サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。 作:青いカンテラ
「話は聞かせてもらったわ!」
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地獄絵図。まさにそう言った方がええような光景が広がっとる。
『う、うわぁぁぁ! 来るな! 来るなぁぁぁ!』
『あっははは! ネズミのように逃げ回ってもぉ無駄、無駄無駄無駄ァッ! お前も宇宙の塵の一つにしてやるってんだよ!』
右を向けば鞘でもあるバスタードメイスから中身である大太刀を抜いたマルコシアスが百式を追い回し、
『やめろ、やめてくれぇぇぇ!』
『なに、いまさら命乞い? 聞くわけないでしょそんなの。潰れて死ねっ!』
左を向けばベルフェゴールのストライククローに胴体を挟まれたリゼルが悲鳴を上げている。
……なんでや。なんでこうなった。
頭を抱えそうになってるウチの前で、テスタメントが怯えたように指をさす。
『なん、だ、なんなんだお前らは!?』
そんなんウチが聞きたいわ。
-01-
「模型部は廃止とします」
「……はぇ?」
半ば死刑宣告のようなその言葉に、ウチは……サカイ・マキナは、たいそうなアホ面をしてたと思う。
場所は生徒会室。放課後に呼び出されたウチは、ご立派なデカい机の上で両手を組んでる生徒会長さんに、単刀直入にそんなことを言われた。
はいぶ……背部……いや背中やないねん。廃部や廃部。漢字にしたらたった二文字になるその言葉は、ウチの思考を完全に停止させるのに十分やった。
いやいつかはこうなるかもとは思ってたけど、思ってたよりもずっと速いというか、心の準備っちゅうんが全然できとらんタイミングなんやけど。
「いや、廃部って! どうしてそんな……」
「理由はご自身がよくお分かりだと思いますが? それともあえて言いましょうか。模型部は現在、部として存続するための条件を全く満たしていません。部員は部長であるあなた一人だけ、部としての活動実績もない。このような部活動とは名ばかりの部を、我が
「ぐぅっ……!」
正論。まったくの正論や……。けどな、生徒会長さん。有史以来正論が人を救ったことはないねんで……! と喰って下がったところでスッパリと切り捨てられるんがオチなんはわかる。
こっちとしては反論の余地なんかないし。いやまったく仰る通りです……としわくちゃ電気鼠みたいな顔するしかないねんな。部員がウチ以外おらんのも、活動実績らしい実績もないのも、事実なんやから……! 自分で言ってて泣けてくるわほんまに。
「……ですが、模型部が過去に大会入賞などの実績を残してきたのは確かです。よって期限までに部員を後二人、入部させることができれば当面の間は模型部廃止を保留にするというのもやぶさかではありません」
「せ、生徒会長さん……!」
「これは生徒会から模型部へ与える、今回限りの猶予です。期限内に部員を確保できなければ、その時は模型部の廃止は免れないと覚悟しておいてください」
「は、はい! それだけでも十分です! おおきに生徒会長さん! それじゃあ!」
一礼して、生徒会室を後にしたウチは……部室で机と一体になるんやった。
-02-
「それで? 部員は集まりそう?」
「聞かんでも分かるやろ。収穫ゼロや」
「あはは、ウケる~」
ウケへんわ! とツッコミを入れる気力もない。生徒会室でのアレコレから数日。なんとか部員を確保しようとしたけど、結果は全然。ウチはまたも部室の机と一体化する羽目になってもうた。
今はもう七月も半ば。当然のことながらみんなどこかしらの部活に入ってて、いまさら廃部秒読みな模型部に来てくれる物好きな人なんかおらへん。こんなことならもっと熱心に勧誘活動しといたらよかったわ。なんて、後の祭り。
世の中は『ガンプラバトル』のおかげで、まさに大ガンプラブーム時代! みたいになっとるっちゅーに、その熱狂なんて関係ないで? とばかりに模型部に閑古鳥が鳴いてるのは、それだけこの学校にガンプラ好きがいないのか、はたまた個人で楽しむだけでええからと満足しとるんか……。
はぁ……もしこのままウチの代で模型部廃止とかになってもうたらどうなるんやろ。そんなん考えたくもないけどな……と、ウチに後を託してくれた先代の部長さんの顔を思い出す。
あの人、ゆるくてふわふわ~って感じやったけど、笑顔とは本来……みたいなアレもあったしなあ。もしウチのせいで模型部無くなりました、なんて知られたら……。くわばらくわばら、堪忍やでほんま。
『オレが……負けた……? こんなフザけた女に……?』
『ふ、ふふ……はははは! どうだ、喰ってやったぜテメェのハイボクをよぉ!』
「ってか、ミオ。あんたはさっきから何を見とるん」
ゆるゆると顔を上げて、さっきからスマホで何かの動画を見てたらしい友人……ヨノモリ・ミオに聞く。するとミオは「ん」とその画面をウチにも見えるようにする。
そこではお嬢様然とした見た目で、お嬢様とはほど遠いセリフを口にしているダイバーが勝利宣言をぶち上げてた。見た目は美人なんに、出てくる言葉はおよそ見た目とは程遠いものばかり。モザイクされてるけど中指立てとるし。蛮族やん。見た目とのギャップエグいな。
「なんやこれ」
「ガンプラバトル動画」
「そんなん見たらわかるわ」
「あのオーガを負かした蛮族令嬢のバトル動画だって。まあこれ結構前のやつっぽいけど」
「蛮族令嬢て」
そのまま動画を見るんに戻ったミオを見て、ふと思い出す。
「あ、そやミオ。アンタ確か帰宅部やったやろ。模型部入らへん?」
「えー? 家の手伝いがあるから無理だよ」
「そこをなんとか! ウチの貞操助けると思て!」
「なんで貞操……?」
そらもうあるんよ。人に言えんようなことが。
「なぁミオ~! アンタが頼りなんよ!」
「……そこまで言うなら、仕方ないなあ。ボクも家のことがあるから、時間が空いてたらね?」
「おおきになミオ! やっぱり持つもんは友だちやわ!」
「ていうか、マキナの頼みなら、そんなに必死になんなくても聞いてあげるのに……」
「ん? なんか言うたか?」
「なーんにも。それより、あと一人はどうするのさ。生徒会長に言われたのは部員二人確保なんでしょ? ボクを入れてもあと一人足りないじゃん」
「た、確かに……」
棚から取り出した入部届にさらさらと記入しながら、ミオが言う。これで模型部の部員は二人になったけど、部の存続のためにはあと一人必要。これがヨウカイイチタリナイってやつか……。
「あー、明日からまた部員探さなあかんかー」
「あはは。ガンバレー」
「なにわろてんねん。ミオも模型部に入るからには手伝ってもらうで」
「はいはい。まあ適当に……」
「話は聞かせてもらったわ!」
スパァァァン! と部室のドアが勢いよく開かれる。そこにいたのは、車椅子に乗った白髪の女の子。
「模型部に入部希望よ! いいかしら!」
なぜか目を閉じているその女の子は、大声でそう言った。……え、どちらさん?
―――To Be Continued