サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。   作:青いカンテラ

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Episod.02完結なので初投稿です。


「……独りよがりやったアンタの、負けや」

 -29-

 

『ははははは! さっきまでの威勢の良さはどうしました? 逃げてばかりでは私には勝てませんよ!』

「囲んで撃ちまくっといてよく言うわ……! っとぉ!」

 

 文字通り全方位、四方八方から飛んでくる攻撃をなんとか避ける。相手は十人、こっちは一人。もちろん避けきれん攻撃もあるけど、それはGN複合装甲で受けて何とか耐える。

 

 ゴルド・ディアブル以外のガンプラはみんな素組のガンプラやから、火力自体はそれほど高くない。そのおかげで今は何とか耐えれてるけど、それでも攻撃が当たればダメージは蓄積される。

 

 それに避け続けるのも集中力がいる。このままじゃウチの集中力とシャルトーネの耐久値が削り切れるのが先か、相手の弾切れが起こるのが先かになってしまう。

 

「この……!」

 

 GNビームマシンガンをゴルド・ディアブルに向けて撃つ。ペレット状のビームが金ぴかの装甲に当たった。

 

 けど、ビームは全て弾かれてしまう。ヤタノカガミ……対ビーム射撃に対しての防御力だけで言えばGBN最強の装甲……。

 

 それがあの金ぴかガンプラの装甲や。……けれどもそれは、ビームを反射するという本来の性能は発揮できてへん。それもそうや。

 

 GBNでヤタノカガミの性能を完全に発揮するためには気が狂いそうになるほどの丁寧な表面加工が必要で、さらにはスキャンする時にも指紋一つ埃一つ付いとったらアウトになるほどの繊細なモノ。

 

 あれだけ素手でべたべた触ってればヤタノカガミはその能力を完全には発揮できん。それでもGNビームマシンガンのビームくらいなら弾いてしまうあたり、元の性能の高さが窺えるってものやな。

 

 その点で言えば、あの金ぴかハイペリオンはそれだけ繊細に作られて、めっちゃ神経削りながら扱われてるってことにもなる。

 

「やっぱり効かんかあ……! けど、これなら、どうや!」

 

 武装スロットを選択。GNビームマシンガンをゴルド・ディアブルに向ける。不完全とはいえ、ビームはヤタノカガミに弾かれてまう。

 

 けど、ビーム以外に対しての防御力は普通の装甲と大して変わらん。それが、ヤタノカガミの弱点や!

 

 ボシュン! という乾いた音と共に、GNビームマシンガンの銃身下部に取り付けられていたNGNグレネード・ランチャーから弾が発射される。

 

 それは真っすぐにゴルド・ディアブルに向かうと、肩アーマーに突き刺さって爆発を起こした。

 

『なっ、私のガンプラをよくも!』

「アンタのガンプラやないやろそれ!」

 

 ほんまは腕も持っていきたかったけど、さすがは何代も前の部長が作ったガンプラ。肩アーマーが吹っ飛んだだけで、腕の可動には支障がなさそうに見える。頑丈なフレームしとるなあ。

 

『いいや、私のガンプラですよ! 手に入れるのは苦労しましたがね……。まったく、警備が無能で助かりましたよ!』

「ああ、やっぱりな! 下手人はアンタやったわけや! このバトルが終わったらアンタらを風紀委員会に突き出して、ガンプラも返してもらうで!」

『ククク、()()()()()()()()()()()()()()ですか……。しかしアレも証拠が無ければ動くことはできない! この私が模型部などというカビの生えた弱小部の部室に侵入して、ガンプラを盗み出したのだという証拠が無ければ無駄なこと!』

 

 めっちゃ喋るやんこいつ。しかも自分が模型部からガンプラ盗んだ下手人ってことを認めるようなことをペラペラと。

 

「……ええんか? そないなこと言っても。今のを証拠にすれば風紀委員会は動くで?」

『構いませんよ。どうせ弱小部の苦し紛れの言い分など、誰も聞くはずがない。そしてあなたをここで打ち倒してしまえば、模型部の部室も、そこに残されているガンプラもすべて私のものとなる! そしてそれを元手にして美術部は再び、栄光を手にする!』

 

 ゴルド・ディアブルがビーム・ライフル、メガ・ガトリングガン、両翼の連装ロケット砲、高エネルギービーム砲、両脚の六連装ミサイルポッドによるフルバーストをする。それをとっさに展開したGNフィールドで防ぐ。

 

 しかし、流れ弾が他のガンプラたちを貫いて爆散させていく。それはジムⅡだったりドム(GQ)だったりに乗る美術部部員たちの機体たちや。敵も味方も関係ない乱れ撃ち。フレンドリーファイア注意どころかフレンドリーファイア上等な弾幕……。こいつ無茶苦茶しよるなあ!

 

「っ! 味方ごと!」

『味方ぁ? こいつらは手駒ですよ。我々……いや、私のために働くねぇ!』

「なんやと? アンタ、部員のことを何やと思ってるんねん! 共に美術を志す仲間やないんか!」

 

 ウチの言葉に、モニターにポップした美術部部長が邪悪に顔を歪ませる。

 

『ハッ、こんなグズどもが? デッサンは拙い、色使いは単調、向上心もなくただゴミの山を積み重ねるだけのカスどもでしかない! こんなやつらのせいで、我々は、百合星の伝統ある美術部はあの忌々しい百合籠に後塵を拝している! ……しかし、カスにもカスの使い道がある。この私のために働くという栄誉ある使い道がね』

 

 フルバーストをしながら、仲間であるはずの他の美術部員たちのガンプラを破壊しながら、そんなことを言う美術部部長。

 

 吐き気を催す邪悪、なんて言葉があるけど、こういうやつに言うんやろうか。そして相手が邪悪であるなら、ぶっ飛ばすのに遠慮なんかいらへん。

 

「……安心したわ、美術部の部長さん。アンタが心置きなく殴れるクズでな! トランザム!」

 

 シャルトーネの切り札を切る。GNコンデンサーに蓄積した高濃度圧縮粒子を全面開放。その全性能を三倍近くにまで引き上げたシャルトーネが、ゴルド・ディアブルの弾幕の隙間を縫って急接近する。

 

『速い!?』

「貰った!」

 

 GNビームサーベルを抜き、胴体に叩きつける。トランザムの効果が乗って強化されたビーム刃がゴルド・ディアブルを切り裂く……ことはなかった。

 

 その寸前に、装甲に阻まれて止まってしもうた。……見覚えのある黒っぽい紫のオーラをまとった装甲に。

 

「……っ! これは、ブレイクデカールか!? アンタってやつはどこまでガンプラを愚弄すれば気が済むんや!」

『ははははは! 勝てばいいんですよ、何を使おうがねぇ!』

 

 

 

 -30-

 

「アッハハハハハハ! ぬるい! ぬるいなぁ! 欠伸が出ちまうくらいにぬるい!」

 

 数にして一対十。それだけ見れば圧倒的に不利な状況で、(わたくし)はマルコシアスを飛翔させていた。

 

 素人丸出しな敵の弾幕の中を突っ込み、ナノラミネートアーマーの前では豆鉄砲同然なビーム・ガトリングガンを撃ちまくっているヤクト・ドーガの背後に回って、スラスターを破壊。

 

 それを盾にして別の機体へと向いて突撃する。相打ちを嫌ってか、それともお仲間だからか、攻撃を躊躇するギラ・ドーガにヤクト・ドーガをぶん投げて、受け止めて動きの止まったところを二機とも大太刀で一閃。宇宙に爆発の華が二つ咲く。

 

「ほらほらほらぁっ! (わたくし)を倒してやろうという気概のあるやつはいないのかぁ!? このままじゃ全員なます切りにしちまうぞ!」

『こいつー!』

「反動の制御がまるでなっちゃいねぇなぁ!」

 

 ジャイアント・ガトリングの射線がぶれまくっているガンダム五号機に急接近。慌ててビームサーベルを抜こうとするけれど、遅い。ナックルガードを反転させてクローにし、コクピットをぶち抜いてやる。

 

 パイロットをキルされたことでガンダム五号機は沈黙。(わたくし)の動きが止まったのを好機と見たか、ハイザックがザク・バズーカの狙いをつける……。けれど、照準を付けるのにもたついている。

 

 ……へっ、素人が! クローを引き抜いて、今度はハイザックのコクピットに大太刀を突き立ててやる。パイロットキルにより沈黙。

 

 敵の数は多い。多いけれど、それだけだ。量はあっても質の方はまるでダメ。この(わたくし)の要求する基準には、どうしたって届きそうにない。それも当然よね。マキナが言うには、今戦っている美術部の部員たちは、ガンプラバトルについては素人揃いだという話だもの。

 

 そんな人たちに、(わたくし)の求めるガンプラバトルをしてみせろ、というのが酷というものなのでしょう。それでも誰か一人くらいは光るものがあれば、と思うのだけれど……。

 

『こ、このー!』

「見えてんだよ!」

 

 サブアームを展開して、後ろから斬りかかってこようとしたゼイドラの首を短剣で刎ねる。向かってこようとした勇気だけは褒めてあげるけれど、その手にある剣は及び腰で振るうものではないわよ。

 

『相手はたった一機だぞ! 何をしている! 撃て、撃て!』

『け、けど……副部長……。撃ったら味方にあたります……』

『黙れ! 貴様ら落ちこぼれのクズどもは我々の言うことを聞いてさえいればいいんだ! 口答えするようなら『指導』するぞ!』

『ひ、ひぇ……』

 

 ……落ちこぼれだの出来損ないだの、(わたくし)の嫌いな言葉だわ。それは自分に向けられた言葉でないとわかっていても、オープンチャンネルで流れてくる誰かへの暴言というだけで気が滅入って来る。

 

 まったく、ただでさえ歯ごたえのない相手ばかりだというのに、これ以上(わたくし)の気分を落とすようなことをしてもらわないでほしいわね。

 

「誰かにそのようなことが言えるほど、あなたは強いのかしら? ……なぁ、そこのグフカスタム乗りの副部長さんよぉ!」

 

 グフカスタム……と言っても、それらしいのは頭部と両腕くらいで、胴体も足もバックパックもまるっきり違う機体のもので、全身が赤く塗られている……に突撃する。

 

『くっ、速い! だが、所詮は近接戦しか能のない機体……!』

 

 近づけば離れる、とばかりに即座にバックブーストを吹かして後退しつつ、左腕にマウントしたガトリングシールドを撃って来る。けれどそれも、マルコシアスの装甲を叩くだけで大したダメージにはならない。

 

「おいおい、おいおいおい! 偉そうに言ってたわりには逃げ腰じゃあねぇかよ副部長さんよぉ!」

『くっ、ガトリングが効かないのなら……!』

「おせぇ!」

『なに、うわっ!?』

 

 右手のロケット・ランチャーを向けてくるが、狙いをつける前にマルコシアスの腰部レールガンを発射。ロケット・ランチャーの弾頭ごと爆発。意識が一瞬、逸れた。

 

「―――チェストォォォ!」

 

 一瞬。けれどもガンプラバトルでは致命的な隙となる。それを見逃さず、急接近して上段に構えた大太刀を振り下ろす。相手はとっさにガトリングシールドで防御。

 

 しかし、その上から両断。……チッ、頭からかち割ってやろうと思ったのに、狙いが逸れて左腕しか持っていけなかったか。

 

 それはそれとして、刃をメタルエッジ仕様にしておいた大太刀はいい切れ味ね。金属パーツだからちゃんとスキャンされるか分からなかったけれど、どうやらきちんと反映されているみたいでよかった。

 

『シールドごと……バケモノが……! だが!』

「っ!」

 

 ぞわりとした感覚に、その場から飛び退く。直後、高エネルギーの一閃が走り、マルコシアスの胸部装甲に傷を付ける。

 

『フン……。浅いか』

「……ブレイク、デカール……」

 

 いつか見たことのある、黒っぽい紫のオーラに包まれているグフカスタム。それは間違いなく、あの時のマスダイバーと同じもの。ブレイクデカール(私の楽しみをぶち壊すもの)

 

 ビームに対して高い防御耐性を持つナノラミネートアーマーのマルコシアスに、ビームサーベルで傷を付けたということは、あのマスダイバーのカスのリゼルと同じく攻撃力が異常強化されているのだろう。となれば、防御力に関しても同じく異常なほどに強化されていると思っていいだろう。

 

「……っ、やっぱり硬い……!」

『ふはははは! 無駄だ! このパワードグフにそんなナマクラなんぞの刃が通るか!』

 

 何度か大太刀で斬りつけるけれど、あの時と同じく弾かれる。そして無造作に振るわれる向こうのビームサーベルは、ナノラミネートアーマーすらも溶かしてしまう。何から何まで、あの時の再現のようだ。

 

「ハッ、上等……。あの時のリベンジ、その試し切りだ……」

『何をしようが無駄だと言っている!』

「不正ツール使ってるだけのカスが、イキるな」

 

 大太刀をバスタードメイスの鞘に収め、腰だめに構える。磁力操作。エンチャント。

 

 バチバチ―――と、バスタードメイスに紫電が走る。鞘にエネルギーが蓄積され、解放されるのを今か今かと待ちわびている。

 

『死ねぇ!』

 

 パワードグフなる機体が、ビームサーベルを突き出してくる。ブレイクデカールによって異常強化されたそれは、マルコシアスのナノラミネートアーマーをたやすく溶かして(わたくし)は宇宙の塵となるのでしょう。

 

 それが実力の差によるものであれば、いい。それはひとえに(わたくし)の実力不足による敗北だから。どんなに悔しくたって、バトルが終わればグッドゲーム! とお互いの健闘を称えられる。

 

 でも、チートはダメ。それはお互いの実力による勝負ではないから。それは(わたくし)のたった一つの楽しみを奪うことだから。だから殺す。そんなものに頼っているようなやつは。そんなものでイキっているようなやつは。

 

(わたくし)の楽しみの邪魔するやつは―――」

 

 朝日奈御流合戦礼法『疾風』が崩し。

 

「―――腹掻っ捌いて死ね」

 

 電磁抜刀(レールガン)―――『天雷』

 

『……は?』

 

 メタルエッジ化によって強度と切れ味が増した大太刀が、電磁抜刀されたことで圧倒的なスピードも乗せて宙を切り裂く。

 

 (わたくし)に突き立てられようとしていたビームサーベルごと断ち切られたグフの胴体が、左右にズレる。一拍置いて、爆散。

 

「……」

 

 残心を解き、バスタードメイスを背中にマウントする。

 

「……つまんねぇやつでしたわね」

 

 

 

 -31-

 

 ……素のストライクガンダムの両腕を、MGタイタスのものに置き換えている。ミキシングとしては、それだけのことだ。たったそれだけのものではあるけれど、今この場においては、ボクのガンプラ……『ガンダム・ベルフェゴールラージュ』との相性は悪いと言ってもいい。

 

 『機動新世紀ガンダムX』に連なる機体として、Gジェネシリーズに登場したオリジナル機体『ガンダムベルフェゴール』。それを『鉄血のオルフェンズ』世界のMS風にするというコンセプトで製作したのが、ボクのベルフェゴールラージュだ。ビーム兵器が廃れて実弾兵器や質量兵器が主体となっている鉄血の世界観に合わせて、当然機体の武装も実弾や質量兵器がメインとなっている。

 

 一応はMAのパーツを取り込んでいるという設定でビーム兵器もあるけれど、メインとして使うのは実弾や質量兵器だ。それに対して『ストライクガンダム』は……『機動戦士ガンダムSEED(シード)』の主人公機であるその機体は、PS(フェイズシフト)装甲によって実弾や質量兵器によるダメージを軽減するという特性を持っている。

 

 そしてMGタイタスの腕。これは単純なサイズ差から来る装甲厚に加えて、エネルギーを瞬時に物理的な防御力へと変換する『質量装甲』の存在から、とても頑丈だった。さらに『磁気旋光システム』の応用でビームコーティングができるらしく、生半可な攻撃は弾き返す文字通りの鉄壁の巨腕となっていた。

 

『重火器による圧倒的な制圧力、高機動による高速戦闘、そういったものもいい。ですがやはり、バトルにおいて最後にものをいうのは鉄壁の防御力と強大なパワーによる破壊力なんですよねぇ!』

「くっ……!」

 

 ストライクタイタスの振り上げた巨腕による攻撃を躱し、両肩の200mm砲を撃ち込むけれど、実弾であるそれはPS装甲に弾かれてほとんどダメージになっていない。ほんと、相性という点で見ればストライクとボクのベルフェゴールラージュはあまりにも悪い。

 

『やぁぁぁ!』

「チッ、うっとおしい!」

 

 それに加えて、周りにいる連中だ。ガンプラ自体は、素組かちょっと色を変えた程度の……おそらくはそこらの中古店なんかで揃えたんだろうジャンク品っぽい……とにかく数が多い。ストライクタイタスにはほとんど攻撃が効かないからかFF(フレンドリーファイア)も構わず攻撃してくるし、こうして時たま近接攻撃を仕掛けようとしてくる。

 

 HGサイズのグランドスラムを構えて突っ込んできた、ロービジカラーのバスターガンダムのコクピットをテイルブレードで突き刺して無力化。そのまま質量弾としてストライクタイタスに投げつけてやる。

 

『無駄ですよ、無駄っ!』

 

 それを無造作に振るった腕ではね飛ばしながら、再び腕を振り上げて突っ込んでくるストライクタイタス。その巨大な拳を、両手のツインメイスで受け止める。……ものすごい衝撃が走り、ツインメイスがミシミシと音を立てる。くっ、見た目通りにめちゃくちゃなパワーをしている! けど、

 

「受け止めた、よ……!」

 

 すぐさまテイルブレードを射出。MA『ハラエル』のワイヤーブレードを参考にしているそれは、MA『ハシュマル』のものを移植した『ガンダム・バルバトスルプスレクス』とは違って先端に二つの可動式ブレードと、そして、()()()()()()()()を備えている。

 

 タイタスの腕は磁気旋光システムのビームコーティングで弾かれる。けど、ストライク本体はビーム兵器に弱い! 背後に回ったテイルブレードの先端が開き、ビーム砲にエネルギーが満ちる。取った! そう思った瞬間、ビームが何かに弾かれて霧散する。

 

『……だから、無駄だと言っているのですよ』

「……それ、は……!」

 

 見間違うはずがない。ストライクタイタスが纏う黒に近い紫色のオーラ。それはあのケモミミアロハシャツマスダイバーのカス野郎が使っていたリゼルと同じ。

 

「ブレイクデカール……!」

『ふふふ。素晴らしい力だ。苦労して手に入れたかいがあったというものです』

「ガンプラを盗んだ挙句に、ブレイクデカールまで使うなんて……。どこまで性根が腐っているんだお前たちは……!」

『なんとでもいいなさい。どうせ勝てば官軍負ければ賊軍なのですからねぇ!』

「チィッ!」

 

 後ろに飛んで、武装スロットを開放する。ベルフェゴールラージュの胴体が開き、三つの砲門が露わになる。

 

「トライメガパニッシャー、発射!」

 

 撃破したMAから移植したという設定のビーム兵器が放たれる。設定上はナノラミネートアーマーの施されていない戦艦の装甲も溶かせる程の大出力ビームは、しかし、紫のオーラに弾かれて周囲へと飛散する。それはまるで、ナノラミネートアーマーにビームを撃ち込んだ時のようだった。

 

『わぁぁぁ!』

『きゃぁ!』

『ふ、副部長! なぜ……!』

 

 そして当然、ビームが飛び散るということは周囲の機体が被弾するわけで。バクトの胴体に穴が開き、ガンキャノンの半身が溶け、ジムスナイパーⅡの手足が焼けて行動不能になる。

 

『おやおや、酷いことをしますね』

「それは……! あんたがビームを弾いたからじゃないか!」

『そのビームを撃ったのはそちらですよ。私はただ、それを反射したにすぎません』

「こいつ……!」

 

 ツインメイスでストライクタイタスを殴りつける。けど、あまりの装甲の硬さに逆にメイスが砕け散ってしまった。

 

『何度やったって無駄なんだよ、馬鹿が!』

「っ、あ……!」

 

 タイタスの腕に掴まれる。ベルフェゴールラージュの機体がミシミシと悲鳴を上げ、イエローコーションが点灯する。くっ、パワーが違いすぎて抜け出せない……!

 

『ははは、馬鹿と言えば、あの模型部の部長ですねぇ!』

「な、に……?」

『だってそうでしょう? あんなカビ臭い模型部を先代に託されたからと、一人になってもいつまでも縋りついて。ふふ、あの小娘、模型部に新入部員が来るのを待っていたのですよ? 私がそんなもの来ないように妨害していたのも知らずにね!』

 

 は……? こいつ、今、なんて言った……?

 

『本来ならば! 模型部の部長はこの私が相応しかったというのに! だというのにあいつは、コヒルイマキ・レンカはあの小娘に模型部部長の座を渡した! 認められるか、認められますかそんなこと! あんなチビの小娘がこの私の模型部を受け継ぐなどと!』

「だから……? 潰そうとしたって……? 自分のものにならないからって、そんな理由で……?」

『その通り! 私のものにならない模型部など、潰れて消えてしまえばいい! だから私は姫百合交流会の結果が振るわず斜陽だった美術部に入り込み、副部長の座を手にしたというわけです。あの美術部部長も馬鹿な女でしたよ! 少し煽ててやればすぐに私の話に乗っかってきたのですからねぇ!』

 

 ウィンドウの中で、ストライクタイタスに乗る元模型部の女の顔が醜悪に歪む。模型部の部長を任されて、日々新入部員が来るようにと宣伝をしたり、入部希望者が来なければ落ち込むマキナの姿が脳裏を過ぎる。マキナが、マキナがどんな思いで……!

 

「ふふ、はは、はははは……」

『なんです? 気でも狂いましたか?』

「ははは……。お前が、マキナの邪魔をしていたのか。お前が……!」

 

 ボクの怒りに呼応してベルフェゴールラージュのリミッターが解除され、コンソールに赤い文字で【敵 ノ 殲滅ヲ 最優先 トスル】の文字が浮かび上がる。

 

『……っ! リミッター解除したところで、無駄だと……!』

 

 その言葉が言い終わる前に、ボクを掴んでいたストライクタイタスの腕が爆発して脱落する。

 

『な、なぜ!? 攻撃は効かないはず……! ま、まさかあなたもチートを使ったとでもいうのですか!?』

「そんなもの使うかぁぁぁ!」

『ひぃっ!?』

 

 ボクを掴んでいた腕を強引に振りほどき、リミッター解除で強化されたベルフェゴールラージュの膂力でそれを質量弾としてストライクタイタスへと叩きつける。とっさにもう片方の腕で防ごうとするけれど、ブレイクデカールによる異常強化は本体から離れていても継続するらしい。タイタスの腕同士がぶつかりあうと、両方ともが砕け散った。

 

『な、ああ!?』

「逃がすかよッ!」

 

 背を向けて逃げようとしたところに、テイルブレードで両脚の関節を挟み、至近距離からのビームで焼いて破壊する。そう、さっきのタイタスの腕を破壊したのも、装甲で守られていない関節を狙ったからだ。ブレイクデカールは装甲こそ異常なまでに強化するものの、関節にはその効果は及ばないらしい。

 

「マスダイバーの機体はどこまで耐えられるか、試してみようか!」

 

 ストライククローを展開。肩アーマーがクローアームになり、四肢を失ったストライクタイタスだったものの胴体を掴む。そのままパワーを上げてやれば、ミシミシと音がする。

 

『あ、あなたたち、助け―――』

 

 元模型部の女は、他の美術部員たちに助けを求める。けど、誰も動こうとしない。ただ遠巻きに見ているだけだ。これも人望ってやつだね。

 

「誰もお前なんか助けたくないってさ。……()()()()()()のために……潰れて、死ねぇぇぇ!」

『あ、ああ、ああ! い、いやだ、誰か、誰でもいい! 私を、私を助け―――!』

 

 なっさけない断末魔の声を残して、ストライクタイタスだったもののコクピットがぐしゃりと潰れる。GBNだから実際に潰れて死ぬわけではないけれど、しばらく狭いところには入れなさそうだね。ボクにはどうでもいいけどさ。

 

「さて、と……。マキナの援護に行こうかな」

 

 ぐしゃぐしゃになった鉄塊を投げ捨てて、まだ戦っているだろうマキナのいる方へとスラスターを吹かした。

 

 

 

 -32-

 

 ブレイクデカールを発動したゴルド・ディアブル相手に、ウチは攻めあぐねとった。

 

 ウチのシャルトーネは機動性を重視した汎用機寄りの機体や。装備もケルディムガンダムサーガを参考にした、扱いやすいけど一点突破力には乏しい軽装。ビームの通る相手にならともかく、重装甲の機体や大型MAとかは相手にするのはしんどい。

 

 虎の子のトランザムによるビーム兵器の出力upはあるけど、それでも硬い敵には基本的には火力不足……それがシャルトーネの弱点。ブレイクデカール使ってるような相手に火力なんてなんぼあっても足りんわって話でもあるけど、結局一点突破するだけの火力がないっていうのは明確な弱点としてあるのは変わりないんよな。

 

 それはあの金ぴかハイペリオンの時もそうやったし、そして今、ブレイクデカールで異常強化されとるゴルド・ディアブルに対してもそうや。火力役を味方に任せて汎用性に寄せた結果、自分だけになるとその火力の低さがあだになる。

 

 本当ならもっと早くに克服しとくべきやった、シャルトーネの課題やなあ。今になって言うてもしゃーないけどな。課題を後回しにしとったツケは、この戦いが終わったら払おうか!

 

『ふふふ、はははは! 結局あなたはそうやって逃げ回るしかない! この私のガンプラの前に平伏(ひれふ)すがいい!』

「だから、それはアンタのガンプラやないやろ!」

 

 弾切れになったGNビームマシンガンを捨てて、両脚のGNサブマシンガンを手に取る。トランザムの底上げがあるとはいえ、GNサブマシンガンであの装甲を抜くには全然火力が足りん。

 

 GNミサイルも通るとは思えんし、どうしたものか……。攻撃を避けながらも攻めあぐねたまま、そう考えとったら通信が入る。モニターにミオの顔がポップした。

 

『マキナ、まだ生きてる?』

「今は何とかな! けど、ウチの火力じゃあブレイクデカールつこてる敵さんの装甲に歯が立たんねん」

『ブレイクデカール……。やっぱりそっちも使ってたか……』

 

 忌々しげに吐き捨てるミオ。そっちもってことは、ミオの方もマスダイバーやったみたいやな。ということは、ルベリアが相手しとる方もマスダイバーやろうな。

 

『ふん、一機が二機になったところで……!  いや、待て。あなたがここにいると言うことは、副会長は負けたということですか……。チッ、あの役立たずの雑魚が』

『お仲間に対して随分と辛らつなものいいじゃない?』

『仲間? アレもまた、私のために働く駒でしかありませんよ!』

 

 ミオのベルフェゴールラージュが大型レールガンと肩の200㎜砲を撃ちながらゴルド・ディアブルの注意を引き付ける。

 

 ウチのシャルトーネよりも火力はあるし、ヤタノカガミに通用する実弾やけど、やはりブレイクデカールで強化されとる装甲を抜くには火力不足。

 

「このままじゃラチが明かん! ミオ、何か弱点とかわかるか!?」

『弱点……なら、関節はブレイクデカールの強化がされてないみたいだね。あとは、ブレイクデカールで強化された武装とかは本体から離れても効果が残るみたいだよ』

「それだけ分かれば十分や。ミオ、敵さんの注意を引きつけといてや!」

『了解!』

 

 GNサブマシンガンを捨てて、膝アーマーかせGNビームサーベルを二本とも取り出す。それを合わせて、より高出力なビームソードに。

 

「もう少し持ってくれ、トランザム……!」

 

 完全に注意がミオの方に向いとるゴルド・ディアブルへと突撃。狙うは……腕や!

 

『実弾なら効果があるとでも思いましたか? それもブレイクデカールの前では無意味なことですがね!』

『不正ツールで装甲のステータス弄ってるだけなのに偉そうなことを!』

「片方だけに気を取られとったら、あかんで!」

『な、にっ……!?』

 

 トランザムの高機動で一気に近づき、右腕の関節を狙ってビームソードになったGNビームサーベルを振り下ろす。

 

 スパッ! とはさすがに切れんかったけど、GNビームサーベル二本分の高出力になったビーム刃は、ゴルド・ディアブルの右腕の関節を確かに焼いて両断した。

 

『この私の機体が……!?』

「だから、アンタのやないって言ってるやろ……。あかん、息切れしてもうたわ」

 

 右腕を切り裂いたのはええけど、同時にトランザムの効果が終了。GN粒子を一定量チャージするまで、デバフが付いてしまう。そして、それを見逃す相手でもない。残った左腕のメガ・ガトリングガンを向けてくる。

 

『どうやらここまでのようですねぇ。消えろ!』

 

 メガ・ガトリングガンのビーム弾は、しかし、シャルトーネを貫くことはなかった。ミオのベルフェゴールラージュが、先端が展開式になっとるテイルブレードで、シャルトーネを引っ張ってくれたからや。

 

『選手交代だよ、マキナは下がってて!』

 

 そう言って前に出てゴルド・ディアブルと交戦するベルフェゴールラージュ。ウチは流されるままそれを見るしかない。……はぁ、情けないなあ。

 

『どいつもこいつもこの私を苛立たせる……! ですが、戦力はまだあるんですよ!』

『っ、新たな熱源反応!?』

 

 美術部部長の言葉と共に、レーダーに反応が増える。伏兵……いや、乱入か? まだ戦力を忍ばせとるなんて往生際が悪すぎるやろ!

 

『ヒャッハー!』

『こいつらをやれば報酬貰えるってぇ!?』

『まずはあのトロそうなやつからだ! ヒャア!』

 

 現れたザクⅢやゼダス、ジェノアスといった機体たちは、美術部部長のゴルド・ディアブル以外の機体たちに無差別に襲い掛かった。こいつらも敵味方とか無しかいな……! その内のザクⅢがシャルトーネに目を付けて向かってくる。

 

『こいつ見たことがあるぜぇ、美プラってやつだ! ガンダムの世界にお前みたいなのは似合わないんだよ! 消えな!』

「くっ……!」

 

 銃剣付きビーム・ライフルを振り上げるザクⅢ。トランザム後のデバフとGN粒子のチャージはまだ終わらん。ここまでか、と思ったその時、ザクⅢの頭部が吹っ飛んだ。

 

『騎兵隊参上、だねー!』

『マキナ、待たせたな』

「ウミ! サワ! 二人ともどうしてここに!?」

 

 頭が吹っ飛んで混乱しているザクⅢのコクピットに黄金色の刀身のブレードを突き刺したのは、ジークルーネをベースにしている機体。さらに、対艦ライフルを持ったこちらもジークルーネベースの機体がやって来る。

 

 それはウミのキツネビ・アカと、サワのキツネビ・アオやった。二機とも頭部のパーツがキツネミミを思わせる形状に変更されてて、さらに30ms『リシェッタ』のステルスアーマーのパーツが組み込まれとるのが共通しとる。

 

 違うのは武装。キツネビ・アカは本来のヴァルキュリアレイピアとヴァルキュリアラウンドシールドの代わりに、グリムゲルデのヴァルキュリアシールド、ブレードを備えた近接戦仕様。キツネビ・アオはバックパックにブラックライダーの試作戦術型ユニット「steelyard」を装備して、ヅダの対艦ライフルを持った狙撃仕様。

 

 その二機に、まさか来るとは思ってなかった援軍に、疑問が湧いてくる。

 

『美術部部長が何かあくどい手を仕掛けてくるのではないかと思ってな。部活の終わりに急いでやって来たのだ』

『そしたら案の定だったってわけなのだよー!』

 

 やってくる敵をプレートで切り裂いて、あるいは対艦ライフルで狙撃して、シャルトーネに近づけんようにするウミとサワのキツネビたち。

 

『ここはうーたちが引き受けるから、マキナちゃんは休んでて!』

『敵は一機たりとも通さないから安心しろ』

「おおきにな、二人とも!」

 

 追加で投入した戦力が、こっちの援軍もあって次々と撃破されていくのを見て美術部部長の端正な顔が苛立ちに歪む。

 

『次から、次へと……! なぜ私の邪魔をする! なぜ上手くいかない! 私は強い! 圧倒的な力を持つというのに!』

 

 苛立ちのままにそう叫ぶ美術部部長。

 

「……それがアンタの限界だからや」

『なにぃっ!?』

「アンタは自分を強い、力を持っとるというけど、それは所詮は借り物の力。アンタ自身の力やない。そんな力振りかざしたところで、思い通りになんかなるわけないやろ」

『黙れ、弱小部の小娘が! 知った風な口をきくなッ!』

 

 接近戦を仕掛けてきたミオのベルフェゴールラージュを蹴り飛ばして、ゴルド・ディアブルが高エネルギービーム砲を向けてくる。その怒りを表すように、砲口に光が満ちていく。

 

 GN粒子チャージ完了デバフ解消までまであと少し。今、あの高エネルギービーム砲を撃たれたら避けきれん。けど、ウチは言葉を続ける。

 

「いいや、黙らんよ。模型部のガンプラ盗んで、ブレイクデカールでイキって、同じ部活の仲間たちを蔑ろにして。アンタがそんなやから美術部は衰退したんやないか? 姫百合交流会(きゅーり)でええ成績残せんのも、アンタがそんな自己中で高圧的だからやろ。部のためにも後進に道を譲った方がええで、美術部部長さん?」

『黙れぇぇぇ!』

『―――いい啖呵ね。()()()()()()()()()わ、マキナ』

 

 いよいよ砲口内に限界まで光が満ちて、解き放たれんとしたその瞬間、頭上から強襲して来たルベリアのマルコシアスが、ゴルド・ディアブルの高エネルギービーム砲を二つとも両断していく。行き場の失ったエネルギーは暴走して、バックパックごと爆発した。

 

『がぁぁぁ!?』

『ついでに脚も逝っとこうか!』

 

 ベルフェゴールラージュからテイルブレードが伸びて、ゴルド・ディアブルの両脚の関節を破壊する。

 

『この、この雑魚どもがぁ……!』

『おっと』

『ビーム兵器ならうーたちが受けるよ!』

 

 苦し紛れに放たれた残った左手のメガ・ガトリングガンのビームを、ウミとサワのキツネビたちがナノラミネートアーマーで受ける。

 

 そしてウチは、切断して漂っとったゴルド・ディアブルの右腕からビーム・ライフルを取ると、そのコクピットへと照準を付ける。

 

『私が、この私が! こんな、こんなこと……認められるかぁぁぁ!』

「……独りよがりやったアンタの、負けや」

 

 

 

 -33-

 

「……」

「……」

 

 バトルを終えてGBNからログアウトしたウチらは、リアルで向かい合っとった。といってもほぼ睨み合いみたいな感じやけどな。

 

 美術部部長とそのお付きの副部長二人を撃破し、美術部部長が雇ってたらしいダイバーたちも倒した後、残った美術部の部員たちは降参することを選んだ。

 

 もうこれ以上、こんなことには付き合ってられん……。そして部長や副部長たちの言うことに従いたくない……。そういうことなんやろうな。

 

 ウチとしては、こんな形でガンプラやGBNに関わったことで、ガンプラやGBNがイヤになってしまってないかが気がかりやけどな。

 

「さあ、ガンプラバトルはウチらの勝ちやで。ガンプラも返してもらうで」

「ふ、ふふ、ふふふふ……」

 

 怪しげに笑う美術部部長。その様子に訝しんでいると、ゴルド・ディアブルを持った手を思い切り振りあげた。こいつ、バトルに負けたからってガンプラをぶっ壊すつもりか……!?

 

「ええ、ええ、返してあげますよ! こんなガラクタは、もう用済みなのでね!」

「やめ……!」

「―――なにをしようとしているのかな?」

 

 ―――チリン

 

 ガンプラが、ゴルド・ディアブルが床に叩きつけられることはなかった。その前に鈴の音と一緒に割って入った人物が、美術部部長の腕を掴んで止めたからや。

 

 ……ウチとそう変わらん小柄な体躯に、毛先がくるんとした長い黒髪。頭のてっぺんからはぴょこん、と伸びた長いアホ毛。耳には鈴の形をしたイヤリング。着とるのは黒い百合星指定の制服。その子は……。

 

「ス、スバル・()()()()()()()()……!」

「な、泣く子も黙る()()()()()()()()()()()……!?」

「なぜここに!?」

 

 恐れおののくように、副部長二人が後ずさる。その退路を断つように、同じく黒い百合星指定の制服を着た女の子たちがザザッ! と立った。

 

 それより、リベロール? それって……。

 

「なぜ? なぜって、わたしはお仕事をしに来たんだよ? 美術部部長さん、あなたというアクトウを捕まえにね」

 

 そう言ってにこっと笑う百合星風紀委員長のスバル。もっともその笑顔は見た目の通りにかわいらしいものではなくて、悪党だと言った美術部部長に対しての圧があるものやったけど。

 

「ぐ、私が、私が悪党? 何の証拠があって……!」

「証拠ならここにあるよ。あなたの自白という証拠がね」

 

 懐からボイスレコーダーを取り出すスバル。そして再生された音声は、ついさっきのガンプラバトルで美術部部長が言っとった内容やった。そんな録音いつの間にしとったんや……。というか、おったんかここに。

 

「な、ぐぅ……、し、しかし、それだけでは確たる証拠には……!」

「見苦しいですよ、美術部部長」

 

 なおも食い下がろうとする美術部部長に対して、さらに別の方から声が掛かる。

 

「今度は百合星生徒会の副会長さんのお出ましか……。権力のオールスターってところだね」

「権力て」

 

 神無月焔(カンナヅキ・エン)。百合星生徒会の副会長にして、自称『()()』を名乗っとる。

 

 まあ実際にとんでもない才覚の持ち主である生徒会長さんとタメ張れるらしいからその自称もあながち間違いではないんやろうけど。

 

 いや、しかしなんやろうな。美術部部長に百合星風紀委員会の委員長に、百合星生徒会の副会長までおるなんて、吹けば消えそうなよわよわ模型部の部長がおっていい空間やないやろこれは。

 

「あなたのこれまでの所業については、既に調べがついています。証言も既にそろっていますよ」

「そ、それがどうしたと……」

「今回の件を含め……()()()()()()()()()()()()()()()()、百合星生徒会は()()()()しました」

「は……?」

 

 カンナヅキ副会長は取り出したスマホをスピーカーモードにして掲げて見せる。

 

「ですよね? 会長?」

『はい。美術部の部長と副部長二名は()()()()()()とし、美術部も無期限の活動停止とします。この処分については、既に()()()()()()()()()()()()()認可を受けています』

 

 それは実質……いや、事実上の死刑宣告やった。スマホから聞こえてきた生徒会長……キサラギ・ヒオリ会長の声は感情を排し、ただ淡々と決定事項のみを突きつける。

 

「教頭……あのタヌキオヤジが判を押したってことは、もう終わりだね……」

「……」

 

 恰幅のいい体格で柔和な笑みを常に浮かべとるけど、その実驚くほどに冷酷な判断を下す教頭先生の顔を思い浮かべる。

 

 確かにあの人なら顔の前でピースサイン作って「ああ、うん。廃部廃部。三十秒以内」とか言ってそうやな……。それでも無期限とはいえ活動停止処分に留まってるのは、珍しく校長先生が粘ったか。

 

「終わった……」

 

 それは誰が呟いたものか。美術部部長か、あるいは後ろで項垂れてる副部長二人のどちらかか。

 

 どちらにせよ、これで一連の騒動は終わりを迎えた。美術部部長に盗まれたガンプラもちゃんと戻って来て、ガラス戸の棚に鎮座しとる。

 

 ちなみに美術部部長の窃盗やその他のことについては、百合星女学園の内々で処理されたらしくて外に漏れることはなかった。

 

 そこにどんなやり取りがあったかなんて、ウチには分からん。けど、大人の黒い部分を垣間見た気分にはなったで。

 

 

 

 -34-

 

「マキナー、そろそろ起きんと遅刻するでー」

「うーん、あと五分……」

「マキナー? ほんまに起きんと遅刻してまうよー?」

「うぅん……。はぇ……? あ、あかん! 遅刻する!」

 

 

 

「ということがあってな」

「マキナが寝坊するとは、珍しいこともあるものだな」

「めっずらしー」

 

 美術部とのガンプラバトルがあってから数日後。朝のホームルームが始まるまでの少しの時間に、ウチは自分の机にぐでーっとしとった。

 

 やって来たウミがウチのほっぺをつんつんとする。少しくすぐったい。ウチも普段は早寝早起きな健康優良少女なんやけど、あのガンプラバトルの後からシャルトーネの強化について考えとったら、あんまり眠れんくてなあ……。

 

「……どしたのマキナ、寝癖すごいことになってるけど」

「おー、ミオかあ……」

 

 いつもの時間に登校して来たミオに、ゆるゆると手を上げる。そういえば寝癖直す時間もなかったな。今からトイレ行って直してたらホームルーム間に合うやろか。

 

「……もう、仕方ないなマキナは。ほら、寝癖直してあげるからこっちに来なよ」

「んー……」

 

 隣の席に座って、自分の膝をポンポンと手で叩くミオ。それに吸い込まれるようにしてすぽんと収まる。

 

 ミオは鞄から櫛やら何やらを取り出すと、慣れた手つきでウチの髪を梳いて整えていく。

 

「ふむ。さすがに手慣れているな」

「まあ。手のかかる人が、ボクの家にもいたからね……。と、はい。これでオーケーだよ」

「おお、ありがとうなミオ」

 

 手鏡で確認すると、寝癖ボンバーしとったのがすっかりと整えられとった。ミオはすごいなあ。さすミオやで。

 

「ママだー」

「誰がママだ」

「ミオが、ウチのママ……? ミオママ?」

「マキナも乗らない」

 

 そんなゆるいやり取りをしてたら、朝のホームルームを告げるチャイムが鳴った。マリエ先生が教室に入ってきて、談笑に花を咲かせとった生徒たちも自分の席へと戻っていく。

 

「はーい、みなさん席についてくださいね~」

 

 全員が自分の席に座っているのを確認すると、マリエ先生はいつものゆるふわとした笑みで、ポンと手を叩く。

 

「今日はですねぇ。みなさんに転校生を紹介します」

「え、転校生?」

「この時期に?」

 

 マリエ先生の口にした「転校生」という単語に、ざわざわと教室内が騒がしくなる。それもそのはずや。そろそろ一学期も終わろうかっていう半端な時期に、転校生なんて珍しいからな。

 

「はいはい、みなさん静かに~。それじゃあ、入ってきてくださいねぇ」

 

 マリエ先生に促されて、教室のドアがカラカラと開いて一人の女の子が入って来る。輝くような銀髪に、左右で色の違う瞳。どこか儚げな印象を受ける整った顔立ち。

 

 その子は教壇に立つと、すっと息を吸って口を開いた。

 

初めまして! 転校生の天津牙美無花(アマツガ・ミナカ)だよー!

 

 うぉ、(声が)でっか。

 

 

 

 ―――To Be Continued




ミナカ襲来―――★



【坂井真紀奈(サカイ・マキナ)/マキナ】
【一人称/ウチ】
【身長/145cm(リアル)/145cm(ダイバー)】

 ガンプラの新たな境地を切り開いたという伝説的なビルダーの娘。父親譲りの高いビルド力を持つが、そのビルドの発想力はまだまだ。

 一年生ながら、私立百合星女学園の伝統ある『模型部』を先代から引き継いだ。しかし部員が一人しかいないこと、部としての活動実績が無いことから、生徒会に危うく廃部にされかける。廃部回避のために友人のミオと、いきなりやってきたルベリアを加えて当面の危機は回避するが……。

【ガンプラネーム】シャルトーネ・サーガ
【ベースキット】ガンダムプルトーネ
【説明】
 マキナが製作したガンプラ……というか、美プラ。

 かつてマキナの父が『若気の至り』で製作したというあるガンプラがマスターピースになっている。父の書斎で見たビデオの中で戦う姿に憧れ、自分もいつかこんなガンプラを作ってみたい、戦ってみたい、という思いが形になったもの。

 素体は00Pに登場するシャル・アクスティカをモデルに、アーマーパーツも彼女の搭乗機だったガンダムプルトーネを採用している。ただ、武装に関してはケルディムガンダムサーガを参考にしており、近~中距離の射撃戦を得意とする。

【装備】
GNビームマシンガン/NGNグレネード・ランチャー
GNサブマシンガン
GNビームピストルⅡ
GNミサイルポッド
GNミサイルコンテナ
GNスモールシールド
GNビームサーベル

【特殊機能・能力】
アーマーパージ
GN複合装甲
TRANS-AM



【夜ノ森澪(ヨノモリ・ミオ)/ミオ】
【一人称/ボク】
【身長/183cm(リアル)/145cm(ダイバー)】

 老舗塗料メーカー『ヨノモリ塗料』の娘。家がガンプラブームに乗ってガンプラ用塗料を取り扱っている関係で、生まれた時からガンプラに囲まれて育ってきた。

 家の手伝いを理由にして帰宅部をしていたが、模型部存続の危機としてマキナに入部を頼み込まれたことで模型部に入ることに。

【ガンプラネーム】ガンダム・ベルフェゴールラージュ
【ベースキット】ガンダムヴァサーゴ
【説明】
 ミオが使用するガンプラ。ガンダムヴァサーゴをベースに、鉄血風のガンダムベルフェゴールを作るというコンセプトで製作されている。

 ヴァサーゴをベースキットにしているとはいっても、胴体以外についてはほぼ新造。しかも美術部とのガンプラバトルを一週間後に控えるという超短期スケジュールで製作されたため、武装類に関しては既存キットからいくらか流用している。

【装備】
ストライククロー/120mm砲
GR-Es02ワイヤークロー
ドリルニー
トライメガパニッシャー
テイルブレード
ツインメイス
大型レールガン

【特殊機能・能力】
ナノラミネートアーマー
リミッター解除
サブアーム



【ルベリア・朝日奈(アサヒナ)・リベロール/ルベリア】
【一人称/(わたくし)
【身長/142cm(リアル)/142cm(ダイバー)】

 色素の抜けた白い髪、病的なまでに白い肌、血のように紅い瞳のアルビノ少女。

 私立百合星学園に通っているが、あまり長時間外に出られないため登校することはまれであり、半ばレアキャラ扱いされている。ちなみに普段目を閉じているのは、アルビノなので強い光が眩しいから。

 ガンプラバトルになると性格が変わるタイプ。

【ガンプラネーム】ガンダム・マルコシアス
【ベースキット】ガンダム・マルコシアス
【説明】
 ルベリアの使用するガンプラ。本体は無改造に見えるが、実際はウルズハント劇中の厄災戦時のガンダム・マルコシアスを再現するために全体のプロポーションなどが調整されている。劇中のイメージから、左肩には布製の赤いマントをつけている。

 メイン武器はメタルエッジ仕様の大太刀。その切れ味と耐久性は抜群で、朝日奈流合戦礼法からなる必殺の一太刀によってブレイクデカールで強化されたガンプラをも両断できる。

【装備】
バスタードメイス/大太刀
短剣
ナックルガード
シールド
レールガン

【特殊機能・能力】
ナノラミネートアーマー
リミッター解除
サブアーム



【九重右見/九重左和(ココノエ・ウミ/ココノエ・サワ)】
【一人称/うー(右見)/私(左和)】
【身長/162cm】
 ウーとサー。二人はウーサー。

 前髪で右目が隠れていて、明るく人懐っこいのが右見。
 前髪で左目が隠れていて、生真面目な堅物っぽいのが左和。

 腰のあたりまでの黒髪に、前髪の一部に赤いメッシュが入っているのが右見。
 腰のあたりまでの黒髪に、前髪の一部に青いメッシュが入っているのが左和。

 右見は制服を少し着崩していて、左和はきっちりと着ている。

 顔立ちも体形もそっくりな双子。前髪のメッシュがなければどちらがどちらなのか判別することは困難。

 ただこれも気分で変えることができるらしく、時折入れ替わっている。その際お互いの性格のエミュレートは完璧で、実の親ですら見破ることはできない。

【ガンプラネーム】キツネビ・アカ/キツネビ・アオ
【ベースガンプラ】ジークルーネ
【説明】
 ウミとサワが使用するガンプラ。ジークルーネをベースに、頭部のパーツを狐の耳のような形状に変更し、30msリシェッタのステルスアーマーのパーツを組み込んでいる。

【装備】
(キツネビ・アカ)
ヴァルキュリアシールド
ヴァルキュリアブレード

(キツネビ・アオ)
対艦ライフル
特殊戦術ユニット「steelyard」

【特殊機能・能力】
ナノラミネートアーマー

ヒロインは

  • ヨノモリ・ミオ
  • ルベリア・朝日奈・リベロール
  • 構わん、両方抱け。
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