100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~   作:羽黒楓

63 / 63
第64話 決着

 まるで踊るかのように剣を振るうテージャス。

 紅亜(くれあ)は長柄ホウキを突き出すが、テージャスはそれを弾き、アカリの光機の剣(ライトニング・ソード)を受け流していく。

 目の端に澄見歌(すみか)たちも戦っているのが見えた。

 澄見歌(すみか)とシーコの二人がかりとはいえ、紅亜(くれあ)と互角の力を持つアンティアである。

 アンティアと戦う澄見歌(すみか)のこともきがかりだったが、紅亜(くれあ)は目の前の敵に集中することにする。

 

 ――澄見歌(すみか)ちゃんなら大丈夫!

 

 紅亜(くれあ)は自分に言い聞かせた。

 味方を信じて、まずはこの敵をやっつける!

 

「行くよおお!」

 

 高速の連突きを放つ紅亜(くれあ)。

 

「ふん! 掃除婦にしてはなかなかやるな! おもしろい!」

 

 テージャスは巧みに剣を操ってその攻撃をいなしていく。

 

「私のことも忘れないで!」

 

 アカリが一本の光機の剣(ライトニング・ソード)を両手で持ち、背後からテージャスに斬りかかる。

 テージャスはまるで見えているかのようにその攻撃も華麗にかわしていく。

 戦闘を続けていくうちに、慣れない長柄のホウキの扱いにだんだんと慣れてきた。

 100円のホウキとは違って、紅亜(くれあ)の巨大な魔力を高級ホウキはしっかりと受け止めてくれていた。

 

 全身に力がみなぎる。

 脳内にアドレナリンが放出され、紅亜(くれあ)の動体視力は人間のそれを超え始めた。

 テージャスの身体の動き、重心の移動、そしてアシの剣の軌道。

 それらがまるで手に取るようにわかる。

 

 ――負ける気がしない!

 

 アカリが上段から光機の剣(ライトニング・ソード)を振り下ろす。

 それをテージャスが剣で受け、同時に右足で思い切りアカリのみぞおちに前蹴りをヒットさせた。

 

「あう!」

 

 数メートルも吹っ飛ばされて床に倒れるアカリ。

 

 だが、そこに隙ができていた。

 紅亜(くれあ)は踏み込む。

 テージャスとの距離15センチ。

 

「ふん!」

 

 テージャスは紅亜(くれあ)に向かって肘打ちを放つが、それをホウキの柄で受けると、そのままホウキを回転させてテージャスの側頭部に一撃を入れた。

 ぐらりと揺れるテージャス、今度はそのアシを握る右手にホウキを打ち付けた。

 ゴキィ、という音が響く。

 

 ――折った!

 

 間違いなく、骨までダメージを与えた手ごたえがあった。

 

「貴様!」

 

 憤怒の表情でアシを左手に持ち替えるテージャス、しかしその動作が生む隙を見逃す紅亜(くれあ)ではなかった。

 

「ええええい!」

 

 紅亜(くれあ)は叫びながら渾身の力を込めてテージャスの脇腹にホウキの柄をめり込ませた。

 

「ぐふ……!」

 

 テージャスは身体のバランスを失いながらヨタヨタと一歩二歩後ずさった。

 

「これで、終わりだぁ!」

 

 紅亜(くれあ)はホウキを持ち直し、大きく振りかぶるとその穂先でテージャスのこめかみをぶん殴った。

 その瞬間、意識を失ったテージャスの身体はまるで棒のように硬直しながら床に倒れた。

 そして、床の上で細かく痙攣を始める。

 

〈おおおお!〉

〈倒したぁぁ!〉

〈あとはアンティアだけだ〉

〈っていうかこっちはやばいぞ!〉

 

 紅亜(くれあ)はそちらを振り向く。

 ちょうど、澄見歌(すみか)がアンティアの蹴りで壁に全身を打ち付けられている瞬間が目に入った。

 

「澄見歌(すみか)ちゃん!」

 

 思わず叫ぶ。

 まだ床に倒れているアカリのことも気がかりだった。

 

「うう……」

 

 と呻いて痛みに耐えているようだ。

 

 ほんのゼロコンマ数秒考えてから、紅亜(くれあ)は澄見歌(すみか)の元へと走った。

 とにかく、アンティアをまず倒してからだ!

 

 シーコがムチをふるう。

 そのムチがアンティアの腕に巻き付くが、アンティアは逆にそれを利用してグイッと引っ張ると、シーコはその圧倒的な怪力に抗えずバランスを崩す。

 

「ほーらよ!」

 

 タタッと駆け出すアンティア、そのまま宙に飛び上がって膝蹴り。

 その膝はシーコの顔面に突き刺さって、シーコはそのまま床に沈んだ。

 

「シーコさん! ……アンティア、こっちだ!」

 

 長柄のホウキをアンティアに向けて突き出す。

 アンティアはひょいとジャンプしてそれを避けた。

 

「ははは! あのラクシャーサを倒すとは、なかなかやるな! だがかなり消耗しているようだな! 私の魔力はまだまだ満タンだぞ!」

 

 アンティアの言う通りだった。

 テージャスとの戦闘で紅亜(くれあ)の魔力は尽きかけていた。

 素早い蹴りが紅亜(くれあ)に襲い掛かる。

 それをなんとかホウキで受け流す。

 澄見歌(すみか)は壁に打ち付けられて意識を失っている。

 シーコも床に倒れてピクリともしていない。

 アカリもまだたちあがることもできていない。

 

 ――もう、私しかいない!

 

 気力をふりしぼり、ホウキを突き出し、それがかわされると今度は叩くように打ち付ける。

 だけど、明らかにスピードは落ちていて、アンティアはそれをこともなげにかわすと、あっというまに紅亜(くれあ)との距離を縮めた。

 

「ははっ! これで終わりだ!」

 

 アンティアの上段回し蹴りが紅亜(くれあ)の頭部を狙う。

 

 ――まずい! ガードが間に合わない!

 

 そう思った次の瞬間、これまでに味わったこともないような衝撃を感じた。

 まともにアンティアのハイキックを受けてしまったのだ。

 

「ぐはっ……」

 

 ホウキを杖代わりにして何とか倒れずにはすんだが。

 目の前にはアンティアの残酷さを感じさせる笑みがあった。

 

「はは、私はすべてを……手に入れた!」

 

 そして右のストレートパンチが紅亜(くれあ)の顔面にヒットする、その直前だった。

 

 いつの間にか。

 アンティアの背後に、湯歌(ゆか)がいた。

 

「私にだって……できることがある! 奇跡の外科手術(ミラクル・オペレーション)!」

 

 湯歌(ゆか)の背中から無数の手が生えてきた。

 その手が握っているのは、鋭い刃のメス。

 

「切り刻んでやる!」

 

 人間には通常不可能なほどのスピードで、湯歌(ゆか)の背中から伸びる手がアンティアの背中を切り刻む。

 だが、湯歌(ゆか)の能力はそもそも攻撃には向いていないのだ。

 それは致命傷にはなりえず、アンティアの皮膚一枚を切るのがやっとだった。

 

 だけど。

 

 それで十分だった。

 

 アンティアの注意が湯歌(ゆか)に向いた、そのほんの一瞬。

 

「おあああああああ!!」

 

 紅亜(くれあ)のホウキが、アンティアの右腕を叩き折った。

 ゴキンッ! という嫌な音をたててアンティアの前腕が直角に曲がる。

 皮膚が破れ、折れた骨が見えた。

 

「な……! くそ……!」

 

 アンティアはモルモー、吸血鬼である。

 この程度のケガには動じず、湯歌(ゆか)のことはいったん無視して左のミドルキックを紅亜(くれあ)に当てようとして――。

 

 ゴキィ!

 

 今度はその左足が、ホウキに折られた。

 膝の上あたり、大腿部が120度ほどの角度で折れ曲がっている。

 

「……あ……!?」

 

 間抜けな声を出すアンティア、折れた自分の右腕と左足に視線をやり、そして紅亜(くれあ)を見た。

 

 その顔面に、ホウキの穂先が突き刺さる。

 サクッ、という軽い音。

 穂先はまるで針のようにアンティアの顔に無数の穴をあけた。

 

「……ああ? 嘘だろ……!?」

 

 穂先が引き抜かれる。

 ブバッ、と幾百もの小さな穴から血が噴き出る。

 

 紅亜(くれあ)は一歩後退してホウキを構えなおす。

 アンティアは右足だけで立っている。

 解放骨折している右腕、変な方向に曲がった左足、血まみれの顔面。

 そして。

 とどめの一撃。

 アンティアの顎に紅亜(くれあ)のホウキがヒットした。

 

 アンティアの身体は一瞬宙に浮き、そしてくたりと床に倒れて、動かなくなった。

 

〈勝ったーーー!〉

〈すげええ!!!〉

〈まじか、ラクシャーサと吸血鬼、どっちもぶっ倒した!〉

〈すげーーーー!〉

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダンジョン魔法少女、ただし子持ち(作者:鉄板フライ)(オリジナル:現代/ノンジャンル)

「私もうアラサーなんですけど魔法少女アイドルはキツくないですかねぇ!」▼「見た目は少女なのでセーフ」▼「心がキツイんだよ!」▼「ついでに録画して動画とか、配信とかもするから」▼「私を羞恥心で殺す気か!?」▼ マルチ投稿してます。


総合評価:383/評価:8.45/連載:15話/更新日時:2026年10月02日(金) 19:03 小説情報

無口で可愛い女の子だと思ってナンパしてみたらメンヘラだった件 ~のじゃロリ妖狐の胃痛に満ちた現代生活~(作者:パッタリ)(オリジナル:現代/日常)

 現代社会には妖怪が紛れている。▼ 百年以上を生きる妖狐のシラギクは、日々のストレス発散のため、自らの美少女な外見を利用して人間にお菓子を奢らせるのが趣味だった。▼ ある日、無口な黒髪少女リンカをナンパするが、彼女は陰陽師の家系の激重メンヘラ少女であり、しかも才能があった。▼ 手を繋ぐだけで正体がバレた上、孤独だったリンカに激しく依存されてしまう。▼ 愛が重…


総合評価:414/評価:8.45/完結:30話/更新日時:2026年09月24日(木) 17:11 小説情報

添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜(作者:鐘楼)(オリジナル:現代/恋愛)

毎日姉に添い寝をしてもらっている少女、花平希沙音は高校一年の夏、ついに「一人で眠れるようになりなさい」と姉の家を追い出されてしまう。▼一人で眠れる気がしなかった希沙音は、なんとか添い寝を頼めないかと転居先の女子寮で出会った親切な少女、伊咲深白にお願いをする。▼しかし、深白は何人もの少女を手篭めにしてきた悪女だった。▼案の定、希沙音も深白に美味しく頂かれるのか…


総合評価:2889/評価:8.91/連載:31話/更新日時:2026年07月14日(火) 12:05 小説情報

ミレニアム首席技術者ノルムーなのだ!!!(作者:モコマリ)(原作:ブルーアーカイブ)

「ミレニアム首席技術者!ノルムーなのだ!!」▼火急の案件を終え久しぶりの帰宅、次の日はようやく推しの実装日!!さぁさっさと寝よう…と思っていたら・。▼これはノルムー(見た目だけ)転生してしまった一般男性?が、キヴォトスでおもしろおかしくトラブルに巻き込み巻き込まれて行く…そんなストーリー


総合評価:3750/評価:8.23/連載:12話/更新日時:2026年09月15日(火) 17:30 小説情報

底辺配信者、スキル〈TS(爆乳)〉でおっぱい系ダンジョン配信者になりバズる 〜できればおっぱいじゃなく戦いを見てほしいんですが〜(作者:夏川優希)(オリジナル:現代/コメディ)

【戦いを見てほしいTS(爆乳)配信者VSおっぱいしか見ないリスナー ファイッ!】▼男子高校生、相模原カオルは底辺ダンジョン配信者だ。▼ユニークスキル〈TS(爆乳)〉で手に入れた体はダンジョンのモンスターを容易く屠ることができる。しかしその代償として美少女(爆乳)化してしまうのだ。▼そんな姿を晒したくない、純粋に戦闘センスを評価してほしいと姿をさらさず配信を続…


総合評価:1860/評価:8.11/完結:32話/更新日時:2026年07月22日(水) 21:06 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>