サカイ・マキナは蛮族の手綱を握りたくない。 作:青いカンテラ
「アオハルだねー」
-35-
「今日はですねぇ、みなさんに転校生を紹介します」
マリエ先生の言った「転校生」という言葉に、教室内がざわざわと騒がしくなる。それもそうや。一学期も終わりに来とる半端な時期の転校生なんて、珍しいからな。
それに百合星の転入って、何かしらコネが無いとそもそもできんっていうのを風の噂で聞いたこともあるし。つまりはその時点で、何かしら有力な家系の出ということになる。
「はいはい、みなさん静かに~。それじゃあ、入ってきてくださいねぇ」
教室のドアが開いて、一人の女の子が教室に入って来る。その子の第一印象は、えらい美人さんやなってこと。
輝くような銀髪はさらさらと靡き、左右で色の違う瞳は少し愁いを帯びている。整った顔立ちはよくできた人形のようで、どこか儚げな雰囲気のその子はまさにお嬢様という感じやった。
その子は壇上に立つと、教室全体を見渡してから、すぅっと息を吸って口を開いた。
「初めまして! 転校生の
クソデカ音量第一声。その場の全員がこう思ったやろう。うぉ、(声が)でっか! と。
「アマツガさん、前はどこの学校にいたの?」
「ミッション系? のところだよー!」
「前の学校で部活はしてたの? 運動系とか文学とか!」
「部活はやってなかったかな。この学校ではどこかに入りたいと思ってるよ!」
「アマツガさんって、目がキレイだよねー。カラコンしてるの?」
「ううん。生まれつき。お姉ちゃんと同じなんだぁ!」
休み時間、噂の転校生はクラスメイトたちに囲まれて質問攻めにあっとった。まあ転校生ってそれだけで珍しいし、みんなあれやこれやと気になるんやろな。
それにしても声がデカいから席が離れてても話してることが全部聞こえてくるけど。なんやねん、目玉焼きは硬いのがいいのか半熟がいいのかって。何の質問やねん。
「おーおー、噂の転校生さんは人気ですなー」
「みんな物珍しいのだろう」
「ウーサーコンビはいかんのか? うーは新しいものとか好きやろ」
「うーは別にいいかなー。聞きにいかなくてもここにいるだけで全部聞こえてくるしー」
「この分だと他のクラスにも聞こえていそうだな」
「確かにー!」
ケラケラと笑うウミ。サワの言う通り、あのクソデカボイスなら隣の教室にも聞こえてそうやな。特に朝の自己紹介の時は三つくらい教室が離れとっても声が聞こえてそうな気がする。
「それよりさー、マキナってば収まりよすぎないー?」
「収まり?」
じーっ、という擬音が聞こえてきそうな目で見てくるウミ。なんのことや? と首を傾げていると、両手で指さしてくる。
「いやだって、ミオに朝に髪を整えてもらってから、またなんか当然のようにミオの膝の上にすっぽりしてるじゃーん!」
言われて、確かに……と気がついた。休み時間に入って、ウーサーコンビがやって来る間に、ミオの膝の上にすっぽりと収まっとった。ほぼ無意識やったで。
今はもう、気恥ずかしさもあってせんけども、昔は親父の膝の上によく座っとったのを思い出す。
だからか、背中に大きなぬくもりを感じると落ち着くんよな。今朝、マキナに髪を整えて貰った時に膝の上に座ったからかな。
「あー、まあ、ウチって片親やから……。なんやこうしてると落ち着くんよな……」
「マキナ……」
「そうか……。また片親になったのか」
「また?」
「マキナー、それって何回目ー?」
「今年に入ってから2回目やね。また数か月もすれば、おかんもより戻しに帰って来ると思うで」
「あのさ、ボクのしんみりした気持ちを返して?」
ウチの両親、なんでか結婚と離婚を繰り返してる変な夫婦やからなあ。年に数回は「もうあんたには愛想が尽きたわ! 出ていかせてもらいます!」「おう、出てけ出てけ!」……「……やっぱりあんたの傍におらんとダメみたいや。また一緒に暮らしたい」「ええで」みたいなやり取りをしてる。
「何が片親だよ、紛らわしいこと言ってさあ!」
「うひぃっ!? ちょ、ミオ! あはは! あかんて! ウチ、わき腹弱いねん! あはははは!」
手をわきわきさせたミオに、わき腹を思いっきりくすぐられる。確かに紛らわしい言い方やったかもしれんけど、わきをくすぐるんはあかんて!
「ねぇ、さー」
「何だ、ウミ」
「アオハルだねー」
「うむ」
-36-
「―――そんなわけで、ウチのクラスに転校生が来たんよ」
「あの窓ガラスが割れそうなほどの声は、その噂の転校生のモノだったのね!」
「窓ガラスが割れそうって、高周波でも出しとるんか……?」
放課後。いつものように模型部で、先に来とったルベリアに今朝のことを話す。確かルベリアのいるクラスって結構離れとったと思うけど、そこまであのアマツガ・ミナカの声は届いてたらしい。
まあ、第一声がモンスターをハントするゲームに出てくる敵の咆哮もかくやみたいなクソデカボイスやったしな。そりゃあ遠い教室にも届くか。
「
「それはほんまに大丈夫なん? ……耳、触ってもええか?」
「え? ひゃあっ!?」
ふに。ふにふに。ルベリアの耳、ちょっと骨ばってるけど触り心地がええなあ。見た感じ血が出るとかそういうのはなさそうで一安心。
「ん、んん……マ、マキナ……。そこは……あっ……」
ルベリアの耳を触ってると、だんだんと白い肌が赤みと熱を帯びてくる。茹でダコみたいになるってよく言うけど、ほんまやね。
なんか、普段人の耳ってそんな触ることないから、耳たぶとかこねたくなってきてしまうな。これは無心になれそう。なんかちょっと楽しくなってきた……。
「マーキーナー!?」
「うわっ……!?」
突然ルベリアの耳から引き離されて正気に戻る。ハッ、ウチはさっきまで何を……?
「マキナさあ……!」
「な、なんでミオが怒っとるん……?」
顔を真っ赤にして迫って来るミオ。ウチはそんなやらしいことしてないんやけどなあ……?
「ボクだって……ボクだって、マキナに耳をフーフーとかしてもらったことないのに!」
「何を言っとるんやアンタは!?」
耳は触ったけどフーフーはしてないんやけど……!?
「はぁ……もう、お嫁にいけない……❤」
「そっちも何を言うとるん?」
ルベリアがなんか恍惚とした表情で自分の耳を触りながら、おかしなことを口走っとるんやけど。ウチはちょっと耳を触らしてもらっただけやで? そんでさっきから後ろからの視線がめっちゃ痛い。
「マキナ……。責任、取ってくれるわよね……?」
「だから何の責任!?」
「マキナ……?」
「だからそっちも何で怒っとるん!?」
前門のルベリア。後門のミオ。あかん、完全に退路を断たれてもうた。もはやここまでか……そう思ったその時、部室のドアが勢いよく開かれた。
「こんにちわー! 模型部に入部しに来ましたー!」
突然のクソデカボイスが、その場の全てを破壊した。
「はあ、それで……。ウチの模型部に入部希望……でええんよな?」
「うん! そだよー!」
今、ウチの前に座っとるのは銀髪にオッドアイの女の子。今朝ウチのクラスにやって来た転校生。アマツガ・ミナカその人やった。
百合星には他にも色々と部活がある中で、どうして吹けば飛ぶような模型部に来たのかはわからんけど……入部希望者は年中募集中やからな。入部してくれるっていうならありがたく受け入れるだけや。
「それじゃあ、この入部届けに必要なことを記入してな」
「はーい!」
棚から出した入部届けに、さらさらと記入していくアマツガさん。さすがはお嬢様だけあって、書く字もキレイやなあ。
「……マキナ、また新しい女を模型部に入れるんだ」
言い方ぁ……。さっきからなぜか不機嫌なミオさん。一体ウチが何をしたって言うんや。
「はい、書けたよー! ……ところで、そっちの人は大丈夫なの?」
「ああ、いつものことだから放置しといていいよ」
アマツガさんが入って来た時の
「……うん。書き忘れも無いし、これでオーケーやで。さてと、模型部の活動は主にガンプラ作ったりなんやけど、アマツガさんは何かガンプラを作った経験とかはある?」
「ミナカでいーよ! ガンプラを作ったことはないよ! でも、作り方指南の動画は見たことある! クオン? っていう人の動画とか!」
「クオン……」
「ミオ? どうかしたか?」
「いや、何も……。何もないよ」
「続けて?」とそれだけ言って、口を噤むミオ。何や気になるけど……今ここでツッコむようなものでもないかと判断して、アマツガさん……ミナカの方に向き直る。
「んー、ガンプラ初心者か。ほんなら、まずは行こか」
「行くって、どこに?」
こてん、と首をかしげるミナカ。
「……それはもちろん、ガンプラショップやで」
―――To Be Continued
【朗報】模型部部員、増える。
ヒロインは
-
ヨノモリ・ミオ
-
ルベリア・朝日奈・リベロール
-
構わん、両方抱け。