記録:とある剣の話 作:折れた小枝
定期更新の時間です。
都市ぶら、23区。
あなたは大きく伸びをした。
両手を組み、グッと上に腕を伸ばす。至極普遍的な伸びだ。
カーリーと別れ、いくつかの仕事を得たあなたは、V社の自治区である22区に歩いて向かいながら過ごしていた。
初任務で都市伝説をたった二人で攻略したその功績から、一気に7級フィクサーにまで上がったあなたは、上機嫌で路地裏を歩いている。
~♪
あ、そう言えば時期的にカーリーって今20歳くらいか。
・・・俺っていくつだ?
肉体年齢は18歳である。
ありがとうウィンドウくん。
てことは姉・・・いやなんかキモイな。
カーリーが研究所(以降、ラボと呼ぶ)に
『お互いに3級になったらもう一度
ボーっとしながら歩いていると、一つの飲食店が目に入った。
看板には『ミート・ミート』と書かれていた。『meet』と『meat』をかけた高度なシャレだろう。
その手のシャレの解説は逆につらいことになるぞ・・・経験がある。
確かにお腹は空いてるけど・・・なんか騒がしいな?
中を覗くと、店主らしき人間がチンピラに脅されているのが見えた。
・・・助けないといけない気がする!
あなたは扉を蹴破り、入店した。飛んで行った扉はねずみの一人の後頭部に直撃し、一撃で気絶させた。
協会から受けた
ほら、残り四人。何惚けてるんだい?ここは23区の路地裏だよ?
じゃあ死のうか。
この世界のどこでもない場所から抜き身の刀と鞘を現し、そのままの勢いで近くの一人の首を断った。
「なっ、なんだよお前!」
私ですか?通りすがりの7級フィクサーですけど?
7級フィクサーに即殺されるようじゃ君たち23区の裏路地じゃ生きていけないよ?
まぁ今日ここで死ぬからいいけど。
だからとりあえず死にましょか~。
そのまま袈裟に一太刀。一切の抵抗なく、まるで豆腐を斬るかのように人体を切断する。
「テメェ!それどこの工房の武器だ!」
「ムクの型落ちでも安売りでもねぇ・・・!本当に7級フィクサーか!」
本当に7級フィクサーだよ?機会があれば調べてみたらいいと思うよ。
そんな機会はないけど。
縮地と呼ばれる高速移動方で一気に距離を詰め、横一文字で二人を同時に斬り伏せる。
鞘に刀をしまう・・・と見せかけ、背後の一人の喉笛を突く。
「な、ぜ・・・ばれた・・・?息は、潜めた・・・!完璧に・・・!」
俺を舐めるな、路地裏のねずみ。
・・・あ、これ短歌になった?
さて、さて・・・店主らしき男は、無事かな?
店主らしき男は、どうやら気を失っているようだ。
介抱してやらねば・・・(使命感)
恐らく、店の厨房に行けば手ぬぐいと保冷剤程度ならあるだろう。
ほうほう・・・あ、本当にあった。
なんでわかるの?怖いよ?
・・・とりあえず、タオルで包んで、たんこぶになってるところ冷やして、枕はあれでいいか。椅子のクッション。
今日はとことん運がない日だ。
ねずみの野郎どもに襲われ、命辛々店にまで逃げ切ったかと思えばしっかり後をつけられ、店を荒らされて金をとられそうになる。
気がつけばねずみの野郎どもは全滅して、明らかに全滅させたであろう男が目の前にいる。
俺はもう死ぬのか?
「・・・店主殿」
絶対にオレが起きていることに気が付いているだろう。
応答しなければきっと殺される。
でも、店がこの惨状になっているんだ。弟が見ちまえばきっと・・・。
「店主殿。食事をしたいのだが」
「は?」
この路地裏で、しかも、治安が悪い23区の路地裏で。
ここまで丁寧に、相手のことまで考えた声がけなんて初めてだった。
ねずみを五人も瞬殺できるような男が、食事をしたいがために俺を介抱した?
有り得ない。
・・・だが、心のどこかで納得してしまった。
打算ありきか、料理ができないだけか。
理由は考えないことにした。
この黒髪の男を、信じたくなった。
店主を起こしてご飯食べたいって言ったら驚かれたぜ!
「そんな顔しなさんなって!うちは常連の代わり者にしか人肉は出さねぇんだ。それに人肉だって、ちゃんと他の肉で納得いく味付けができてから調理してんだ。評判良いんだぜ?」
あ、そっすか・・・。ちなみにこれは?
「牛の尻尾の付け根んところだ。硬いから基本は煮込み。さっぱりめの方が人気なんだが・・・
牛テールの煮込みか。
・・・あれ?都市の路地裏なのにまともな料理?
「肉の鮮度はクソだけど、味は保証するぜ」
あー、この肉腐ってんだ。何なら他の素材も全部腐ってる。
とりあえず実食してから色々・・・。
うっ!
「どうだ?」
味は美味い。
でも、その、なんて言うか・・・あれだ。都市の路地裏の味がする。
「プッ・・・なんだよその味・・・!アハハッ!あんた面白いな!それに、都市じゃ珍しいいい奴だ!」
毒殺してこなかったあんたもいい人だと思うよ。
この状況ならそれすらあり得たでしょ。
毒殺の可能性を理解した上で躊躇いもなく食事を口に運び入れ、そして完食するのはいかがなものだろうか。
だがしかし、間違いなく腹は満たされた。
ふと、店の外を見ると、何人もの同じ服を身にまとった集団が立っていた。
おっ?なんだこいつら?
敵か?敵なのか?
斬る?どうする店主、斬る?
「あー!気にすんな!
「・・・兄貴。この店の惨状はどういうことだ?」
「ん?これはな――」
店主が兄弟にしている説明を聞き流しながら、店をとり囲む集団を吟味する。
身体に刻まれた紫色の刺青、白いスーツに黄金に輝く鎖。
あなたの目に留まった本。あなたはそれが何かを知っているだろう。
・・・仕返し帳簿。
それに鎖は義理の鎖だな。
明らかに統制された・・・ギャング。
――中指じゃねぇか!バカヤロー!
えっ中指の兄弟持ってたの?
弟居たの?
中指だったの?
「おい、アンタ」
中指の弟さんから話なけられましたね。
一応、末弟かな。末弟であってくれ。
長弟でも構わない・・・やっぱダメ。
「兄貴を、あいつらから助けたんだって?」
あっ、はい。その――助けましたね。でも、ご飯食べたかったからなんすよ。
いやまぁついでに助けたって言ったらなんか軽んじてる風に聞こえるかもしれないっすけど、放置はできないじゃないですか?
「そうか」
中指の男は頭を下げ、再び口を開いた。
「ありがとう。兄貴を、俺の兄ちゃんを救ってくれて」
「「「ありがとうございましたァ!」」」
男に続いて他の構成員も頭を下げ、貴方に感謝の言葉を述べる。
気にしないでね?
「助けてもらって『食事がしたい』って言われて、振舞わねぇ料理人は明日の店に並ぶぜ?」
「助けられたにもかかわらず恩を返さねぇ、しかも罵ったり仇を返すような奴には―(ペラペラ)―2条11項A行4番目に則り、『両脚を逆方向に折った後に両肩を外して両腕の骨を砕いて結び、助けるのにかけた時間だけ引きずり回した後に処刑』だ」
oh・・・流石中指さん、バイオレンスネ・・・。
「そして俺には、アンタに感謝を伝える理由がある。・・・コレ、やるよ」
男が取り出したのは三枚のクーポンだった。
おっ、ヘアクーポン?ヘアクーポンか?
一枚目は『ミート・ミート生涯無料クーポン』。二枚目は『
あれ?
「あぁ。俺と弟はH社生まれでこっちに流れてきたんだ」
「
そして、三枚目。『ダイオウエイ港船:プライベート美容室、スタイリング無料クーポン』。裏面には『予約不要!クーポンをお持ちいただければ!』と書かれていた。
ヘアクーポンじゃねぇか!
・フェイ
お腹が空いたのでご飯を食べようと思った。
ねずみが居たから刻んだ。
なんか中指に感謝されてクーポン貰った。
ヘアクーポンじゃねぇか!
・『ミート・ミート』店主
『良い肉と出会う』を込めて店名をつけた。
運よく巣で開けていたら、素晴らしい店になっただろう。
・『中指の長弟』店主の弟
店主の弟。残念ながら長弟だよ。
どうやら21区に特に仲が良い末兄がいるらしいが・・・?
・ヘアクーポン
ヘアクーポン。
・みんなのトラウマ☆ヘアクーポン
仲のいい弟に『お前が将来フッサフサと思う男にこれを渡せ。俺がその男と出会ったなら・・・恐らく、親友になれる』と言ってクーポンを授けた。
帳簿に三人増やして五人殺した。