サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。 作:青いカンテラ
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「―――やられた」
美術部とのガンプラバトルの日。模型部の部室に着いたウチは、棚のガラス戸が開けられてることに気がついた。そして、ガンプラがいくつか無くなってることにも。
その棚には、模型部の歴代部長たちがガンプラ公式大会やショップ大会で勝ち得てきたトロフィーや賞状の他に、製作してきたガンプラも置いてある。
それが無くなってるってことは、誰かが持ち去って行ったってことや。一体誰がと考えまでもなく、下手人はおそらく美術部やろうな。
ウチら模型部とのガンプラバトルを控えたこのタイミングで、しかも無改造のガンプラには目もくれてへん。
ガンプラは一体作るにもそれなりに時間も手間もかかる。だから既に完成していて、なおかつ手も加えられているガンプラを狙うというのは理にかなっとる。
……倫理観のなさに目をつむればやけどな。これもガンプラバトルに勝つために手段を選ばんことの結果なら、本当に評判通りの人間ってことやね。あくどいわあ。
「マキナ? どうしたの」
「何かあったのかしら」
「ミオとルベリアか。実はな……」
途中で会ったのか、ミオがルベリアの車椅子を押しながらやって来た。二人に棚のガンプラが無くなっていることを話す。そしておそらく下手人は美術部だということも。
「人が丹精込めて作ったガンプラを盗んでいくだなんて、許せないわね」
「……これはさすがに一線を超えてる。いますぐ生徒会なり警察なりに通報した方がいいと思うけど?」
「……いや、ガンプラバトルはするで」
「どうして?」
ミオが純粋な疑問を投げかけてくる。それも最もや。普通はそうするのが最善ってものやからな。けど……
「今ここで通報したら、事が大きくなりすぎる。そうなったら面倒やろ? 下手したらウチら模型部の活動にだって支障が出るかもしれん」
部員確保して廃部は保留にしてもらったとはいえ、模型部はいまだに吹けば消えるような弱小部であることに変わりはない。ここで何か大事にでもすれば、その余波で今度こそ消し飛びかねん。
だから待ったをかける。本当はよくないってわかってるけどな。
「それにな……奪われたもんは、奪い返す。それが模型部の流儀なんや」
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「ふふふ、よく逃げずに来ましたね」
「逃げたりするわけないやろ。そっちこそ、バトルに勝てそうなガンプラは用意できたんか?」
「当然です。美術部の部長をしていると、色々なところにツテができるものでしてね。そのツテを利用して我々もガンプラを用意してきましたよ」
そう言って、ポーチから見覚えのあるカスタムガンプラを出して見せる美術部部長とそのお付きらしい二人組。
ツテだのなんだのとよく言うわ。どう見たってウチの模型部から持ってったガンプラやないかそれ。
……場所は変わって、ガンダムベース・オオサカ。GBN用の筐体が並ぶ一角にウチとミオはおった。ルベリアは模型部にある筐体からログインするから、ここにはおらんけどな。
「……そのガンプラ、模型部から盗んだものだよね?」
「貴様ぁっ! 我ら美術部を愚弄する気か!」
「人聞きの悪いことを言ってもらっては困りますね。このガンプラは我々が用意したものです。それとも盗まれた証拠があるとでも?」
お付きの二人が食って掛かる。まあ、そういう反応になるわな。ガンプラを盗み出したとして、はい、盗みました。なんて素直に言うとは思えんし。
「あなたたち、落ち着きなさい。まったく、人を盗人扱いするとは……。これだから成り上がり企業の出は育ちが悪い」
「……っ」
「気分を害したお詫びに、このガンプラバトルで我々が勝ったら、模型部は廃部にする……というのはどうでしょう? どうせロクに部員もいないような弱小部だ。部室だけでなく、残ったものも我々が有効活用してあげますよ」
美術部部長はメガネをクイッとさせて「我々の活動資金として、ね」と、そう言った。
「お前……!」
「ええで。乗ったるわ」
「マキナ!」
「ミオ、勝てばええ。それだけやろ?」
「……わかった。勝とう」
それぞれに分かれて筐体に座る。あんなやつらに負ける気なんかせぇへん。人のガンプラを盗み、模型部を蔑み、そしてミオを育ちの悪い成り上がり企業の出、なんて馬鹿にしよったやつになんか、負ける気なんかせぇへん。
「行くで、シャルトーネ!」
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バトルフィールドは宇宙。右手には地球を見下ろし、左手にはデブリ帯があって、中央が開けているよくあるタイプやな。
このフィールドはそのまま中央で会敵するもよし、デブリ帯に隠れて狙撃するもよしとなっとる。
ウチらは今、そのデブリ帯のデブリに紛れて移動しとった。ここからの狙撃についてはウチのシャルトーネと、ルベリアのマルコシアスは長距離狙撃できる装備を持っとらんからあまり関係ないけど、遮蔽物のない中央を進むと狙い撃ちされる危険があるからな。
『長距離攻撃ならボクに任せてよ。そのために大型レールガン持って来たんだから』
「えらい助かるわあ。ウチもルベリアも遠距離は届かんからな」
ミオの新しいガンプラ、ガンダム・ベルフェゴールラージュが、両手に持った大型レールガンを構えて見せる。
この一週間という短い期間で作られたとは思えんほどの出来栄えをしたその機体は、この中で唯一の長距離攻撃武器を持っとった。
ガンダム・ベルフェゴールラージュ、ミオ
どこまで元のパーツを削れば、それはベースキットだと言えるのか……。テセウスの船的な疑問やね。
『……前方に高エネルギー反応、来るよ!』
ミオの言葉の通りに、高エネルギーのビームがデブリ帯の横を通り過ぎていく。狙いが大雑把すぎる。ワンチャン狙いのブッパか。
『開幕ブッパは……命取りだよ!』
その一発だけでミオにとっては十分やったらしい。射線から敵の位置を割り出したミオのベルフェゴールラージュが、大型レールガンを向けて発射する。
電磁加速された徹甲弾が宙を切り裂きながら飛翔し、正確に敵を射抜く。遠くで一つ、爆発の華が咲いた。
『マユのマークⅡがやられた!?』
『どこから撃たれたの!?』
『狼狽えるな! どうせマグレの一発、早々当たりは―――』
『もう、一つ!』
敵が慌ててスラスターを吹かした一瞬を見逃さず、大型レールガンを撃ち込む。また爆発が一つ起こった。
……まだ接敵してへんし敵もはっきりとは見えてへん距離やけど、よう当てたな。ミオって実は狙撃の才能あったりするんかな?
『よく見えるわね。
『別に、これくらい普通でしょ』
「普通ちゃうわ」
思わずツッコミを入れる。なんかFPSを極めた人になると、米粒よりも小さい敵の頭をヘッショできるらしいけど、そんな超絶技巧は普通とは言わへんねん。
そのままデブリ帯の中を進んでいくと、中央に陣取った敵の大部隊が見えた。十機……いやざっと見ても二十機以上はおるな。
大半は素組のガンプラっぽいけど、その中でも一際目立っとる機体がおる。全身を金色に輝く装甲で包み、アクセントに赤色が入った重武装の機体……。
「ゴルド・ディアブル……」
何代か前の模型部部長が心血を注いで作り上げたというガンプラ。黄金の悪魔。その名を持つ機体は確かに、総大将の機体とするにはぴったりやろうね。
『そんな目立つ機体を棒立ちで……!』
ミオが大型レールガンをゴルド・ディアブルに向けて発射する。電磁加速された徹甲弾はしかし、両腕がMGサイズのタイタスになっとるストライクが割り込んできたことで弾かれる。
『不意打ちとは、品がないですね』
『品とかどの口が言ってんの?』
「……なんやえらい大勢の団体さんやね。たった三人相手に数の暴力かいな」
『ククク……。獅子は小物を狩るにも全力を尽くすものなのですよ』
「獅子、ねえ。ウチには虎の威を借りて手下も揃えた小心者の姿しか見えへんけどな」
ウチの言葉に、モニターにポップしとった美術部部長の顔が怒りで赤く染まる。
『減らず口をっ! こちらは三十名、貴様らはたったの三人! いくら虚勢を張ったところで、この数の差の前では貴様らに勝ち目などない!』
『わかったならさっさと降伏するんだな!』
『お前たちのガンプラも私たちがしっかり有効活用してやるよ!』
ゴルド・ディアブルと、お付きのストライクタイタスとグフのカスタム機がまくし立てる。その間を、一発の弾が通り過ぎる。
『……そんな御託はどうでもいいのよ』
笑顔のルベリアが、マルコシアスの腰部レールガンを撃っていた。
『これはガンプラバトルでしょう? なら最後の一人になるまで戦いましょう。今のマルコシアスは血に飢えているのよ……あなたたちの血を捧げてくれるかしら?』
『……やってしまえ!』
美術部部長の命令により、周りにいたガンプラたちが一斉に攻撃してくる。ウチらはデブリ帯から飛び出し、それぞれ別の方向へと飛ぶ。
『ボクはストライクの方を相手するよ』
『それでは
二人はお付きの方に向かったか……ならウチは。
「金ぴかの相手か。部長同士、ガンプラバトルでの交流といこうやないか」
『交流? これは狩りなのですよ。弱小部を狩るためのね!』
連装ロケット砲が増設されたオオワシの高エネルギービーム砲を放つ。それをひらりと躱して、GNサブマシンガンを両手に持って敵の中に飛び込む。
「なら見せたるわ。弱小部の底力をな!」
―――To Be Continued