視聴者のみなさんもよろしくだよ!」

 

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