ソードアート・オンライン〜英雄の影に英雄あり〜 作:静かな人
七十四層・迷宮区
左手にナックル、腰に刀を差した緑づくめの少年はカツン、カツンと前線を歩いているがその足音は少年が所属している《軍》のメンバーの鎧がガシャ、ガシャと鳴っていて少年の足音はほとんど聞こてない。そして足音の中にハァ、ハァと疲れた声が混じっている。
最前線に潜る猛者でも迷宮区に入ってかなりになるので疲れていないのは少年とその横のリーダーの証の緋色の布を装備しているこの6×3パーティーリーダー、コーバッツ中佐だけだ。
そんな所にリザードロードマンの群れが光りとともに現れる。合計10匹、武装はバックラーと刀の先が90度になろうかというくらい曲っている曲刀だ。
「ちょっと数が多いから俺もやるぞ」
「構わん」
コーバッツの許しを受け少年は大胆にも刀を抜かず走り出す。
曲刀の突きを少し横に避け、敵の刀身と自身のナックルを滑らせ、鍔の所で刀を跳ね上げ、左手で手を掴み後ろを向き、右手もリザードロードマンの腕を掴み、エセ背負い投げで仲間に向かって投げ飛ばす。
少年はすぐさま前を向き、自分の首を斬ろうと横薙ぎの斬撃に対して刀を抜き、曲刀の曲がった部分に刀を当て、曲刀を引っ掛けながら回転してまたも仲間に向かって投げる。
後ろから袈裟懸けに斬ろうとしている曲刀に気づき、左足を軸に回転している途中に刀に施された和風の龍の刻印が光る。ぴったり曲刀の曲がった部分に刀が当たり、曲刀が壊れる。そしてタックルで肉薄して、またも刀が光りリザードロードマンが宙に舞い、軍の斧をもった奴が始末する。
何故か少年は刀をを収め、その後刀を鞘から少しだけ出す。リザードロードマンを見据え、ダッシュで近づいてきたリザードロードマンが刀を振り上げた瞬間姿勢を低くすると鞘から光りが溢れ、バックラーの守備範囲外の太腿を斬る。怯んでいる所に光る刀身が再びリザードロードマンの体を何度か斬り裂く。
リザードロードマンの群れを倒して疲れてあくびをしていた所に安全地帯が見つかる。
中に人がいたが気にしなかった。俺たちに気づいたようで中にいた人が立ち上がる。
そんなに警戒しなくてもいいじゃないか、と思いながら顔を見ると全員知ってる顔だった。
「キリト!アスナ!クライン!」
名前を呼び走って行く。
「カイ、なんで《軍》が前線に?」
「レベルが十分に上がったからな、また攻略に来てるんだ」
追いついた皆は座っていてコーバッツだけがこっちに来る
「私は《軍》のコーバッツ中佐だ」
「キリト、ソロだ」
「君たちはこの先のマッピングを済ませいるのかね?」
「ああ、後はボス部屋だけだ」
数日後にはボス攻略だなと思いながら話を聞く
「では、そのマッピングデータを提案していただきたい」
ギョッとした。マッピングの苦労を知らねーのか!くそ、帰ったら軍規に【マッピングデータを他人から貰ってはならない】って追加してやる!
「中佐!それはダメだ!軍規にもマナー違反をするなって書いてるだろう!」
「マッピングの苦労を知らねーのか!」
クラインが俺が思ってたことを口にする。
「我々は情報や資源を一般プレイヤーに平等に与え、秩序を守り、何よりこ世界から全プレイヤーを解放するために戦っているのだ!故に君たちが協力するのは当然の義務である!」
前にこのことで長い討論になったことがあるので口出しせず、キリトの答えを待つことにする。
「わかった」
「おい、キリトそれは人が良すぎるぜ!」
「別にマップデータで商売しようってつもりはないさ。街に帰ったら公開するつもりだしな」
「協力感謝する」
コーバッツが鎧を鳴らし去って行った所で頭を下げ、謝罪する。
「すまねぇ、キリト」
「くっ……くっ…はははは!似合わないな、カイが頭下げてるなんて!」
キリトの笑いにつられてみんな笑っている
「俺は軍の一人として謝っただけでな…!」
何の解釈にもなってないことに気づいた
「でも、本当に似合ってないよ」
「その通りだ!」
アスナ、クラインの順に否定される
「みんなして言わないでくれよ…」
唐突にコーバッツの命令が放たれ軍の仲間が立ち上がる
「ボスにちょっかい出すつもりなら止めた方がいいぞ」
「それは私が決めることだ」
「行くぞ!」
「じゃあ、行って来る」
そう別れを告げ安全地帯から去る
少し進むとボス部屋の扉が見える。やっぱり禍々しさがえげつない。よし、帰るぞ。と言う前にコーバッツ中佐が言葉を発する
「作戦をもう一度確認する」
は?作戦?なんの?喉元まで出かかっていた言葉を抑え、コーバッツに質問する。
「どういうことだ?」
「今からボス攻略に挑むのだ」
「ああ?ボスはこの人数で勝てる相手じゃあねーんだ!」
「私の部下なら大丈夫だ」
説得しようとしたが諦めた。こいつは聞かない、俺が帰ると行ってもボス攻略に行くだろう。そして全滅する。俺はそれを阻止するため不本意ながらついて行くとしよう。
「わかった、それで作戦は?」
「うむ、敵の攻撃を盾役が弾き、できた隙を斧隊が攻撃する。参謀は遊撃を。取り巻きがいたらその数に合わせて人員を割く」
ごくごく単純な作戦だが普段もそこに隊ごとのスイッチがあるだけだ。
「わかった、全員やばくなったらすぐに転移結晶で飛べよ。」
無言で頷き、剣を抜き、斧を構える。
扉を少し押すとゴゴゴ、と音を立て開く。少し中に入ると唐突に回りに青い炎が灯り始める。
そして、青い炎に照らされたボスが青い炎と同じ色の目を開き、開戦の合図の雄叫びを上げる。
七十四層の迷宮区のボスの名は
《
コーバッツが縦一直線に振り下ろされた刀を盾で弾く。
その隙を予定どうり斧隊が攻撃する。
一回目は成功したが後がどうなるか、もし弾くのが失敗したときの為に俺は刀を抜き、構えている。
この後は二人目三人目と次と成功していく。
皆士気が上がりだんだん横に散開してきた。
「おい、散開するな!」
そう叫んだ時にはもう遅く、さっきまで縦方向の攻撃が横になりった為に反応は俺以外できなていなかった。多分囲まれ状態を感知したのだろう。その刀は皆を引きずりながらも動き続け、腰当たりで動きを止めると慣性の法則で軍の全員を自分の後ろに吹き飛ばし、軍は扉と反対側になってしまった。
「結晶が使えない!!??」
早くも戦意喪失し逃げようとしたやつがいたのか最悪なことを教えてくれた。
ジャンプで横薙ぎ攻撃を避けたカイは悟った。このままじゃ勝てない。今度こそ全員守る為に出し惜しみはしない。俺の秘密がなんだって言うんだ、それと人の命なら人の命を当たり前に取る。守れるかどうかはわからないが確実に確率は上がる。
ウインドを開き操作していく、操作が完了すると装備のオブジェクト化を待たずに走り出し、グリームアイズの正面に来る。オブジェクト化を完了を手、肘、膝、足の重みで感じると手を肩まで上げ肘を曲げ、指曲げ、手の平を相手に向ける。
「うぉぉらーー!!」
気合を入れ、腕を突き出し
「グルォォォォォオ!!?」
と機械じみた声を出す。次は剣拳闘志士スキル三連続踵蹴り「
硬直時間が終わる寸前で斬馬刀が振り下ろされる。体重を乗せ、一撃一撃をギリギリで弾いている間にカイはあることに気づいた。
なぜかアルゴのことを思い出している。
カイは産まれてこの方恋をしたことがなかった。
『恋ってどんなもんなんだ?恋バナを聞いててもよくわかんねーよ』
『なだろなーこう、いつもその人のことを思ったり、大切な時に思い出したりあとなんか、命の危機とか』
『そんな感じだけど命の危機ってなんだよ』
『なんか、病気で死にかけとか?』
『ふーん』
(この場の全員、守り切って帰ってこの気持ちが本当か試してやる!絶対帰る!神様、いや《カーディナル様》に誓ってな!)
決意を新たにして、青龍刀スキル「
「皆んな、逃げろ!俺が援護する!」
「ならん、戦え!戦うのだ!!」
コーバッツの命令が逃げることを妨げている。
恐怖で動けずにいる仲間に向かって刀が振り上げられる。
「うおぉぉぉ!!」
ジャンプして破壊専用スキル「破市之丞」で斬馬刀の中心から柄の方に寄ったところにあるポイントを叩き、減り具合の確認も含めて刀の軌道をそらす。横で不意に何かが光った、その方向を見ると口に溢れんばかりの紫の雷撃が溜まっている。そして一層口が光る、体を雷に焼かれ、壁に激突しかけたがが器用に壁に足をつけ、壁を蹴り、どこぞのヒーローのように再びグリームアイズに向かっていく。
「やってくれたな!!」
体術スキル「反転脚」を顔に叩き込み、刀を背中まで持っていき「岳龍」で縦一直線、斬り裂いていく。
地面に足をつけ、四割方減ったHPをポーションで回復させる、ボスのHPは五本ある内の五本目を半分削ったくらいだ。斬馬刀の耐久度は99.9%。ボスの武器は大体こんな物なので落ち込みはしない。
そこからはどうにかパーティーがまとまって、戦闘がまた始まった。逃げろと言ったが逃げなかった。そこからは当初の作戦通り戦った、危ない所は俺が防ぐことでHPバーを四本目まで減らした。だが、この時忘れていたことがあった。ボスのHP減少による攻撃パターンの変化だ。
「グルォォォォ!!!」
咆哮の中、振り降ろされた刀は盾役を弾き飛ばした。
俺の方に降ろされた刀を弾く、俺の体も後ろへ飛んだ。
パワーが段違い、さっきの調子でやっていては殺られる。
「仙龍」突進系スキルで一気に近づき腹を突く。
それにも関わらず拳を振り下ろしてくる。後ろに飛び退き、距離を取ると刀が俺に向かってくる。
それから5分ほど経っただろうか。状況はジリ貧。パーティーがまた怖気付き、戦いを止めた。一気に強くなったグリームアイズはヘイト値、タゲという概念がないのか、攻撃してる俺以外の腰の抜けた奴らにも矛先を向ける。
圧倒的不利
それしか言葉が浮かばなかった。剣道の試合で相手を倒す方法は相手を立ち上がれなくすることしかないのに、自分は自分以外も打たれてはいけない物が17個ある。そんな状態だ。
グリームアイズが顔を突き出し、口を開けると雷が口の中に貯めている。怯ませるのが間に合わない、そう思ったカイはグリームアイズの口の前に飛び雷撃を一身に受けた。
(さっきみたいにまた壁を蹴飛ばして、突っ込んでやる!
体を回転させて、足で壁を捉える…!)
何故かカイの体は背中から壁に叩きつけられた。
(えっ?なんだ?)
何故か体が動かない。見るとHPバーが黄色に点滅していた。麻痺か…!かなり麻痺耐性は上げてたんだけどな!
解毒ポーションを飲み干すが体はまだ動かない。
(なんで?!動けよ体!動け!頼む動いてくれよ…!これじゃあ、守れないじゃねーか………もう、目の前で人が死ぬのはごめんだ………!)
そのあと二人死んだ、何故かグリームアイズは俺を攻撃してこない、まるで仲間がやられているのを見せつけるように。
カイの精神は絶望で完全に麻痺していた。
そんな中、声が聞こえた
(誰かの声?グリームアイズが攻撃を止めた?後ろを向いて拳を振り抜いた?)
グリームアイズの股の間からアスナとキリトが見える。キリトがグリームアイズと打ちあっている間にクラインたち、《風林火山》のメンバーがやってくる。
「カイは生きてるぞ!なんか変な格好してるけど!」
駆け寄ってくるクラインに麻痺のことを伝えなければならない
「もう、大丈夫だ!」
「クライン…キリト…に口……からの雷…撃は…麻痺だと…伝えてくれ」
「わかった!」
麻痺で喋るのもままならぬ状態で担ぎ出される
その後はアッと言う間だったキリトが二刀流を発動させ十六連撃を食らわせ勝った。その場に精神的な疲労で倒れたキリトにアスナが寄って行く。
何かがおかしいことに直感的に気づいた。麻痺で思うように動かない体か?違う。何か雰囲気がちがう違うのだ。ボス攻略の勝鬨か?違う。何か異様だ。どんよりした空気が漂っている。その原因はなんだ?
カイはそれに気づいた時恐怖した。【congratulation】の文字が出ていない!回りの炎も青いままだ!ゴゴゴと音が聞こえる。どうにか後ろを向くと扉が閉まりかけている!
皆もそれに気づいたようで扉の方に駆けつける音が聞こえる。もう一度前を向く。
キリトを抱きしめているアスナもキリトと一緒に不安そうに扉の方向を見ている。キリトたちの背後に何か見える。
光の欠片?ちがう、ポリゴンだ!
俺の視線に気づいたのかキリトが後ろを振り返る、ポリゴンは形を取り始めている、キリトがまだ終わってないとわかったのか立とうとするがすぐに倒れる。
ポリゴンが敵と化した。人型で名前は《ダークナイト・チーフ》意味は暗黒騎士長だろう。HPバーは四本。体の大きさが異様だ。冠詞の「The」がついてボスに違いはないのだが170㎝くらい。装飾がなされた黒い鎧。兜もかぶっていて目の所は見えない、肌が露出している部分と言えば口と鼻くらいだ。そして武器は腰の剣だろう。
ダークナイトは腰の剣をキィィンと音を立て抜く。アスナも動揺して動けていない。
さっきから動かそうとしているのに体が思うように動かない。感じからしてもうすぐ解けるはずだ。HPバーを見るとその瞬間に黄色の点滅が止まる。
足で床を蹴り、敏捷値を全開にして走る。奴の真っ黒な剣は何か不気味な物を纏っている。
(得体のしれない奴は止めるより怯ませるに限る)
青龍刀を抜くのには時間がかかる、剣拳闘士スキルでやるしかない。走りながら1秒ほどの思考の結果、剣拳闘士スキル突進肘打ち「
発動させるためキリトたちを斬る剣を振り上げているダークナイトの二歩手前で肘を相手の方向に向け、手で支えそのまま突っ込む。一歩のところで気づいたダークナイトは顔を上げた。その顔に肘…肘当てがめり込み、五メートルほど吹っ飛ぶ。
「アスナ、キリトを連れて下がってろ!」
今回も何人か守れなかった。だが今は嘆いている場合じゃない、まだ守れる命があるなら俺はそれを救う。
土煙の中から俺と同じくらいの身長の影が立ち上がる。
オリジナル展開に入りました。始めの方のカイちょっとチート気味でしたか?意見下さいお願いします