100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~ 作:羽黒楓
「チッ。ラクシャーサさんよお……。大人しくサンジーヴァニをよこせよ」
アンティアが苦々しい表情でそう言うと、テージャスは朗らかに笑った。
「ははは。またお前か。先日は痛み分けだったが、何度来てもお前ごとき吸血鬼に聖なる薬草は渡せんぞ。そこの、人間の女よ。どうだ、命と命。あの吸血鬼の命でもいいのだぞ? 私と戦うよりはマシではないか? あいつを殺せばサンジーヴァニを渡そう」
〈あれ、それでよくね〉
〈それだ!〉
〈そこのバカ女を殺せばいいのか〉
一瞬、
だがすぐに思い直す。
――私たちは、地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸。
モンスターといえど、アンティアは知性と感情を持つ存在だ。
しかも、動機はどうあれ、一人でダンジョンに潜った小学生の
『殺す』ほどの罪だろうか?
アンティアは
だが、問答無用で『殺す』ほどの罪だろうか?
逡巡する
アンティアはどこに持っていたのか、タバコを一本取り出すとカチン、とジッポーライターのフタを開けフリントホイールをカシュッと回して火をつける。
「そんなこと言わないでさ、サンジーヴァニをすこーしだけ分けてくれればそれでいいんだよ。そしたら誰も傷つかずに済む」
煙を吐き出しながらそう言うアンティア。
テージャスはかぶりを振って、
「サンジーヴァニは我にとっても大事なものだ。お前は自分の家に見知らぬ人間が来て、お前の大事なものを分けてくれと突然言われたら、はいそうですかと渡すのか? なにかの見返りが必要だ。我は命を一つ助けたいなら命を一つ差し出せ、そう言っているだけだ」
「いいや、その理屈はおかしいね。なぜなら、そのサンジーヴァニは自生している植物で、別にお前の物じゃないからだ。ここはお前の家ではないし、お前の土地でもない。ただお前がここにいただけだ。お前は道に花が咲いてたまたまお前がそこを通りがかったら、花の所有権がお前にあるとでもいうのか」
「聖なる薬草である。我のものではなくても、我が守る責務がある」
「チッ、話にならねえな」
テージャスは剣をバトンのように一回転させた。
「この神剣、アシにかけて。命の摂理は守らねばならぬ。これ以上の問答は無用だ。そこの吸血鬼を殺す。その後、サンジーヴァニを後ろの女に渡そう。それでいいだろう?」
「いいや、私じゃない。そっちのホウキ女の命をやるよ。人助けが好きな善人だ。サンジーヴァニのためなら喜んで命を差し出すだろう」
「我にしてみればどちらでもよい」
夏子が鋭い目でアンティアを睨んだ。
「あんた! 約束が違うわよ! 最初からそれが狙いで……?」
アンティアはタバコを咥えたまま煙を吐き出した。
「サンジーヴァニは分けてやるよ……。その子を私の眷属にしたあとにね。そしたら、母親でもなんでも治してやればいいさ。おい、ラクシャーサさんよ、そのホウキ女、存外強いぞ? なんなら私が手助けしてやってもいい」
「我は武人なり。掃除婦一人殺すのに手出し無用。手ごわいなら戦いを楽しめそうだな!」
テージャスが
「
「うん、任せて! ラララララー! ルラルルラルラーー!」
その手に握ったマイクの尾部から剣が生成されていく。
それはただの剣ではなかった。
長さは1メートル超、刀身の途中からさらに刀身が生えている、七支刀だった。
「
「はい!」
もちろん、目の端にアンティアを捉えながら、だ。
「私の命はあげられない。誰の命もあげられない。他のものならあげられるかも」
「サンジーヴァニと引き換えにできるのは命のみ! 痛みのないよう、一刀で斬り殺してやるぞ!」
そして、テージャスが