記録:とある剣の話 作:折れた小枝
→着込むことで首輪を隠します。
首輪って言っても金属製のチョーカーみたいな薄いものなのでタートルネックで隠せます。
イェソド・・・?
あ、部下の名前はフィーリングで決めてます。
約一名を除く。
――22区、某所にて。
「何がどうなったら調律者に気に入られて首輪を送られるようになるのかって聞いてるんだけど」
知らないです。
「代表様。さすがです・・・」
感激してないで助けて。磔になってるの俺。
「ニューは何かやらかしてたんだと思う」
「ミューは被害者だと思うんだけど」
「「うーん」」
俺は被害者では?
「マァとりあえず、今来てる依頼をどうにかしたいんだけどナ?あ、代表はこの服来てくださいネ」
アーロから手渡されたのはタートルネックだった。
着てみると、ジャストサイズ。首輪も隠せるし、インナーとしても心地が良い。
「某社製のタートルネックだヨ。お値段は何とたったの
「えっ・・・巣に家買える値段だよ?事務所買おうよ」
「ミュー。事務所買うのは代表のしたいこと終わってから買うって話だよ」
「それでも、お金だよ」
「「確かに」」
アーロが持ってきた依頼。事務所総出―と言っても合計で六人の少数だが―で、しかも他の事務所と合同で行う仕事。
路地裏の夜の五分前にごく一部で発生する霧。
その霧に飲み込まれた者が行方不明になっているらしい。
その現象の原因究明とあわよくば解決の為に、事務所単位での依頼が回っているらしい。
俺たち剣刀事務所も、その依頼が回ってきたというわけだ。
「そろそろ集合場所に到着するはずだヨ。徒歩以外の移動手段が基本だと思うケド、ウチは
「格安で量をこなす事務所だからね・・・それに、双子ちゃんの食費とカインさんの武具の修復費で・・・ね?」
「「美味しいご飯は大事だよ!」」
「しっかりとした得物が無ければ、仕事もままならんぞ」
カイン、お前多分シかリウに行った方がいいぞ。
雑談をしつつ、集合予定地に到着する。
そこには、事務所の数だけのテントとフィクサーと思われる人々がいた。
「見知った事務所がちらほら・・・あれ今話題の赤髪の?」
「カーリーさんだね。それにあれは巣の中の・・・巣の中からも出てきてるってことは、"相当"ってこと」
詳しいなディリー。フィクサーマニアってやつか?
「はい!憧れの先輩方ですし、カーリーさんは私より少し先輩ってくらいですけど、それでもすごい成長速度で、デビューから半年しか経ってないのにもう4級フィクサーになったんですよ!」
うん。知ってる。
ディリーが誰にでも聞こえる声で、やれあそこのフィクサーはここが凄い、やれどこそこのフィクサーはあれが凄いしあっちのフィクサーはあれが凄いから、二人そろうとどうなって凄い。
あまりにも騒ぎ立てるからか、視線を集めている。
――そのどれもが、肯定的な視線であることは異常事態であろうか。
この都市の中で見たら異常事態だね。
そんな話をしていたら、一人の女性フィクサーがこちらに近づいてきた。
「あ、あの!もしかして、フェイさんですか?」
どうやらあなたと話がしたいようだった。
肯定。
何の用かな?
少女のようなフィクサーは少し頬を赤らめて話を続ける。
超新星と謳われるカーリーの同期にして、初任務における相棒として活動し、9級から7級まで駆け上がり、シ教会にたった一度の任務で認められた上、7級から4級まで跳ね上がった男。
4級にまで駆け上がったのち、剣刀事務所を設立、その後約半年に及び『最低500眼での依頼』と言う破格の安さでの仕事をこなす。西部のフィクサーの間で話題の中心となってる二人のうちの片割れ・・・とのことだった。
頬を赤らめた少女はそのままあなたに話を続けようとする。あなたはそれを聞こうとして――左肩が重くなり、少し煙たくなる。
「・・・フゥ。現場についてまで何をしているんだ?フェイ。そんなに暇なら少し手伝え。体を温めておきたい」
煙草を咥えたカーリーが、あなたの肩を肘置きにして話しかけてきた。
体を温める?
あぁ、運動ね。何したいの?
「まさか?もちろん、これだろ」
そう言って背中の無骨な大剣を指で示した。
それだけで彼女が何をしたいのか、理解できるだろう。
「そんなに暇なら少し手伝え。
「運動?仲良しこよしで準備運動か?」
「まさか?もちろん、これだろ」
そう言ってカーリーが背中の大剣を指で指し示す。
この場にいるフィクサーは全員、それだけで何をしようとしているのか理解した。
代表と、カーリー。二人の超新星が手合わせを始める。
自然と二人に注目が集まる。
「――へぇ?」
代表が手を構えると、
周囲の温度が一回り下がる感覚がした。
カーリーが剣を抜き、構える。
「――っ!へぇ、あの鼠どもはこれを感じても尚、突っ込んでいったのか」
「ギアは回すか?」
「あの時と同じ、二回転だ」
代表が胸の前に手を構えると、装置が現れる。
装置のダイヤルを二回転すると、全身にチューブが絡まり、緑色の液体が流れ込む。
少しだけ代表が大きくなったように錯覚た。
「・・・なら、羽は使わないでやろう」
代表が鞘を定位置に構え、抜刀する。
正中に抜き身の黒い刃を構え、辺りが鎮まりかえる。
自身の心音が、誰かの生唾を飲み込む音が、鬱陶しく感じるほどの沈黙の中、風が吹き、落ち葉が地面に落ちる。
――刹那、剣戟が始まった。
落ち葉が地面に触れて、完全に制止するまでの間に三度斬り結んだ
見えていなかったが、音が三度聞こえたからそう判断した。
「どうやら鈍ってはいないみたいだな」
「事務所の長としての、威厳も保たねばならねぇしな」
これでも、妹共々相当に鍛えている自覚があるし、自信もあった。
それでも尚、見えない。わからない。
この二人は恐らく、強さだけで言えば1級、それも上位陣に肉薄するか追い越すほどの強さを持っているだろう。
瞬きの間に三度。一息の間にさらに二度。
2人が同時に地面に足を着ける。代表が
そうとしか思えない動き方で離れた距離を瞬間的に詰める。
「〈縮地〉ってんだ。一度見たなら、できるだろ?」
「随分と簡単に言ってくれるな!」
ボクたち凡夫が一振りにかかる時間で二振りか三振り。
どちらも天才と呼ばれる領域の剣士。
カーリーが一撃の威力と重さを最重要に戦う、剛の剣士。
対して代表は一撃の速度と技の数々で戦う、柔の剣士。
性質としては真逆であるがだからこそ相性がいいと言うか、お互いの動きを理解しているように感じる。
「どうした?ちゃんと受け止めろよ」
「その馬鹿みたいな膂力からの馬鹿みたいな威力を正面から受け止めろと?折れるぞ。色々と」
時間にしてA社基準で30分。ノンストップで剣を交え続ける。
どこからそんな体力が湧き出ているのか。二人の身体には汗一つない。
「そろそろいいだろ」
「あぁ。これで、仕舞いだ」
ひときわ速く剣と剣をぶつけ合い、距離をとる。
そしてお互いに刃を納めた。
カーリーが煙草を取り出し、ライターで火をつける。
もう一本取り出して代表に差し出す。
「・・・吸ったことは無いんだがな」
「そうか。いらないか?」
「いや、もらっておこう」
代表が煙草を受け取り、咥える。
「・・・火を、もらえるか?」
「ん」
てっきりライターで火を付けるのかと思ったら、顔を近づけてシガーキスをする。
「ほら、火だ」
「随分な趣味だな」
遠くのビルの上から、望遠鏡でフェイを見つめる一人の影があった。
その影は剣とレイビアを携え、憂鬱そうにため息をついた。
「はぁ・・・面倒だねぇ。
「今のところ問題はないけど、もし邪魔になるようなら・・・」
・カーリー
久しぶりに生存確認した腐れ縁が首に知らんものつけてるし女に言い寄られてるのを見て何とも言えない感情をいだいた。
事務所の存在は聞いていたし、方針としても『契約書、依頼書に書かれてないことは自己判断で好き勝手していい』と言う方針は気に入ってる。
尚、彼女との関係は『距離の近すぎる親友』以上になる予定は今のところない。
・フェイ
久しぶりにあったカーリーがなんか嫉妬してそうで笑いそうになったけどこらえた。
斬り結ん出る時は楽しかった。そこそこ全力で戦ったのに相手は余裕そうでちょっと引いた。
・???⇒紫の涙
自分の目標の為に何度も世界を越えてきた。
もしもフェイが障害になる可能性があるのなら、彼を殺すだろう。