ガバガバ近代日本史(世界史) in 惑星パラドックス   作:AKI久

5 / 5
現実:()内は惑星パラドでの年号との差
1870年(+25) 三菱(三菱商会)の起業
1894年(×) 日清戦争
1895年(×) 三国干渉
1904年(×) 日露戦争

戦争縛りプレイかな?


第五講 アジアのヤバくて変な奴(1890~1905)

「はいはい~今日は近代日本史のなかで地味すぎて人気の無い区間をやるぞ~。

ここが後の戦争に関わるから頑張れよ~」

 

「ヨーロッパ……ヨーロッパ史をよこせ……!」

 

「アヘンどこ……世界史なのにアヘンが足りない……いっそポピーでもいい……」

 

生徒達の反応を受け、これまで日本史に寄り過ぎていたかもしれないと教師は思い直す。だが扱う内容が内容だけに仕方ないと内心で自己弁護し、授業を始める。

 

「えぇ……まあどっちもちょっとは出てくるから。

前回、クーデター未遂のおかげで国内の活動が治まった所までやったな。

今日は1890年代から可能なら1905年までいくぞ~」

 

―――――

 

「国内では様々な法改正が進んで、政治的な面からも近代化が進んでいった。それが90年代だ。今日は7/29だから出席番号36番、予習したのを答えてみ」

 

指名された生徒は慌てて教科書をめくり始める。この様子だと、予習をしていなかったようだ。日本の歴史はなまじ小中学校で学んでいるから、高校で舐めてかかる生徒が多いと歴史科教師達は毎年嘆息している。この悩みは他教科とは分かち合えないどころか、事前知識があって良いじゃないかと思われている。

 

「……えっと……あっ! 身分制度廃止です!

士農工商を代表とするやつが無くなりました!

『サムライ・ザ・ファイナル』で見ました!」

 

「予習はしっかりやっとけよ~。それは2、30年先だ。

政教分離の完全化や臣民性から文化的排斥への変更で外国からの移住を受け入れ体制の確立、軍隊を侍限定から職業軍人制にした。それと植民地搾取の合法化、土地ベース課税から比例課税の導入といったものが代表的だな」

 

「何というか、どれも地味だよね~」

 

これまでのような目に見えて分かるような変化ではないから人気がないということは教師も知っている。だが、国際的な観点から見れば、ここからの躍進のための踏み台的な役割を果たしているのがこの区間だ。生徒達に何とかして印象付けられるよう一層教師は気を引き締める。

 

「詳しくは日本史でやってくれ。世界史でもよく出るから課税法だけは教えておくぞ~。

土地ベース課税は雑に言えば固定資産税だけって感じだ、地主しか払わない。

比例課税は消費税みたいな感じで、買い物に対して誰もが一定割合の金額を納める」

 

教師は白板に税制の違いを記入していく。それぞれの課税法とどんな者が政府に納めるのかをまとめていく。

 

「そんな重要なんすか? 土地ベースの方が俺たちには嬉しいんすけど」

 

「俺もだよ。

だけど、政府の歳入を増やし、国内の経済的格差を減らすのにはこっちの方がマシなんだ。この間みたいに富裕層が力をつけすぎて、また革命騒動になったら大変だからな」

 

この一言だけで生徒達には納得がいったらしい。これまで学んできた将軍や英雄の歩みは忘れられなかったようだ。

 

「例えば、食料は誰でも買うからそこからも税収を得られる。貧乏人相手でも変わらない。

だけど、富裕層は高級品も買うだろう。当時で言えばアヘンや洗濯代行、ようはクリーニングみたいな金持ちしか購入しない物品やサービスとかからも税金を取れるって訳だ。

結果的に、富裕層は多くの税金を払うことになるって寸法だな」

 

「アヘン! アヘン来た!」

 

横道にそれないように早めに話にケリをつける。

 

「アヘンは特別な税まで課された上、輸出のために政府が助成金をバンバン費やしてたから国内ではそんなに流行しなかったんだけどな。

それはともかく、これらの法律によって一気に大日本帝国は成長した」

 

「その方向性が今後の世界史に関わってくるんだ。

まあその前にこの90年代に経済成長の証として語られる2つの事例を説明するぞ。

大企業三菱の設立と日本初の海外植民地だ」

 

「あれ? 樺太ってまだ日本になって無かったんでしたっけ?」

 

生徒の指摘を受け、補足をすべきだと教師は思い直す。

 

「あぁ……紛らわしかったな。

樺太への植民は終わってたし、琉球と北海道は併合されてた。世界史だとそれぞれの当時の名前、ルーチェとか蝦夷はあんまり使わないんだよ。世界の情勢には大した影響を与えないからな。詳しくは日本史でやってくれ」

 

「先に植民の話をするか。

以前東郷提督が1年間の東インド諸島の駐留からパプアニューギニア島が入植できると判明したことは教えたよな。その情報から植民地化を開始した」

 

「家族旅行で行ったけど、海が綺麗だったぜ!」

 

「当時はイギリスやフランス、オランダも同じ島に入植を開始していた。

マラリアっていう南方特有の病が酷くて中々進まなかったせいだな。奴らの本土から離れていたのもある。

この時点はこの島は重要じゃないが、ゴムを産出する上、この国境線のせいで日英戦争が勃発してしまうことになる。予告だが、この島のせいで大英帝国は壊れたともいう専門家もいるくらいだ」

 

「やっば! 埋蔵金でもあったん⁉ 赤城山みたいな⁉」

 

「徳川埋蔵金なら1850年代に掘り起こされ切ったぞ。近代化は金がかかるからな~。

埋蔵金どころか国庫がすっからかんになったのも、大政奉還への後押しになったとされてるな。

それはともかく、パプアニューギニアについては更に先の年代で登場するから一旦おいておくぞ」

 

「えっ……TVで徳川埋蔵金さがしてたんだけど、どこにも無いんですか?」

 

今日は普段より生徒から雑談を振られているように教師は感じ、何とか授業内容に興味を持たせなければと思い、雑ではあるが話を振ることにする。

 

「夢はあるよな。先生も庭から出てきてほしいもん。

それよりも三菱だ。聞いたことがない人はいないだろうが、何を作ってるか分かるか?」

 

―――――

 

「鉛筆! 会社のマークがついてるからチョロいぜ!」

 

元気な生徒が真っ先に答えてくる。この生徒も予習を怠ったようだ。

 

「正解ではあるが現代的だな。当時としてもそんなに外れてないのがもどかしい。

三菱は主に造船・鉄鉱山・製紙・発動機を扱う企業として設立された。蒸気船には鉄鋼、そして動力のエンジンに発動機が欠かせない。それ以外の部分、例えば交通手段のメインストリームである鉄道や砂糖等の産業にも発動機は使われていたんだ」

 

教師は企業の主力製品とそれらの使い道を白板に記載していく。特にイメージが掴みづらいであろう発動機については細かい注を付け加える。

 

「せんせ~鉛筆は~?」

 

あえて紙に触れない狙いが上手く機能したと思い、一人ほくそ笑む教師。

 

「紙が関係しているって意味で言ったんだよ。筆記用具の一部だろう?」

 

「あぁ~そういえば中国地方って和紙の生産で有名だよね。あれも三菱だったっけ」

 

「そうだぞ。

先に結末だけいうが、紙不足が大変すぎて政府が三菱の後押しをしまくってたら大きくなった。その不足も政府が原因だ。今では笑い話だが、当時としてはヤバイ事件だった。

それが影響して大日本帝国は拡張政策へと舵を切るようになった」

 

「紙が足りなくて侵略っておかしくない? 戦争したら燃えちゃうじゃん」

 

「これの始まりは過剰な造船所の拡大から始まる。

海軍増強を目的に行われたが、あまり効果はなかった。これは造船所は十分以上にあるのに造船の需要が足らず従業員が居なかったからだ。つまり、大きな工場はあるが普段は儲からなくて給料を払えないから最低限の工員しか雇わなかったということだな。

これは海軍士官の視察によって判明した」

 

「箱物行政じゃん……。あれ、前も言わなかったっけ?」

 

その言葉が今後も乱発することを生徒は知らない。この教室内では教師だけが知っている。

 

「この事件から他にもこういったことがあるんじゃないかと政府は思い調査を開始した。

その結果、調査に必要な公務員が居ないことが判明した」

 

「どゆこと? 今の所バカしか居ない感じだけど?

一人で海軍を作った人間と同年代とは思えないんだけど?」

 

生徒達がヒートアップしすぎないように、話を遮って説明を開始する。

 

「ここまでなら、百歩譲って問題なかった。

だが、税金回収業務が京都以外で滞っていたことが判明した。単純に行政能力が足りないから集められなかったそうだ。公務員の数や記録するための紙すら不足していたからだ。

当時の国民には税金を払う意思があったと調査、及びその後の歳入増加から裏付けられている。ようは分からないことすら分からないくらい手一杯だったってことだ。税制変更の成果もな。

でもこれは、幕末から続く行政問題が顕在化した訳でもあるから……ちょっとフォローして……」

 

授業を進めている教師自身でさえ上手く当時の政府を庇う文言が思い浮かばず、つい生徒に助けを求めてしまった。

 

「唯一納税をしっかりする、京都はやっぱりちゃんとしてはりますわ~。

他は自分が自分がってガツガツしとりますな~」

 

「発展してないから税金が集め易かっただけだろ。御所と芸術工房以外なんもないじゃん。

よっ! 『俺ら東北さ行ぐだ』の体現者!」

 

「……殺す。あんたを芸術品に仕立て上げたる! 覚悟しいやぁ!」

 

生徒達は別の方向でヒートアップし始めてしまった。京都と他地域の経済的格差、それに不釣り合いな文化的遺産の量から対立してしまいやすい。一早く抑えるべく、説明を再開する。

 

「それも政府のガバガバな設計のせいだから落ち着け。

ともかく、これを解決すべく政府は各地に行政府を乱立した。

これまでの経済成長で政府の金準備は大量にあったから、昔と違って建築予算を惜しむ必要なんてない。近代当初、徳川家斉将軍の頃では考えられないような事態だな。

これで税金は徴収されて政府歳入は増えたんだが、紙を代表とする行政に必要な道具が不足が深刻化した」

 

「こんなわけで政府は紙を調達すべく三菱を全力でバックアップした。

そのおかげで設立からたった3年で最高級の紙である和紙を開発した。

住友の製錬鉄でも16年、三井の富岡絹でも10年近くかかったことを思えば、これがどれだけ恐ろしい速度だったのかわかるだろう」

 

白板に当時の三大企業の主力産業と、そこから生み出された高級品を書いていく。ブランドであることは勿論だが、部材として用いれば生産効率が向上する。その二つの特性を備えているからこそ敬意をこめて”高級品”と人々は呼ぶ。

 

「計画経済が夢物語って分かりますね。だから日本やそれを横で見ていた友好国、特にロシアでは共産主義が流行らなかったんでしょうね」

 

「まだ話は終わってないぞ。

それから製紙工場が乱立し、その原材料の硫黄鉱山や林業にも大量の資金が投入された。このせいで国内に伐採所を建てられるスペースはほとんどなくなった。まあ禿山にならないよう気を付ける法整備がなされていたことも関係しているな」

 

「この政府の動きを見ていた各地の大学は、政府に似たような提言を個別にしたんだ。

このままでは、国内の資源を食いつくしてしまい経済成長が止まってしまう。木といった天然資源に限らず、労働者が足りなくなるというものだ」

 

「民間有能、政府無能」

 

「その大学を増やしたのも政府だからな。まあ大量の大学も紙不足の一因なんだけどね。

そういう経緯で政府は対外政策を講じる必要性に気が付いた。これまで大学は革新的な技術で産業を発展させてきた実績があるからな。各地の大学がそれぞれの地域の産業状況から類似した提言を行ったという事実は、ほぼ確実に起こりうる資源問題について政府に危機感を抱かせるのに十分だったって訳だ」

 

教師はここまでを急いで説明し、水筒の口を開けのどを潤す。

 

―――――

 

一息入れた後、教師は当時の大日本帝国の対外政策へと移る。

 

「ここで政府は二種類の外交方針を定めた。強硬策と友好策だ。

前者は武力や威信をもって土地を征服、あるいは保護国化するものだ。

後者は仲良くなって投資権を貰い、資源確保をしようとするもの。それと植民」

 

「どっちかでいいんじゃないですか? 全部狩るか協力だけなら分かりやすいですよ?」

 

「そこまで強くないし、こんな政府が外交上手だと思うか?

これまでオランダとロシア以外とはほぼ関わりがなかったんだぞ?

征服に関しては多分次の授業で扱うから今はパス。

今日はブラジルとの交渉を軽く紹介して終わりだな」

 

「ふふ……負の信頼がすごい……」

 

「当時の海軍は兵力輸送用と戦闘用の艦隊に分かれてた。

元々戦闘用だけだった所を、海外の征服のため徐々に輸送艦を増やしていく最中だった。

その戦闘艦隊を相手国に派遣し、その武威をもって話を聞いてもらうつもりだった。勿論、ブラジルを征服とかするつもりは一切ない。ただ、舐められてしまえば話も聞いてくれないと考えたんだ。日本だって黒船が小舟だったら要求を無視しただろうしな」

 

「へ~昔はそうだったんですね。ヤクザみたいだ。

ほら、ドス持って要求するってそれっぽくない?」

 

「まあ通信技術がそんなに無かった時代だしな。

そんな訳で、オランダから伝え聞いた南米の大国に艦隊を派遣した。

列強でもない上、西洋の国家から独立した背景からヨーロッパを脅威に思っているに違いないと推理したからだ。大国なら資源が出る場所も領土の中にあるだろうって寸法だ」

 

「だが、送り出した艦隊の数と構成が悪かった。

相手にとってみれば、地球の裏側から100隻全てが戦艦で構成された艦隊が前触れも無しに現れたんだ。エグイなんてもんじゃない……。まさに日本にとっての黒船来航みたいなもんだ。

雑な例えだが、現代日本に宇宙船の大群が突然あらわれたって感じだろうな。技術差もそうだが、一方的に言葉を知られているのも先生それっぽいと思うぞ」

 

「外交下手はずっと変わらないのか……」

 

「ついでに南北に分かれたアメリカ両方にも不安を与えてしまった。

アラスカの伝手からロシアが仲介してくれて事なきを得たが、国際社会での外れ者として悪目立ちしてしまった。不律分のルールを守れない国、分かりやすく言えば空気が読めない奴として印象付けてしまう事態だったな」

 

多数の外国が出てきたため教師は急いで簡易的な北米・南米大陸を描く。今回話題に上がった国々、南北戦争から分かれたままのアメリカ連合国やアメリカ合衆国、ブラジルを付け加えていく。

 

「肝心のブラジルだが、日本から貿易特権の付与や多額の献金を行って投資権を条約で5年間結んでもらえた。それすら出来なかったら何のために太平洋横断をしたか分からなくなってしまうから必死だったと航海日誌に記録されている」

 

「それは良かった。いや本当に良かったのか?

仲良くなるために行ったのに、実質恫喝じゃん」

 

生徒達はまだ近代的な啓蒙主義について理解出来ていないようだ。彼らが学んでいるのは、力を持つ国が自らの権益のために力を振るうことを辞さない時代。現代と違う価値観なのだから、仕方がない側面がある。だからこそ、近代世界史を比較的なじみのある日本から始めて良かったと教師は思う。

 

「良いか悪いかはブラジルに聞いてくれ。

だが、少なくとも日本では友好的な外交でこんな面倒が生じてしまったことから、武力に訴える方が早いんじゃないかという声が大きくなったとされている。それについては、また来週な」

 

教師が言い切り終わると同時にチャイムが鳴る。完璧な時間調整に教師の口角は自然と上がってしまう。

 




プレイ中:
・蝦夷等の属国化
現バージョンだと属国として開始。以前は植民が必要だった気がする。
多少は勝手に発展してくれるので助かる。北海道の資源が無くてもどうにかなるので、併合を後回しにしても困らない。

・京都
プレイミスで、そこだけほとんど発展していない。多分大坂や東海のつもりでクリックしてた。後から大量の芸術施設を作りまくる。
本作ではその失敗を盛り込んでいる。

・ガバ建設
金準備や建設に余裕が出来てプレイが雑になった。
今思えば百姓の駆逐が済んでいたのかもしれないし、給料の問題で人が集まらなかったのかも。

・ブラジルと海軍
海軍を派遣しないと関心つけられなくなってる⁉ ワンクリックじゃないの⁉
ゲームだと無問題だけど、戦艦大量派遣ってやばいよね。ペリー×100の来航とか歴史壊れる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。