勝った。
勝った、が。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
大きく息をする紅亜。
澄見歌もシーコもアカリも倒れている。
被害は甚大だった。
魔力のほとんどを使い果たした紅亜は、湯歌に肩を借りながら身体をひきずるようにして澄見歌の元へと行く。
「……澄見歌ちゃん!」
澄見歌は鼻と口から血を流していた。
呼吸はしている。
だけど、意識を取り戻す気配はない。
「…………どうしよう…………」
妖命酒はもうない。
唯一治癒魔法の使える澄見歌はこの状態だ。
湯歌は治癒能力があるが、それは外科手術限定で、意識を失った澄見歌をいますぐどうこうはできない。
紅亜はカーゴパンツのポケットからハンカチを取り出すと、澄見歌の血をそっと拭った。
「ごめんね、ごめんね、澄見歌ちゃん……私がもっと強ければ……!」
乃音も、この悲惨な光景を引き起こしたのが自分だと理解しているのか、片隅で声もなく泣いていた。
「どうしたらいいの……? どうしたら……」
と、紅亜の目の前に、一本の小さなビンが差し出された。
顔を上げると、ビンを差し出しているのは湯歌だった。
「湯歌ちゃん……これは?」
「ほら、さっきヤクザさんからいただいた高級ポーション。3本あるから、とりあえず全部お姉ちゃんに飲ませちゃいましょう」
「あ……」
忘れていた。
そういえば、ヤクザから羅生門したポーションがあったのだった。
「飲ませちゃうって……」
「口移ししかないでしょ。紅亜さん、ほら、ちゃっちゃとお姉ちゃんに飲ませたげて」
思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
澄見歌の艶やかな唇をじっと見つめながら、ポーションのフタをとる。
そして、それを口に含んだ。
「こぼさないでくださいね」
湯歌の声を聞きながら、紅亜はそっと澄見歌を抱きかかえ、澄見歌の唇に自分の唇をそっと重ね合わせた。
少しずつ、液体を澄見歌の口中に流し込んでいく。
コクリ、と澄見歌が液体を飲み込んでいくのを感じた。
澄見歌の鼻息がほっぺたに当たって熱い。
自分の鼻息も澄見歌のほっぺたに当たっているだろうか、と考えると少し恥ずかしい。
口の中の液体をすっかり澄見歌に飲ませ終わると、澄見歌がかすかに目を開いた。
「紅亜ちゃん……もっと……」
「う、うん! 湯歌ちゃん、もう一本!」
再び、ポーションを澄見歌に口移しで飲ませる。
いつのまにか、澄見歌の腕が紅亜の首に絡みついていた。
っていうか。
っていうか!
澄見歌のぬめりとした舌が、紅亜の口の中をまさぐってきて――。
にゅるっと紅亜の舌と絡み合う。
思わず、紅亜も澄見歌を抱きしめてしまう。
澄見歌の体温が伝わる。
呼吸が伝わる。
鼓動まで伝わってくる。
「紅亜ちゃん……」
澄見歌が紅亜をじっと見つめてくる。
「澄見歌ちゃん……」
紅亜も名前を呼び返して、そして再び唇を重ね合った――。
その瞬間。
湯歌がバシッと澄見歌の頭を軽く叩いた。
「なにやってんの。主旨が違っちゃってる! ほら、お姉ちゃん、もう自分で飲めるでしょ!」
くっつきあう紅亜と澄見歌の身体を引き離しながら湯歌がそう言った。
〈ん?〉
〈口移しまではわかるけど〉
〈そのあとのキスはなに?〉
〈え、もしかしたら尊い何かを見せつけられてる?〉
〈しかも女子小学生の前で!?〉
見ると、確かに乃音が顔を真っ赤にしながら紅亜と澄見歌の口づけを見ていた。
「あんたたち、私の乃音になに見せてるのよ。不潔だわ」
夏子が呆れた声で言った。
「よし、まあまあ復活! あとは私がアカリちゃんとシーコさんに治癒魔法をかけなきゃ!」