100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~   作:羽黒楓

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第65話 不潔だわ

 勝った。

 勝った、が。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 大きく息をする紅亜(くれあ)。

 澄見歌(すみか)もシーコもアカリも倒れている。

 被害は甚大だった。

 

 魔力のほとんどを使い果たした紅亜(くれあ)は、湯歌(ゆか)に肩を借りながら身体をひきずるようにして澄見歌(すみか)の元へと行く。

 

「……澄見歌(すみか)ちゃん!」

 

 澄見歌(すみか)は鼻と口から血を流していた。

 呼吸はしている。

 だけど、意識を取り戻す気配はない。

 

「…………どうしよう…………」

 

 妖命酒はもうない。

 唯一治癒魔法の使える澄見歌(すみか)はこの状態だ。

 湯歌(ゆか)は治癒能力があるが、それは外科手術限定で、意識を失った澄見歌(すみか)をいますぐどうこうはできない。

 

 紅亜(くれあ)はカーゴパンツのポケットからハンカチを取り出すと、澄見歌(すみか)の血をそっと拭った。

 

「ごめんね、ごめんね、澄見歌(すみか)ちゃん……私がもっと強ければ……!」

 

 乃音(のの)も、この悲惨な光景を引き起こしたのが自分だと理解しているのか、片隅で声もなく泣いていた。

 

「どうしたらいいの……? どうしたら……」

 

 と、紅亜(くれあ)の目の前に、一本の小さなビンが差し出された。

 顔を上げると、ビンを差し出しているのは湯歌(ゆか)だった。

 

「湯歌(ゆか)ちゃん……これは?」

「ほら、さっきヤクザさんからいただいた高級ポーション。3本あるから、とりあえず全部お姉ちゃんに飲ませちゃいましょう」

「あ……」

 

 忘れていた。

 そういえば、ヤクザから羅生門したポーションがあったのだった。

 

「飲ませちゃうって……」

「口移ししかないでしょ。紅亜(くれあ)さん、ほら、ちゃっちゃとお姉ちゃんに飲ませたげて」

 

 思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 澄見歌(すみか)の艶やかな唇をじっと見つめながら、ポーションのフタをとる。

 そして、それを口に含んだ。

 

「こぼさないでくださいね」

 

 湯歌(ゆか)の声を聞きながら、紅亜(くれあ)はそっと澄見歌(すみか)を抱きかかえ、澄見歌(すみか)の唇に自分の唇をそっと重ね合わせた。

 少しずつ、液体を澄見歌(すみか)の口中に流し込んでいく。

 コクリ、と澄見歌(すみか)が液体を飲み込んでいくのを感じた。

 澄見歌(すみか)の鼻息がほっぺたに当たって熱い。

 自分の鼻息も澄見歌(すみか)のほっぺたに当たっているだろうか、と考えると少し恥ずかしい。

 口の中の液体をすっかり澄見歌(すみか)に飲ませ終わると、澄見歌(すみか)がかすかに目を開いた。

 

「紅亜(くれあ)ちゃん……もっと……」

「う、うん! 湯歌(ゆか)ちゃん、もう一本!」

 

 再び、ポーションを澄見歌(すみか)に口移しで飲ませる。

 いつのまにか、澄見歌(すみか)の腕が紅亜(くれあ)の首に絡みついていた。

 っていうか。

 っていうか!

 澄見歌(すみか)のぬめりとした舌が、紅亜(くれあ)の口の中をまさぐってきて――。

 にゅるっと紅亜(くれあ)の舌と絡み合う。

 思わず、紅亜(くれあ)も澄見歌(すみか)を抱きしめてしまう。

 澄見歌(すみか)の体温が伝わる。

 呼吸が伝わる。

 鼓動まで伝わってくる。

 

「紅亜(くれあ)ちゃん……」

 

 澄見歌(すみか)が紅亜(くれあ)をじっと見つめてくる。

 

「澄見歌(すみか)ちゃん……」

 

 紅亜(くれあ)も名前を呼び返して、そして再び唇を重ね合った――。

 

 その瞬間。

 

 湯歌(ゆか)がバシッと澄見歌(すみか)の頭を軽く叩いた。

 

「なにやってんの。主旨が違っちゃってる! ほら、お姉ちゃん、もう自分で飲めるでしょ!」

 

 くっつきあう紅亜(くれあ)と澄見歌(すみか)の身体を引き離しながら湯歌(ゆか)がそう言った。

 

〈ん?〉

〈口移しまではわかるけど〉

〈そのあとのキスはなに?〉

〈え、もしかしたら尊い何かを見せつけられてる?〉

〈しかも女子小学生の前で!?〉

 

 見ると、確かに乃音(のの)が顔を真っ赤にしながら紅亜(くれあ)と澄見歌(すみか)の口づけを見ていた。

 

「あんたたち、私の乃音(のの)になに見せてるのよ。不潔だわ」

 

 夏子が呆れた声で言った。

 

「よし、まあまあ復活! あとは私がアカリちゃんとシーコさんに治癒魔法をかけなきゃ!」

 

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